エアバスA319が通過するまで待機して下さい。
イギリスの玄関口ロンドン・ヒースロー空港。
年間旅客数7,300万人以上を誇るヨーロッパ最大規模の空港です。
パスポートを拝見します。
何名様ですか?ヒースロー空港はとにかく大きくて複雑です。
時には45秒おきに離着陸が行われます。
お呼び出し致します。
全てが過密なスケジュールで動いているためミスは許されません。
ヒースローがくしゃみをすれば世界が風邪をひきます。
ほんの小さな問題が大混乱を引き起こし…。
915便と919便は欠航になりました。
莫大な経済的損失につながる事もあります。
責任重大です。
ストレスを感じる事もあります。
空港の舞台裏には…。
普段は見られない場所です。
時間と闘いながら働く多くのスタッフがいます。
ぞくぞくします。
すごいな。
ホント…。
小さな町ほどの大きさのこの空港では警察官や…。
ご同行願います。
救急救命士宗教家清掃スタッフ手荷物スタッフグランドハンドリングスタッフに航空管制官まで誰もが大切な役割を担っています。
燃料を入れています。
巨大空港の舞台裏に潜入します。
神頼みですよ。
(女性管制官)「アメリカン航空47便は27レフトへ」。
(男性管制官1)「ブリティッシュエアウェイズ777」。
(男性管制官2)「ブリティッシュエアウェイズ777の後方で待機して下さい」。
空港の重要な仕事は飛行機を定刻どおりに離陸させる事です。
パスポートを拝見します。
旅券はお持ちですか?内側を下にして。
空港にはおよそ1秒に1人の割合で絶え間なく乗客がやってきます。
インドデリーに向かう便の乗客が殺到し始めました。
何名様ですか?6人。
機内持ち込みの手荷物は8キロまでです。
ええ。
それ以上ですと超過料金がかかります。
300人のお客様と600個の手荷物。
手続きだけでも大変です。
クレアは空港のグランドスタッフです。
私たちはパスポートなどを確認し手荷物を預かり座席番号入りの搭乗券を発行します。
チェックイン業務は出発時刻の1時間前に締め切られます。
クレアたちグランドスタッフは60分以内に全乗客を機内へと搭乗させなくてはなりません。
お子様連れのお客様は9番の搭乗口へお越し下さい。
エコノミークラスは満席。
ビジネスは半分の19席が埋まっています。
9番の搭乗口へお進み下さい。
慎重に人数を確認します。
チケットの半券を受け取った際搭乗者リストの番号に印をつけます。
全ての人が通過し人数と半券の数が一致すれば完了です。
しかし出発時刻の20分前になっても搭乗を済ませていない乗客がいます。
まだ搭乗されていないお客様が47人います。
エアインディア112便デリー行きご搭乗の最終案内です。
出発の遅れはあらゆる事に影響を及ぼします。
乗り継ぎのお客様が次の便に間に合わなくなるかもしれません。
出発が遅れた航空会社にはばく大な罰金が課されます。
エアインディア112便デリー行きご利用のお客様は搭乗口9番までお急ぎ下さい。
出発時刻が迫っても現れない乗客が10人以上います。
いい?ええ。
彼と一緒にフロアを捜索して。
あと11人よ。
とにかく捜し回り見つけたらすぐに搭乗口へ案内します。
出発まで時間との勝負です。
まだ見つかっていません。
チェックインカウンターの職員が捜索に向かいました。
空港内の見つかりそうな場所を洗いざらいチェックします。
手がかりなしだ。
チェックインの際航空会社の手荷物タグを渡します。
そのタグが目につけばいいんですが。
バーも怪しい。
ぎりぎりまで飲むお客様もいます。
エアインディアにご搭乗のお客様いらっしゃいませんか?
