(土門薫)被害者は藤木徳太郎。
骨董品の収集家として有名だったらしい。
(乾健児)花瓶みたいですよ。
きっと凶器ですね。
だとしたら…。
こっちは?
(乾)犯人と争った時に割れたんじゃないですか?そこに飾ってあったのかなぁ。
(榊マリコ)傷は頭に1つだけよ。
やっぱりこれで撲殺されたんだ。
死亡推定時刻は?死後硬直は完全に解けてる。
死斑も完全に消えてる。
(乾)エアコンは25度に設定されています。
だとすると…死後90時間以上。
今が7月21日の12時だから…7月17日の午後6時より前か。
エアコンがずっと効いてたらの話よ。
発見者は?
(鳴澤栄一)いえエアコンには触ってません。
そうですか。
古美術ということはこちらにあるものはすべて鳴澤さんが…?いえ。
藤木様と取引のある同業者は他にもおりますので私はこちらと…。
こちらをお求めいただきました。
(乾)これって高いんですか?各山ですから。
かくざん?江戸時代の著名な陶芸家です。
こちらも各山の作です。
これが…。
裏に各山の銘があります。
ほう…。
「各山」…本当だ。
それが無事だったのがせめてもの救いです。
あ…こちら私が引き取ることは可能でしょうか?そういうことは遺族と相談してください。
(鳴澤)そうですね。
失礼いたしました。
ところで鳴澤さん。
今日はどうしてこちらに?私は今日この各山の様子を見に伺いました。
売ったあともそういうことをされるんですか?はい。
保存状態が気になりますので。
え…でも買ったらその人の自由なんじゃ…。
美術品の所有という行為はかりそめなんです。
かりそめ?次の世代へ受け継ぐ間の一時的な行為よってそれをどう保存するのか所有者には責任があります。
あの…これとそれお売りになったのはいつですか?あぁ…ともに7月の15日に納品しました。
つまり1週間前ですね?はい。
その間こちらには?いえ出張していたもので…。
(乾)出張?骨董屋さんが?ええ。
唐津で業者の競り市がありましてね。
唐津というと佐賀県ですよね?はい。
1週間にしては荷物が少なくないですか?いえいえ唐津は2泊だけです。
つまり19日から今日までで?
(鳴澤)はい。
ちなみに18日より前は?東京にいましたね。
忙しいですねぇ。
東京も業者の競り市ですか?いえ銀座の美術館で展示品の刀剣の手入れを。
東京はいつからいつまでですか?15日の夜から18日までです。
では今日は唐津から京都に戻り次第こちらへ?はい。
訪ねる前に何度か電話したんですがお出にならなくて…。
来てみたら玄関の明かりはついたままドアには鍵も閉めてないという有り様で気になって入ったら…。
(風丘早月)じゃ開きましょうね。
室温が25度に保たれていたとして脳と内臓の死後変化から見て…死後90時間以上。
あなたの見立てどおり。
ということはやはり死亡時刻は17日の午後6時より前。
この日は骨董屋さんが被害者の家に商品を届け被害者はその夜知人に自慢しています。
知人が帰ったのが深夜0時過ぎ。
つまり被害者はこの日までは生存していました。
よって死亡時刻は16日から17日の午後6時までです。
(榊伊知郎)わかった。
美貴ちゃんは被害者の服から微細物の採取。
(土門美貴)はい。
日野君と乾君はこっちを頼む。
(日野和正・乾)はい。
私はと…。
所長はこの鑑定をお願いします。
被害者の爪から採取された微細物です。
了解。
よし始めよう。
(一同)はい。
所長。
はい。
ちょっと調べてもらいたいものがあるんですけど…。
変わったにおいしません?
(日野)この破片から被害者のものと鳴澤栄一という古美術商の指紋が検出されました。
でおもしろいのがこれ。
釉薬の下に指紋があった。
ということは釉薬をかける前についた…。
おそらく作者の指紋だね。
各山といえば江戸時代の陶芸家だ。
すごい!まあ事件そのものとは関係ないことですけど。
えー…被害者の爪から採取された微細物からこんなものが出た。
動物の骨たぶん牛の骨だ。
なんでそんなものが被害者の爪から…?うーん…。
(美貴)被害者の服ですが変わったにおいがしたんで所長に調べてもらったんです。
それを調べたのがこれ。
ここまでがウコンの成分でここから下がシソの成分だ。
ウコンはターメリック…カレーの香辛料ですね。
被害者は殺される前にカレーを食べたのかね?シソの入ったカレーなんてあります?うん専門店なら。
あっもしかしたらフォーかも。
フォー?
(日野)うん。
ベトナム料理の米でできた麺類。
骨つき肉とターメリックとシソを使ったフォー。
あぁ…だから牛の骨の粉が爪に入った。
まあ確かにウコンやシソにはにおい消しや防腐効果があるからね。
肉料理にはよく使われる。
でも料理を食べたからってその材料が爪に入る?あっ!ということは被害者本人が料理をした!いや現場にそんな形跡はなかったよ。
つまりそういう犯人と接触した。
じゃあ犯人はカレーかフォーの料理人だね。
その手のお店調べてみます。
凶器の鑑定は?あぁ…被害者の傷の形状から見て凶器はこれに間違いありません。
(伊知郎)凶器から指紋は?まあこの割れた破片全部調べてみましたけど出た指紋は被害者のものだけでした。
えーちなみにこんなサインが…。
一番最後のページ見てください。
江戸時代中期の陶芸家岩井泡松の作品のようです。
この岩井泡松を売った業者が判明した。
300万で売ったそうだ。
300万…。
そんなものを凶器に選ぶとはな…。
つまり犯人は骨董の価値がわからない人物。
またはそう思わせたい人物…。
え?これ本物だと思うか?だって300万でしょ?もちろん売った骨董屋は本物だと言っていた。
気になるならサインから筆跡鑑定できるわよ。
いや専門家に訊いてみようと思っている。
ごめんください。
(和泉理子)いらっしゃいませ。
鳴澤さんいらっしゃいますか?あぁ先生は今は…。
(鳴澤)和泉君あれを…。
はい?中島様に「あれ」を。
「あれ」?
(中島)もしかして平光のいいのが入ったとか?いえ中島様がもっとお好きな…。
まさか…時光?あ…すぐにお持ちします。
忙しそうだ。
外で待っていよう。
鳴澤さんを疑ってるの?だからわざわざ第一発見者に会いに来たんでしょ?彼が自分の売った各山とかいう骨董の話をした時…。
それが無事だったのがせめてもの救いです。
(土門の声)あの茶碗も割れるところだったと言わんばかりだった。
あれが割れた時現場にいたのかもしれん。
考え過ぎじゃない?割れた陶器を見たから純粋にあの茶碗は割れなくてよかった…そういう意味でしょ?現場には他にも高そうな陶器が山ほどあったろう?あれだけを無事だと喜んだのには意味があるはずだ。
それは自分が売った品だからじゃない?そうかなぁ…。
(中島の笑い声)じゃいつものとおり自宅の方へ。
心得ております。
ありがとうございました。
あのお忙しいところ…。
この時光中島様喜んでおられましたね。
バカもん!お前はここに来てもう4年だろう。
…はい。
にもかかわらずお前はお得意様を前にして私に「あれを」と言われてなんのことかわからなかった。
つまりお前はお得意様の好みをまったく覚えてないということだ。
すいません…。
そんな人間にこの仕事は務まらん!すいません…すいませんでした!あの…。
京都府警のものですが。
どう見ても本物の泡松ですね。
破片だけでわかるんですか?わかるんですよね?もうよろしいですか?もう一つ。
あなたは18日に東京から京都に戻られた。
ええ。
で翌日はもう唐津へ…。
何時頃ですか?東京から京都に着かれたのは。
駅へ着いたのが夕方でしたね。
4時頃だったか…。
それ証明してもらうことは難しいですよね?これはいったいどういう趣旨の質問かな?いえ手続き的な質問で皆さんにお訊きしています。
私が東京駅で新幹線に乗るまで銀座の美術館の館長さんが見送ってくれました。
ほう美術館の館長さんが…。
そうです。
もうよろしいですか?厳しい世界なのねぇ。
え?だってさっきの鳴澤さん…。
そんな人間にこの仕事は務まらん!よくわからん世界だ。
で疑いは晴れた?鳴澤も知ってたようだな凶器が本物の骨董だと。
…みたいね。
もし彼が犯人なら本物だと知ってて凶器にしたってことだ。
まだ疑ってるの?彼にはアリバイがあるのよ。
15日の夜から18日の午後まで東京にいたってやつか?そう。
でも殺されたのは16日から17日の夕方まで。
東京と京都は5時間で往復できる。
アリバイにはならん。
ただいま。
(日野)あぁおかえり。
どうしたの?いやこれなんですけど…。
現場で割れてたもう一つの陶器。
あぁ各山とかいう陶芸家の作品なのよね。
(乾)これがその作品集です。
あれ?これはサインじゃないの?
