NNNドキュメント「被ばく牛‘たまみ’」 2015.11.16


あの日からずっと守り続けて来たのに
頭押さえて。
(鳴き声)
(鳴き声)
原発20km圏内の家畜に国が求めた殺処分
飼い主が同意した5000頭に上る牛や豚が命を奪われました
(半杭さん)私の牛も今日安楽死処分されましたけどうん致し方ないですね。
致し方ない。
それでも避難区域で牛を飼い続けようとする農家達がいます
本来はいただく命
でも無駄に殺されるのは耐えられない
牛は家族
3663番私の名前は…
震災の半年前に生まれてずっとここで生きています
私の目の周りや体には去年から白い斑点が出て来ました
原因は分かりません
飼い主さんはそんな私でも生きる意味があると言ってくれます
原発事故の避難区域で生きて来た私達の4年半です
福島第一原発がある福島県大熊町
町の多くは帰還困難区域です
原則人の立ち入りはできません
被ばく牛たまみの飼い主池田光秀さん夫婦はこの日も町が発行した許可証を見せてゲートの中へ
待っていたのはおよそ50頭の牛達です
(記者)これやっぱりバラバラにしないと食べにくい?
(池田さん)あんま硬いんでこれ。
こんなことやらなくてもこれ人間が食べるやつなんでかなり硬いんですねこのままでは。
牛の餌代は多い時で月に60万円も掛かります
お腹をすかせている牛達の餌をネズミが横取りしていました
殺処分を拒んだ農家に対し国は牛を出荷せず子牛を産ませないよう制限しています
(美喜子さん)だいちゃんほら。
(記者)大体分かってる…?
(美喜子さん)うちの牛に関してはね。
エリでしょ。
サドでしょ。
美喜子さんはたまみのことを「たま」と呼びます
(美喜子さん)そうなの。
去年の春たまみに原因不明の白斑が
池田さん夫婦は放射線の影響かもしれないと心配です
家族と同様な感じでずっとやって来たんですよね。
だから家族と同様に飼って来た牛なんで余計ねその…殺したくないっていうか処分されたくない。
何にも悪いことしてないんですよね牛はね。
自分達っていうか人間がこういった原因をつくっちゃっただけであって悪いことしてないのに何でただ殺されなくちゃいけないのかな…っていうふうなことを思ったんで。
原発から20km余り離れた避難先
震災の前も後も池田さんの暮らしの中心にいたのは牛達でした
(記者)先祖代々あの土地でやられてたんでしたっけ?5代目がこの人。
(記者)あぁそうですか。
あそこはね。
今でも思い出しますけども最後の餌あげてねごめんねごめんねっつって…。
ごめんねごめんねっつって…。
ダメだろうなって思って。
まさか牛達を置いて避難する日が来るなんて
ある牛舎では牛はつながれたまま餓死していました
池田さんの牛は牛舎を飛び出し誰もいない町で生き延びました
・はいはい頑張れ頑張れ・・何か大群になって見れないよこんなに・
「牧場でもう一度牛を飼う」
決意を看板に込めました
震災の翌年から岩手大学などによる研究チームは避難区域で生き残った牛を基に…
…を進めて来ました
牛への影響が分かれば人間にも応用できると考えています
牛のような大型動物の内部被ばくなどの研究はチェルノブイリではされておらず世界で初めてです
池田さんを含め10軒の農家は牛の命を被ばくの研究に生かそうと研究者達に協力しています
牛達の血液を定期的に採取し体内の放射性物質の量と健康状態を観察します
(岡田准教授)皆様のご援助をお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
農家達は出荷ができなくても牛には生きる意味があると気付きました
避難した時にまさか牛が殺されるっていうふうな状態になるとは夢にも思いませんでした。
避難する時は草があるから水があるから牛は生きて行けるよねって言って何日帰れないんだろうって言って避難しました。
一緒に避難した人が1週間だって言ってでも私は何年?って言ってた…。
そしたら牛が最終的には処分されるそんなウソみたいな話になるとは思いませんでした。
でも実際今牛を生かしていて毎日が楽しいです。
美喜子さんが牛達に餌を運びます
群れの中ではまだ若いたまみ
強い牛に追われて餌に近づくことができない
なかなか餌を食べられません