(男性アナウンス)「間もなく搭乗を締め切ります」。
いつもなら搭乗完了の時刻です。
さすがに心配です。
(無線)「搭乗を締め切るように言いますか?」。
エアインディアのお客様ですか?所在不明が多すぎて困りました。
エアインディアのお客様ですか?お急ぎ下さい。
あ〜。
免税店にいる事も多いです。
インドへのお土産はウイスキーが人気みたい。
(クレア)「見つかった?」。
いえまだ何人か。
デリー行きのお客様?お急ぎ下さい。
搭乗が締め切られます。
遅れて到着したお客様が今カートで向かっているそうです。
あと2人はどこだ?誰か走ってくる。
搭乗締め切りの数秒前。
最後のお客様が到着しました。
無事お客様全員の搭乗を確認しました。
お疲れさまでした。
お疲れさま。
ドアを閉めてね。
ありがとう。
デリー行きの飛行機はヒースロー空港を定刻に飛び立ちました。
空港という巨大なシステムは歯車が少しでもかみ合わないと全体に大きな影響が及びます。
1日10万人以上が通過する保安検査場は最もトラブルが起きやすい場所の一つです。
ノートパソコンや液体物は入っていませんか?手荷物を検査し危険物や持ち込み禁止品を取り除きます。
中にノートパソコンは?いえ。
液体やクリームスプレーは?ひげそりクリームだけ。
出して頂けますか。
ビニール袋に入れた。
見せて下さい。
持ち込んではいけないあらゆる物が見つかります。
アイロンやアイロン台なんかもね。
機内では絶対に使わないのになぜでしょうね。
ホントに不思議です。
サンディープはヒースロー空港の保安警備スタッフです。
17歳で就職して以来この仕事をしています。
液体やクリームは入っていませんか?ミルクが。
えっ?ミルクです。
これです。
これは100ミリリットルを超える液体ですから持ち込めません。
預けるか廃棄するか。
預けるよ。
カバンの中にミルクの缶詰がぎっしり入っていました。
没収されるよりは一旦戻って荷物を預け直す方がいいでしょう。
なぜ機内持ち込みにしたのかな?ある時12歳くらいの女の子が通った際にアラームが鳴りました。
女の子は両手をポケットに入れてもじもじしていました。
女性の係員が女の子を怖がらせないようにかがみ込んで「ポケットに何が入っているの?」と優しく聞きました。
そっと手を出させると小さなハムスターがいました。
その子は休暇で家族と出かける際にペットのハムスターを連れてきてしまったんです。
検査します。
1分ほどですから。
誰もが自分が目をつけられたと思うようです。
「なぜ私を?」とか「前は平気だったのに」とかよく言われます。
どうしてだ?税関では何も止められなかったのに。
理由は何なんだ?カバンの中に電池などは?パソコンのバッテリーなら。
見せて下さい。
それだ。
なぜだ?まだ調べる必要があるのか。
ケーブルバッテリー。
今回は時間があるから良かったがもし乗り遅れたらどうしてくれる。
全てのカバンで行う検査です。
爆発物が無いかを調べています。
大丈夫です。
通過できます。
もし君が旅行客だとして保安検査場に30分も足止めさせられたらどう思う?二度とこの空港を使うものかと思うだろ。
ええまあ…。
君たちは客を失うんだぞ。
次からは絶対断る。
自分だけが嫌な目に遭っていると思う人もいるようです。
実際にはどの乗客の荷物も公平に検査しているんですが。
ヒースロー空港では年間600人近くの指名手配者が身柄の引き渡しを要求する国へと送られていきます。
この任務を担うのが空港専属の400人の警察官たちです。
これに乗って。
この男性は輸出業の違反行為によりアメリカへ送還されます。
暖房が入っているから大丈夫。
寒くない。
座っていた方がいいですよ。
急いでいるので揺れるかもしれませんから。
飛行機の出発時刻が少し早まったんです。
この男性は昨日の午後拘置所からヒースロー空港内の警察署に移されました。
空港内で我々が一晩拘留しこれから機内まで連れていきます。
容疑者の移送に専用機を使う場合もありますがほとんどは普通の旅客機に多くの人と一緒に乗せます。
イギリスは世界100か国以上と「犯罪人引き渡し条約」を結んでいます。
条約国は指名手配者の引き渡しを相手の国に要求できます。
空港警察には身柄引き渡し専門の警察官が配属されています。
衣類はこの袋に入れてある。
これじゃ寒いんだよ。
上着をよこせよ。
座席に着いてからだ。