(乾)各山って自分が作った作品には落款を押すみたいです。
この中にねサインしてある作品は一つもないんだよ。
じゃあ…これは偽物?その話を今してたんです。
(伊知郎)おーいちょっと見てくれ。
(伊知郎)これじゃないか?ほら。
「阿南各山」…。
これも各山なんですか?去年徳島の阿南で各山の陶器が大量に発見されたんだ。
それをちょっと思い出してね調べてみたんだ。
(乾)あれ?ほら似てますよ。
(日野)うん…筆跡鑑定してみよう。
ここに「真贋について」ってありますけど…。
うん。
阿南各山は最近まで本物か偽物か論争が起きてたんだ。
で7月16日学会が出した結論がこれだ。
(乾)「各山は元来歪みの少ない陶器で贋作が作りやすい」「通常古い陶器には生活痕があるが阿南各山にはない」
(美貴)生活痕?昔の人が生活で使った時にできた細かい傷だ。
「それこそ我が学会が阿南各山を贋作とする大きな理由である」…ってことはこれは偽物?まあ学会はそう結論づけたようだね。
一般にはあまり知られてないけども最近の美術界ではビッグニュースだったらしい。
同じものですねこの筆跡。
へぇー…。
じゃこれやっぱり阿南各山だったんだ。
ということはこれは各山の贋作。
じゃああれも…。
調べてみたらこれも阿南各山だった。
鳴澤が被害者に売ったのはどっちも贋作だったってわけか。
でも贋作だと発表されたのは7月16日よ。
鳴澤が被害者に阿南各山を売ったのはその前日。
ともに7月の15日に納品しました。
そう贋作だとわかる前。
贋作だとわかればもめる理由になるな。
だからこれが現場で割られたのかもしれん。
だとするとやはり殺したのは鳴澤か…。
殺されたのは16日から17日の間だったな?17日の午後6時まで。
16日に阿南各山が贋作だと発表されたら被害者ならその日のうちに知るはずだよな。
でしょうね。
有名な収集家だったみたいだから。
それで鳴澤を呼び出してもめて殺された…。
でも鳴澤さんは15日の夜から18日の午後までずっと東京にいたのよ?その間東京を抜け出して被害者の家に行ったかどうかそれを調べるのが先決だ。
先生は今外出中で…。
そうですか。
ではあなたに。
はい?鳴澤さんは15日の夜から18日の午後まで東京に出張に行っていたとか。
ええ銀座の美術館に。
その時彼は途中で一度京都に戻りましたか?いえ。
私はずっとお店で留守番してましたけど…。
ということはこの店に来なければあなたにもわかりませんよね?鳴澤さんが戻っていたかどうかは。
あの…なんの質問なんですか?いえ。
お邪魔しました。
あっあなたにはまた話を聞くかもしれません。
失礼します。
あっ…。
何か?私はたぶん今日でここにはもう…。
辞めるんですか?
(理子)向いてなかったんです私この仕事に…。
何かあったんですか?昨日先生に100万円渡されたんです。
100万円…?初めて一人で仕入れを任されたんです。
すごいじゃないですか!100万円分も。
うれしかったです。
それで昨日業者市へ…。
あ…業者の競り市場です。
そこで何点か仕入れました。
へぇー…よかったら見せてください。
それが今朝になってそれを全部売ってこいって言われて…。
え?さっき別の業者市へ行って全部売ってきました。
なるほど。
それがこれですか。
しかし合計60万2000円とありますが…。
たったひと晩で40万円も…。
私の目利きが悪いせいで鳴澤先生に大損させました。
合わせる顔がありません。
…おかえりなさい。
(鳴澤)何かご用ですか?お邪魔しています。
鳴澤さん…。
先生!すいませんでした!おぉどうだった?すみません!お店に大損害を与えてしまいました!今日のことを忘れるなよ。
みんなこうして目を磨いていくんだ。
いい勉強になったな。
あぁ何か用だったかな?あ…いえ。
失礼します。
いい先生ね。
厳しいとこもあるみたいだけど。
でも疑ってるのね?鳴澤は15日の夜から18日の午後までずっと東京…。
そう16日から17日の夕方までに京都で殺人は無理よ。
完璧過ぎるアリバイだ。
かえって怪しいって口ぶりね。
あの見習い女が共犯なら先生のアリバイをでっちあげたとしても不思議じゃない。
彼女まで疑うの?出張したのは銀座の歴史美術館だったな?とことん付き合いましょう。
鳴澤さんがこちらに来られたのは15日の夜ですね?
(館長)ええ夜8時頃お見えになってその日は10時近くまで打ち合わせを。
それから18日までずっとこちらに?ええ18日の昼過ぎまでずっと。
その日東京駅で彼が新幹線に乗るまで見送られたとか。
ええ。
本当にお世話になりましたから。
あの…昼間新幹線が走ってる時間に彼が5〜6時間いなくなったなんてことは…。
(学芸員)まさか。
朝8時に美術館に入って途中食事は挟みましたが夜11時過ぎまでずっと作業されてましたよ。
たまには銀座で飲みましょうと誘っても刀の手入れには体調管理も大事だからと。
本当にまじめな人で。
11時過ぎまで作業をしてそのあとは?近くのホテルにお送りして…。
その繰り返しでした。
だとすると京都への移動手段は車だけよ。
朝8時までに東京に戻るのは無理か…。
でも時間がかかるんですね刀の手入れって。
3日間休まずになんて。
何せ60振りですからね。
それに鳴澤さんのやり方は特に時間がかかるんで。
(学芸員)まず鞘を払って目釘を抜きます。
次に刃を緩めます。
こんなふうに抜けないことも多いんで…。
これを抜けるまで何回でも繰り返します。
なるほど確かに時間のかかる作業ですね。
早くてひと振り30分。
1時間かかる刀もありますよ。
それで60振り…。
3日はかかるはずですね。
おっ…。
これですんなり抜けそうです。
刀の古い油を拭紙で拭きます。
刃に油が残っているとあとの打粉で傷がつくことがある。
この作業は入念に。
うん…いいだろう。
(学芸員)打粉を打って拭く。
これを何度でも繰り返します。
その粉原料はなんですか?砥石の粉です。
砥石の…。
あの…牛の骨の粉なんて使いませんよね?よくご存じですね。
ええ動物の骨の粉も使いますよ。
鳴澤さんが使ってた打粉はどっちですか?砥石か動物の骨か。
鳴澤さんが持ってきた打粉なら残ってますよ。
それいただけませんか?被害者の爪から見つかった牛の骨の粉です。
銀座の美術館で借りた打粉の残りです。
DNA鑑定の結果一致しました。
まさか先生を疑っているんですか!?これと同じ打粉を鳴澤さんお持ちですね?違います。
先生の使っている打粉じゃありません。
銀座の美術館で聞いたんです。
これは先生の打粉だと。
(理子)何かの間違いです。
(鳴澤)和泉君やめなさい。
(理子)でも…。
私がいつも使っている打粉と同じものです。
先生…。
それが被害者の爪から見つかりました。
私が藤木様の死体を発見した時についたんでしょうか。
いいえ。
例えばこれが付着した服を被害者が強くつかんだりしない限り爪にまでは入らないんですよ。
これは市販品だ。
私以外に持ってる人はたくさんいます。
あなたは被害者と利害関係があります。
(鳴澤)どうも目が曇っているようだな。
目が曇ってる?いい加減なものばかりを見て根本を見失う。
それを我々の世界では「目が曇る」と言います。
我々が根本を見失ってると?私が藤木様を殺すのは根本的に不可能なんですよ。
確かにあなたには完璧なアリバイ…。
逮捕はできないが任意同行の理由くらいにはなるんですよ。
そうですか。
しかし任意なら…お断りいたします。
鳴澤の容疑が限りなく濃くなったな。
待ってください。
ひどいじゃないですか先生を人殺し呼ばわりして。
先生は立派な方です。
私がもっとも尊敬する人です。
物証が出てきた以上無視はできません。
先生なら本物の泡松で人を殺したりしません。
先生は誰よりも美術品を大事にする方です。
その美術品で人殺しなんか…絶対にしません。
確かにそこは気になるとこよね。
だが物証がある。
でも彼のような人が骨董を凶器にするなんて。
自分が疑われないようにするには一番いい方法だ。
そうかしら…。
曲がったことが嫌いな頑固者。
ちょっと誰のこと?鳴澤の評判だ。
そんな人間が贋作を売ったと知れたら今まで積み上げたものが崩れてしまうだろう。
それが殺害の動機?骨董屋にとって「贋作つかみ」と言われるのがもっとも恥ずべきことらしい。
問題は鳴澤の完璧過ぎるアリバイだ。
そう。
彼は15日の夜から18日の午後までずっと東京にいた。
16日から17日の夕方までに京都で殺人は不可能よ。
なら死亡時刻をずらした可能性は?だとすると…考えられるのは現場の温度。
(乾)エアコンは25度に設定されています。
