テロから2日たったパリ。
不審な音をきっかけに人々が騒然となりました。
市内では今もなお緊張状態が続いています。
フランスの首都・パリを恐怖に陥れた同時テロ。
国境を越えて計画された組織的な犯行であることが見えてきました。
犯行声明を出した過激派組織IS。
これを機に、世界各地で大規模なテロを起こすのではと懸念されています。
無差別に行われるテロにどう立ち向かうのか。
現地からの緊急報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
金曜の夜、食事、音楽などを楽しんでいたパリ市民が自動小銃や自爆装置で武装した犯行グループに無差別に襲われ129人もの人々が亡くなるという凄惨な同時テロ事件。
その衝撃の大きさは想像しても余りあるものです。
1月に預言者・ムハンマドを風刺した報復として新聞社、シャルリ・エブドが襲撃されたばかりですが今回の事件は、テロに対する厳戒態勢が取られていた中で防ぐことができなかったことからフランスが直面する脅威の大きさそしてテロとの困難な戦いが泥沼化するおそれがあることをうかがわせるものです。
自由・平等・博愛を掲げるフランスには500万人ともいわれるイスラム教徒が暮らしています。
冬を前に、シリアをはじめ中東からヨーロッパに難民の流入が続きヨーロッパ各国に不安が高まる中で組織的に、そして周到に準備された可能性のある同時テロ事件が起きたのです。
事件後、過激派組織IS・イスラミックステートがインターネット上に出した犯行声明には十字軍ということばが使われキリスト教徒の国フランスに対するパリでの聖なる攻撃と題されています。
非常事態を宣言したフランスは事件後、シリアにあるISの拠点に対して空爆を行っています。
イスラム教徒ならびに中東との歴史的社会的関係が深いフランス。
戦争状態に入ったという強いことばも聞かれる中で社会が分断されるおそれや不安と向き合いながら暴力、憎しみの連鎖を防ぎテロの脅威をどうやって減らしていけるのか。
初めに、明らかになってきた事件の実態からご覧ください。
パリから車で2時間。
容疑者の1人が暮らしていたという街です。
2年前まで住んでいたと見られる家。
今は別の住民が住み扉は閉ざされていました。
男は、イスマイル・オマル・モステファイ容疑者。
フランス国籍の29歳。
モステファイ容疑者のことを知る住民に会うことができました。
周囲からの評判はおとなしい住民。
その一方で、5年ほど前からは過激な思想に染まり、一時当局の監視対象となっていました。
シリアに滞在した可能性もあると見られています。
モステファイ容疑者らはパリの中心部の8か所で僅か30分ほどの間に同時多発的に犯行を起こしました。
グループは3つに分かれていました。
まず動いたのがパリ郊外にいたAグループです。
オランド大統領が観戦する中で行われていたサッカーフランス代表とドイツ代表の親善試合。
(爆発音)午後9時20分。
入り口付近で最初の爆発。
その10分後2回目の自爆テロが起きました。
ほぼ同時刻7キロ以上離れたパリ市内でBグループが襲撃を始めます。
まず、2つの飲食店を銃撃。
15人が死亡し10人が負傷しました。
このグループは、車で移動して別の飲食店を襲い、その後も次々と銃撃を繰り返しました。
そのとき、近くを走っていたタクシーからの映像です。
(銃撃音)
銃撃直後の現場。
ここでは、19人が死亡しました。
銃撃されたレストランのオーナーグレゴリー・ライベンベルグさんです。
金曜日の夜店内は、大勢の客でにぎわっていたといいます。
15分で、およそ4キロを走り抜けたBグループ。
短い間に凄惨なテロを行っていきました。
街が混乱に陥る中さらに追い打ちをかけたのがCグループの動きです。
150年の歴史を誇る伝統あるコンサートホール。
当時、アメリカのロックバンドがライブコンサートを開催していました。
2階建て構造の客席は1500人余りの観客でほぼ満員。
容疑者グループはそこに侵入してきたのです。
(銃撃音)観客に銃を乱射し続けながら神は偉大なりと、アラビア語で叫んでいたといいます。
(銃撃音)
人質を取って2階に立てこもり警察との銃撃戦の末1人が射殺され2人が自爆しました。
スペインから来ていたこの女性。
息子の安否が今も分からないままだといいます。
事件の翌日には隣国のベルギーで犯行に関与したと見られるフランス人の男ら3人が身柄を拘束されました。
専門家は、国境をまたいで周到に犯行を実行に移せる組織がフランスに出来ていると懸念しています。
銃撃されたレストランのオーナーです。
事件から2日後初めて現場を訪ねました。
今夜のゲストは、イスラム教、そしてイスラム社会をご専門に研究され、過激派の思想にもお詳しい、東京大学准教授の池内恵さんです。
自動小銃を持って無差別に都市の中で人々を殺害すると、こんなに凄惨なこの事件の衝撃、本当に世界中をしんかんさせているわけですけれども、どのように受け止めてらっしゃいますか?
