(隠館厄介)
人はつい気軽に「死」という言葉を口にする
(絆井法郎)あぁ…二日酔いで死ぬ。
(まくる)はぁ〜!カッコ良くて死にそう!
(也川)「死ぬほど美味しい!!」?
だが実際美味し過ぎて死んだりカッコ良過ぎて死ぬ人を見たことがない
1日で記憶がリセットされてしまう彼女はといえば…
(掟上今日子)私の場合毎日死んでいるようなものですね。
ここで言う「死」は「記憶の死」
彼女の人生を思うと壮絶ではあるが少なくとも1つの利点がある
死ぬほど嫌な目に遭ったとしても1度眠ればキレイさっぱり忘れ新しい自分として生きて行けるのだ
(鳴き声)
でも僕達は少女はそうはいかない
えっ?古本屋もうクビになったの?あぁ…!ハァ…。
クビじゃありません自主的に辞めたんです。
ふ〜んまぁ何となく予想はつくけど一応聞こうかはい。
店主はいい人だしバイト代が安いってことを除けば順風満帆だったんです。
(店主)厄介君これ奥置いといて。
(隠館の声)店主の奥さんと会うまでは…。
おう。
(奥さん)新しいバイトさんは?どうもはじめまして。
(隠館の声)何でも奥さんの元彼と僕がうり二つだったらしくてしかもその男が…。
悪ぃすぐ返す。
もう〜仕方ないなぁ。
サンキューなお前ホントいい女な!
(隠館の声)とんでもなく悪い男だった。
でも当時の奥さんは…。
私彼に愛されてるんだよねぇ〜。
へぇ〜…。
(隠館の声)そんな愚かな自分の姿を20年ぶりに思い出し…。
バカ…バカ…私のバカ〜!あの頃の私死ね!死ね!死ね〜!死んでしまえ〜!!
(隠館の声)僕を見るたび恥ずかしい思い出を呼び起こさせるのが申し訳なくて…。
辞めることにしました。
元彼って厄介君のお父さん?確認したら他人の空似でした。
安定の運の悪さですね。
どうもありがとう。
ま〜恥ずかしさって感情は厄介だからな。
アダムとイブは知恵の実を食べたことで羞恥心が芽生えエデンから追放された。
つまり恥ずかしさっていうのは人間特有の根源的な感情ともいえる。
確かに頭に来た記憶より恥ずかしい記憶のほうが思い出したくないですね。
やっちゃたな〜ってのを思い返すともう…。
どんな記憶なんですか?言いませんよ。
な〜んだ。
(まくる)法郎さん恥ずかしいとかなさそう。
えっ?俺?俺くらいの年になるとねもう恥ずかしい思い出なんていうのはネタよネタ。
もう笑い話昨日もさ〜昨夜…。
前髪切り過ぎたりすると恥ずかしいですよね。
(まくる)恥ずかしいですよね。
そこのフロアでダンスダンス…!おい!聞けよ!あちらの塗君は?
(まくる)塗恥ずかしい話だって。
で?厄介君はまた転職活動?毎度のことながら大変だね。
それが最近転職続きも悪くないと思えて来て。
おっ?いろいろな仕事を渡り歩いた経験が意外なところで役に立つんですよ。
それは無駄とは呼びません決して無駄ではない。
こういう生き方もありなんじゃないかと思えて来ました。
へぇ〜?だから就職活動もこれだけの職を転々として来たおかげで大概のことはできます!そんなふうに自信を持って臨んだら久々に正式採用されました!おっ!えっ学校?はい。
中等部の校舎の管理作業員です掃除から修理保全まですでに何でも屋と化してますけど。
よかったじゃん。
ただ…。
ただ?深刻な問題が…。
女子校なんです!危険だな〜。
危険過ぎます!だから常にあらゆる疑いが掛からないよう女生徒達とは目すら合わせないよう慎重に働いてます。
目くらい見ても…。
危険なんです僕の場合どんな不運に見舞われるか分かりませんから。
しかしどんなに気を付けたところで災厄の種はそこかしこに存在し「厄介」という名の僕を絡め取る
フゥ。
(何かが噴き出る音)フゥ。
(何かが噴き出る音)君!君!
(何かが噴き出る音)君!しっかり!君!
(何かが噴き出る音)
(何かが噴き出る音)誰か!誰かいませんか!
(何かが噴き出る音)
(ドアをたたく音)
(何かが噴き出る音)ハァ…ハァハァ…。
COCO…。
不燃性だから…爆発しない!
(非常ベル)
(非常ベル)
(心電計の音)
僕達は何とか一命を取り留めた
サバイバル雑誌の編集部でバイトをした経験が役に立つとは
だが例によって僕は疑われた
第一発見者が怪しい…の法則である
ネットの根拠のない憶測に週刊誌が食らいつき少女を助けたはずがあっという間に殺人犯呼ばわり
こうなるともうお手上げだ
僕はまた探偵に頼ることにした
退院したその足で
なけなしの貯金と評判のプリンを持って
いらっしゃいませ今日子さん?
