(羽田)
今日はこんな所から始まります
(石川)だいぶ上りましたね。
結構足にきますね。
ああ海だ。
うわ〜!すご〜い。
きれいだ。
一望ですね。
日本海の向こうに見えるのは佐渡島です。
石川先生がここに案内してくれたのには訳がありました
今回臨書で新潟というとどなたの臨書?今日はこっちですね。
ん?良寛さん。
良寛さん!今日は良寛の書を。
どんな方だったんですかね。
書で言えば非常に重要な人です。
江戸時代後期の禅僧・良寛。
子供たちと手まりで遊ぶお坊さんという印象ですが書の腕前は…。
自由闊達にして天衣無縫。
歌人としても優れまさに「書の達人」です。
その書はゆれたり歪んだり型破り。
書家として唯一無二の存在です。
ほんとになんか小さいお部屋ですよね。
山中の庵で孤独な暮らしを選んだ良寛。
その良寛の教えを書き残し後世に伝えた愛弟子貞心尼。
貞心尼が残した小さな歌集を今回テレビ初公開。
この書からひもとかれるその素顔とは。
書の達人・良寛の美しくも歪んだ書の秘密とその教えを継いだ貞心尼に臨書で迫ります。
「臨書」とは書をありのままに写し取る事で歴史上の人物に触れる事。
文字の傾きや震えかすれなどから書いた人物の生きざまや息遣いまでも追体験していきます。
講師は…石川さんは長年書とは何か独自の視点で探究。
臨書を通じて多くの人物と向き合ってきました。
私羽田美智子が石川先生と臨書を体験しながら歴史に名を残した人物の生きざまに迫ります
私たちは良寛さんの書に会いに出雲崎にある良寛記念館を訪ねました
誰にでも気軽に一筆書いたという良寛さん。
たくさんの書が残っています
これが今日見に来た一番の書ですね良寛の。
へえ〜!「人も三十四十を」…「越え」…?「て」。
「越えて」。
だいぶ読めるようになりました。
何となくですけど。
今回特別に肉筆をじかに見せて頂ける事に
うわっ。
え〜すごい。
ありがとうございます。
まるで墨の香りが漂うかのようでちょっとドキドキしました
これは良寛が弟に宛てた手紙。
4歳下の弟由之の健康を気遣う内容でした
なんかこう字から…何て言うんでしょう。
下手とかそういうんじゃなくって…必ずしもまっすぐこなくてこうゆれたりしながら。
良寛さんの書がこんなにもゆれたり歪んだりしているのを初めて知りました
これは「風」。
草書体では一般にこう書かれますが良寛の場合は構の中が大きく右にずれています。
なんかこの「風」って字が…子供の頃私蚊帳をつってもらった事があって蚊帳の中にいる感じですね。
周りの扉が全部開いていてだけど自分のいる所には風が入るけど虫には刺されないっていう。
この「酒」の三水は一本筋ですね。
ピュンッ。
雨だれがポッと落ちたぐらいで三水にしてしまうという。
「淫」のとこなんでも点の集合みたいなね。
良寛は大胆に省略しています。
良寛っていう人は…これは書としてはどうなんですか?
