激しく荒れる冬の日本海。
ここは秋田県。
この時期ならではの味覚があります。
ハタハタです。
漢字では魚偏に「」と書きます。
古くから「神様がくれた生きる糧」とされてきました。
(雷鳴)もう一つ魚偏に「雷」でもハタハタ。
冬雷が激しく鳴る季節岸辺に押し寄せるからです。
この時期海の中をのぞくと…。
うわ〜すごい数!ハタハタの大群です。
あっ卵を産んでいます。
メスが一度に産む卵の数はおよそ2,000粒。
ピンポン球ほどの大きさの塊になって海藻にくっついています。
冬岸の近くにやってくるのは産卵のため。
実は大荒れの海が赤ちゃんの誕生に欠かせないといいます。
今回研究者の協力のもと巨大水槽を準備。
産卵の様子をじっくり観察することで荒波に耐える卵の秘密を解明しました!厳冬の日本海で子孫を残すハタハタ。
知られざる素顔に迫ります!
(テーマ音楽)大荒れの冬の日本海。
世界各地で厳しい自然を相手にしてきた私たちでも撮影困難な場所です。
そこで力強い助っ人に協力を要請しました。
地元のベテランダイバー金坂芳和さん。
30年以上にわたりこの場所でハタハタを撮影しています。
この海を熟知した金坂さんに案内してもらいましょう。
岸の近く水深2メートルほどの浅場です。
水温はおよそ10度。
一面に海藻が生えています。
目立つのはホンダワラの仲間。
空気の入った袋を持つのが特徴です。
これが浮きの役割を果たし海の中で直立しています。
ハタハタは好んでこの海藻に卵を産み付けるといいます。
海藻の間を探していくと…。
いました!ハタハタです。
体長はおよそ20センチ。
体にウロコはありません。
ずいぶん大きな胸ビレですね。
その胸ビレを閉じたり開いたり。
ハタハタだけにパタッパタッと動かしています。
こうして複雑な流れを巧みに捉えてひとところにとどまっています。
こちらのハタハタは砂地に半分埋まっています。
休憩中なんだそうです。
ここにもいますよ。
どこにいるかわかりますか?あっ動きました!背中の模様見事に砂地に溶け込んでいますよね。
こちらは今まさに潜ろうとしているところ。
体をくねらせてズブッズブッと。
器用ですねぇ。
あっ卵を見つけました。
すでに産卵が始まっていたんです。
ふだんは水深200メートルほどの深場で暮らすハタハタ。
産卵の時期になると岸近くの浅場にやってきます。
そして海藻に卵を産み付けるんです。
卵を産んだメスはすぐに深場へと戻ります。
一方オスは浅場にとどまり次のメスが来るのを待つといいます。
金坂さんによると今ここにいるのはほとんどがオス。
最初の産卵が終わって次のメスを待っているところだそうです。
このあと12月中にもう1〜2回産卵が見られるといいます。
私たちは次の産卵を待って撮影することにしました。
ところがその日の午後から海が荒れだしました。
金坂さんが海から上がってきました。
撮影続行は危険だと判断し引き揚げることにしました。
その後夜にかけて天候はどんどん悪くなっていきました。
そして…。
「このあと午前9時の予想天気図で低気圧中心948ヘクトパスカルです」。
12月17日。
爆弾低気圧の影響で秋田の海は大荒れとなりました。
海に出られない日が続きます。
ようやく爆弾低気圧が過ぎ去ったのは12月20日。
4日ぶりの海。
はやる気持ちを抑えて潜ります。
すると…。
うわ〜!卵がたっくさん!どの海藻にもびっしりと産み付けられています。
よく見ると一つ一つ色が違います。
中にはこんな鮮やかな色をしたものもあります。
詳しい理由はまだわかっていませんが親の食べ物に関係があると考えられています。
でも…辺りを見渡すとハタハタの姿はありません。
産卵を終えてオスもメスもみ〜んな深場へ帰ってしまったようです。
え〜っ!そんなぁ!ああ〜漁師さんたちも網を片づけています。