これまで、個々のテロのやり方という意味では、同じような事件は過去に何度もあったんですね。
今回はその延長線上にあるとは思うんですが、違いは、ある種、進歩した、進化した、何が進化したかというと、むしろ組織とか手法ではなくて、冷酷さが進化したといっていいと思います。
非常に手際がいい。
それから、連携して、複数の場所で連携して、コーディネートして、実行している、そしてそれぞれが銃撃して、最大限銃を撃って相手を倒したあとで、みずから自爆して死んでるわけですね。
そういう意味で、非常に変な言い方ですが、手際がよくなっている。
なぜかって、一貫するのは、冷酷さが増しているということだと思います。
冷静であり、冷たいということですね。
今おっしゃったように、計画的に連携しながら、しかも非常に強力な武器を持った3つのグループが攻撃をして、フランスの識者の中には、大きな組織が出来上がってるんではないかという意見もありましたけれども、この組織的なネットワークの広がりというのは、どう見ていらっしゃいますか?
私自身は依然として、われわれが通常考えるような大きな組織があるとはあまり考えてないんですね。
むしろ、あくまでも自発的に、極めて小さなきょうだいとか親戚とか、非常に仲のいい友達といった小集団がいくつか集まってしかし、非常に冷酷に冷静に計画をして、連携して、事を運んだというふうに考えています。
そして、これまで行われてきたさまざまなジハードを掲げるテロの手法をほぼ全部使っているといっていいわけですね。
自爆する、あるいは無差別に銃撃する、あるいは襲撃をして立てこもる、そのすべてを一回の並行した一連の事件で行って、すべて成功させ、そして証拠を残さないようにそれぞれが死んでしまっているという、そういう意味では極めて計画性が高く、準備がよくできていて、そして実行力を見せつけた。
ただし、これはそんなに大きな組織じゃなくても、やはりできるんですね。
武器自体は、別にイスラム国が独自のルートを開拓したわけではないかもしれない。
むしろフランスやベルギーなどに、通常存在している密輸、密売のネットワークから買ってくれば済むわけですね。
今、お金など、武器を買うために渡した人はいるかもしれない。
しかしそれほどたいした額ではないと思われます。
そして、何よりも通常、組織的に物事を行うときっていうのは、そもそも実行犯が生きて逃げて帰ってくるところまでをすべて支えようとすると、ものすごく組織的になるわけですが、この場合はもう、とにかく犯人たちがねらいどおり自爆して、死んでしまってますから、その先を考える必要がないわけですね。
そうしますと、依然として組織は小さくていいわけですね。
武器を渡してやれるだけやって、そこまで支援すればいいというだけですからね。
ただ空爆がより激しくなって、ISへの包囲網が少し強化されてるのかなといった中で起きた。
過激派のグループのねらい、そしてISは今、どういう状況にあると見ていらっしゃいますか?
ISを含む、グローバルなジハードを掲げる勢力というのは、私の見方では、2つのメカニズムで広がっています。
それは、キーワードは拡大、そして拡散だと思いますね。
拡大というのは、地理的、面的な拡大です。
例えばイラクやシリアのように中央政府が弱くなっている。
ある地方が中央政府が統治できなくなっている。
そういった所に入ってくるんですね。
そこでそういう所では、面的な領地支配をして、そこに大規模な組織を作って、武装して活動する、公然と活動する。
しかし、そのような活動ができないエリアが世界に多くあります。
例えばフランスのような先進国、あるいは中東でもエジプトとかチュニジアのような比較的治安がいい国では、面的に支配するエリア、ほとんどありません。
辺境地域では一つしかない。
そうしますと、そういう所では、イデオロギーですね、組織を作って、大規模に活動、武装することはできませんから、拠点をむしろ作らずに、小規模な組織が勝手に社会の中から出てくることを刺激する。
それによって、具体的にはテロを自発的に行わせる、そういう意味では拡散なんですね。
今回は、拡散の方向に一気に振れた、そういう事例だと思います。
国境を越えて、その脅威が広がっている、テロですけれども、不安と混乱に揺れるパリの今です。
テロから2日がたった15日夜。
事件現場近くの広場です。
取材班がインタビューを行っていたさなか。
新たなテロが起きたという声に現場は一時、騒然となりました。
その後、テロではないことが分かりましたがパリでは今も緊張が続いています。
今回のテロ事件は国際社会がISへの攻勢を強める中で起きました。
去年8月以降アメリカを中心とした有志連合が行っているISに対する掃討作戦。
ことし8月、トルコが加わり9月にはロシアも空爆を始めました。
これに応戦するかのように無差別テロが繰り返されています。
先月、トルコでは爆弾テロで100人以上が死亡。
その後、ロシアの旅客機が墜落しIS関連の武装組織が犯行声明を出しました。
フランスは、ことし9月からシリアにあるISの拠点への空爆に参加。
さらに今月新たに空母の派遣を決めました。
テロ対策の専門家はこうした強硬姿勢を取るフランスを、ISが標的にしたと分析しています。
さらに今回のテロをきっかけにヨーロッパ社会が変質するのではないかという懸念も生じています。
実行犯の1人が、難民に紛れてヨーロッパに入ってきた疑いが指摘され不安が広がっているのです。
ヨーロッパにはことし大勢の難民や移民が押し寄せすでに80万人を超えました。