良寛さんの「変な字」もっと見たくなりました
これは良寛の傑作として重要文化財に指定されている…「庭百花發餘香入此堂」。
春の夜静かな庭の花の香りが部屋まで漂う中相手と無言で語り合うさまを謳ったことばですが…。
やはり文字の大きさもバラバラ。
形も大きく歪んでいます。
例えばこの「庭」という字。
本来ならばこんなバランスじゃないでしょうか。
しかしこのずれたバランスが良寛らしさなんです。
ずらそうと思ってるわけじゃないけどずれてくると。
完璧なバランスじゃなしに少しひねったところで落ち着くっていう。
今度は良寛の手紙を見てみましょう。
こちらは「お菓子が欲しい」と店に宛て出したもの。
「白雪羔」とは菓子の名前。
それを「少し恵んでくれないか」と良寛は頼んでいます。
「白」の字は上の横棒がありません。
そして「雪」の字も雨冠の点々がありません。
ここまで省略されても読めるのはむしろ不思議です。
間がずっと空いてますよね。
書いたところに字が現れてこなくてもいいというようなね。
決まったスタイルにとらわれないのが良寛さんの魅力なのかもしれません
こういう感じですよ。
そうそう…。
「ピーッ」って。
何だか見ているだけで心がほぐれるように感じます
良寛の生家から18キロ北東にある国上山。
古くは修験道の場でもありました。
はぁ…結構高いとこですね。
ねえ。
だいぶありますね。
どのぐらいあるかな。
この山で良寛はおよそ30年間ひとりきりで暮らしました。
良寛さんがひとりで住んだという庵にこの寺のご住職が案内して下さいました
(山田)こちらに見えます庵がですね良寛様の住んでいた庵の再現っていうふうな事です。
ここ五合庵は本来はこの寺の僧侶の住まい。
良寛さんが暮らした頃は6畳間が4つほどあったそうです
ほんとになんか小さいお部屋ですよね。
ここで寝泊まりして。
そうですね。
麓から坂道を1時間。
庵は人里から近すぎず遠すぎずの場所にありました
「世間とのつきあいが嫌なわけではないが私はひとりでいる方が好きなのだ」。
世間から離れもせず交わりもしない良寛さんの生き方とその書は似ているのかもしれません
やっぱり良寛に一番…そのスタイルで一番重要なのはやっぱり距離。
ちょっと距離をとって冷静に見る目っていうのを…。
そういう位置のとり方っていうのがこの五合庵の位置の中にも…。
表れてるんですね。
それが書で言えば線の細さにあるという…。
筆が接する部分が少ないんですね。
民衆にグッと近づいてくんじゃなしに一歩ちょっと引いて。
1831年良寛は74歳で亡くなります。
しかしその死は決して孤独ではありませんでした。
良寛の最期をみとった一人の女性がいたのです。
石川先生と私はその女性の書が残るという柏崎のお寺に伺いました
今日は大変貴重なものを見せて頂けるという事でよろしくお願いします。
こちらこそお願いいたします。
ご自由にどうぞご覧下さい。
ありがとうございます。
ご住職に許可を頂き見せて頂いたものは…
部屋一面に広げられた書画の数々
うわ〜なんかすてきな字がいっぱい。
これは年に1度秋の彼岸の時期虫干しのために公開されるこの寺の秘宝です。
そしてこの中にその書はありました
こちらが貞心尼さんの屏風です。
ん〜!
屏風の左右に流れるように和歌が書きつけてあります
すてきな字ですね。
いかにも意志の強そうな堂々とした書きぶりです
これを書いたのが良寛最後の愛弟子貞心尼です。
貞心尼は柏崎出身の尼僧であり歌人です。
良寛のもとへ弟子入りに訪れたのは貞心尼30歳良寛70歳の時でした。
その時留守にしていた良寛に貞心尼は土産に持参した手まりと歌を一首残します。
手まり遊びに仏の道をなぞらえ「求めても得られないものか」と問いました。
若き貞心尼は歌の大家良寛に大胆にも歌で問いかけたのです。
これに良寛はこう返します。
「初めから終わりまでついてみなさい。
十で何かを得られたところからまた始まります」。
手まり遊びに掛け「九十」つまり「ここの扉を開けついてきてみよ」という意味も込め弟子入りを許しました。
ここから貞心尼と良寛の交流が始まりました。
今回このお寺で門外不出とされている貞心尼さんの書を特別に見せて頂きました
こちらは貞心尼さんが44歳から66歳までの間に残されたお歌が全て収められているもので「もしほ草」というものでございます。
ご住職のお話ではテレビに公開するのは初めてとの事。
貞心尼さんが22年の間に作った563首の歌が書き記されています
うわ〜!うわわわわ…。
何て書いてあるんですか?
