木曜時代劇 ぼんくら2(4)「穏やかなる死体」 2015.11.17


(おふじ)あの世の葵さんも一人前になったあんたを見てきっと喜んでるでしょうよ。
(佐吉)おふじ様どういう事でしょうか?
おふじのひと言から佐吉が葵の亡骸を目の当たりにするはめになったと知った平四郎は葵殺しを探り直すため定町廻り同心佐伯錠之介へのもてなしをお徳に頼む事にした
(お徳)どうしたって駄目です!
(平四郎)頼むお徳!
そんな頃…
しゃんと背筋伸ばして戦うんだ!
葵が下働きのお六に付きまとっていた孫八という男を子盗り鬼騒動を利用してさんざんに痛めつけた事を知る
(烏の鳴き声)うわ〜!
(鳴き声)
(祈とう師)この人殺しの血をささげたまえ!ならば食らってやる!
(弓之助)ギャ〜!やだ!子盗り鬼〜!ギャ〜!子盗り鬼〜!おっ…!おっ…!ギャ〜!
(志乃)あなた!あっ…。
わあ〜!叔母上!子ども相手に何をしておいでなのですか。
すまん。
弓之助勘弁しろ。
やり過ぎました。
弓之助。
は…はい。
あなたもあなたです。
何のために道場で剣術を習っているのですか。
しっかりなさい!はい!叔母上。
では手習いの指南に行ってまいります。
行ってらっしゃい。
行ってらっしゃいませ。
弓之助。
平気か?…でその子盗り鬼の一件ですが。
ああ。
どうやら昔両国辺りで大層な評判をとった手妻と幻術使いの一座らしい。
幻灯機とからくり人形を組み合わせた大仕掛けが得意だったんだがそれに湊屋が大層ほれ込んで何年も後ろ盾をしてたようだ。
ではその一座はその事を恩に着て…?うん。
葵に頼まれ子盗り鬼の仕掛けを孫八相手にこなしたようだ。
だがな子盗り鬼の騒動が落ち着いた時葵はお六に言ったそうだ。
あの一座の者たちにはね前々から私のために一働きしてもらう約束をしてあったのだよ。
葵様のためにですか?そう。
私は私でああいう幻術を見せてだましたい相手がいたものだからさ。
それは一体…?だましたい相手。
それはつまりおふじさんの事でしょうか?どうだますつもりだったか分からねえがまあ多分そんなとこだろう。
そしてこうも言ってたそうだ。
子盗り鬼なぞいやしないのさ。
怖い鬼なんてここには出やしないよ。
だって鬼より怖いものが棲み着いているんだもの。
えっ?お六。
私はね幽霊なのだよ。
…葵様が幽霊?そうさ。
子盗り鬼よりもっとひどい子捨ての親でもあるのだからね。
お六はそれ以上詮索はしなかったそうだ。
どうやら葵は葵なりに佐吉の事で胸を痛めてた。
…という事なのかもしれん。
はい。
お六さんのためにそこまでするという葵さんというお人の見方を少し考え直さなければなりません。
…でその孫八という男はその後どうしたのですか?お六も詳しい事は分からねえらしいがそういう事情を抱えているのなら葵を恨んでるのは間違いねえだろう。
それで叔父上。
肝心要の事でございますがお六さんが佐吉さんを見つけた時葵さんと佐吉さんはどこでどんな格好をしていたのでしょうか?葵さんはどんなふうに倒れていたのか。
その時家にはほかに誰がいたのでしょうか?お六が言うには葵が殺された日その3日ばかり前から喉が痛いと風邪気味だった葵に煎じ薬をのむ時分だと知らせに行った。
そろそろお薬の…。
葵様…?えっ?ええっ?えっ…?…はっ!キャ〜!あっ!あっ!あ〜っ!