どうやら漁のシーズンは終わってしまったようです。
狙っていた産卵の現場には立ち会うことができませんでした。
え〜っちょっと待った!あヒゲじい来ましたね。
はい!もうすっごく期待してたのに産卵が撮れなかったとは残念ですなぁ。
いや〜やっぱり自然には勝てませんね。
でもね産卵の様子を捉えたとっておきの映像があるんですよ。
えっそうなの?はい。
金坂さんが30年にわたり撮りためた映像からお見せしますね。
はいはい。
こちらです。
うわ〜ハタハタがいっぱい!はい。
運が良ければこんなふうにオスとメスが入り交じった大群が見られます。
へえ〜!こちらはメスです。
おなかがパンパン!卵が詰まってるんですな。
そうなんです。
みんなね産卵する海藻を目指してぐんぐん泳いでいくんですよ。
ほうほうほうほう。
そしてほら産卵が始まりました。
うん?どれどれ?あっホントだ!はい。
メスが卵を産むとオスが集まって受精させます。
いや〜壮観ですなぁ。
でしょ?でも冬の日本海は荒れた日が多いためこの瞬間に出会えることはめったにありません。
金坂さんですら30年の経験の中でたった3回なんだそうです。
そうなんだ。
それは貴重ですなぁ。
あでもどうしてハタハタはわざわざ荒れた冬の日本海で産卵するんですかね?おっヒゲじい鋭い!1つには冷たく荒れた海なら卵を食べてしまう他の魚の活動が鈍いからだと考えられています。
そしてもう1つ荒波でかき混ぜられた海は水中の酸素が豊富になり卵の成長に良いからだという説もあるんです。
なるほど!冬の日本海はハタハタが産卵するのにハナハダ良い環境というわけですな。
なんて!第2章では巨大水槽を使って産卵を撮影。
荒波の中を耐える卵の秘密を探ります。
毎年冬秋田で水揚げされるハタハタはおよそ1,000トンにも上ります。
でも1960年代にはもっととれていました。
2万トンを超える年もあったんです。
ところが1970年代後半以降漁獲量が激減。
2,000トン以下になりました。
さらにそのあとも減少を続け1980年代後半には全盛期の200分の1にまで落ち込んだんです。
原因は産卵にやってきたハタハタをとりすぎたことでした。
当時秋田県水産振興センターでハタハタの研究をしていた杉山秀樹さん。
漁を続けるためにはハタハタの保護が必要だと考えました。
そして漁師さんたちに3年間の禁漁を呼びかけたんです。
…というふうな言い方はしてましたね。
漁師さんたちは納得し1992年禁漁に踏み切ります。
そして…。
1995年漁が再開。
やった〜!たくさんとれています。
以来厳しい漁獲制限などを行い順調に水揚げ量を増やしています。
さらに地元の水族館では今年から人工ふ化させた稚魚の放流会を始めました。
子どもたちにハタハタを身近に感じてもらおうという取り組みです。
絶滅の危機を乗り越えたハタハタ。
いつまでも秋田の海で生きていってほしいですね。
冬の日本海で浅場の海藻に産み付けられたハタハタの卵。
第2章では荒波に耐える卵の秘密に迫ります。
私たちがやってきたのは秋田県水産振興センター。
この巨大水槽を使って産卵の様子を詳しく観察します。
まずハタハタが卵を産み付ける海藻ホンダワラを設置。
そして100トンの海水を流し込んで準備完了です。
そこに主役のハタハタを放します。
ハタハタが弱らないようバケツリレーで素早く運びます。
今回用意したのはオス・メス合わせて700匹。
産卵にやってきたハタハタを捕獲しこの日のために飼育していました。
うわ〜!メスのおなかは卵でパンパン。
今にも産みそうです。
この水槽の監修はハタハタ研究歴12年の甲本亮太博士。
甲本博士もこんなに大規模な試みは初めてだと言います。
(スタッフ)産卵してくれそうですか?カメラマンは交代しながら24時間態勢で見守ります。
