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最近気になる放送用語

「のほほんと」?

のほほんと過ごせるカフェ」という言い方は、おかしいのでしょうか。

これから一般的になっていくかもしれませんが、まだ新しい用法であるため、ともすると奇抜な印象を与えてしまうおそれもあると考えておいたほうがよいでしょう。

解説

「のほほん(と)」は、伝統的には、なにもせずにのんきにしていることを、やや否定的・批判的に言い表すときに使うことが普通です。たとえば、次のようなものです。

  • ノホホンとしていても、それとなく目にふれる限りのヤミ屋の流儀を観察して、他日にそなえる心構えが自然に生れているのである。」

    (坂口安吾「淪落の青春」1948年)

  • 「君などとまるで違って、どんな雰囲気のなかでも、のほほんとしていられる青年たちもいるにはいます。」

    (岸田國士「あるニュウ・フェイスへの手紙」1951年)

しかし近年では、ゆったりと過ごすことを肯定的に表す場合に使われることもあります。

  • 「たまには放課後のほほんと おしゃべり Very time (Max Heart!)」

    (青木久美子作詞「DANZEN! ふたりはプリキュア (Ver. Max Heart)」2005年)

この「のほほん(と)」について、ウェブ上でアンケートをおこなってみました。「[A]のほほんとできそうな雰囲気のお店」「[B] のほほんと過ごしていてはだめだ」といった言い方について、どう思うかということを尋ねたものです。その結果、比較的若い年代では、新しい用法である[A]について(も)認める意見が、ある程度みられました。しかし高齢層では、伝統的な[B]のみが正しいという考えが一般的です。

「こんなくだらない文章を読んで、のほほんとしている余裕はない」と思われてしまわないよう、これからもがんばって執筆いたします。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2014年1月~2月実施、1,149人回答)

(メディア研究部・放送用語 塩田雄大)