(弓之助)この時部屋に通じる障子は閉ざされていたのですよね?お六が開けた。
縁側に通じる障子は開いていたとお六は言ってたな。
…でまあ部屋の大きさは違うがここら辺りに小机が置いてあって。
うん…?小机小机小机小机小机。
その傍らにあの日はたばこ盆を置いていた。
そして白菊の柄の着物が衣桁に掛かっていた。
ふ〜ん…。
たばこ盆ですか。
葵がたしなんだそうだ。
風邪っぴきだったから3日ぐらい控えてたそうだがその日の朝に一服吸ったと言ってたな。
…で葵さんが倒れていたのを見つけた。
うん。
小平次。
(小平次)へい?ふんふん。
は…よいしょ。
葵をやれ。
うん?こう手拭いを巻いて足は縁側。
頭こっち。
顔は左が下だ。
こうこう…。
そして佐吉は葵の足元で腰を抜かしたようにガタガタ震えていた。
(弓之助)この倒れ方から言うと恐らく葵さんは何らかの形で庭の方を向いたところを誰かが背後から手拭いの端をつかんでグイッと引っ張ったのだと思われるのです。
えっ?ちょっ…あっ…。
グッ!あっ!ええ〜っ!この時下手人は葵さんの頭の方にいます。
うん。
あえて動かない限りは。
そうだな。
はい。
じゃよしんば葵さんが正面から襲われたとしましょう。
その場合でも…。
(小平次)うわ〜!うん!ああ〜っ!…っとどちらかに倒れ込みます。
やはり足元には行きません。
なるほど。
うへぇ。
葵さんは殺められたばかりだった。
だとするとよほどそのつもりで動こうとしない限り下手人が葵さんの足元にいるのはおかしいです。
となると下手人は…。
葵さんの住んでる家の造りをよく知っていて様子をうかがいこっそり忍び寄る事ができると分かっていた人物。
あるいは葵とふだんから親しくしていて面と向かっても怪しまれない人物。
どちらにしろ佐吉じゃねえや。
はい。
あの…もうよろしゅうございますか?ああすまねえ。
すっかり忘れてた。
うへぇ〜。
ではおふじさんはどうでしょうか?そのような事ができるお方でしょうか?できたんじゃねえか?人を使えば。
どんな人を?大勢いるじゃねえか。
奉公人が…。
湊屋の主人の目を盗みおふじさんの命令だけに従ってなおかつ葵さんの事にも詳しい奉公人。
そんな方が今のおふじさんにいらっしゃるでしょうか?それはお前…いねえか。
(ため息)孫八はどうだ?そうだ!おふじと孫八がどこかでつながっていてその2人が手を組んでやったとしたら…。
ああ!ありえます。
うん!ですがありえるというだけの話でございます。
あのな…。
あっ!何だ?叔父上。
お話の途中ですが私失礼致します。
へっ?おでこさんと約束があるのでした。
おでこと約束?何だ?約束ってのは。
その話とこの話の続きはまた後ほど。
それでは失礼致します。
はい。
ああ…!討ち入りでもするつもりか?うへぇ。
次はここですか?あいあい。
はい。
おおっ!おっ…。
その2日後定町廻り同心佐伯錠之介をもてなす日が来た
じいさん盗っ人だ!あ…?う…?盗っ人どこだ〜!?ハハハ…!お前か〜!違う違う違う違う!違う違う違う違う…!じいさん。
おいおいじいさん。
ちょっと…違う違う…。
冗談。
冗談だってじいさん。
ああ…!お前か〜!?準備万端整ったようだな。
(彦一)へい。
石和屋からも器はこのとおり借り受けられましたしあとは向島の川仙の台所で揚げ物と刺身を作るだけでございます。
屋根船の刻限にはきっちりと間に合わせやす。
ああ。
お徳よい。
…あれ?そ…それじゃ行ってくるから。
(おさん)行ってらっしゃい。
(おもん)行ってらっしゃい。
うん。
お徳。
どうしたい?えっ?いやどうもしてやしませんよ。
彦さん急ごう。
えっ?魚だってさもう向こうにとっくに着いてる頃だろうからさ。
ねっ。
へい。
(おしま)頑張っといでお徳さん!
(おさき)あんたの腕なら平気だよ!頼むぞお徳。
楽しみにしてるからな。
お徳さんすっかりあがってるようで。
あれでなかなか純だぜ。
フフフ。
おかみさん昨夜眠れなかったみたいです。
何だってあんたにそんな事が分かるのよ?だって夜中に厠に行ったもの。
うそばっかり。
私だって昨夜は眠れなかったからあんたが起きたら気付いてたわよ。
うそなんかついてないもの!うそだもの。
ついてないもの!ついてるもの!お前ら。
鍋見なくていいのか?いけない!ハハハ…。
鍋焦がすなよ。
釣り銭間違えるな。
仲よく留守番するんだぞ。
(2人)は〜い。
そのころ芋洗坂では…
後は…。
へい。
行ってらっしゃいまし。
親分!大変だ!大変だ!親分!何でえ何でえどうしたい?えっと…!あの…!
(杢太郎)晴香先生!晴香先生!
(晴香)杢太郎さん?先生!おはつ坊を知りませんか?おはつちゃん?おはつ坊のおっ母さんがおはつ坊がまだ帰らねえって言うんですよ。
おはつ坊はきちんとした子だ。
寄り道なんかするはずがねえってのに。
そうですね。
心配です。
私も捜します。
はい。
あっいや!先生はここにいて下さい。
あんまり騒ぐのもよくねえ。
まずはあっしが捜しますんで。
じゃ!おはつ坊どこだ?おはつ坊…。
親分!おう杢太郎。
豊助んとこのおはつがいなくなったってのは本当か?へい!ど…どこを捜しても見つからないんです!もういっぺん捜してみろい。
ぐずぐずすんな!へ…へい!おはつ坊…どこだ…?おはつ坊…はあ…おはつ坊…。
おはつ坊…どこだ…?・
(泣き声)あっ…。

(泣き声)
(泣き声)おはつ坊!何してんだ?お前こんな所で…。
えっ…?こいつは…。
おはつ坊一体何があった?えっ?どうしたんだ?一体。
(泣き声)ああ…よしよしよし…。
あっ!
(杢太郎)子盗り鬼!さあおはつ坊行こう。
(烏の鳴き声)いやどうも私は怠け者のたちでして人づきあいは苦手なもので佐伯殿ともお会いするのは初めてですからどうしていいものか分からずまあこんなあんばいとなった次第で。
どうかひとつこちらの気持ちもお察し下さり芋洗坂での調べをお許し願いたい訳でして。
ハハハ…。
はあ…。

(彦一)失礼します。
(小声で)いかがで?佐伯殿。
いかがですかな?お気に召しませんかな?料理を作った者が気にしております。
なあ?彦一。
へっ?あ…へえ。
石和屋。
旦那は石和屋をごひいきにして頂いておりましたか。
いや。
へっ?器。
なるほど。
器を見た事があると。
味は…濃いめ。
へい。
旦那のおっしゃるとおりで。
石和屋では薄口しょうゆを使いますがお徳…あ…おかみは濃い口を使い慣れておりますもので。
名月椀。
へい。
卵の黄身がちょうど満月のように見えますものでこの取り合わせの椀を名月椀と呼んでおります。
なるほど。
佐伯殿は食通なのですな。
何事も見て見ぬふりをする度にうまいものを食べてきた。
ただそれだけの事です。
ちゃんとしゃべった。
(小声で)旦那!へっ?いや〜実に羨ましい。
それは芋洗坂辺りの土地柄ですかな。
いや…佐伯殿のご人徳か。
私はそういう思いをした事がとんとないので。
ハハハ…。
井筒殿。
はい?委細承知。
は…。
…しておりますので遠慮なく頂く。
はは…。
しかし下手人を捜すのは難しいでしょう。
そう思われますか?なのであの男にしておけばよろしいかと思いました。
佐吉です。
植木職人で。
そう。
佐吉。
いやいや…。
…と言われるという事は失礼ですが佐伯殿も佐吉が下手人とは思ってはおられなかった?私より湊屋が難物。
難物…と言われますと?かばっておるのでしょうから。
かばって…とは誰を?身内?フッ…。
なぜそう思われましたか?大概そういうものだからです。
美味。
あ…ありがとう存じます。
なるほど。
鯛の焼き物は半分しか食べてなかったから折詰にして土産は栗餡の茶巾絞りにして渡しといたから。
はいこれ旦那の分。
ちっとも食べてないんだからさ。
それどころじゃなかったんだよ。
何だかよく分からん男だったがあんな物分かりがいいならこんな手間ひまかけなきゃよかった。
ハハハ!そうでしょうか。
旦那がちゃんと機嫌をとったから先方も物分かりがよくなったんでしょう。
ならいいが。
どっちにしろこれで気兼ねなく動ける。
お徳彦一ありがとうよ。
恩に着る。
何をおっしゃるんですか。
これからは佐伯の旦那にもごひいきにしてもらえそうですし。
ねっお徳さん。
そうですよ。
私と旦那の仲じゃないですか!…あれ?どんな仲だろ?
(3人)ハハハ…!おいしいでしょう?こんな栗菓子は食べた事がありません。
お徳さんというお方は大層腕のよい料理人なのですね。
お前が来ると思ってな1つだけ残しておいた。
どうだ?おいしいです。
おでこさんにも食べさせてあげたいです。
おでこ?あっ政五郎のところの小者ですね。
近頃はいつも一緒にいるようだと小平次が言ってましたが本当に仲がよいこと。
おでこと何をしてるんだ?遊んでいる訳ではありません。
聞き歩きです。
政五郎に調べ物でも頼まれたのか?そうではなくておでこさんにはせっかく物覚えがいいという生来の徳があるのですからいろいろな人の話をたくさん聞いて頭に収めてみようと思ったようなのです。
ふ〜ん。
けど何で急にそんな事考えたんだ?それはつまり…。
そいつがあっしのおまんまの頂き方だと思ったのでござんす。
おまんまの頂き方ですか?はい。
あっしは政五郎親分のところにやっかいになってる身でござんす。
昔の出来事をたくさん聞き覚えてそらんじる事ができるようにしておけばそれが捕り物の役に立つ事もあるでござんしょう?力がなくても親分の手下としてもっともっと立派にお役に立てられる。
それがあっしの生きる道。
そう思いついたのでござんす。
ご立派です。
そのとおりです。
おでこさん。
そうか。
それでお前も手伝ってるのか。
はい。
おでこさんも物事を覚える事柄が増えてくると引っ張り出すのに暇がかかるようになります。
そうなる前に私が誰からどんな話を聞きそれがいつごろの事だったのかまあ目録のようなものを作る事にしたのです。
また親分によっては…。
帰れ帰れ!忙しいんだよ!この!うわっ!おおっ!
(弓之助)頭からバカにしたりからかったりする人もいます。
えいっ!うわ…。
そういう時も私の出番です。
えいっ!うわっ。
えいっ!うん。
大いに結構だ。
お前ら2人とも大したもんだ。
あ…それはそれとして叔父上。
うん?佐伯様はどう仰せでしたか?私はそれを伺うために朝早くから参ったのです。
佐伯殿は葵を殺めた下手人を捜すには湊屋が一番の難物だろうと言ったよ。
つまり湊屋が本当の下手人をかばっているとな。
では佐伯様はおふじさんを疑っておいででしょうね。
本妻とお妾の争いと割り切って考えている。
め…妾ってお前…。
あ…おでこさんと古い話を聞き歩いておりますと大抵もめ事はお金か色事と決まっております。
佐伯様もお役人ですからそう思って当然です。
俺もなおふじが本当の事を知っていたんじゃねえかと思ってる。
おふじは葵が生きてる事を知っていてわざとらしく佐吉に昔の一件を打ち明け…。
おふじは葵を殺す。
佐吉は鼻っ面に葵の亡骸を突きつけられ湊屋は大事に隠してきた葵を失う。
おふじは万々歳。
どうだ?筋が通ってるだろ。
孫八はどうなるのですか?まずはおふじ。
次が孫八。
なっ?どちらにしろその事は湊屋さんに確かめてみるほかありませんね。
もっとも素直に白状するかどうかはともかくと致しまして。
叔父上。
それよりも前にまっさらにして考えてみてはいかがでしょうか?…まっさら?推察される下手人という「人」ではなく「事」を見るのです。
「事」?そうです。
実際に起きた事柄の方です。
言ってる事が分かんねえな。
私が言っているのは葵さんが殺された時の様子葵さんの亡骸の様子がとてもこざっぱりしているのが気になるという事なのです。
こざっぱり…。
あ…言われてみればこざっぱりしてたような…。
そうだよな。
覚えちゃいねえよな。
おふくろの亡骸が目に飛び込んできたんだからな。
ですが衣桁に掛かった白菊の着物があったと。
へい。
掛かった着物が風にこう揺れて…。
衣桁は倒れちゃいませんでした。
…でおふくろの亡骸はただ横たわっているようで…。
ほかには?言ったと思いますが匂いがしました。
お香のような甘ったるいいい匂いが。
あとはあんまり…。
(お恵)旦那。
そのくらいで堪忍してやって下さい。
その事を思い出す夜は夢に出てきてうなされてしまうんです。
佐吉さん…。
う〜んう〜ん。
なんだよ〜。
どうしてだよ〜。
う〜んう〜ん。
なんだよ〜。
そいつは悪かったな。
役人に聞くのが一番いいんだが苦手でな。
のっそりとしてて口が重い男でよ。
これが…。
そうだ。
白玉を作ったんです。
お食べになりますか?頂こう。
弓之助。
うまいよ。
白玉。
はい。

(弓之助)葵さんはもともと首に巻いていた手拭いで首を絞められていた。
座敷の中は片づいていた。
衣桁には着物が掛かっていて乱れた様子もなかった。
だから?これは下手人が葵さんの首を絞めるという乱暴な行為がとっさの事だったからではございませんでしょうか?当の葵さんも何が起きているのか分からないほど唐突な事。
葵さんが首を絞められるまでは座敷の中はとても穏やかだったのだと私には思われます。
だから?ですから葵さんに深い恨みを持つ人物が下手人であるならばもっとその場は荒れていたはずです。
例えばおふじさんなら…。
ああ〜!あっ!キャ〜!キャ〜!