容疑者と警察官は大勢の乗客とは別に搭乗口に向かいました。
飛行機の入り口でアメリカからやってきた職員に容疑者を正式に引き渡します。
落ち着いて。
容疑者は一般の乗客から離れた場所に座らせる事が多いです。
それでも機内では手錠をはめているので近くを通る乗客は気付くかもしれません。
ヒースローではこうした身柄引き渡しは珍しくありません。
ではお願いします。
容疑者を乗せた便が飛び立っていきました。
早朝のヒースロー空港。
この日最初の手荷物が預け入れられます。
年間4,000万個の荷物をさばくのは手荷物搬送システムのスタッフたちです。
ここがいわばシステムの心臓部です。
奥の方は見えませんがとても広くて大勢のスタッフが忙しく働いている場所です。
めったに見られない場所です。
乗客は手荷物がどうやって飛行機に積まれるかあまり知らないでしょう。
実際はかなり複雑で人の手も必要です。
それだから私の仕事がある訳です。
もう40年近くこの空港で働いています。
私の母は空港の食堂に勤めていました。
食堂はもうありませんが。
父は荷物係でした。
兄弟は警備員です。
義理の母や義理のきょうだい3人のおいや私の妻もみんなこの空港で働いています。
妻と出会ったのも空港のターミナルでした。
思い出の場所ですね。
長さ48キロに及ぶベルトコンベアが複雑に張り巡らされています。
預けられた手荷物はあの黒いカーテンをくぐってこの場所に来ます。
ここから先は乗客の目には触れません。
手荷物はベルトコンベアに乗せられて何キロも運ばれていくんです。
手荷物はスピーディーに運ばれていきます。
入り口から出口までの所要時間は6分から8分です。
機械が手荷物タグのバーコードを読み取りそれぞれの荷物をコンベアの分岐点で正しい方向へと誘導します。
目的の場所に来るとコンピューターが手荷物の載っているトレイを傾けるように指示します。
荷物は滑り落ち次の作業場に届きます。
下には作業員が待ち構えています。
この仕事に就いてまだ4週目の新米だけど大体の要領はつかみました。
楽しいですよ。
空港で働くのって何だか特別な感じがしますよね。
今集まってきているのは中東のドバイへ向かう手荷物です。
荷物のバーコードを確かめて正しいコンテナに積み込みます。
中東の人たちは大きなスーツケースを持ち込む事が多く重さも普通じゃありません。
便によって違いがありますね。
ヨーロッパ便は小さめの荷物が多いかな。
これはコンパクト。
重そうなのがある。
このタグを見たら要注意。
運ぶのが大変だからね。
乗客は荷物の積み込みを手でやってるなんて思ってないんでしょうね。
もし知ってたらもう少し荷造りに気を遣うと思うな。
デリックはこの仕事に就いて7年です。
旅は身軽なのが好きですね。
何を入れてるのか信じられないほど重いカバンもありますよ。
いくら長旅だからって着替えだけでこんなに重くなるはずはありませんよね。
コンテナがいっぱいになったところで駐機場で出発便の準備をするチームに届けます。
こういう乗り物を子供たちが見たら目を輝かして「あれに乗りたい」って言うでしょう。
私はそんな乗り物を自分の車みたいに乗り回しているんです。
最も重要なのはコンテナを機体にぶつけない事。
飛行機のそばを通過してはいけないんです。
積み込み作業は常に時間との闘いです。
私たちに与えられた時間は75分。
手際よく行わなければなりません。
すごいプレッシャーです。
思わぬ問題が発生する事もあるしね。
乗客の手荷物の他に商業用の貨物35トン分も積み込まれます。
貨物の内容は知らされていません。
いろんなものがありますよ。
これまでで一番すごかったのはチーターです。
7匹のチーターの檻をドバイ行きの便に積み込んだ事があります。
どうやらアラブのどこかの富豪が買い求めたようです。
コンテナの積み方には細心の注意が求められます。
よし。
2つは鼻を中に2つは鼻を外だ。
ペアで。
スタッフにはコンテナの積み方を指示します。
コンテナの一方にある出っ張りを「鼻」と呼びます。
つまり「鼻を中」とか「鼻を外」とか言って2つずつ組み合わせを作らせます。
そうやって積み込むとバランスがいいんです。
バランスの悪い積み方をすると飛行に影響します。
それにコンテナを降ろす時にも危ないですしね。
最悪の場合事故の原因にもなりかねません。