さらに最新のロボットカメラも配置しました。
さああとは産卵を待つのみ。
期待が高まります。
でもなかなか産んでくれません。
そして3日目。
ついに産卵を捉えました!こちらがメス。
なんだかソワソワしている感じです。
あっ産みました!卵はプリップリ。
もう一度見てみましょう。
おなかに力を入れるメス。
そして…。
口を大きく開けて一気に卵を出しきります。
卵の下にいるのはオス。
受精させているんです。
ハタハタが産卵する瞬間がこれほど鮮明に撮影できたことはほとんどありません。
よく見ると他のメスも次々産卵しています。
画面中央のメス。
しきりに海藻におなかをこすりつけています。
こうしてちょうどいい場所を探っているようです。
そして…。
産みました!達成感に満ちあふれた表情に見えますね。
メスが産卵するとすぐにオスたちが集まってきて受精させます。
そして今回研究者も見たことがなかったメスの驚くべき行動を撮影することに成功しました。
それがこちら。
産卵直後のメスが卵のほうへ戻っていきます。
そして卵に口先を押しつけ始めました。
口や体を使って何度も卵を押しています。
こうして卵をしっかりと海藻にくっつけ波にもまれても外れないようにしているようなんです。
メスのおなかから出たばかりの卵は一粒一粒がゼリー状の物質でつながっています。
このゼリー状の物質は水に触れると縮みながら固まります。
この時海藻を巻き込みしっかりとくっつく仕組みになっているんです。
もう一つお母さんの工夫もわかりました。
それは卵の塊を丸い形に整えること。
ほら口先を使って器用に形を整えていきます。
丸い形にすると水の抵抗が少なくなり海藻から外れにくくなるからだといいます。
だから波にもまれてもバラバラにならないんですね。
独特な構造とお母さんの一手間のおかげで卵は荒波の中をすくすくと成長していきます。
第3章では赤ちゃんが誕生!春深場に旅立つまで密着です。
荒波の中で育つハタハタの卵。
この時ゆりかごになってくれるのがホンダワラの仲間です。
1つ50グラムほどの卵の塊が鈴なりになっても倒れません。
ホンダワラが持つ浮きのような袋のおかげです。
こうして倒れないで適度に揺れることで卵の塊はまんべんなく新鮮な海水に触れることができるんです。
ところが近年環境の変化などでホンダワラが少なくなる傾向にあります。
年によっては卵を産む場所が足りなくなる事態が起こっています。
そうなるとハタハタは他の海藻などに産卵するしかありません。
例えばこちらアマモの仲間。
卵の重さに耐えきれず倒れてしまっています。
これではゆりかごにはなりません。
それに波にもまれまっすぐな葉から卵が外れてしまうこともあるんです。
こちらは2012年に撮影された映像。
大量の卵が浜辺に打ち上げられています。
ホンダワラが少なかった上に大量のハタハタがやってきたため引き起こされました。
夜。
打ち上げられた卵のところへタヌキがやってきました。
卵を食べています。
こちらでは波間に漂う卵を海鳥が食べています。
ハタハタが命をつないでいくためにもホンダワラが茂る豊かな海であってほしい。
そう願わずにはいられません。
2月。
ハタハタの大産卵から2か月がたちました。
地元のベテランダイバー金坂さんと共に海の中の卵の様子を見に行きます。
あっ卵が透き通っています。
そして中にいる赤ちゃんの目が見えています。
動いている赤ちゃんもいますね。
ふ化が近づいているようです。
出てきました!次々と元気よく飛び出します。
赤ちゃんの体長は1センチほど。
ホンダワラのゆりかごですくすくと育てられたおかげで生まれたてでもしっかり泳いでいます。
赤ちゃんが集まってきました。
うわ〜たくさん!こうして大きな群れを作りホンダワラの森の周りで成長していきます。