(弓之助)葵さんの息の根を止める前にこれまで積もり積もった恨みの数々を面と向かってぶつけてやらねば気が済みません。
当然その場は大騒ぎ。
葵さんを踏んだり蹴ったり白菊柄の着物など投げ捨ててしまう事でしょう。
あの場で起こった「事」のありさまだけを見てみると葵さんに深い恨みを持つ人の仕業だとは思えないのです。
ですからさっぱりし過ぎていると申し上げたのです。
しかしだ深い恨みを持つ人間が人を雇ったとしたらどうだ?それならさっぱりとやってのける。
芋洗坂に引っ込む前に葵は結構手広く商売をしてたんだからよそういう敵を作ってたかもしれねえじゃねえか。
そんな敵なら湊屋さんが佐吉さんを身代わりにしてまでかばうでしょうか?あっじゃああれだ。
湊屋はやっぱり誰かをかばってんじゃなくて佐吉を下手人だと思ってんじゃねえか?はあ…堂々巡りだなこれじゃもう…。
叔父上は混乱なさっておいでなのです。
私だって同じです。
私たちみ〜んな湊屋さんとおふじさんと葵さんと佐吉さんの間に横たわっている何が起こってもおかしくない過去のうそや隠し事に目くらましされているのです。
目くらまし?その目くらましを取り払えば案外容易な事かもしれません。
そうか?何だかますます難しくなってきたんじゃねえか?面倒くせえったらありゃしねえな。
お・じ・う・え。
はあ〜。
湊屋総右衛門に会ってみるか。
とにもかくにもこのもやもやをいくらかでもすっきりさせるにはやつからいろいろ聞き出した方がいいだろう。
そう思います。
葵さんが亡くなった家を使ったらいかがですか?葵の死んだ座敷で湊屋総右衛門とご対面といくか。
屋根船は借りないのですか?何で俺が湊屋におごらにゃならん?フフッ。
平四郎は久兵衛を通じて湊屋と会う段取りをつけた
(久兵衛)宗一郎様。
珍しいねじい。
何かあったのかい?いえ大した事では…。
(総右衛門)久兵衛。
はい。
ねえさん。
(お紺)うん?ありがとよ。
(政五郎)よう!きれいにな!
(一同)へい!うん?うん?
(嗅ぐ音)
(おでこ)何かにおうのでござんすか?はい。
ここです。
(嗅ぐ音)何してんだ?お前たち。
あ…佐吉さんが…。
匂いがしました。
お香のような甘ったるいいい匂いが。
…とそうおっしゃってたもので。
お六に聞いたがここには香炉も置いてねえそうだ。
だから香の匂いじゃねえとは思うが畳が匂うのか?ええまあ…。
さてとおでこさん。
あい。
すまねえな。
親分たちにこんな事してもらって。
いやいやこれもあっしらの稼業のうち。
始終本所元町界わいを掃除しておりやす。
なあお紺。
ええ。
気になさらないで下さいな旦那。
しかし家ってのはあれだな。
人が住まなくなるとあっという間に使えなくなるものだな。
家も道具なんでござんしょうかね。
道具?ええ。
使わなくなった刃物がすぐなまくらになったり使い手のいない糸車がガタピシするのと同じこってござんしょ?なるほどな。
さてとみんなに大汗かいてもらってるんだ。
甘いものでも買ってくるか。
そいつはどうも。
腰入れてほら…。
(杢太郎)あっ旦那。
よう。
畑仕事かい?まあそんなようなあんばいで。
旦那今日は?なにちょいとした集まりがあってな。
一晩限りだが葵の家を借りる事になったんだ。
親分がいたらひと言挨拶しとこうと思ってんだが。
親分はお出かけになってます。
そうかい。
俺たちの事は親分から聞いてるな?はい。
井筒の旦那の邪魔をしてはならんと佐伯様から…あっいやあの…親分からそうお言いつけだと聞かされました。
すまんな。
お前らの縄張りを荒らすようなまねはしねえからこらえてくれ。
いいんですよ。
親分もどう転んだってこっちの損にはならねえんだからって言ってましたから。
ヘヘヘ…。
お前はいい男だぜ。
えっ?いや。
ヘヘヘ…。
けどあの家で集まりをしなさるっておっしゃってましたが…。
ああ。
旦那のようなお役人ばかりですよね?…でもねえが何で?お子たちもいますか?ああ集まりには出ねえが今掃除してるからな。