たまみはおとなしく独りぼっちでいることがよくあります
だからなのか人懐っこい性格です
(記者)さっき撮影したら何回かこう寄って来て…。
そう。
その後こうやっから…。
じゃらけるっていうか…犬でいえば。
取材に訪れるといつも何かを言いたそう
そんなたまみに出た白斑
何かの病気なのかそれとも放射線の影響なのか
専門家による調査が進められています
たまみの皮膚を顕微鏡で見ます
正常な皮膚の下には黒いメラニンがありますが白斑の部分にはほとんどメラニンがありません
それはなぜなのか
たまみの白斑は放射線が原因なのではないかと指摘する研究者もいます
福島と状況は違いますがチェルノブイリではツバメに白斑が確認されました
(ムソー教授)確実なことは言えないが放射線が関係していると思う。
放射線がメラニンに悪影響を与えているのではないか。
科学的にはまだ説明しきれないたまみの白斑
そして白斑が出ているのはたまみだけではありません
避難区域内の牧場では原発事故の翌年の夏頃から牛に白斑が確認され生き残った550頭のうち今では50頭以上いるとされています
(牛の鳴き声)
去年の秋
そこには重苦しい空気が漂っていました
…は南相馬市の避難区域で仲間と共に牛を飼い続けて来ました
餌代は毎月40万円に上り賠償金や生活費を切り崩して来ました
研究に役立ててほしいと頑張って来ましたがもう限界でした
頭押さえて。
(鳴き声)
(鳴き声)
(鳴き声)
白斑が出た牛を含め30頭が殺処分されました
でもただ命が奪われたわけではありません
内部被ばくの影響や遺伝子に異常がないかを調べるのに役立つのです
命の重みと向き合って来た畜産農家
寿命が来るまで飼おうと思っていました
(半杭さん)本当に今日はありがとうございました。
本来ですともっと飼うべきではなかったのかと思うんですけどう〜んやっぱりいろいろと考えた結果安楽死措置以外はないんじゃないかっていう組合の結論でした。
結局餌代も掛かるし人件費も掛かるし今後このまま5年10年と飼うわけにはいかないだろう…ということで一回リセットしてそして新たなスタートを切りたいと考えています。
本当に今日はありがとうございました。
原発事故の後およそ5000頭の牛や豚がこうして命を奪われました
木をかじってでも生き延びたのに
牛の餌代に悩む農家とその予算を確保できない研究者達
でもここで立ち止まるわけにはいきません
なるべく安い餌は探します。
無料の餌も募ります。
運賃代と餌代は全額導入する農家が持っていただきたいと今後の話ですけども。
今年の春
池田さんは去年植えた牛の餌になる牧草を刈り取っていました
震災後初めての試みです
少しでも自分達で餌を確保しなければ牛を生かして行くことはできません
(記者)あぁそうですか…じゃこれの2倍ぐらいないと?うんまぁ2倍では利かないでしょうね。
極端に言えば…。
今年も賠償金を切り崩して牛の餌を買います
こら!これっ!
(美喜子さん)ダメだ。
(記者)たまみは白い点々が出て来てるんですか?
(記者)増えてはいない?うん。
…ような感じしますけどね。
たまみの白斑は時期によって変わり線量のより高いエリアの牛には白斑が確認されていないことから研究チームは放射線との関連は低いのではと指摘します
せ〜の。
せ〜の。
たまみとは別の牛に目の異常が見つかりました
(鳴き声)
珍しく落ち着きがないたまみ
心配そうに見つめていました
別の牛の目に異常が見つかったのです
そのまんま…。
名前は…
震災後池田さんの牧場に紛れ込んで来たメスの牛です
牛白血病の感染が疑われていました
目が腫れる特有の症状があります
本来なら感染した牛を隔離し衛生対策が必要です
でもここは避難区域
応急処置として眼球を摘出しました
・よしよしよしよし…・・もう少し頑張ってくれよ・・もう少し頑張れ・・終わったよ・・あと眼帯着けたら…・
ちょうどこの頃でした
確認制御棒引き抜き開始しました。
・はい了解しました・
手術から2か月たった先月
みーちゃんは嘔吐を繰り返しひどく衰弱していました
(美喜子さん)おいで。
やはり牛白血病だったのです
池田さん夫婦は断腸の思いで決断をしました
行きたくないというみーちゃん
美喜子さんの心は張り裂けそうでした
(美喜子さん)みーちゃんごめんな。
(美喜子さん)みーちゃんごめんな。
牛白血病に治療法はありません
他の牛への感染を防ぐため安楽死しかありませんでした
(泣き声)
みーちゃんの死に顔はとても穏やかでした
震災前は牛達に付きっきりで世話をして来た美喜子さん
あの頃のように牛を育てていたら感染は防げたかもしれません
しかしここは日中しか立ち入りができない避難区域
まさかうちで牛飼っててこんな治んねえような病気になるっていうこと自体考えられなかったですね。
牛白血病で死んだ牛と放射線との関係について研究者達は調査を始めることを決めました
(記者)久しぶり。
(記者)変わってないなぁ。
今の福島の現状というのは低線量被ばくなので低線量被ばくのデータっていうのはこれまでほとんど大型哺乳類含め人のほうもまだ確証が得られてない現状ですのでなかなか物差しがですね今世の中にはないっていう現状ではやはり完全に否定するっていう作業はまだまだ時間がかかるかなとは思うんですけどね。
せっかくある命なもんですからね。
ただ黙って処分されたり飼ってるよりはねそういったことに役立って…研究とかしてもらってね役立ってもらったほうが彼らにとってもいいのかな…って思いますけどね。
…と思ってるんです。
(鳴き声)
震災の時生後6か月だったたまみは5歳になりました
今も避難区域ではおよそ550頭の牛達が生き続けています
国の方針そして事業者の姿勢そして住民の皆さんの議論。
こうしたことを踏まえて今回の結論に至ったことをここにご報告をさせていただきたいと思います。
たまみ何か言いたいの?
お母さん!帰って来たんだね。
今から70年前の青森空襲
地元の高校の演劇部員が自ら取材し作り上げた渾身の舞台とは
2015/11/16(月) 01:05〜01:35
読売テレビ1
NNNドキュメント「被ばく牛‘たまみ’」[字]

福島県の原発事故避難区域で生き続ける“被ばく牛”。殺処分を拒みエサを与え続ける農家と放射線の影響を調べる研究者たち。被ばく牛が私たちに問いかけるものとは。

詳細情報
番組内容
福島県の原発事故避難区域で生き続ける約550頭の“被ばく牛”。殺処分を拒んだ一部の農家がエサを与え続けている。農家から提供されるサンプルをもとに被ばくの影響を調べる研究も進んでいるが国などからの支援はない。さらに事故から4年半が過ぎる中、経済的負担に耐えかね殺処分に同意する農家も増えてきた。人間の都合で奪われた何万もの家畜の命と今も生き続ける牛たち…私たちに何を問いかけるのか。
出演者
【ナレーター】
大橋聡子
制作
福島中央テレビ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
ステレオ
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32725(0x7FD5)
TransportStreamID:32725(0x7FD5)
ServiceID:2088(0x0828)
EventID:6839(0x1AB7)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: