「アートシーン」です。
まず初めは恐らく日本で一番有名なあのお坊さんの真実の姿に迫る展覧会からです。
愛嬌たっぷりのルックスが大人から子供まで親しまれている一休さん。
アニメや絵本に描かれたとんち話はあまりに有名ですが実は室町時代に実在した禅宗の高僧一休宗純の事です。
ずらりと並んだ一休の肖像画。
絵の数だけ逸話が語り継がれた人物。
果たしてその正体は?一休の実像を写し取っていると言われる肖像画。
何だか物言いたげな横目づかいにボサボサの不精ひげ。
かわいい小坊主とはあまりにかけ離れたイメージです。
酒や女性を愛し数々の奇行を繰り返した事から「破戒僧」とも呼ばれました。
しかし一休は多くの僧侶が権力におもねりぜいたくな暮らしをする中粗末な身なりで民衆の中に入り貧しい生活を共にしています。
一休の人柄は書にも反映されています。
「もろもろの悪をなさず善き事を行え」。
簡潔にして分かりやすい一休の教えです。
竹か藁のような筆で一気に書き上げた文字。
「墨跡の傑作」と言われています。
一休といえば晩年の奔放な行動で知られています。
77歳盲目の女性森女に出会います。
一休は森女との情愛を赤裸々につづりました。
この行動について後世さまざまな解釈がなされました。
江戸時代以降になると一休の逸話はますます人気を博します。
怪しげな笑みを浮かべた一休が持つのはどくろ。
しかも遊女の前に突き出しています。
「どんな美女でも皮膚の下は皆どくろ」。
人間の本質をユーモアたっぷりに描いた一場面です。
河鍋暁斎が描いた一休。
なんと地蔵の頭にふんどしを巻こうとしています。
一休の行動に民衆も「よくぞやったり!」とこの表情。
江戸の人々も型破りな一休さんの物語を読んで日頃の憂さを晴らしていたのでしょうか。
さまざまな逸話や創作話で語り継がれる一休宗純。
死に臨んで書き残したとされる遺偈。
「日本でこの一休の禅を誰が理解できようか」。
世の常識や戒律にもとらわれず風狂と言われた一休。
その実像に迫ります。
自由で力強い墨跡からは一休の人柄があふれ出してますよね。
僧侶でありながらお酒もやって女性も愛してっていうとても人間らしいその姿からはどんな人物だったんだろうってますます興味が湧いてきますよね。
ではその他の展覧会です。
物語性に満ちた世界で現代アート界をリードする鴻池朋子。
世の中のボーダーラインに生息する森羅万象の物語を表現してきました。
今回は「人間と野生との対話」をテーマにしています。
鴻池が手がけた新作「皮緞帳」。
幅24mにわたる大作です。
この作品にたどりつくまで鴻池は長いスランプを経験しました。
きっかけは4年前の東日本大震災。
目に見えるものへの不信感から絵を描く気力を失います。
今まで自分が作ってきたものと自分とのあり方になんか妙な違和感みたいなものを持つようになったんですね。
自分が作った作品であるのに何か実感がないような感じのものを作ってる感覚があってそうやってるうちに手が何か探してるなっていうのは分かったんですね。
新しい支持体というか絵を描くための相手方を探してるような感じ…。
それは決して白い画面ではないなって感じは分かってたんですね。
「手が何かを探している」と言う鴻池は陶芸教室に通い粘土の作品を作るようになります。
そして生まれてきたのが原始生命のような不思議な物体たち。
手の感覚を頼りとする粘土制作は作る事への情熱を再び呼び覚ましました。
その後鴻池は更にさまざまな素材を使って挑戦をしていきます。
その一つが牛の皮でした。
牛の皮をつなぎ合わせて作ったキャンバス。
鴻池はこの素材に大きなヒントを得て意欲的な制作に取り組みました。
皮の質感が生き物の生と死のリアルを伝えているといいます。
(鴻池)水をつけるとものすごく吸収していくしまるで皮膚が呼吸してるようであるし少しフカフカしてるのでドローイングすると傷をつけるような…深くえぐれますよね。
そういう感触も非常に気持ちよかったし皮膚のようであり画材のようであり生き物のようでもあるっていうものが自分にとっては一番実感を持って感じられる素材だったんですね。
作品を通して生きている実感を伝えたい。
鴻池は人間の存在を揺るがす生命力に目を向けていきます。
徳川美術館の国宝「源氏物語絵巻」。
およそ4年間の修復を経てよみがえりました。
源氏物語絵巻の全56面を公開する特別展です。
光源氏の息子薫がひそかに思いを寄せる女性浮舟を訪ねる場面です。
虚空を眺めながら待つ薫と身を伏せて思い悩む浮舟。
2人の心の隔たりが見事に表されています。
人間の内面を奥深く見つめる彫刻家舟越桂。
山のような胴体を持った人。
舟越は近年人間を異形の姿で表す事で人間存在の大きさや深さを表現しようとしています。
その真骨頂とも言えるのが両性具有の聖なる怪物スフィンクスのシリーズ。
悲しげなまなざしは愚かな戦争を繰り返す人間たちの姿を見つめています。
文豪の館で現代アートに触れてみませんか?森外記念館に現代アートの作品およそ30点が展示されています。
ちょっとピンボケ。
でもどこかで見た事があるような風景。
ピンホールカメラが捉えた不思議な光は見る者の想像力を静かに揺さぶります。
その他鮮やかな色彩のドローイングなども展示されています。
世俗的な一切に背を向けひたすら自己の芸術を探求した画家戸嶋靖昌。
40歳の時スペインに渡りグラナダを拠点に30年近く制作を続けました。
暗い色調の中で戸嶋が描いたのはグラナダに暮らす人と風土。
そこに登場するのは名もなき人々でした。
貧しくともエレガンスを失わない村の住人ミゲール。
彫刻も手がける戸嶋の表現はまるで岩から人物を彫り出してくるかのようです。
戸嶋は人間が背負う悲しみや時間の重さを描きながら生命の奥に宿る輝きを捉えようとしました。
朽ち果てていく肉体を凝視する戸嶋の目。
その姿は崇高さを感じさせます。
「アートシーン」でした。
ではまた次回。
2015/11/15(日) 09:45〜10:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“一休 とんち小僧の正体 展”ほか[字]
「一休 とんち小僧の正体」(五島美術館 10月24日〜12月6日)ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「一休 とんち小僧の正体」(五島美術館 10月24日〜12月6日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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