何か所か紙が貼られています。
これは歌を直した跡。
貞心尼さんのきちょうめんさがうかがえます
実は晩年の良寛の教えや歌が現在まで伝えられているのはこの貞心尼がいたからこそ。
世間と一定の距離を置いた良寛の言葉を貞心尼が書き留めて残していたのです。
こちらは良寛の死後4年目に貞心尼が上梓した「蓮の露」。
良寛が臨終の間際まで詠んだ歌や言葉が記されています。
巻末にある良寛の戒めを書き留めた「戒語」。
「言葉の多き」「手柄ばなし」など人としてすべきではない事がやさしい言葉で並びます。
良寛は難しい説法こそしませんでしたが仏の教えを誰にでも分かるような形で残しました。
今なお親しまれるその言葉は私たちの心に響きます。
今日の臨書は良寛。
九楊先生お願いします。
弟の由之…すもり宛ての戒めの手紙ですね。
気を付けなければならないところ…「大酒飽淫」とは暴飲暴食の事。
良寛が弟を気遣い慎むように伝えたかった言葉です。
先生私回を通して自分の癖に気が付いたんですけどどうしても字が大きく太くなりがちだっていう。
だからこういう細い字を見ると「さて書けるかしら?」と思っちゃうんですけど。
ああ〜…。
だから「惜しむ」っていうのは「いとおしむ」という意味もあるのね。
そんなふうにグッと出してしまうんじゃなしにほんとにいとおしむわけだしここへ出てくるのを惜しんでできるだけ後を追っかけて少しだけ出てくるように。
こう書いた跡が。
なるたけ宙に書いておいて…惜しむ。
惜しむ。
う〜ん…。
こうしてそれで考えてこうじゃなしにここからここまでをしっかり書いてやる。
ここから次へ行く準備をしていると。
でこう書きますね。
この次のところも上がってどこにしようじゃなしに上がる時から既にここまでのところをちゃんとこう書いてある。
だから宙に書くんですね。
良寛っていうのは特に宙に書く人ですからだからここの宙のところをしっかり書いて。
間を書く。
宙に書く。
羽田さん九楊先生の教えを胸に良寛に挑みます。
当たりを大事にして。
いいねうん。
そうそうそうそう大事に。
もっと軽くもっと先だけで。
そうそうそれで十分十分。
「惜しむ」気持ちで良寛に迫りました。
う〜ん!オッケーや。
続いては九楊先生です。
この筆先が次の画を書きにいくけれどもここは宙に書いていて下にこう紙に触れたらここが形になると。
触れた時に。
宙で大きく動いてる。
だから一つの画の終わりは次の画の始まりなの必ず。
ここから次へいく…。
筆を持っていくんじゃなしに筆先が書いていきますからだから筆先に書かせてやる。
あ〜難しいですね。
自分の力で書いちゃいけないんですね。
そうそう…。
これかなり達人の文字ですよね。
良寛にどう迫れたでしょうか。
今日はせっかくですから羽田美智子さんの名前を…。
えっ!書いてみましょう。
ああ〜うれしい!用意するのは書道字典。
ふだん書かれる漢字は楷書体ですが行書体や草書体でどう書かれるかを調べる事ができる字典です。
美智子の「美しい」にもいろいろな字体があります
まずは調べたい字を字典から拾い集めました。
「集字」と言うそうです
先生一応集字しました。
うん。
やっぱり「智」をどうするかやね。
これだけ崩したらここのところはもうちょっとこう…。
普通に「日」って書いた方…。
「日」のもうちょっと省略形ぐらいの方がいいんじゃないですかね。
先生からアドバイスを頂きいよいよ書きます
おおいい。
おおっ。
私の名前が何だかちょっと立派に見えるようでした
いいんじゃない。
書き込んだら良くなりますよ。
もっと。
皆さんも自分の名前を書道字典を使って違う字体で書いてみませんか?
2015/11/17(火) 11:30〜11:55
NHKEテレ1大阪
趣味どきっ! 石川九楊の臨書入門 第6回▽良寛×貞心尼 細さと歪みの美と教え[解][字]
良寛さんと親しまれる禅僧は、漱石をはじめ多くの人々が憧れた書家。しかしその字は弱く、歪んでいる。どこにその魅力があるのか?晩年出会った弟子の貞心尼との関係とは?
詳細情報
番組内容
江戸後期の禅僧、良寛。新潟で子どもたちと手まりをついて遊び、山中で孤独な暮らしを選んだ人は、書の達人だった。一見細く、揺れたり、ゆがんだようにもみえる良寛の書。遊びやゆとりにもつながるその佇(たたず)まいの魅力とは?。晩年、まな弟子・貞心尼と出会い、良寛の教えは後世まで伝えられることに。二人の人生、人柄に書から迫る。臨書は良寛が弟へ送った「大酒飽淫」。度を超えず飲食することを諭したことばに挑戦。
出演者
【講師】書家・京都精華大学客員教授…石川九楊,【生徒】羽田美智子,【出演】国上寺住職…山田光哲,極楽寺住職…籠島浩惠
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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