16年前にヒースローで働き始め以来ほとんどこの仕事に関わっています。
あらゆる荷物の積み込みを責任を持ってやっています。
皆さんの休暇のために日々頑張ってますよ。
その2つは鼻を中に。
出発ロビーは別れを告げる乗客と見送りの人たちであふれています。
空港のロビーは大勢の人たちがさまざまな思いを抱いて集まってくる場所です。
他にはない特別な空間だと思います。
サービススタッフはロビーの乗客の案内や手助けをします。
ここでは日々たくさんの別れを目にします。
笑顔の別れも涙の別れもあります。
時には私からも手を振ります。
人と心を通わせられる仕事が好きなんです。
長いお別れですか?1か月半ほど。
う〜ん子供には長いな。
次の便で行くと言ってあるんだ。
そうですか。
1か月先じゃ長いから。
泣くのでね。
ここにはあらゆる感情があります。
実に人間的です。
サービススタッフは不審物の確認作業も行います。
オペレーションセンターから連絡が入りました。
持ち主不明の荷物の通報を受けました。
第4ターミナル出発ロビーに向かって下さい。
了解。
処理はどのように?所有者不明の荷物は空港全体で1日におよそ20個から30個も見つかります。
見つけました。
これから確認します。
不審物は運航スケジュールの遅れや空港の閉鎖につながりかねません。
何より心配なのは手で触っても安全なものかどうかという事です。
決められた手順で保安検査を実施してから荷物を開けます。
この仕事をしていると安全なものかそうでないか何となく勘が働くようになります。
袋の中はただの服です。
靴に赤ちゃんのオムツ。
かわいらしいね。
カメラに現金。
名前の分かるものが。
検査が終わりましたどうぞ。
(無線)「こちらセンターです」。
乗客の呼び出し放送をお願いします。
(無線)「名前は?」。
名前はパメラです。
(無線)「パメラ。
姓は?」。
読み方が分からないのでスペルを言います。
(男性アナウンス)「お客様のお呼び出しを致します。
パメラ・エレラメルー様至急保安検査場の5番レーンまでお戻り下さい」。
放送を聞いたカバンの持ち主がやってきました。
やあ。
お名前は?パメラです。
そうですか。
心配しないで。
大丈夫。
あなたのカバンを見つけました。
ありがとうございます。
今持ってきますから。
ここにいて下さい。
助かりました。
どう致しまして。
すぐ戻ります。
あ〜見つかって良かったわ。
何てお礼を言えば。
どう致しまして。
ホントにありがとう。
見つかって良かったですね。
ありがとう。
良いご旅行を。
ええどうもありがとう。
じゃ気をつけて。
この仕事が好きです。
人の役に立ち快適な空の旅のお手伝いができるのはうれしいですね。
一方ヒースロー空港にはこんな職業の人物も。
ハリウッドの人気俳優や有名人が通るのを待ち構え写真を撮るんです。
いわゆるパパラッチです。
空港ではかなり近くから撮影できるので近距離用のフラッシュと広角レンズを用意します。
充電もバッチリです。
撮った写真は雑誌や新聞に売られます。
どこに掲載されたかも分かりません。
売れればいいんです。
しかしこのような行為は空港では禁止されているためもし見つかったら空港職員に退去させられます。
ロビーでひたすら待つ事数時間ケイトは何かの気配を察知したようです。
人気モデルが恋人とともに現れました。
ひたすら走ってシャッターを切り続けます。
嫌な顔されてもね。
同業者が競ってもみ合いになる事もあるわ。
あとは写真を買い取る仲介業者にデータを送信するだけです。
写真の一部はどこかの雑誌に売れるでしょう。
ヒースロー空港は有名人の出入りが多いので目が離せません。
収穫ね。
昼時の出発ロビーに集まった正装した若者の一団。
アメリカに向けて出発するある女性を待っています。
(女性インタビュアー)何をするんですか?プロポーズです。
歌とダンスつきでね。
間もなくです。
結婚への気持ちは互いにあると思うけどはっきりと口にした事はありませんでした。
今日この空港で初めて告白するんです。
驚くだろうね。
(女性インタビュアー)どんな反応だと思いますか?さあ…いい返事だといいけど。
実は既にお祝いのシャンパンもお願いしてあるんです。
ロビーにはやじ馬の人だかりもでき始めました。
そこへ…。
来たぞ!サプライズの歌とダンスで出迎えます。
(歌声)
(歓声と拍手)婚約おめでとう!
(掛け声)おめでとうございます。
ありがとうございます
(女性インタビュアー)どんな気分ですか?何かたくらんでいそうだとは思っていました。
でも想像を超えるサプライズでした。
うれしいです。
ヒースロー空港を飛び立つ人の数は1年間でおよそ3,700万人。
保安検査場では全ての人の身体検査を行います。
こちらへどうぞ。
大概の人は快く検査に応じてくれますがなぜ触るんだと抵抗されると非常にやりにくいです。
一般的に攻撃的になる人ほど怪しいですね。
小さな子供も検査の対象です。
なぜシャツを3枚も?天気が。
天気が?寒いんですか?金属探知機が反応しました。
すみませんが向こうで検査させて下さい。
厚着なので別室で脱いで頂きます。
更に詳しい検査を実施します。
では上の2枚を脱いで下さい。
2枚?ええ。
何枚着ているんです?厚着をしているため何が金属探知機に反応したのかなかなか分かりません。
もう一枚脱いで下さい。
これを脱いでこれも脱いでこの3枚の他にまだ着込んでいます。
行き先はどこですか?ガーナですよ。
これから帰るんです。
今のところ4枚の服には反応するようなものはない。
金属はないようだ。
天気がね。
そんなに寒いですか?もう脱がなくていいので検査します。
最終的に探知機に反応したのはただのボタンだったと判明しました。
以上で結構です。
ご協力ありがとうございました。
いや〜何でもないよ。
寒いから厚着しているとの事でしたが荷物を軽くするためでもあったのでしょう。
重量の超過料金を課されないように着られるだけ服を着込んだんだと思います。
ヒースロー空港の警察本部です。
詐欺および窃盗容疑の男性が本国のチェコへ送り返されようとしています。
イギリスに住んで6年になります。
こちらにはパートナーも息子もいます。
ずっとテレビやラジオなどの修理の仕事をしてきました。
この男性は自ら出頭して帰国する事を希望しました。
チェコで指名手配されている男性です。
詐欺罪だと聞いています。
今回は自主的に帰国するので格子の付いたものものしい警察車両は使いません。
逃げ回る事に耐えられなくなったんでしょう。
この男性は10年前偽造した書類で車を借り売り払ったのちに逃亡しました。
チェコの警察は私がイギリスにいる事を知っています。
だから強制送還される前に自首しようと思いました。
チェックインの方法は通常と変わりません。
一般の乗客と同じように荷物を預けて進んでいきます。
違っているのは両脇に警官が付き添っている事だけです。
(男性インタビュアー)刑務所に入ると思いますか?う〜ん。
今は何も分かりません。
帰国後どんな場所に出頭し何をする事になるのか全く先が分からない状態なんです。
今回の事で私は家族を失ってしまいました。
帰国する飛行機の中では2人のチェコの警察官が付き添う事になっています。
機長にはどんな人物を乗せるのかを簡単に報告しました。
チェコの警察官とともに男性が機内に入るのを見届けたら私たちの任務は完了です。
ヒースロー空港では一日に1,400もの便が飛び立ちます。
分刻みの離陸を守るためそれぞれの便には1人ずつ運航管理の責任者が配置されます。
この日の午後アメリカのノースカロライナに向かう便はカリーが担当しています。
名前を確認してサインをお願いします。
運航管理者は飛行機の乗客や手荷物貨物燃料などを確認し飛行計画を作成します。
機長おはようございます。
飛行計画はのちほどお持ちします。
あと10分ほどでお届けできるかと。
了解。
普通はこの時点で飛行計画書を機長に渡す決まりなんですが行き先の空港からの情報が遅れているんです。
機長が寛大な人で良かったです。
助かりました。
カリーは23歳からこの仕事をしています。
責任重大です。
