(鮫島悠里の声)「ジョアンナは谷底へとロープを投げ込んだ」「その絶壁の中腹にはジョアンナのたった1人の息子ケビンがいたのだった」「ケビンはわらをもすがる思いでロープを握り締めた」「まさかその先に生き別れた母がいるとは気づきもせずに」
(河島雪実)うっ…!
(悠里の声)「ジョアンナはロープに手応えを感じた」「力いっぱいロープを引いた」「手には激痛が走った」「しかしその痛みがジョアンナには嬉しかった」うっ…!うっ…あ…。
ううっ…!
(悠里の声)「重みを支えきれずジョアンナは体勢を崩した」「しかしロープだけは離さなかった」
(悠里の声)「ケビン!ケビン!」「ジョアンナは息子の名を叫び続けながら必死にロープを手繰り寄せるのだった」
(鼻をかむ音)
(パトカーのサイレン)
(鮫島一希)ようお疲れ。
(里中勇作)ああお疲れさまです。
何?これ。
新しいの買ったの?ひと目惚れっす。
死後2〜3日経ってるんだって?ええ。
大家が偶然見つけたんでよかったんですけどこの寒さですし下手すりゃもっと遅れてたかもしれません。
女なんだろ?はい独身みたいです。
しかし物騒だね女の一人暮らしっていうのは。
ああ鍋さん相変わらず早いね。
(鍋島隆実)おう管理官ツイてるね。
朝からホトケさん拝めるなんて。
絞殺か。
玄関に争った跡が残ってます。
乱暴された痕跡は?いやそれはありません。
こんなしょぼいアパートじゃ物取りの線はないか。
まあ怨恨でしょうな。
ガイシャは物書きをしてたそうなんで。
まあ仕事関係でトラブルに遭ったか…。
物書き?ええ。
まあ見てのとおり貧乏ライターってとこでしょうけどね。
独身女性の貧乏ライターか。
こりゃまた物騒だね。
(コーチ)鮫島さん左です。
左のホールドを持ってください。
鮫島さん聞こえてます?手が…もうつりそうです。
やれば出来るやれば出来るやれば出来る!だあっ!うわっああっあ〜っ!アハハハ…あ〜っ!
(鮫島彩乃)いくら独り身が寂しいからってこんなむちゃな趣味始めなくてもいいでしょう。
うるさいな。
エヘヘヘ…。
天熟ドルチェ!ホッホッホッホッ…。
大好きなのよこれ。
どこ行っても売り切れでなかなか買えないのよね。
あ〜!あのねこの天熟ドルチェを出してる和菓子屋さんの社長さんがね「自伝を出したい」なんて言っててさ。
出しゃいいじゃん。
でもほら素人が書いてるものじゃ売り物にならないっていうかさ。
やっぱりここはプロの小説家に書いて頂かないと。
駄目。
絶対やだ。
ちょっと待って。
言ったでしょ?もうゴーストライターは絶対にやらないって。
大体おかしいでしょ自伝を他の人が書くなんて。
そんな事してる暇があったらね売れない小説書いてるほうがよっぽどマシ。
ちょ…。
今回のねこの仕事はお姉ちゃんにとってまたとないチャンスなのよ。
それ前にも聞いた。
あっ!天熟ドルチェコラーゲンたっぷり。
ねえこの仕事受けたらさ1年分ぐらいはもらえるかもよ。
1年分も?そうよ。
そしたらお姉ちゃんも若返っちゃってプルンプルン。
やだ…絶対やる。
やった〜!…なんて言うと思ったの?うっ…。
うえ〜ん…。
今回はさ正直言うと絶対に失敗出来ないんだよね。
だから一編集者としてお姉ちゃんに…いや鮫島悠里先生にお願いしたい!どういう事?この大滝庵うちの大口の広告主でさ。
だから「この仕事他社には絶対に譲るな!」って若造の編集長から言われちゃってさ…。
なんで私なのよ?暇な作家はいくらだっているでしょう。
編集長がさお姉ちゃんのゴーストライターの腕買ってんだよね。
そんな腕買ってくれなくてもいい。
小説家の腕買ってちょうだい。
ああそうだ。
この仕事がうまくいったらお姉ちゃんに小説も発注したいとかなんとかって言ってたかも…。
本当に?うわ〜!
(手を叩く音)ちょっと見て見て。
ねえ鯉がたくさん。
やっぱりさ天熟ドルチェ作ってる会社だけあって鯉もツヤッツヤ。
あのさ前にも言ったと思うけどたとえゴーストだとしても私は作家として自分の意見をきっちり言わせてもらうからね。
わかってるわかってる〜。
(木島沙代)お待たせ致しました。
どうぞ。
(大滝悦子)『僕らの軌跡』…。
はい。
こちらの鮫島悠里先生はその小説で新人文学賞を総ナメにしまして当時そうですね40万部の大ベストセラーだったんです。
そうですか。
はい。
そのような先生に書いて頂けるなら主人も喜ぶと思います。
(大滝千鶴子)もうなんでこんな朝っぱらから呼び出すのよ。
千鶴子ちょっとこっちへ。
(千鶴子)会議キャンセルしてきたんだからね。
やかましい娘でお恥ずかしい。
長女の千鶴子です。
お父様の自伝を書いてくださる先生にいらしてもらったの。
あなたも取材を受けるかもしれないんだしごあいさつしておいたほうがいいでしょ。
どうも。
会社で天熟ドルチェのチーフプロデューサーをしてるんです。
この子があの商品の生みの親なんですよ。
ああ…だからそんなにおきれいなんですね。
あっあれって何かやっぱり特別なコラーゲンとか入ってるんですかね?企業秘密です。
ですよね〜。
(大滝やよい)こんにちは。
ちょうどよかった。
あなたたちにも紹介します。
お義母さん声が聞こえてましたよ。
鮫島先生ですよね。
長男で副社長を務めております直樹です。
妻のやよいです。
なんでも聞いてくださいね。
やよいさんも商品アドバイザーとして経営に参加してもらってるんです。
皆さん要職についてらっしゃるんですね。
やっぱりこう家族の絆が大滝庵を支えてるって感じですよね。
今でこそおかげさまで80店舗にまで拡大しましたけど元は主人と私だけの小さな和菓子屋でしたから。
家族で知恵を出し合ってなんとかやってます。
(悦子)子供たちも会社を支えてくれるまでになりましたしお店の歴史を残すいい機会かと思いましてそれで自伝を。
なるほど。
あの…それでご本人は?はい?大滝社長さんは?
(やよい)お義父様はしゃべれるような状態じゃ…。
主人はがんを患ってまして。
手術は受けたくないと申しますので今は静養しております。
取材は受けられるような状態ではないのでここにうちの社内報とか簡単な経歴はまとめておきました。
でも一応ご本人にお会いしないと。
社長に成り代わって自伝を書くわけですから。
失礼します。
あなたの自伝を書いてくださる先生がいらしたんですよ。
はじめまして。
あのこちらは作家の鮫島悠里先生です。
わたくしは編集の鮫島彩乃と申します。
名字が同じで実は…姉妹なんです。
よく親子に間違えられるんですけど。
ちょっと。
(悦子)では今日はこの辺で。
(大滝燐太郎)下がりなさい。
いや…。
お前は下がっていい。
わかりました。
(悦子)では終わりましたらまた。
(大滝)ここに座りなさい。
はい。
先ほどですねご家族の皆様にお聞きしたんですけども社長は大変に家族経営を…。
あんたは本気で私の自伝を書くつもりか?はい。
奥様にそう依頼されましたので…。
妻は関係ない。
私はあんたに聞いてるんだ。
本気で自伝を書くつもりがあるのか?はい。
頑張らせて頂きます。
あの…一応普段は小説を書いてるんです。
引き受けさせて頂いた以上作家として出来る限り社長さんに成り代わって書かせて頂きたいと思います。
そうか。
(せき)そこまで言ってくれるんなら安心だ。
ただ1つだけ約束してほしい。
はい。
もし家族が反対しても最後まで書き続けてほしいんだ。
妻が中止しろと言ってもだ。
わかったか?はい。
少し私から質問させてください。
私はね…。
私は人を殺した事があるんだ。
はい?へ?今なんて仰いました?あ…うっ!