ふ化から2か月。
秋田の海は春を迎えました。
成長したハタハタの子どもたちを見つけました!大きさは3センチほど。
もう大人と同じ大きな胸ビレが備わっています。
でも水温が上がるこの時期子どもたちを襲う肉食の魚の動きも活発になってきます。
その敵から逃れるように間もなく子どもたちは深場へと旅立ちます。
そして2年後産卵のため浅場に戻ってくるのです。
冬激しく荒れる秋田の海にやってくるハタハタ。
荒れた海こそが我が子の成長のために欠かせない条件でした。
そして卵を産み付ける海藻がゆりかごとなっていたのです。
荒波と海藻に支えられハタハタは新たな命をつないでいきます。
突然海の中に現れたハートマーク。
一体何?実はこちらタツノオトシゴのオスとメス。
カップル誕生の瞬間です。
いや〜アツアツですね。
1か月後愛の結晶が誕生します。
おなかがパンパン。
赤ちゃんが産まれようとしているんです。
呼吸が荒くなってきました。
おなかにぐっと力を込めます。
産まれました!親そっくりのかわいい赤ちゃんです。
「頑張ったね〜ママ」と言いたいところですが違うんです。
出産していたのはなんとパパ!タツノオトシゴの仲間はオスがおなかで子どもを育て出産する世界唯一の生きものなんです。
でも一体なぜ?取材班は4か月にわたり珍魚タツノオトシゴに密着。
その奇妙な愛の物語を世界で初めて明らかにします。
(テーマ音楽)私たちがタツノオトシゴの観察にやってきたのは日本海鳥取の海。
切り立った崖が続く浦富海岸です。
ダイビングガイドの山崎英治さん。
タツノオトシゴの不思議な生態に魅せられ5年前から観察を続けています。
山崎さんの案内で早速タツノオトシゴを探しに行きます。
岩だらけの地形は海の中まで続いています。
うわ〜アジの大群です。
ハマチもやってきました。
海底に点在する岩の塊は「根」と呼ばれます。
タツノオトシゴはこうした根に生える海藻に暮らしています。
山崎さんが早速見つけたようですがどこにいるかわかりますか?答えはここ。
タツノオトシゴは体長7センチほど。
不思議な形ですがこれでもれっきとした魚の仲間です。
体じゅうについたモジャモジャ。
海藻が生えてしまったわけではありません。
「皮弁」と呼ばれる皮膚の一部です。
形だけでなく色も周囲の環境に溶け込んでいます。
タツノオトシゴは「かくれんぼ名人」なんです。
ではそろそろホントに魚だという証拠をお見せしましょう。
まず背ビレはどこにあるかというとここです。
胸ビレはこの辺り。
拡大してみると確かにヒレがありますよね。
でももはやヒレと呼べなくなってしまったものもあります。
こちら尾ヒレはすっかり形を変え尻尾になっています。
この尻尾を海藻に巻きつけ潮に流されないよう体を固定。
海藻に紛れて過ごしながら食事をします。
スポイトのような口でプランクトンや小さな甲殻類などを吸い取って食べるんです。
周りには恐ろしい肉食の魚がたくさんいます。
やってきたのはオニオコゼです。
見るからに怖そうな顔。
狙った獲物は…逃しません。
こんな魚に見つかったら一巻の終わりです。
あっオニオコゼのすぐ上にタツノオトシゴがいます。
でもオニオコゼは気付いていないようです。
タツノオトシゴはこうしてじっとしているかぎりまず襲われません。
独特な姿を生かし海藻に紛れて暮らすことで天敵だらけの海を生き抜いているんです。
1匹のメスが海藻を離れました。
流されているだけのように見えますがこれがタツノオトシゴの泳ぎなんです。
小さな背ビレを一生懸命動かして前に進みます。
胸ビレもパワー全開!でもこの体ですからスピードは全く出ません。
なぜメスは身の危険を冒して泳ぎだしたんでしょう?何かを探しているようです。
泳ぎがさらに遅くなりました。