そいつはいけませんや!あの家にお子たちを近づけちゃならねえ!うん?ああ…。
あの子盗り鬼が出るとかいううわさの事か?いやうわさなんかじゃありませんて旦那!出たんですよ。
つい先だって。
子どもが1人いなくなってあっしらあおくなって捜し回ったんですから!何?ああ。
何か御用で?私法春院で手習いの師匠をしております晴香と申します。
今し方表を歩いておりましたら何やら物音が聞こえましたので。
あっしらはこちらに住んでる方の縁者の者でして後片づけに来ております。
どなたかがお住まいになるのではないのですか?あ…いえ。
そうですか。
私もこちらにお住まいだったお六さんの娘さんたちに手習いを教えていたのですが…。
葵さんが急に亡くなるなんて大変残念な事です。
(嗅ぐ音)坊ちゃん。
…坊ちゃん!あ…いい匂いです。
おねえさんもおきれいです。
ありがとう。
(杢太郎)さあ旦那。
おう。
あとこれです。
ありがとよ。
あれは多分子盗り鬼が家ん中が空っぽになっちまったんで外に出て悪さをしたに違いねえんだ。
ああ…。
その子は今どうしてるんだ?何があったかもどんな目に遭わされたかも一切しゃべっちゃくれなくなって今は手習いもやめちまって家から出なくなったんです。
夜泣きもするって話で。
うん…。
しかし子盗り鬼が子どもの首を絞めるもんかな?う〜んでも…。
まああれだ。
そのおはつって子の様子をよく見てやる事だな。
時がたてばよくなる。
また外にも出られる。
そうなったらお前が細かい事を聞いて子盗り鬼をとっ捕まえてやりゃあいい。
子盗り鬼が捕まりますか?人に仇なすものなら人の手で捕まえられるって相場は決まってる。
またな杢太郎。
へい。
子盗り鬼か…。
まるでもののけの親戚だな。
へい。
さて湊屋総右衛門から平四郎はどのような話を聞く事になるか。
果たして総右衛門はおふじをかばっているのか。
はたまた別の何かが裏にあるのか。
真相はいかに…
(弓之助)「通りもの」の仕業ではないかと考えております。
「通りもの」?顔は仏でも心は夜叉。
湊屋さんの血筋ならお得意だろ?
(久兵衛)旦那様とおふじ様の間にある事情がございます。
(佐吉)甘ったるいいい匂いが白菊の着物からの匂いじゃなかったような…。
まさか…。
葵さんを手にかけた下手人に出くわしたのでしょう。
あんたを殺したのは誰だい?2015/11/17(火) 14:05〜14:50
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ぼんくら2(4)「穏やかなる死体」[解][字][再]

宮部みゆきの時代劇ミステリー「ぼんくら」シリーズ第2弾。個性豊かなレギュラー陣に加え、新たなキャラクターも続々登場。ミステリー色も一層濃くなり、満足度倍増です。

詳細情報
番組内容
同心・佐伯錠之介(嶋田久作)をもてなし、葵(小西真奈美)殺しを調べなおす許しを得た平四郎(岸谷五朗)は、おふじ(遊井亮子)や孫八(なだぎ武)ら、葵に恨みを持つ人物を疑う。だが、弓之助(加部亜門)は葵殺しの現場があまりにも整然としていたことから、この事件は、何かの間違いで起こったとっさの犯行によるものではないかと推理する。平四郎は鍵を握るもう一人の人物、湊屋総右衛門(鶴見辰吾)と会うことにする。
出演者
【出演】岸谷五朗,奥貫薫,風間俊介,秋野太作,志賀廣太郎,小西真奈美,遊井亮子,西尾まり,村川絵梨,黒川智花,なだぎ武,螢雪次朗,嶋田久作,鶴見辰吾,大杉漣,松坂慶子,【語り】寺田農
原作・脚本
【原作】宮部みゆき,【脚本】尾西兼一
音楽
【音楽】沢田完

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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