(せき込み)大丈夫ですか?大丈夫ですか?どなたか…どなたかいらっしゃらないでしょうか?大丈夫ですか?
(せき込み)旦那様旦那様!旦那様!お薬飲みましょう。
あなた…あなた!
(大滝のせき込み)ねえ沙代さん徳間先生呼んできて。
奥様…。
はい。
あなた大丈夫ですか?お薬飲んでください。
(里中)被害者の人間関係を洗いましたがライターだけあって取材を通じていろんな人物と関わりがあったようです。
けどどうも容疑者って呼べるような人物が出てこないんですよね。
異性関係や借金トラブルは?今のところは何も。
(鍋島)管理官!おお鍋さん。
日比谷のホテルセントリッチで被害者の目撃情報がありました。
おお。
ラウンジで男と一緒やったそうです。
男?ええウェーターが覚えとりました。
(里中)けどよく見つけましたね。
被害者がそのラウンジに手帳を忘れていったそうや。
待ってても取りにけえへんから今朝届け出たんや。
現物は鑑識に行ってますがこれがそのコピーです。
確か死亡推定日時は火曜か水曜だったよな。
(鍋島)つまり水曜までは生きとったっちゅう事です。
殺された日に取材を2件入れてたって事か…。
さっき社長さん確かに言ったよね。
「人を殺した」って…。
シーッ!言ったような気はするけど…。
どうするのよ?奥様は大滝庵の功績を残したいのよ。
殺人の記録なんか望んでないのよ。
今考えてるんだからちょっと落ち着いてよ!う〜ん…。
よしこうしよう。
社長は無視して奥様の言うとおりに書こう。
はあ?依頼人はあくまで奥様なのよ。
あの社長なんて寝たきりだしあの発言だって本当か嘘かわかりゃしない。
とにかくこの資料を基になんとか仕立て上げよう。
無責任な事言わないでよ!私は奥様のゴーストじゃない。
社長のゴーストになるのよ。
声が大きい。
さっき社長に念押しされたわよね。
たとえ家族が途中で中止しろって言っても最後まで書き通せって。
だから?あの約束はどうするのよ?どうするって言われたって…。
(携帯電話)あっ!はいもしもし鮫島です。
先ほどはどうもお世話になりました。
はい?えっ!?なるほどなるほど。
はい…わかりました。
失礼します。
どうしたの?大滝社長さっきの発作で病院に運ばれてそこで亡くなったって。
え…!でも大丈夫。
自伝はそのまま続けてほしいって奥様が。
何言ってるの?亡くなられたのよ。
亡くなられた方のゴースト…。
シャレになんないでしょ。
ゴーストの…ゴースト。
バカ!
(読経)ねえ本当に続けるつもり?当たり前でしょ。
クライアントがそうしてくれって仰ってるんだから。
でも変じゃない?ご本人が亡くなられたのに自伝出すなんて。
生前に書き残してましたって出したら問題なーい。
でも…。
あっ!アーコ!お姉ちゃん!何やってるんだよ?こんなところで。
いや…あんまり大きな声じゃ言えないんだけどねお姉ちゃん大滝社長のゴーストライターになったの。
またゴーストライターやってるの?あんたこそ何やってるの?こっちもあんまり大きな声じゃ言えないんだけど先週起きた殺人事件の被害者が事件の直前に大滝社長と会ってたんだよ。
いやまだ事件と関係があるかどうかわかんないけど一応ね。
あっ…今度は捜査に首突っ込まないでくれよな。
(沙代)刑事さん。
あっ…。
(沙代)奥様がお待ちです。
この度はご愁傷さまでした。
ご丁寧に恐れ入ります。
遺族じゃないから。
ねえ…。
社長が言ったとおり本当に殺された人がいたって事?…みたいね。
(悠里の声)「大滝庵の創業者大滝燐太郎は終戦直後9歳の時に両親と死別した」「その後小さな和菓子屋に拾われ店の物置に1人で住み込んで和菓子作りを一から学んだ」
(悠里の声)「それから15年の修業期間を終え常連客の紹介で知り合った悦子さんとの結婚を契機に独立」「浅草橋にたった2坪の店舗を借りて大滝庵を創業した」私は人を殺した事があるんだ。
駄目だ…。
やっぱ忘れられっこないよ。
被害者は女性のライター。
なんで大滝社長がこのライターと会ってたのか…。
(ドアの開く音)来るんなら先に電話してっていつも言ってるでしょ。
これ見て!何?これ。
明日この記事がうちの週刊誌に載るらしいの。
えっ!?「長男の直樹氏は会社の金をカジノにつぎ込んでいた事が発覚」「しかし社長の燐太郎氏は息子の不正をもみ消していた」長女の千鶴子さんの記事のほうはもっとすごいよこれ。
「一方娘の千鶴子氏は父燐太郎氏との確執が噂され天熟ドルチェのヒットを契機に社内人事を一掃するクーデターを画策」ってクーデターって何!?…っていうか何!?これ!家族の絆なんて全然嘘じゃない!
(記者)明日発売される雑誌の件はもうご存じですよね?弁護士に任せてあります。
今日はお引き取りください。
でも何かコメントもらえませんか?ノーコメントです。
これ以上は営業妨害ですよ。
(記者)いやでもちょっと…!
(記者)すいません!
(千鶴子)遅れました。
始めましょう。
まだ副社長が外出されたままですが…。
構わないわ。
どうせ馬券でも買いに行ってるんでしょう。
この記事ですが発売前に止める事はもう出来ません。
社長が亡くなった直後ですし格好のネタにされてしまったようです。
テレビでもすぐに取り上げられるでしょう。
嗅ぎつけられてるってわかってるんだったらどうして止められなかったのよ!こういうの出ちゃうとやりづらいんだよねえ。
自伝で家族の絆をアピールしてバッシングを避けようとしてる。
なるほどねえ。
ねえそれより彩乃ちゃん一希が追ってるこの事件殺されたのは女性のライターなの。
このお家騒動となんか関係があるんじゃないかな?えっ…?もしかしてこの大滝家のスキャンダルを暴こうとしてそれで殺されちゃったとか?このライターの事調べられないかな?いやちょっと!ちょっちょっ…ちょっとちょっとちょっと…。
ねえ素人がまた捜査に口出したらお兄ちゃんに叱られちゃうよ。
同じライターとして気になるのよね。
しかも私たちはこれから大滝家の本を出すのよ。
この人が一体何を書こうとしていたのか知るべきだと思う。
え〜っ?
(里中)この中に見覚えのある顔は?ここにはいないと思います。
というかご常連の方ではなかったので正直お顔までは…。
けど何か深刻そうな話をしていた記憶はあるんですよね?ええ。
ちょっと口論のような感じで…。
〔お金なんかいくらもらっても私は納得出来ません!〕男性のほうから手切れ金でも渡している感じでした。
やっぱり付き合ってた男がいたんですかね?
(高槻健)ああ…。
彼女は優秀なライターでしたよ。
おたくのような大手が使わないのが不思議なくらいでね…。
〔こんにちは〕
(高槻)企画も次から次へと持ち込んできたしとにかく今時珍しいくらい真面目なライターでした。
まあ逆に真面目すぎて1つの仕事に没頭すると掛け持ちが出来ないタイプだったから金銭的には苦労してたと思いますけど…。
わかります。
私も没頭するタイプなので。
いい男でもつかまえてればねあんな事には…。
他人事じゃないね。
あの…大滝庵のスキャンダルが明日週刊誌に載るんです。
河島さんその事を調べてませんでしたか?ああ…警察にも同じ事を聞かれましたけど彼女があんなスキャンダルを追ってたとは思えないんですよね。
といいますと…?
(高槻)これがうちで出した本ですけど大抵は社会の底辺で生きている人たちのルポばかりです。
確かにセレブのお家騒動を書くような方ではなさそうですね。
でもお金に困ってたんですよね?だったらなんだって書くんじゃないんですか?誰かさんみたいに。
うるさいな。
どうかなあ…。
ああ見えて頑固だったしな。
(電話)ちょっと失礼。
ああいい。
(電話)はい青年出版。
もしかしたら最初にアポを取ったのは河島さんじゃなくて大滝社長のほうからだったのかも。
えっ?なんで?河島さんの書いた本を読んで感動しましたみたいな…。
まさか!悪いけどこの本そんなに大して売れてる本でもないしさ…。
大して売れてない私にだってファンレターの1通や2通は来るのよ。
確かに…。
ねえ…。
ん?大滝社長が河島さんの本を読んでたかどうかっていうのだけ調べてみようよ。
(悦子)宇佐美先生弁護士として法的に出来る事は全てしてちょうだい。
家の周りを記者たちに囲まれてどこへも行けやしないんだから…。
(宇佐美祐貴)まあ記事には事実誤認もありますので名誉毀損で訴える事は出来ると思います。
でも逆に裁判になればマスコミの火に油を注ぐ可能性もあります。
すいません突然お邪魔して。
今日はどのようなご用件で?はい。
自伝執筆の参考に大滝社長の蔵書を見せて頂きたいなと思いまして。
ああそうですか。
ただ今日はちょっと奥様が…。
(やよい)天熟ドルチェの人気だって…。
いつまで持つかわからないわ!たかだか1つ当てたぐらいで…。
(やよい)老舗の看板すげ替えようなんて自意識過剰にも程があるんじゃない!?副社長がギャンブルに金を使い込んでるような会社じゃ看板ぐらいすげ替えて当然でしょ!
(大滝直樹)金は戻すって何度も言ってるだろ!やめなさいあなたたち!あっ…今日は日を改めて頂いたほうが…。
(千鶴子)もういいわ。
これ以上話しても意味ないから。
(宇佐美)僕が送っていきます。
あっ…いらしてたんですか。
あっあの…鮫島先生はですね足を使って取材を重ねリアリティーを追求するタイプの作家なので…。
なんか週刊誌以上にもめてるような気がするんですけど…。
自伝に関係ない事は気にしなくていいの。
だって奥様から渡された資料によるとアフリカゾウの親子並みに仲良し家族なんだよ?だったらその資料どおりに書けばいいじゃん。
無理だよ。
(ため息)ないね河島さんが書いた本。
だから言ったでしょ?がんで寝たきりの人が本に感動したくらいで作家に会おうだなんてしないって。
…だよね。
ごめん。
帰ろう。
帰る。
ん…?何?社長の手帳かな?ちょっと…。
だったらこれあったら参考になるんだけどなあ。
奥様嫌がるんじゃない?一応聞いてみよう。
(ため息)待って!もう…なんなの?『和菓子通信』?あった!ん?ほら…「河島雪実」。
毎回1人ずつ若い人を取り上げてコラムを書いてたんだね。
最新号が第2回って事はまだ始まったばっかりだったんだ。
やっぱり記事読んでたんだね。
うん。
はあ〜…。
お兄さんをあんまり挑発するなよ。
君のほうが実績を上げてるのは明らかなんだし冷静に対処すれば次期社長は君で決まりだ。
兄のあのやる気のない顔を見てると腹が立つのよ。
(宇佐美)まあそうイライラするなって…。
社長になるまでの辛抱だよ。
(里中)捜査に勝つ!だ。
ガッツリいくねえ。
一日歩き回って手掛かりなしですから食わなきゃやってらんないっすよ。
昼も夜も弁当で飽きません?毎朝嫁さんに体重チェックされるから他に食いたいものがあっても食えないんだよ。
大変っすね。
(鍋島)お疲れさん!おお鍋さん。
飯来てるよ。
あっはい。
それより管理官ちょっと面白い事がわかりましたよ。
5年くらい前なんですが大滝庵は訴訟を起こされそうになったようなんです。
訴訟?ええ。
結局訴訟は取り下げられて大事には至らなかったんですがなんでも大滝庵の商品が盗作やないかと疑いをかけられたみたいで。
盗作…?けど和菓子屋が盗作って何?それが天熟ドルチェ。
成分や作り方が他社の製品とそっくりやったらしいんです。
マジ!?天熟ドルチェいうたらあなた大滝庵の大ヒット商品ですよ。
もし盗作なんて事になったら…。
そりゃ一大事だよ。
河島雪実はライター業じゃ食っていけずに生活に困窮してました。
なんかの拍子にこのネタをつかんで大滝社長を強請ろうとしたとは考えられませんか?ありえそうな話だね。
ねえ?よしその線で捜査を進めよう。
はい!これ1個だけちょうだい。
あっ!よし…まずは1人目。
(上地一平)ああ…あの記者さんの事だったらよく覚えてますよ。
どんな感じの人だった?
(上地)う〜ん…なんかすごい律儀そうな人だったかな。
〔こんにちは〕
(上地)あんなちっちゃい記事なのに何度もここに取材しに来てくれて…。
そうだったんだ。
ところで上地くんは大滝庵知ってる?あっ天熟ドルチェ!そうそう。
河島さんはその大滝庵の社長さんの事も取材してたみたいなんだけど上地くんなんか聞いてない?いやドルチェはおいしいと思うけど社長さんの事はよく知らないかな。
(楠本隆司)鮫島さん。
これいい展開になってるじゃないですか。
ちっともよくない。
大滝庵のイメージ悪くなったら自伝の部数にも響くだろうし…。
またまた…。
こういうゴタゴタがあったほうが売れるって計算してたんでしょ?さすがベテランは違うなあ!気持ちいい。
…っていうかベテランって呼び方やめてくれない?ああ…。
まあとにかく自伝の原稿なる早でお願いしますよ。
ね?よし…。
お姉ちゃん!あっ!どうして俺が行くところにいつもいるんだよ!?いいじゃない別に。
あんたこそなんの用?素人に捜査情報を漏らすわけにはいかないよ。
ひょっとしてこの間の殺人事件となんか関係ある?だから話せないって…。
あの…管理官この方は?一希の姉の鮫島悠里と申します。
いつも弟がお世話になりまして…。
お姉さん?はい。
(坂口真波)あの…。
(真波)電話を頂いた鮫島さんですか?
(一希・悠里)はい。
えっ?あの…私は1時間ほど前にお電話差し上げました鮫島です。
ライターの河島さんの事を聞きたいっていう…?そうですそうです。
なんでお姉ちゃんがそんな事…。
いいじゃない。
ちょっとややこしいんですけどこちらも鮫島さんといいまして警視庁の刑事さんなんです。
15分ほど前に電話したほうの鮫島です。
どういったご用件ですか?河島さんが殺害された事件の担当をしてまして…。
河島さん亡くなったんですか!?知らなかったの?はい。
確か先週もメールをもらったし…。
ちょっとそのメール見せてもらえる?
(里中)水曜ですね。
…って事は殺害された日。
はい。
これが坂口フーズさんが開発した商品ですか?
(真波)はい。
これは試作品です。
結局は市場には出せませんでしたから。
コラーゲンに酵素を配合する特許を大滝庵が先に取ってしまったので…。
お父さんは天熟ドルチェはこの商品の盗作だって主張したんだよね?元々父は大滝庵の方と知り合いだったみたいで社内研修会に呼んだりして意見交換をしていたそうです。
この商品も開発中に見学に来ていたそうです。
それは完全に盗作だ。
でもだったらどうしてお父さんは訴訟を取り下げたのかな?
(鈴の音)
(真波)この記事が週刊誌に載ったんです。
盗作の告発は借金返済のための賠償金が目的だって書かれてしまって。
確かにうちは小さな会社でしたし借金もありました。
でも父はこんな記事を書かれるような事をする人じゃありません。
こりゃひどいな。
これが出てから取引先は相手にしてくれなくなるし借金はかさむ一方で弁護士に相談したらこのまま訴訟をしても勝ち目はないって言われたみたいで…。
それでお父さん…。
(ドアの開く音)お鍋だ!おっイラブー?おなかすいてたのよねえ。
どこ行ってたのよ?原稿ほっぽり出して。
執筆中だから料理も出来ないと思ってわざわざ作ったのに〜。
それになんでお兄ちゃんも一緒なの?こっちが聞きたいぐらいだよ。
母さんいつも言ってただろ。
普通は3回言えばわかるけど…。
(一希・彩乃)悠里は10回言わないとわからないからねえ。
食べよっか。
はい。
(一同)いただきます。
箸は?箸。
手洗って。
盗作?うんビックリでしょ。
ライターの河島さんはそれをネタに大滝社長を強請ってたんじゃないかって。
おいおい捜査情報を漏らすのやめてくれよ。
いいじゃんご飯の時くらい。
うん…まあね。
でもな…私はなんか納得いかないんだよな。
なんで?だってさもし私が盗作問題を探ってたとするじゃない。
そうしたらまず千鶴子さんに取材するわよ。
だって天熟ドルチェは千鶴子さんが立ち上げたブランドだし大滝社長は一線から外れてたわけでしょ。
だよねえ。
末期がんの人強請るなんてねえ。
でも最高責任者は社長なんだろ。
不自然とは思わないけど。
そうかなあ…。
いややっぱり私は大滝社長から河島さんに接触したんだと思う。
あの広報誌のコラム読んだから。
うん。
大滝社長の手帳にね亡くなる直前に残されたと思われるメモ書きがあった。
ほら。
えっ…なんでこんなの持ってるの?奥様が先生にお貸しあそばしたの。
「信義のために私は何が出来るだろうか」これが最後のメモ書きなの。
大滝社長は…河島さんが書いたコラムを読んで坂口フーズの坂口社長が自殺に追い込まれたという事を初めて知ったのよ。
いくら自分の娘がした事だとはいえ信義にもとる行為をしてしまったと思いそれで事情を聞こうと思って河島さんを病院に呼んだ。
ほらこっちのほうが自然でしょ?って事は大滝社長は殺人事件には関わってなかったって事?でも大滝社長言ってたよね。
人を殺したって。
(むせ込み)やだ彩乃ちゃん何言ってるの?大滝社長がそんな事言うわけないでしょ。
ごめんごめん。
冗談冗談。
ビックリさせんなよ…。
ハハハハ…。
確かに盗作を蒸し返されて困るのは娘のほうかもしれないな。
ごちそうさま。
どこ行くの?仕事だよ。
推理ゲームに付き合ってる暇ないんだから。
あ…それから今回の事件でわかったと思うけどいい歳した独身女が一人暮らしなんかしてると…。
(2人)余計なお世話!ったく何偉そうに!でもさ大滝社長が犯人じゃないとすると人を殺したって言ったのは誰を殺したって事だろう?多分坂口フーズの坂口社長の事じゃないかと思う。
結果的に自殺に追い込んでしまった。
その責任を感じてそういうふうな言い方になったんじゃないのかな。
っていうかお姉ちゃんさなんでその事お兄ちゃんに秘密にするのよ?あれは大滝社長が私たちだけに話してくれた事なのよ。
それに一希に言ったら素人は黙ってろ!って怒鳴られるだけでしょうよ。
そうよ。
素人は黙ってるべきよ!今日さうちの若造編集長に早く上げろ!ってハッパかけられちゃってさ。
もう刑事のまねなんかしてないで早く原稿上げてよ〜!大丈夫原稿はちゃんと書いてます。
安心しなさい。
こう見えてもお姉ちゃんはプロだから。
プロ!あれ…?何?大滝社長はどうやって河島さんとアポ取ったんだろうか?そうだよね…。
作家の連絡先調べて取材の時間段取ってってあの容体じゃ無理だよね。
誰か手伝った人がいた。
誰だろう?っていうかちょっとお姉ちゃん。
また事件の事考えてんじゃないの?ごめんねごめんね〜。
チェッ…。
(チャイム)
(悦子)今日はなんでしょう?すみません。
毎日押しかけてしまって。
今日は奥様のインタビューを頂きたいと思いまして。
私に?はい。
大滝社長の事を一番よくご存じなのはやっぱり奥様だと思いますので生のお声を伺わないと。
そうですね。
どうぞお入りになって。
(直樹)触るなって言ってんだろ!
(沙代)申し訳ございません。
この人勝手にカバンの中まで整理するからさ。
あんただってプライベートのものいじられたくないだろ?
(沙代)申し訳ございません。
(悦子)お客様が見えてるのよ。
おはようございます。
おはようございます。
いってらっしゃいませ。
(悦子)沙代さん気にしなくていいのよ。
(沙代)すみません。
(悦子)どうぞお上がりになって。
本当に仕事一筋でいらしたんですね。
ええ。
ところで大滝社長さんは亡くなられる前日に定期検診を受けにいらっしゃったんですよね?ええ。
その時河島さんという女性のライターさんにお会いになったと聞いたんですが。
そうらしいですね。
警察の方から伺いました。
奥様はご存じじゃ…。
いえ…細かい事は全て主治医に任せてましたから。
主治医の先生に…。
お薬飲みましょう。
あなた…あなた!
(大滝のせき込み)ねえ沙代さん徳間先生呼んできて。
そうか…。
(千鶴子)盗作?ハハッ…なんの冗談ですか?我々はちっとも冗談だとは思っていませんがね。
刑事さん確かに5年前大滝庵は訴訟を起こされそうになった事があります。
しかし裁判の前に取り下げたのは坂口フーズのほうなんですよ。
こんな記事を書かれたんじゃ諦めざるを得ないでしょ。
訴訟を諦めさせるためにこの記事を書かせて坂口フーズを追い込んだんじゃないですか?問題だと思うな今の発言は。
ちゃんと裏を取って発言してるんでしょうね?この記事を書いた記者や編集者がねつ造だとでも証言してるんですか?そんな事しなくても状況的に見て…。
ああ〜そうやって刑事さんはいつも状況証拠だけで自白を強要させるんですね。
いやそんな事は…。
あの…私たちは河島さんっていうライターさんの事件に関して呼ばれているんですよね?私はそんな人とお会いした事もなければ電話で話をした事すらありませんけど。
(赤ん坊の泣き声)
(徳間繁久)死んだ人の自伝を書くなんてあんたも難儀だね。
さあ…。
さあどうぞどうぞ。
すみません。
あの…先生はいつ頃から大滝社長の主治医に?長いよ。
もう40年ぐらいになるかな。
社長は大の病院嫌いでね定期検査に連れていくのも一苦労だったよ。
40年…。
それは長いお付き合いですね。
悦子さんも直樹も千鶴子も私がずっと診てきた。
あの家族の健康の歴史は私とともにありかな。
あの…。
直樹さんの左手なんですけど…。
ああ…あれは確か30年ぐらい前だったかな。
(徳間)2人は毎日のように菓子工場で遊んでいて職人にもかわいがられていたんだ。
幼い頃から和菓子に接していたんだ。
(ぶつかる音)
(徳間)直樹は頭を打ってすぐ病院に運んだんだがもう少しで手遅れになるところだった。
一命は取りとめたんだがそれ以来左手に麻痺が残ってね。
そうだったんですか…。
社長は悦子さんと千鶴子を烈火のごとく叱りつけてね。
なんかあの頃からギクシャクしたというか家族の空気が変わったな…。
あの…ところで先生は河島雪実さんというライターをご存じですか?河島って和菓子協会の広報に記事を書いてた?そうですそうです。
知ってるよ。
社長が会いたいというから私が彼女と会う段取りをつけたんだ。
社長は外で会いたいなんてむちゃな事言うからちょうど病院の検査があったんでその時に彼女に来てもらったんだ。
社長はどういう用件で彼女に来てもらったんでしょうか?いや詳しい事は知らないな。
私は取り次いだだけだから。
彼女は大滝庵の過去について調べるよう社長に依頼されたんじゃないでしょうか?過去?そんな気がするんです。
私に自伝を依頼した時も社長は重要な事を告白しようとしてました。
先生何かお心当たりはありませんか?先生?いや…私は何も知らないよ。
次の用事があるからもういいかな?あっでもあの…。
(携帯電話)はいもしもし?「鮫島先生の携帯でしょうか?」はいあの…どちら様でしょうか?「大滝直樹の妻のやよいです」ああ…どうも。
(やよい)自伝のほうは順調に進んでらっしゃいます?おかげさまで。
私も嫁として大滝の家を見てきた一人ですから何か参考になる事もあるんじゃないかって思いましてね。
取材受けてくださるんですか?もちろんですとも。
ちょうどさっき義母が出かけましてね…。
女同士お茶でもしながら話しません?はい。
和菓子屋さんをスイーツの専門店に?ええ。
千鶴子さんはあの弁護士と組んで大滝庵をまるっきり別の店に変えようって企んでるんです。
うちの夫がトップになるのが彼女我慢ならないんでしょう。
クーデターっていうのは本当の事だったんですね。
大体あの弁護士だってうちの顧問になる前から千鶴子さんの男だったってもっぱらの噂ですしね。
まあ千鶴子さんの気持ちもわからないでもないんですよ。
お義父様が生きていた時は全く認められなくて。
彼女には天熟ドルチェくらいしか実績がないんですから。
あの…。
はい?そんな話私にしていいんですか?構いませんよ。
先生は色んな方とお知り合いみたいだし。
お通夜の時に刑事さんともお話しされてたでしょ。
ああ…。
ああ…。
あっすみませんあの…ちょっとお化粧室に…。
あっ…。
すみません不作法で。
(ため息)身内売る気だ。
どういう家族なの?
(2人)おかえりなさいませ。
随分お早かったんですね。
(悦子)徳間先生に急に呼び出されたのよ。
ったくもう大事なお得意様お待たせして抜け出してきたんだから。
(チャイム)先生だわ。
(徳間)自伝の出版をやめさせなさい。
(悦子)どうしたんですか?突然。
(徳間)あのゴーストライターがうちに来て根掘り葉掘り聞いていったんだよ。
(悦子)出版社とは話がついてますしそんな急に中止だなんて…。
じゃああんた過去がほじくり返されてもいいのか?
(悦子)そんな事言ってません。
(徳間)だったら考え直してくれ。
(徳間)それから直樹と千鶴子の事だけど。
あの2人このまま一緒にやっていってもうまくいくはずがない。
今以上に亀裂が広がるだけだよ。
この際だ。
直樹を九州の支社にでも飛ばしたらどうだ?でも直樹が社長代理ですし私がそんな事…。
じゃあ社長がやった事を全てあの2人に話すべきだ。
あんたが話せないんだったらこの私が代わりに話す。
こんな時間に退社なんていいご身分だこと。
もしもし…彩乃?ちょっと聞いてよ。
もう大変だったんだ…。
「ごめん今会議中。
原稿とにかく急いで。
じゃあね」社長がやった事を全てあの2人に話すべきだ。
(チャイム)徳間先生…。
お姉ちゃん!怖かったよ…!なんでお姉ちゃんが第一発見者なのよ!?バチが当たったんだよ。
大滝社長が人を殺したって言った事俺に黙ってただろ?アーコも同罪だからな?まあ今日は遅いから帰っていいよ。
何かあったらまた連絡するから。
怖かった…!おい何やってるんだよこんなところで。
怖かったんだもん…怖かった…だって怖かった…。
なんだ!原稿出来てるじゃん!ねえこれさっさと提出してさこの仕事から手引こうね。
ね?これ以上お姉ちゃん首突っ込んだらねどんな目に遭うかわかったもんじゃないし!これプリントアウトしていい?ごめん…。
それ…ただ資料を写して主語を社長の一人称に変えただけなの。
嘘!?だって…事件の事が気になっちゃってさ…。
何やってるの!?ねえプロだから任せろって言ったのは誰?ああ〜!もう!いいや。
もうこれこのまま出そう。
ええ?相手は素人なんだから内容なんてわかりやしない。
駄目だよそんなの。
私はお姉ちゃんの身を心配してるんだよ!?
(携帯電話)ああーっ!
(携帯電話)悦子夫人から。
(携帯電話)はいもしもし。
すみません。
突然お呼び立てして…。
いえもうこちらもそろそろお伺いしようかと思っておりました。
原稿も仕上がって…。
自伝の出版は中止しようと思いまして…。
えっ?あの…でも原稿のほうはこちらに…。
ごめんなさい。
本当に…。
あの…徳間先生の事はご存じですよね?主人に続いて近しい人が亡くなってもうとても自伝なんて気分ではないんです。
お仕事をして頂いた分のお金はきちんとお支払いします。
どうぞ…ご了承ください。
はあ…わかりました。
私は中止にはしません。
え?どういう事でしょう?あの日社長は私に言ったんです。
「何があっても書き続けてくれ」って。
「約束してくれ」って。
主人がですか?はい。
あの時点でこの仕事のクライアントは奥様から大滝社長に変わったと思ってます。
でももう主人はこの世にはいないんですよ?でも約束は約束です。
(宇佐美)でも正式な契約書を交わしたわけじゃないんでしょ?それは…。
だったらご本人が亡くなった時点であなたとの契約もなくなったって事でしょう?社長の言葉だけで十分です。
社長は手帳に「信義のために私は何が出来るのだろうか」と書き残されていました。
最後まで社長は何が正しいのか悩んでらっしゃったんじゃないでしょうか?あんたは刑事でも弁護士でもない。
ただのゴーストライターだろ!そうです。
私は…。
私は大滝社長のゴーストライターです。
待ってお姉ちゃん。
お姉ちゃん。
お姉ちゃんの気持ちはわかったから。
でもむちゃだけはしないって約束して。
わかった。
どこ行くの?ちょっと…わかってないんじゃん?
(千鶴子)ゆうべ警察に5年前の訴訟について聞かれたわ。
なんか身内を売るような事をしている人がいるみたいで。
どういう事?お兄ちゃんの指示なの?
(直樹)なんの話だよ?そんな犯人探しより5年前に本当に不正があったのかどうかそっちのほうが重要なんじゃない?あるわけないでしょう?それにもし盗作だなんて報道でもされたらどうするつもり?天熟ドルチェがなかったらこんな会社すぐに倒産よ?やめて。
今あなたたちが分裂してどうするのよ。
ちょっとねえ…。
これって犯罪じゃないの?シッ!老舗の看板は信用が命です。
汚い手を使ってまで商品を売るような人には出ていってもらうべきだと思いますけど!ああ結構よ。
いつでも辞めてやるわよこんな会社。
(悦子)千鶴子…。
父さんは何度私がお願いしても独立を認めてくれなかった。
私の事なんて一度だって認めようとしなかった。
誰かさんの肩ばっかり持って不正だってもみ消してやったくせに。
だから私は私のやり方で勝負しただけよ。
父さんがいない今もう会社に縛られる理由はないわ。
あっ…。
お姉ちゃん行くよ。
待って。
早く。
待って。
(宇佐美)お兄さんもうやめにしませんか?
(宇佐美)こっちもお兄さんの事は色々と調べさせてもらってましてね。
会社の金の流用以外にもまだまだ秘密があるみたいじゃないですか。
あなたこの家にいられなくなりますよ。
お前何様だ?おい。
ちょっと…。
(直樹)何様だ!?おい!!
(宇佐美)イテッ!何する…!何するんだ!早くこっち…!
(やよい)やめなさいよちょっと!ああっ!
(やよい)ちょっとちょっと…!ああっ…もう…!
(やよい)今日も会食?うん。
あんな騒ぎまで起こして…よく会食なんて出れるわね。
仕方ないだろ?前から決まってたんだから。
それより…。
どうしてちゃんと千鶴子さんに言ってやらないの?会社を継ぐのは自分だってちゃんと宣言すればいいのよ!お義父さんだってずっとあなたをかばい続けていてくれた。
あなたが出世するのをお義父さんは一番に望んで…。
(直樹)黙れ。
はい?
(直樹)聞こえなかったのか?黙れっつってんだよ。
何言ってるのよ。
私が言わなきゃあなた…。
(やよい)ああっ!
(直樹)これ以上口答えしたら許さねえぞ。
(鍋島)司法解剖の結果が出たんですが…河島雪実と徳間医師とでは首に残された索条痕にはっきりと違いがありました。
凶器の種類が違うって事?いやそれもありますがそもそも殺し方が違うんです。
(鍋島の声)最初の河島雪実は腕力で無理やり背後からねじ伏せられて殺害されています。
部屋の中まで引きずり込まれたぐらいだもんね。
(鍋島の声)けど逆に徳間医師のほうは徳間の抵抗に犯人が耐えきれず体勢が崩れて…徳間の首の上に犯人が倒れ込んだ事で逆に徳間の首を圧迫したようなんです。
つまり犯人の腕力の弱さが災いしたんですよ。
という事は1回目と2回目とでは犯人が違う可能性があるっていう事…?そういう事になります。
(里中)管理官!ありました。
銀座の路上の監視カメラにライターの河島雪実と男が歩いている姿がありました。
銀座?ええ。
例のホテルに行く前に2人は銀座で落ち合ったんです。
誰だと思います?これ…あの弁護士か?殺害現場に毛髪が落ちてましたよね。
DNA鑑定かけますか?よし。
明日の朝一で身柄確保しよう。
(一同)はい!ねえ。
ねえねえねえねえねえ。
今さ大滝庵の奥様が…。
うちとのスポンサー契約…完全に切りたいそうです。
どういう事!?どういう事って…。
自伝がポシャったんで機嫌損ねちゃったってだけの話でしょう?担当のくせにとぼけるのやめてくださいよ。
いやいやこっちに落ち度はないわよ。
一方的に向こうが契約解除したいって言ってきただけじゃないの。
(机を叩く音)大ベテランの鮫島さんが言い訳なんかみっともないからやめてくださいよ!とにかくね損失の責任は取ってもらいますんで。
ベテラン言うな…。
(千鶴子)宇佐美さんが?電話にも出てもらえないんですよ。
どこにいるかご存じじゃありませんか?
(千鶴子)私も電話してるんですけど留守電で…。
あなたと宇佐美さんが男女の関係である事は複数の関係者が証言しています。
下手にかくまったりしないほうがいいと思いますよ。
(千鶴子)そんな事するわけないじゃないですか。
私だって連絡が取れなくて困ってるんです。
(鍋島)あの…自宅や事務所以外でどこか心当たりはありませんか?私の持っているマンションでたまに仕事をする事はありますが…。
(千鶴子)宇佐美さん?
(千鶴子)宇佐美さん?
(千鶴子の悲鳴)「大滝庵の顧問弁護士をしている宇佐美祐貴さん40歳が殺害されているのが昨日判明しました」「宇佐美さんと連絡が取れなくなった社員が不審に思い…」やっぱり彩乃の言ってたとおりだね。
これ以上事件に首突っ込んだら私だってどうなるかわかんない。
もう自伝は忘れるよ。
お姉ちゃん…。
大滝社長の依頼でもなく悦子夫人の依頼でもなく私の依頼でこの仕事続けてもらえない?どうしたの?急に。
大滝庵からスポンサー契約切られちゃってさなんかそういうこう…力で敵を排除するやり方ってどう?これってさあの盗作を疑われた時に週刊誌使って坂口フーズを追い込んだやり方と同じでしょ?なんかこういう事されちゃうと私俄然燃えてきちゃうんだよね。
でもここまで被害者出ちゃうとね…。
そうだ。
こうなったらゴーストライターなんかじゃなくさちゃんとお姉ちゃんの名前でノンフィクションとして発表しようよ。
印税ガッポリ稼いでさあの若造編集長見返してやる!私の身が危険にさらされるかもしれないのよ?その時はその時よ。
なんて事言うの!?こう見えても私だって新人時代は写真週刊誌のゴシップネタ追っかけてたんだから。
その気になりゃあ盗撮だって張り込みだって…。
昨日ねあんまり腹が立ったから医療系のジャーナリストにあの徳間っていう主治医の取材してみたんだ。
そしたらさあの医者元は産婦人科医だって。
産婦人科?千葉のね明應大学病院ってところで出世頭だったんだって。
それが急に病院辞めちゃってで大滝社長の専属医になったってなんか変じゃない?明應大って?知ってる?いやなんか聞いた…聞いた事あるな。
明應大…。
明應大って…えっちょっと待って。
明應大明應大明應大…。
直樹さん生まれた病院だ。
えっ!?きっとなんかそこであったのよ。
何が?よし行こう!どこへ?決まってるでしょ。
その千葉の病院。
マジ!?ですよねえ…。
昔の事ですからね。
どうもすみませんでした。
40年も前の事知ってる人なんていないよ。
絶対いるから。
そこら辺の産婦人科手当たり次第に電話して。
どうしたの?俄然やる気になっちゃって。
一昨日ご自宅で宇佐美弁護士とつかみ合いのケンカになったそうですね。
彼は妹の千鶴子さんと一緒にあなたを大滝庵から排除しようとしていた。
あなたにとっては邪魔な存在だったはずだ。
違いますか?