今回の事件によって寛容の精神で難民を受け入れてきた各国の政策にも影響が出かねないと指摘されています。
事件後、追悼のために現場を訪れた市民の間であつれきが見られました。
文化や宗教などの多様性に重きを置いてきたフランスは今、試練に直面しています。
パリで取材に当たっている長尾記者と今夜は中継がつながっています。
長尾さん、今のリポートの中で、不安から人々が言い合いをするという場面もありましたけれども、今回の事件をきっかけに、社会の分断への懸念というのは人々はどのように感じているのでしょうか。
事件が起きた直後だけに、多くの市民は連帯や平静を守る決意を口にしています。
社会が分断すれば、それこそテロのねらいに屈したことになるからです。
フランスはこれまで、植民地時代の歴史的な経緯から、北アフリカなどから移民を受け入れてきたヨーロッパ最大の移民社会です。
多様な文化や価値観の競争を国是としてきました。
理想は高いんですが、現実には宗教的な対立や、経済格差を巡って、社会の中に不満や不信感が高まり、大規模な暴動に発展したこともあります。
そこにISが、フランス社会に直接、攻撃を加え、宗教対立をあおる声明を出したことで、イスラム系の人々への対立感情が高まるおそれがありまして、不安は大きいんです。
フランスは戦争状態にあるといったような強い表現をして、空爆をISの拠点に行っているわけですけれども、空爆が続くかぎり、平和はないと、ISのほうは言っているわけですね。
こうした力を使うことに対しての迷いというのは、フランスの人々の間にないのでしょうか。
フランス軍は15日、シリア北部のISの拠点に対して、空爆を行いました。
メディアはこれまでで最大規模だと伝えています。
しかしこうした姿勢は、過激は思想を支持する国内の分子をさらにあおることにつながらないかと、国民の中には慎重論も根強いんですね。
一方でフランスは今、押し寄せる難民をどう受け入れるかといった問題に直面しています。
多くはシリアからの難民です。
今回の事件をきっかけに、ヨーロッパの一部の国と同じように、難民をリスクと捉える動きが、国内で高まってもおかしくはありません。
自由や寛容を国の理念として掲げてきたフランスが、社会の中で互いに監視する目や、不信感を抱えざるをえなくなるのか。
国全体が大きな試練に直面しています。
パリの長尾記者でした。
池内さん、空爆に対して国内には慎重論も出ていると。
対応、どうあるべきだと思いますか?
イラクやシリア、あるいは中東のほかの国で、無秩序な状態があるということが結果的にその地域でのISの拡大にもつながってますし、それを拠点として、そこを訓練の場所として、あるいはお金や武器の発信源として、結果的にフランスを脅かしている、そういうことは確かなんですね。
だから、その根本を絶つのは、要するに軍事攻撃だという議論が今後ある程度、強くなるとは思います。
ただ、私の見方からいうと、少なくとも一時的には、イラクやあるいはシリアの拠点を攻撃することは、テロの拡散を促進すると。
むしろ地理的に拡大できなくなる、拠点が脅かされると、世界に散っていくと、そういう可能性が私、高くなると思いますね。
そういう意味で、短期的にはむしろ、テロの危険を増す政策だとは思います。
ただ根本的にはもしかすると、そうしないと解決しない問題なのかもしれません。
フランスは500万人ともいわれているイスラム教徒を抱えています。
フランスは同化政策というものを取ってきたわけですけれども、今の悩み、ジレンマっていうのは、どのように捉えてらっしゃいますか?
フランスは、異なるバックグラウンド、宗教とか民族が異なる人でも、個人としてフランスの共和国の理念に賛同し、同化すれば受け入れるという、そういうやり方でやってきて、非常に成功例は多いんですね。
同時に、特に郊外などで、うまく経済的、社会的に同化できない人たちがたくさんいる。
その中に過激な思想を持つ人たちも出てきている。
その中に、さらにことし、昨年ぐらいから、急激に新たな難民が増えているんですね。
この事件は、直接的には、恐らくこれまで受け入れ能力を超えて行ってきた難民、移民の受け入れ政策を変えるきっかけにはなると思います。
ただ、難民は別にテロリストというわけではありませんから、紛れ込んでくる危険性を避けるというそのために恐らく、政策転換が正当化されるという、そういう方向は考えられますね。
フランスの世界観、あるいは人権を重視する姿勢と、イスラム教徒と相いれるのか、こういったところも考え…。
すべてのイスラム教徒がフランスの社会に対して敵対的ということは全くないわけですが、同時にイスラム教の根本的な教義の中には、フランスの人間が中心とした、人間が中心であり、個人主義の人道主義とは相容れない部分が2015/11/16(月) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「緊急報告 パリ“同時テロ”の衝撃」[字]
13日にパリで起きた“同時多発テロ”。120人以上が死亡した。事件には、イスラム過激派組織が関与していることがわかってきた。現地の最新情報と事件の深層に迫る。
詳細情報
番組内容
【キャスター】国谷裕子
出演者
【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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