よく見るとすぐ上に別のタツノオトシゴがいます。
オスです。
メスが誘うように進むと…。
オスがついてきました。
そうです春は恋の季節。
この時だけは危険を顧みず泳ぎ回るんです。
メスに追いついたオス。
尻尾をメスの体に絡めています。
しきりに体を動かしながらアピールするオス。
さあメスはどう応えるんでしょう?あっメスが離れていきます。
オスはふられてしまいました。
タツノオトシゴの恋の駆け引きどうやらメスに主導権があるようです。
メスが次のオスのところに向かいます。
こちらのオスおなかが風船のように膨らんでいます。
そのおなかをメスにすりつけています。
しぼませたり膨らませたり。
実はこれメスが卵を産みつけるための袋なんです。
ふだんはしぼんでいますがメスの産卵が近づくと膨らませるようになります。
オスは「大きな袋を用意したから僕に卵を預けてよ〜」とアピールしているんです。
これまで野外では繁殖行動はほとんど観察されていません。
今回の観察で1匹のメスが複数のオスを訪ねて回ることがわかりました。
パートナー選びの決め手はオスのおなかの袋の大きさです。
決定的な瞬間を目撃しました。
高さ6メートルもある崖になった根を探していたその時。
下のほうに…あっ!ハートマークを発見!タツノオトシゴのカップルが誕生したんです。
お互いじっと見つめ合っているよう。
こっちまで恥ずかしくなるほどのアツアツぶりです。
わずか40秒足らずの出来事でした。
この時メスはオスのおなかの袋の中に産卵します。
そしてオスは袋の中で卵を受精させるんです。
見事なハートマークを作った崖の根のカップル。
私たちはそれぞれに名前を付け観察を続けることにしました。
メスはきれいの「レイ」。
体の色がひときわきれいなオレンジ色だから。
オスは「マコト」。
レイからの卵を預かり真面目に育て始めたから。
特徴は目の横の白い線です。
1か月後。
崖の根でタツノオトシゴを見つけました。
目の横に白い線が見えます。
マコトです。
おなかが大きく膨らんでいます。
レイから受け取った卵を守り続けているんです。
オスのおなかの袋は「育児のう」と呼ばれています。
中には驚くべき仕組みがあります。
メスから卵を受け取ると卵が1個ずつ入る部屋が出来ます。
この部屋の壁を通して親の体から栄養や酸素が取り込まれているのではないかと考えられているんです。
まるで哺乳類のメスが持つ胎盤のような働きです。
オスがしきりにプランクトンを食べています。
おなかの卵にせっせと栄養を与えているんでしょうか。
体を作り替えてまで育児に励むまさに究極の育メンです。
いやぁオスがおなかでわが子を育てているとは驚きました。
まるで人間の妊婦さんみたいですな。
ホントびっくりですよねヒゲじい。
でもちょっと待った!なんでタツノオトシゴはここまで手の込んだことをしてわざわざオスが子育てするんですかね?いい質問ですね。
そこには魚界の育メンの壮大な歴史が隠されているんです。
えっ育メンの壮大な歴史?はい。
そもそも魚の世界には育メンがたくさんいます。
産んだ卵を守る魚のうち2/3はオスが守るんです。
そうすればメスは卵の保護に労力をかけなくてすむため次の卵を作る準備ができます。
お〜なるほどね。
でも岩などに産みつけられた場合どんなに守っていても敵に卵を食べられてしまうことがあります。
う〜んどれどれ?あホントだ!食べられてますぞ。
ねえ。
そこでです。
卵を産みつける場所を工夫する魚が現れたんです。
タツノオトシゴの祖先。
その性質を残しているのがこのリーフィーシードラゴン。
メスがオスの体に卵を産みつけるんです。
これならオスはたとえ敵が来ても泳いで逃げて卵を守ることができます。
なるほどそりゃ考えましたな。
でもここまでしても卵は狙われてしまうことがあります。