その温度をもとに死後硬直の解け具合や内臓の死後変化で死亡時刻を割り出してるからもしもっと室内を暑くしたら腐敗を早め死亡時刻を早めることができる。
うん…。
殺害日が18日なら鳴澤に犯行は可能だ。
鳴澤は第一発見者だから警察に知らせる前にエアコンの温度を戻しておくこともできるだろう。
被害者の家の電気の使用量を調べて。
わかった。
(日野)7月16日から18日の夜にかけて電気の使用量に変化があるね。
つまり16日から18日の夜まで誰かが電気をつけたり消したりしていた。
18日の夜まで被害者は生きていた?
(美貴)死亡したのは16日から17日の夕方じゃなかったってこと?
(伊知郎)7月18日夜7時頃から21日の昼12時過ぎまでまったく同じ量の電気が使われてるよ。
計算するとリビングの照明と家電の待機電源そしてエアコンを25度で使い続けるとこうなります。
18日の夜から21日の昼に発見されるまで電気のオンオフはなかった。
つまり18日の夜に殺されたってこと?その時刻なら鳴澤は京都にいて犯行は可能だ。
でもあの遺体の腐敗状況から見てそれはありえないの。
えっ?仮にこの電気をすべて暖房に使って室温を上げたとして死亡推定時刻は18日の午前6時より前。
ああ…。
ここだとしても13時間の開きがあるね。
(美貴)それにその時刻は鳴澤はまだ東京だ。
鳴澤がやったという証拠にはならないっていうことか。
彼はどうやって室温以外の方法で死亡時刻を早めたのかしら。
もう一度被害者の家を調べてみましょう。
結局何も見つかりませんでしたね。
見落としたとこないかな…。
(乾)ないですよ。
だって冷蔵庫の中まで調べましたよ。
納戸にしまってあったこんなものまで。
あっ…こういうのの中は?中ってそこまでは。
骨董品を拭く布ですかね?これは骨董品を包む布よ。
えっ?いや包むのは…。
ああこれ。
ほらこういうプチプチとかじゃないですか?それは骨董品を傷つけないため。
こっちは虫やカビを寄せつけないため。
えっ?これで虫やカビが防げるんですか?所長が言ってたでしょ?まあ確かにウコンやシソにはにおい消しや防腐効果があるからね。
あっ…これウコンで染めてるんですか?だからこの色なのよ。
そして骨董品は大抵こういう布で包まれてる。
どうして気づかなかったんだろう。
おいどうしたんだ?彼は死亡時刻を早めようとしたんじゃない。
遅らせようとしたのよ。
骨董品は大抵こういう布で包むそうですね。
ええ。
虫などを防ぐ効果がありますから。
調べたところお宅では特注品をお使いだとか。
ウコンとシソで染めあげた特注品を。
被害者の衣服に付着していた成分です。
これがウコン。
そしてこっちがシソの成分です。
お宅の布鑑定させてもらえますか?言ったはずです。
任意ならお断り申し上げます。
いえ。
強制捜査です。
和泉さん。
裁断する前は大きいんですね。
それこそ人を包めるぐらいに。
あなたの先生が特注で作った布ですね?あなたの言うとおり美術品を大事にされる方なんですね。
私がやりました。
えっ?私が殺しましたあの収集家の方を。
すみませんでした。
私を逮捕してください。
(鳴澤)失格だよ。
(理子)先生…。
お前は私ともう4年も一緒にいる。
にもかかわらずこんなことをして私が喜ぶと思っているのなら私の弟子として失格だ。
だがそれ以前に私が師匠失格だ。
お前にこんなことをさせて…すまなかった。
先生…。
まさかこれに目をつけるとは。
あなた方はたいした目利きのようだ。
それは自白ですか?私が藤木様を殺しました。
2週間前です。
藤木様はうちの店で阿南各山を見初め店にあった2作品ともほしいとおっしゃいました。
その時私は本当にうれしかったんです。
私は各山より阿南各山の方が芸術的価値がずっと高いと思ってましたから。
つまり私の目利きを認めてもらったも同然。
この世界に生きるものとしてこれ以上の喜びはありません。
でも阿南各山は各山の贋作なんですよね?贋作が真作に劣ると誰が決めたんですか?それに私は阿南各山を贋作とは思っていません。
しかし学会は今月16日贋作だと発表しましたが。
ええ。
それで東京から戻りお売りした各山の様子を見るため藤木様を訪ねたら藤木様は私の顔を見るなり怒り出して…。
まがいものは古美術界にあってはならないと…。
(鳴澤)ああっ!!
