クローズアップ現代 2015年10月9日放送回

萩本欽一さんをゲストに迎え、言葉の正しいアクセントはどういうものなのか、多くの人に伝えられる基準はなんなのかなど、言葉について。

今年の春、欽ちゃんは大学1年になった。若い学生の聞き慣れないアクセントに驚いたという。多様化している言葉のアクセント。一つに絞るべきと考える人も少なくない。日本語は同音異義語が多いため、目が見えない人のためには基準を大切にする必要がある。NHKのコールセンターにも、連日アクセントに対する違和感の電話が寄せられている。

多様化するアクセントをどこまで受け入れるべきか。共通語のアクセント辞典の編纂をする現場では言語学者などを交え、過去にない大改定が行われている。日本語は、地方による方言が激しい言語だったため、出身の違うもの同士の意思疎通の壁になっていた。そのため、明治以降、東京などの言葉を基準に標準語教育が始まった。一番の議論が、地名のアクセント。駅名などを読む声優の田中さんは、慣れ親しんだアクセントとは異なるアクセントで地元の駅名を収録したというが、利用者の声を受けて直したという。このように、アクセント辞典を認めるのか地元などを認めるのかなど、基準そのものを見直す議論が始まっている。塩田さんは、今までは共通語などはこれだけが正しいという態度が多かったが、幅があるもの、枠であるということを多くの人間で話し合う必要があるなどと話した。独自の基準を作る動きもあり、文章を音声化するソフトを開発している会社では、これまではアクセント辞典を元に音声ソフトに記憶させてきたが、新たに生まれる言葉などは独自にアクセントを決めることにした。ネット上で多数決をとり決めている。

言葉のアクセントについてスタジオトーク。言葉の平板化について、塩田雄大は「もともと日本語は平板型のアクセントが非常に多い。その一方で外来語は平板化で入ってこなかった。外来語の平板化に違和感を覚える人は、『外来語は外来語らしくしていろとの気持ちの現われ』」と話した。自分に対して言葉への馴染みが出てくると平板化が進むという。萩本欽一は、「イントネーションで意味をとることもあるから、どこで理解していいか分からないことがある」などとコメント。これに塩田雄大は、「ヤバくね」という言葉を例に出して、「疲れないイントネーションは、お互いに質問と同意を繰り返しながら話をしていきたいという現代の人間の特性の現れでは」などと述べた。

山形・鶴岡市では、戦後70年にわたって言語調査が行われてきた。調査員の一人である阿部貴人さんを紹介。阿部さんらは鶴岡市民7人を対象に、普段使っている言葉のアクセントや発音について聞き取り調査を続けている。昭和25年から続けてきた調査の結果、戦後は3割近くにすぎなかった共通語の普及率は年を追うごとに上昇。今や99％の鶴岡市民が共通語を使っていることが分かった。しかし共通語が浸透した今、それとは逆に若者たちの中で失われかけていた方言やアクセントの新しい使い方が生まれている。

若者たちの間で、多く聞かれる「さ」という言葉。吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」にも使われている「さ」という助詞は、本来東北弁で方向・場所を示す名詞の後に使われている。しかし阿部さんの調査では、様々な言葉に応用して使われていることが分かった。こうした新たな方言は他にも次々と生み出されている。中でも阿部さんは、地元以外の場所に行った時こそ独自の方言やアクセントを使う若者たちに注目している。若者たちがあえて自分たちの方言を使うのは、自分たちの文化や価値観を強く主張しようという現れではないかと、阿部さんはみている。

若者コトバについてスタジオトーク。若者による方言の再生産について、塩田雄大は「非常に健全な流れだと思う。戦前は日本中で言葉が通じなかった中で、半ば強制的に共通語が教育されていた。しかし今は多くの人が共通語的なものを話し、地元では方言的な話をする使い分けを多くの人ができる。すると自分のアイデンティティを示すために、積極的に方言を資源として使っている」などと話した。

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駒沢大学

塩田雄大研究員

籠嶋岳彦さん

NHK放送文化研究所

阿部貴人さん

鶴岡市（山形）

俺ら東京さ行ぐだ

吉幾三

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