お〜大変だ!ちっちゃな魚が卵をつっついとりますぞ。
そこでタツノオトシゴは産んだ卵を完全に包み込む「育児のう」を手に入れました。
こうすれば卵は格段に襲われにくくなります。
なるほど!タツノオトシゴは長〜い進化の果てに誕生したまさに究極の育メンですな。
でも進化しすぎちゃってパパもママにならないとママならない…なんちゃってね。
第2章ではマコトがついに出産。
感動の瞬間です。
ところがその直後レイに新たなオス「ナツオ」が急接近。
アツアツカップルの恋の行方から目が離せません。
鳥取といえばおなじみ鳥取砂丘。
今回の取材場所浦富海岸はそのわずか7キロ先にあります。
この周辺の海にはタツノオトシゴに負けないかくれんぼ名人がたくさんいるんです。
砂地に隠れているのはカレイに似たクロウシノシタ。
目だけを出し獲物を狙います。
こちらの小さなイカ水を吐いて砂を飛ばし器用に潜ります。
最後は砂をかけて出来上がり。
お見事!岩場の海藻では…。
あれ何か変ですよ。
実はこれカニです。
切り取った海藻を体に植え付けカムフラージュしているんです。
そしてこちらわかりますか?海藻にぴったりくっついているのはダンゴウオ。
全長わずか1センチ足らず。
1円玉の半分ほどの大きさです。
海藻の一部になりきって敵の目から逃れています。
うんかわいい!砂地から岩場の海藻までそれぞれの環境に合わせて身を隠しているんですね。
4月下旬カップルになったメスのレイとオスのマコト。
その後マコトはレイから受け取った卵を守り育てていました。
出産が近づいたとの連絡を受け私たちは現場に向かいました。
出産は深夜に行われるといいます。
見逃すことがないよう交代で観察を続けます。
ついにその時がやってきました。
午前2時半。
マコトです。
おなかはパンパン。
もうはち切れんばかりです。
マコトの呼吸が荒くなってきました。
息むように体を動かしています。
おなかの袋に海水を出し入れし赤ちゃんが出てくるのを促しているんです。
あっ出てきました!赤ちゃんです。
体長はわずか1センチほど。
親と同じ体つきをしています。
かわいいですね。
マコトはおなかに力を込め次々に産んでいきます。
およそ40分で80匹ほどの赤ちゃんが旅立ちました。
出産の一部始終をここまで詳細に捉えたのは初めてのことです。
大仕事を終えたマコト。
おなかの育児のうはすっかりしぼんでいます。
ホントお疲れさまでした。
夜が明けたあと再び崖の根を訪ねました。
おや?1匹のタツノオトシゴが泳いでいます。
レイです。
どこへ向かうんでしょう。
あとについていくと…。
マコトがいました。
レイがおなかをマコトに押しつけています。
実はレイのおなかの中には新たな卵が準備されています。
でもマコトはほんの数時間前に出産を終えたばかり。
育児のうを見てもしぼんだままです。
今卵を受け取るのはさすがに難しいようです。
ところが翌日意外な光景を目にしました。
ハートマークです!マコトがレイの卵を受け取ったんです。
レイの積極的なアプローチに根負けしたんでしょうか。
レイにとってマコトは1回目の出産を無事成功させた実績があります。
卵を託すには最も信頼の置けるオスなんです。
同じころうれしい発見がありました。
「チビタツ発見」?海藻をよく見ると…赤ちゃんです!無事海藻にたどりついていました。
よかった!アツアツカップルのまさに「愛の結晶」です。
そんな幸せな日が続いていた6月半ば。
レイが海藻から離れ移動を始めました。
あっそばにもう一匹います。
育児に励むマコトの様子をうかがいに来たんでしょうか?でも体の色が妙に黒っぽいですね。
さらに顔にはあの白い線がありません。
マコトとは別のオスです。
一体どういうことなんでしょう?しかもこのオスおなかをレイにすり寄せています。