(直樹)正式な取り調べじゃないんでしょ?何も話すつもりはありません。
じゃあ簡単な事だけお聞かせ願えますか?昨日の午前0時どちらにいらっしゃいましたか?ご家族には会食だと仰っていたようですが秘書の方に確認したところそんな予定は入っていなかったそうですね。
よっ…。
おお〜。
ここの院長が徳間先生と同じ病院にいたの?…みたいよ。
コラーッ!!こんなところに車を止めるんじゃない!こちらの院長先生に用がありまして車は前に止めていいって院長先生が仰ったんです!院長が?用事が済んだらすぐにどけるんだぞ!何?その言い方…。
そんな石頭じゃ誰にも相手にされなくて寂しい生活送ってるんじゃないんですか〜?やめなさい。
(竹岡芙佐子)徳間先生が明應病院を辞めた理由?はい。
先生が辞める直前に大滝庵のご長男がその病院で生まれてるんです。
先生と大滝社長の間に何かあったんでしょうか?どうだろう?特に思い当たる事はないけど…。
確か徳間先生はお父様の借金を肩代わりしたとかですごくお金に困ってたって話は聞いたわ。
その事が病院を辞めた原因じゃないかしら。
そうですか…。
あの…当時の事で他に何か…なんでもいいんです。
そうね…。
ああ…これは先生とは関係ないと思うけどあの当時病院でちょっとした事件があったの。
事件?そう。
若いお母さんが押しかけてきてね。
数日前に病院の駐輪場に自分の子供を捨てたんだ。
返してほしいって大騒ぎになったの。
無視するわけにもいかなくて院内中を聞いて回ったんだけど赤ちゃんを見た人なんかいるわけないわよ。
だってもしそんな事があったら大問題でしょう。
確かに。
その人混乱しててなかなか納得してくれなくてね。
ちょうどうちの主人が警察官してたもんだから保護してもらったの。
嘘だったんですか?ううん。
母子手帳も持ってたし出生届も出てたのよ。
だから子供は確かに生まれてたの。
不思議でしょう?警察は最初彼女の事疑ってたみたいね。
疑ってたって…?彼女がその…自分で赤ん坊に手をかけたんじゃないかって。
(芙佐子)でも結局はその証拠も見つからなかったみたいね。
その後彼女は?
(芙佐子)わからないわ。
(芙佐子)ああ!主人だったら何か覚えてるかもしれないわね。
あなた!
(竹岡修司)おう。
頑固オヤジ…。
コラッ!
(竹岡)ああやっぱりそうだ。
10年後に失踪宣告してる。
失踪宣告…。
結局子供は見つからなかったんで母親も捜索を諦めたんだろ。
その失踪宣告っていうのするとどういう事になるんですか?それは法律上子供は死亡したって事になるわな。
死亡した…。
私は人を殺した事があるんだ。
社長が殺したって言ったのはこの子供の事じゃないかな?えっ?えっどういう事?わかんないけどなんかそんな気がする。
ちょっとそれ見せてもらえます?バカモン!個人情報を漏らせるわけがないだろ!お願いします!頑固オヤジ…。
もう3人も犠牲者が出てるんです。
この資料が事件を解くきっかけになるかもしれないんです。
お願いします。
しかし…。
見せてあげたら?もう時効よ。
「信義」って…。
DNA鑑定の結果まだかねえ?あと30分ぐらいやと思いますけどね。
(携帯電話)
(舌打ち)
(携帯電話)もういい加減にしてくれよ。
こっちは貧乏ライターと違って忙しいんだから。
切らないで。
今からお姉ちゃんが言う事をよーく聞いて。
おかえりなさいませ。
おかえりなさいませ。
おかえりなさいませ。
ほっといてくれよ!あんたは家の事だけやってりゃいいんだよ!
(千鶴子)なんであんな事したのよ!?なんの事だよ?どうして宇佐美さんまで巻き込んだのよ!?知らねえよ俺は!じゃああの夜どこにいたのよ?どこに誰といたのよ!?
(やよい)この人にそんな度胸あるわけないわ。
…どういう事?他人を排除してでも成り上がろうなんて事この人に出来るわけがない。
女と一緒だったんでしょ?会食とか下手な嘘ついて…。
それくらいの事妻の私が気づいていないと思った?
(頬を叩く音)疫病神…!
(笑い声)母さんも千鶴子もずーっとそう思ってたんだろ。
俺は疫病神だって。
昔から気づいてたよ。
俺が工場で怪我した時から母さんと父さんの関係は悪くなったし家族はバラバラになった。
俺はあの時死んだほうがよかったんじゃないか!?
(チャイム)
(沙代)どうぞ。
失礼します。
警視庁の鮫島です。
一連の殺人事件の被疑者が判明しましたので皆さんに報告に上がりました。
まずライターの河島雪実さんがどうして殺されてしまったのか?弁護士の宇佐美さんは天熟ドルチェの盗作疑惑について大滝社長がライターの河島さんに調査を頼んだ事に気がつきました。
宇佐美さんはそれをどうしても止めたかったんです。
宇佐美さんは3年前から大滝庵の顧問弁護士をしていると聞きました。
でも千鶴子さんはそれよりももっと以前から宇佐美さんとお付き合いなさってたんですよね?警察の調べでは5年前天熟ドルチェが盗作で訴えられた時に原告側の坂口フーズにも代理人弁護士がついていたと聞きました。
それが宇佐美さんです。
つまり千鶴子さんはご自分の恋人を相手方の会社に送り込んで訴訟を取り下げさせた。
そんな事がもし公になってしまったら宇佐美さんは今後法曹界では生きていけなくなる。
だから宇佐美さんはどうしても河島さんの調査を止めたかったんだと思います。
私は納得出来ません!私に調査を依頼したのは大滝社長です。
どうしてもやめさせたいのなら直接社長に言ったらどうですか?
(雪実)うっ…!
(雪実)うっ…あっ…!その事件のすぐあとに社長は亡くなられてしまいました。
社長は私に全ての過去を告白しようとしていました。
その過去とは40年前のある秘密に関する事でした。
社長は私に言いました。
自分は…人を殺した事があるって。
殺した!?私も最初は意味がわかりませんでした。
でも今日ようやくそれがわかったんです。
社長が殺したと言ったのは…家政婦の沙代さんの息子さんです。
えっ!?
(沙代)もう40年も前の話です。
私は夫の暴力におびえる毎日を送ってました。
そんな中でもなんとか一人息子を出産したんです。
それでもあの人の暴力は収まらず…。
あの人は生まれたばかりの赤ん坊にまで八つ当たりするんじゃないかと思うと…怖かった…。
あの人と一緒にいるより病院のそばに置いてくれば誰かが育ててくれるんじゃないかなって思って…。
そのほうがあの子にとって幸せだと思ったんです。
(悦子)出産中に出血がひどくて分娩後に昏睡状態になって数日間意識が戻りませんでした。
でも目が覚めた時には元気な男の赤ちゃんが目の前で眠ってた。
だから疑いもしなかったわ。
実は…。
本当の直樹さんは死産だったんです。
そんな…。
母さんどういう事?黙ってないでなんとか言ってよ!知らなかったの私も…。
昏睡状態の奥様が目覚め死産だったという事実を知れば奥様は悲しみ苦しまれる事がわかっている。
だから社長は奥様の幸せを考えて決断したんだと思います。
奥様を守るために奥様にも内緒で社長はその子を直樹さんとして育てる事にしたんだと思います。
母さんはいつ知ったの?お兄ちゃんの事。
直樹さんが工場で事故に遭われた時に気づいたんじゃありませんか?あの時直樹の出血がひどくて…。
でも輸血用の血液がすぐに手に入らなかったんです。
すごく珍しい血液型だって言われて…。
それで主人に問いただしたんです。
(悦子)〔あなた…〕〔何か私に秘密にしてる事でもあるんですか?〕
(悦子)〔あなた!〕〔すまない。
私が悪かった〕主人はそれでようやく話してくれました。
でも沙代さんが母親だったなんて…。
あの子を捨ててまもなく夫は暴力沙汰で逮捕されました。
その当時の刑事さんが相談に乗ってくれて…。
離婚を勧めてくれました。
夫と別れる事が出来るんだって。
そしたら私1人ででもあの子を育てる事が出来るって。
それで病院に行ったんです。
けど病院では誰もそんな赤ん坊を知らなかった。
みんな口を揃えてそんな赤ん坊なんか見なかったって。
新聞にも赤ん坊の記事なんか1つも載ってなくって…。
息子は風のように消えていったんです。
でそれから10年後に失踪宣告をした。
はい…。
当時の職場の上司が縁談を勧めてくれたんです。
私の本意はたとえ何年かかろうと息子を諦めるつもりはありませんでした。
でも…。
息子の名前が戸籍に載ってたら先方から断られるんじゃないかって言われて…。
私あの時…信義を殺したんです!殺したんです…!ああ…!ああーーっ!!