ストレスを感じる事もあります。
飛行機を定刻どおりに出発させるのはホントに大変です。
ヒースロー空港で働き始めたのは5年前。
最初はチェックイン業務でした。
2年半前23歳の時に運航管理に異動になりました。
20代で責任の重い仕事を任されている事を誇りに思っています。
出発前燃料が正しく補給されているか確認するのも運航管理者の仕事です。
変更があれば知らせます。
今のところ予定どおりです。
分かった。
それじゃ。
電光掲示板に離陸までの残り時間が表示されています。
あとどれぐらい残っているかを通るたびに確かめます。
行き先の空港から遅れていた情報が届きました。
これが飛行計画書と天候についての情報です。
フライトに必要な全ての情報がようやくそろいました。
運航管理システムに登録された全ての情報はひとまとめにして機長のもとに届けます。
失礼します。
やあ。
飛行計画書です。
そろった?ええ。
機長は飛行計画を確認し承認のサインを運航管理者に渡します。
あとでサインを受け取りにきます。
ああ。
のちほど。
前方のドアを閉じてくれ。
ノースカロライナ行きの便に手荷物を積み込む作業が始まっています。
貨物の書類は?ここに。
持てないから折り畳んだんだ。
しわぐらいアイロンで伸ばせよ。
アイロンね。
スティーブとカリーは飛行機の発着準備を請け負う会社の同僚です。
出発が遅れれば会社は罰金を課されるだけでなく契約を打ち切られる事さえあります。
出発時刻のおよそ30分前積み込みは全て完了。
ところが思わぬトラブルの知らせが届きました。
手荷物を預かったお客様が1人お見えになりません。
万が一搭乗キャンセルになった場合その荷物を降ろさないと。
大変早く見つけなきゃ。
搭乗していない人の手荷物を積んで飛び立つ事は保安上の理由から禁止されています。
カリーたちにプレッシャーがかかります。
もしもし。
手荷物を1つ捜して。
33の左よ。
了解。
すぐに始める。
何か分かったら伝えてくれ。
ええお客様の到着が間にあったら連絡する。
了解。
捜索開始だ。
ちょっとした悪夢です。
出発前ぎりぎりになってコンテナを5つくらい開けなければなりません。
かなり危機的です。
積み込んだ手荷物はおよそ500個。
その中からたった一つを捜し出さなくてはなりません。
貨物スタッフ総出で時間との闘いが始まりました。
出発予定時刻まであと15分です。
もしもし。
手荷物が見つからないせいで出発が遅れれば運航管理者の責任が問われます。
4番の貨物室だ。
開けてくれ。
手荷物1つのために大がかりな作業が行われています。
積むべきものを積み終え貨物室のドアを閉じたあとなので作業に必要な車両や機材も取り払われてしまいました。
機体に全てをセットし貨物室のドアを開けるだけでもそれなりの時間がかかります。
乗客が来ない理由はいろいろです。
迷子になっていたり買い物に夢中だったりバーにいたりね。
手荷物だけ載せて飛行機を飛ばす訳にはいきません。
どんな理由でもね。
一旦積み込んだ荷物は簡単に降ろせるものではないんです。
込み入った作業です。
見つけたヤツには一杯おごろうかな。
お客様を捜索してもらっていますがまだ手がかりはありません。
刻々と時間が過ぎていきます。
1分でも出発が遅れれば運航管理のミスとされ罰金は免れません。
時間を守る事は運航管理業務の中で最も大事な事です。
私たちが飛行機のドアを閉じなければ機長は操縦かんを握る事ができません。
出発時刻の10分前。
乗客を待つ余裕はありません。
搭乗は締め切りですか?ええ締め切られました。
スティーブ搭乗は取り消しよ。
手荷物は?見つけたよ。
タグをスキャンしておいた。
良かった。
カバンは9番のコンベアに届けてくれる?