レイのほうも嫌がっていません。
むしろ仲むつまじい様子にも見えます。
何だかこの2匹とっても怪しいですねぇ。
このオスまるで日焼けしているように黒いので「ナツオ」と名付けましょう。
それから2日後のことです。
ナツオがレイに近づいていきます。
育児のうを膨らませ猛アピール。
そしてついにハートマーク。
レイがナツオに卵を託したんです。
3回目のハートマークの相手はマコトではありませんでした。
ちょちょっと待った!はい。
レイとマコトはお似合いのカップルだと思っていたのに一体これはどういうことなんですか?あれヒゲじい怒ってますね。
怒ってます。
だってマコトは一生懸命子育てに励んでいるのにナツオにも卵を託すなんてあんまりじゃないですか!まあまあ落ち着いて下さい。
レイにはレイの事情があるんですよ。
えっどんな?はい。
タツノオトシゴの繁殖についてはまだわかっていないことが多いんですがこれまでの観察ではオスが卵を受け取ってから出産するまでに1か月ほどの時間がかかっていました。
ほうほう。
一方メスは2週間ほどで卵の準備ができることがわかりました。
あそうなんだ。
メスは少しでも早く卵をオスに預ければまた次の卵の準備ができますよね。
ですから今回のように別のオスにも卵を預けると考えられるんです。
ふ〜ん。
つまりオスとメスのサイクルが違うからしかたがないっていうことなんでしょうか?はい。
メスはできるだけ多くの卵を産んでたくさんの子孫を残したい。
一方オスはメスから預かった大切な卵を時間をかけて確実に育て上げたい。
どちらも必死で子孫を残そうとした結果なんです。
う〜んそれだけ子孫を残すのが大変ということですな。
子孫を残すのは「難しそん」…なんちゃってね。
7月半ば。
大型で強い台風が近づき鳥取の海は大荒れ。
子育て中のタツノオトシゴたちは大丈夫なんでしょうか?台風が去ったあと様子を見に行きます。
ところがマコトとレイそしてナツオも見つけることができませんでした。
そんな中ガイドの山崎さんが何かを見つけました。
子どもです。
大きさは3センチほど。
大人の半分近くまで成長していました。
体つきも海藻と見分けがつきません。
もう立派なかくれんぼ名人です。
次の夏にはあのハートマークを見せてくれることでしょう。
今回密着することで初めて見えてきたタツノオトシゴの不思議な恋。
オスはおなかで卵を育て出産までする究極の育メン。
そしてメスはせっせと卵を作りたくさんの子孫を残すしっかり者でした。
カップルが作り上げる見事なハートマークは次の命をつなぐひたむきさの証しなのです。
2015/11/15(日) 02:35〜03:31
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!セレクション「日本の海 驚きの魚たち!」[字]
これまでの「ダーウィンが来た!」から日本の海にすむ驚きの魚たちをセレクト!荒波の日本海で産卵する秋田名物ハタハタ、オスが赤ちゃんを出産するタツノオトシゴに密着。
詳細情報
番組内容
これまでの「ダーウィンが来た!」から日本の海にすむ驚きの魚たちをセレクト!冬の日本海、秋田沿岸ではハタハタが産卵。わざわざ大荒れの時を狙って大群で押し寄せ、海藻に卵を産み付ける。荒波に耐える卵の秘密を徹底解明。鳥取の海では珍魚タツノオトシゴに密着する。オスが赤ちゃんを“出産”するという常識破りの生態を持つ。カップルで作る愛のハートマークから、感動の出産、赤ちゃんの旅立ちまでスクープ映像満載で描く。
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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