(泣き声)社長のこの字を私は「しんぎ」と読んでいました。
信義さんというのが沙代さんの息子さんの名前だそうです。
このノートには徳間先生の名前もあります。
行方不明になった赤ちゃんの事で警察から聴取を受けた時徳間先生はこの信義さんという名前を知ったんだと思います。
そして大滝社長は徳間先生を通じてこの名前を知ったんじゃないでしょうか。
私は人を殺した事があるんだ。
私から取材を受けた徳間先生は40年前の過去が暴かれてしまうのではないかと危惧し奥様に自伝を中止するようにと伝えにいらっしゃいましたよね?その時の話を沙代さんも聞いてたんじゃないでしょうか。
過去がほじくり返されてもいいのか?
(沙代の声)奥様はそれは無理だって突っぱねていらっしゃいました。
でも先生は本気でした。
真実を話さなければ直樹さんや千鶴子さんは一生わかり合えないだろうって。
でもそんな事したらあの子がどんなに傷つくか…!それに大滝の家にもいられなくなるって私は思ったんです。
それで私は先生のところにお願いに行ったんです。
(徳間)家政婦にそんな事を言われる筋合いはない。
帰れ。
お願いです!お願いです!なんだよ!何する…!わかった。
だったら悦子さんに電話して迎えに来てもらうよ。
その代わり明日から大滝の家じゃ仕事は出来ないよ。
やめてください…やめてください!
(徳間)だったら帰れ…!
(沙代)やめてください…!
(頬を叩く音)
(沙代)あっ!あんたが先に手ぇ出したんだよ!
(徳間)あっ…!でもどうして宇佐美さんまで?
(沙代)あの弁護士は息子を…いや直樹さんをあの大滝の家から追い出そうとしていたんです。
会社の金の流用以外にもまだまだ秘密があるみたいじゃないですか。
このまま泥仕合を続けたらあなたこの家にいられなくなりますよ。
(沙代の声)私は絶対に…。
そんな事させるわけにはいきませんでした。
(刺す音)
(宇佐美)あっ!ああっ!
(刺す音)
(宇佐美)あっ…!沙代さんは直樹さんに真実を伝えたい自分が本当の母親なんだって名乗りたい…。
そう何度も考えたと思います。
だって自分の息子と毎日顔合わせてるんですから。
あんただってプライベートなものいじられたくないだろ?申し訳ございません。
でも沙代さんは直樹さんを奪い返したいとかそんな事は望んでなかったと思います。
ただ直樹さんの幸せを願いそして今の生活を…直樹さんのそばにいられる今の生活を守りたかっただけなんだと思います。
(千鶴子)ハッ…。
この家は最初から嘘だらけだったって事ね。
他人の子を奪うような身勝手な事をしたらそりゃあバチが当たって家族もバラバラになるでしょうよ。
父さんは自分が思うがままの家族を作りたかっただけよ。
私たちの気持ちなんてどうでもよかったのよ!私はそうは思いません。
むしろ大滝社長は家族の幸せを一途に求めすぎたんじゃないでしょうか。
どういう事?こちらでお借りした資料では大滝社長は終戦直後たった9歳でご両親と死別したとありました。
主人は親のぬくもりを知らずに育ったから親になったら温かい家庭を作りたいいつもそう言ってました。
(大滝)〔すまない。
私が悪かった〕〔どうしても家族が欲しかったんだ〕〔それだけなんだ。
だからあんな事を…〕〔頼む。
直樹も千鶴子も今までどおり育ててほしい〕〔なっお願いだ。
頼む!〕勝手だよそんなの。
巻き込まれた子供はどうなるのよ?大体父さんは家族に優しくなんかなかった。
私の意見なんかなんにも聞いてくれなかった。
父さんはただの冷酷な父親だった!
(泣き声)私が悪いの。
工場の事故で直樹が実の息子じゃない本当の赤ちゃんは死産していたってわかって…。
それまでずっとだまされてた事に許せなくなった。
そしたら直樹まで憎くなってどうしても受け入れる事が出来なくなった。
だから千鶴子だけ…千鶴子だけに目をかけるようになって…。
直樹も自分の子だ。
何度も何度もそう言い聞かせた。
でも駄目だった。
心から直樹を愛す事が出来なくなった。
だからあの人を…。
(泣き声)だから社長は過保護だと言われても直樹さんをかばい続けたんじゃないでしょうか。
それが千鶴子さんには不公平に見えただけなんじゃないですか?40年前に大滝社長がした事は確かに許される事ではありません。
結果的にこんなにもたくさんの人の命が奪われてしまった。
でも私はやっぱり社長は最後まで家族を守ろうとしてたんだと思います。
直樹さんが会社のお金を使い込んでしまった事をマスコミに気づかれそうになった。
千鶴子さんも天熟ドルチェの開発で不正を行っていた事を社長は河島さんが書いたコラムを読んで気づいた。
このままだと2人とも社会的に追い込まれこの大滝家は崩壊してしまうかもしれない。
がんを患い自分に残された時間はもう少ない。
自分は家族のために最後に何が出来るんだろう?そう考えた社長はだから私に真実を全て話そうと決意したんだと思います。
自伝という形で何もかも世間に公表する事で社長は全ての罪をご自分一人で背負おうとしたんだと思います。
(携帯電話)あっ!ああすいません…。
(携帯電話)お兄ちゃんだよ。
もしもし?わかった。
沙代さんが罪を認めたそうです。
申し訳ございませんでした…。
あなたが…あなたがそばにいてくれた事は感謝します。
でも俺は…。
大滝家で育てられた大滝家の子供です。
あなたの息子に戻るわけにはいきません。
2015/11/14(土) 22:50〜00:56
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場「ゴーストライターの殺人取材〜セレブの罪を代筆する女!」[デ][字]
愛と欲…名門和菓子店、美女たちの跡目争い!!華麗な一族の乱れた秘密と人気スイーツの隠し味に接点!?
詳細情報
◇番組内容
セレブの自伝を代筆するゴーストライターが真実に迫る新感覚ミステリーの第2弾!売れない小説家の姉・浅野ゆう子とゴリ押し編集者の妹・若村麻由美の凸凹姉妹が名門和菓子店を営む一族の裏の顔を暴く!
◇出演者
浅野ゆう子、若村麻由美、鶴見辰吾、多岐川裕美、中山忍、螢雪次朗、左時枝、月船さらら、東根作寿英、大家由祐子
◇スタッフ
【脚本】池上純哉
【音楽】吉川清之
【監督】橋本一
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/dwide/
※この番組は放送時間が変更または休止になる場合があります
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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