(藤木徳太郎)こんなものこの世にない方がいいんだ!やめて…やめてくれ!やめてくれぇ!!ああっ!ウウッ!
(鳴澤)ハアッハアッハアッ…。
その後あなたは店に戻りこの布を持ってまた被害者の家へ行き死体を包んだんですね。
腐敗の進行を遅らせ死亡時刻をずらすために。
この布には防虫や消臭の効果がありますから。
でもそれで腐敗を遅らせることはできないんです。
この布で包んだことで体温の低下が妨げられむしろ腐敗が進行してしまった。
結果死亡推定時刻が早まった。
あなた方が東京のことばかり訊くので驚きました。
わざわざ唐津まで行ってしたアリバイ工作無駄になったな。
あんたはその唐津から戻ってすぐまた彼の家に行き布から出したあと警察に通報した。
私に後悔はみじんもないよ。
あるとすれば…あの阿南各山を守れなかったことだ。
それでももう一つの阿南各山を守れたことは誇りに思っている。
きれいごとを言うな。
あんたはそこまで大事に思ってる骨董品を人殺しの凶器にして破壊したんだ。
ウウッ!ああ…あの泡松のことですか。
しかし泡松なんか私から見ればただの無粋ながらくた作家だ。
何?特にあの花器はひどい。
悪趣味の塊だね。
でもあれは本物ですよね?先生も認めたはずです。
本物だから価値があるなんて誰が言ったんですか?言ったはずだ。
私は私の目しか信じない!これが本物の各山。
(日野)そう被害者のコレクションの一つ。
(乾)消します。
(日野)でほら…。
釉薬の下に指紋が。
(乾)撮ります。
(カメラのシャッター音)
(日野)これで照合できるでしょ。
(美貴)うん?これは阿南各山で贋作でしょ?2つの指紋を照合して確かめるの。
(日野)こっちが本物の各山についていた指紋。
(乾)でこっちが阿南各山のもの。
特徴点を選び出します。
照合します。
一致したねぇ。
阿南各山は贋作じゃなかった。
(理子)ええ今朝知りました。
阿南各山が本物だって言ってたあなたの先生間違ってなかったんですね。
ええ。
でも本物とか偽物とか…先生はそういう目で美術品を見ていなかったんです。
それは…。
鳴澤さんが引き取りたいと言ってた品です。
彼はあなたが遺族と交渉して値段をつけろと。
私が…この阿南各山の値づけを?あなたの先生が殺した被害者の遺族です。
当然交渉は難航するでしょうが。
教えてください遺族の方の連絡先を。
本物でも偽物でも美しいものは美しい。
えっ?でももっと早く本物だってわかってたら…。
こんなことは起きなかったか。
美術品を壊されるくらいなら殺した方がいいなんて俺には理解できない。
おしゃべりあるき目です
皆さん「和ろうそく」ってご存じですか?
2015/11/17(火) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
科捜研の女9[再][字]
沢口靖子演じる京都府警科学捜査研究所研究員の榊マリコが“科学”を武器に事件の真相解明に挑む科学捜査ミステリー。
第6話「骨董品殺人!京都〜東京、不在証明の罠」
詳細情報
◇番組内容
京都市内で骨董品収集家が殺害された。土門(内藤剛志)は第一発見者の古美術商が怪しいと睨むが、彼は死亡推定時刻に京都不在という鉄壁のアリバイがあった。
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、加藤貴子、斉藤暁、泉政行、小野武彦
【ゲスト】
竜雷太、いとうあいこ ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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