(スティーブ)「了解9番だね。
誰かが持っていくように手配する」。
(カリー)「助かった。
ありがとう」。
仕事はまだ終わりではありません。
貨物室のドアを閉め周りの車両を引き上げ飛行機を離陸できる状態にしなくてはなりません。
機体を滑走路へ押し出すのはトーイングトラクターという特殊な車両です。
この車はとにかくパワーがあります。
スピードは最高でも時速40キロ程度ですが馬力はすごいですよ。
何しろエンジンを回しながら重さ600トンの飛行機を押していくんです。
すごい力です。
操作にはミリ単位の正確さが求められます。
もしもし順調ですか?ではチェックします。
残された時間は2分。
最終チェックのあとボーディングブリッジを切り離します。
ドアを閉じてボーディングブリッジを切り離せば任務完了です。
(男性インタビュアー)操作は面白いですか?それほどでもないけど。
普通の家にはないわね。
OK。
終わりここからが神経を遣うところ。
飛行機を押し始めます。
滑走前の所定の位置まで安全に誘導していくんです。
合図だ。
ゆっくり始めましょう。
しばらくの間機体をコントロールするのは私と補助のスタッフだけです。
機長は何もしません。
自分が動かしているのだと思うとゾクゾクします。
動きだした。
出発ね。
さまざまな困難を乗り越えてカリーたちは定刻どおりに飛行機を送り出しました。
地上での最後の仕事はトーイングトラクターが受け持ちます。
私の仕事は飛行機を正確に誘導する事。
どんな悪天候でも機体の安全を守ります。
(女性管制官)「後方に注意。
27レフトに進入して下さい。
現在1機が待機中です」。
(男性管制官3)「停止位置を確認して下さい」。
飛行機のエンジンは点火しています。
誘導路の黄色い中央線を目安に進みます。
ここを大きく外すと翼の先が隣の誘導路に入ってしまい別の機体がやってきた時に危険なんです。
機体を押すためにアクセルは踏みっぱなしです。
よし完璧だ。
機体は所定の位置に着きました。
このあと機長は航空管制官の指示に従って安全な離陸を目指します。
(男性管制官4)「270便離陸支障ありません」。
管制官は神業的なタイミングで指示を出さなくてはなりません。
90秒後には次の離陸が始まります。
世界でも指折りの混雑した滑走路ではこの時およそ20機が離陸を待っていました。
ヒースロー空港で働く大勢の人々にとって忙しい一日は続きます。
2015/11/16(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「巨大空港の舞台裏 出発編〜ロンドン・ヒースロー空港〜」[二][字][再]
普段は見られない巨大空港の舞台裏に密着!90秒おきに飛行機が飛び立つロンドン・ヒースロー空港の要は定時運行。そのための知恵と工夫、そしてスタッフの奮闘を描く。
詳細情報
番組内容
欧州一の旅客数を誇る巨大空港、ヒースロー。出発の際、最も気を使うのは、飛行機を定刻通りに離陸させることだ。しかし、搭乗口に現れない乗客もいれば、ポケットにハムスターをしのばせる女の子も。インド便の乗客を見つけるには?保安検査場でごねる乗客への対処法は?スタッフは分刻みの大奮闘。一方、出発ロビーでは大がかりなサプライズ・プロポーズに打って出る男性が。出発をめぐる空港の物語。(2015年イギリス)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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