最速で万能の忘却探偵に
はじめまして置手紙探偵事務所の掟上今日子と申します。
厄介ですよろしくお願いします。
ご依頼の内容をお聞かせください。
僕と少女が死にかけた原因はCOによる酸素欠乏
ガスボンベは来月の学園祭用に用意されていたもので用具室への出入りは自由だった
窓の鍵は接着剤で固められドアの内側のノブはあらかじめ外され中から開かないよう細工されていた
苦しくなって外に出てしまうことを防ぐ少女の決意の証とも受け取れる
現場にあった遺書
筆跡は少女本人のものだと確認されたが問題はその中身の信憑性だ
その遺書は若者に絶大なる人気を誇るバンドELIZAHEADの『世界の涯て』という曲の歌詞を引用したものだったという
ところがいくら少女の身辺を洗ってもその曲どころかバンドのファンだった形跡すらない
そもそも彼女には音楽を聴く趣味はなかったようだ
僕の不運をよく知る刑事さんが言うことには…
(遠浅)上はお前さんが遺書を無理やり書かせ無理心中を図ったって筋書き考えてるみたいだな。
どうしてそんな!「何度も事件に遭遇する隠館厄介という男には何かあるに違いない」。
そう言ってお前を挙げようと躍起になってる一派がいるんだよ。
うん!こりゃうまいわ!悪いな残り2つしかなくて。
今恐ろしいことをさらりと。
(新米)冗談ですから気にしないでください。
しますよ!するでしょ!少女が目覚めて証言してくれればいいんだけどな。
少女逆瀬坂雅歌さんは目覚めなかった
検査の結果に異常はない
…にもかかわらず眠り姫のごとく眠り続けている
ん〜!プリン美味しい!死ぬほどうまいプリン…。
だから天国プリン!病院の隣で売るとは挑戦的だなハハハ…。
あの…。
僕の話聞いてました?もちろんです。
ねぇねぇ厄介君のプリンは?午前中の販売分が最後の4個で。
あっ…気にしないでください。
昔からプリンが食べられない運命なんです。
不運はプリンにまで及ぶのか。
よしコーヒー飲もうぜ。
は〜い。
ごちそうさまでした。
ご依頼の内容は少女の自殺の証明ということでよろしいですか?何か?中学生が自殺だなんて悲しい話なのにそれを確固たる事実にするための調査というのはあまりにひどい話だと。
今更ですね。
気付かなかった自分が嫌になります。
一命を取り留めたのは不幸中の幸いでした。
確認ですが少女とはホントに面識なかったんですね?はい生徒さんには近づかないようにしてたんで。
少女に恋焦がれていたなんてことは?ありません!中学生に興味はないよねぇ?厄介君には好きな女性がいるんだから。
そうですか安心しました。
はあ…。
では現場に案内してください。
はい。
大きな学校ですね。
私立なんで。
まずはクラスメートに話を聞きましょう。
いじめや家庭不和など少女が抱える問題がなかったか。
自殺の動機が出て来るかもしれません。
入りにくいな…。
まだクビにはなっていないんですよね?ハァ…でも殺人犯だと思われてるわけで…。
考えても仕方ありません。
先行ってますね。
フゥ。
ちょっといいですか?あっ…いや…僕は何にもにもにもに…!いや…いやちょっと…。
待ちなさい!ちょっと待って!いやホントに…!痛い痛い…痛い痛い痛い…!あぁ…。
何にもしてません!今日子さん!!
(生徒達の話し声)こんにちは!『SG』モデルの今日子です。
モデル?『SG』?ファッション雑誌ですよ!今一番人気の。
都内の女子高生達がみ〜んな買ってるあの『SG』。
あぁ〜…。
あぁ!『SG』!『SG』ね!ほら『SG』。
あ〜…。
(生徒)超いいよね!ねっ!『SG』の来月号なんだけど特集のテーマが今みんなが悩んでいること。
ダイエット!豊胸!受験!あ〜ある!考えたくないもん。
この学校でも最近自殺未遂があったって聞いたけど。
その子は何に悩んでたと思う?うちのクラスだけどね。
あそこの席逆なんとか雅歌?名前ムズ過ぎ。
(生徒)それな!仲良かった子は?いっつも1人だったよね。
うん。
ねぇポーズしてモデルの。
あっ?
(生徒)それウィッグ?地毛ですそれでその子の…。
触らせて!私も!えっ…ちょっとあの…。
(生徒)何これ!ウケる!ちょっと見て見て!
(生徒)ヤバくない?
(ざわめき)あの…皆さん!皆さ〜ん!
(ざわめき)ちょっとおぉ…!おっ?おっ?
(ざわめき)おっ?おっ?ちょっ…待っ…えっちょっと!来てくれて助かりました。
昔から警官と目が合うと職務質問されるたちで。
災難だったねいろいろと。
あの…先生達は僕のこと何て?疑ってません。
隠館さんが警報装置鳴らさなかったら大変なことになってたわけですし。
真面目に仕事してたのみんな案外見てますよ。
(司書)でも保護者さん達は警察の見解が出るまでは収まらないと思います。
本の借り方が不思議な子だったんですよねぇ。
えっ?あぁ…例の生徒さん毎日のように図書室に来てたんです。
でも司書としてちょっと見過ごせないくらいに特徴的で。
詩集を借りる時には物理学の本を一緒に借りるんです。
(司書の声)SFを読む時にはビジネス書をセットで。
私小説と一緒に統計学の本。
ライトノベルには純文学。
推理小説には恋愛小説。
読書の幅が広かったってことですか?う〜ん全部読んでいたとは考えにくいです。
返却期間までに読み切れる量じゃありませんからね。
まぁとにかく隠館さんが無事でよかったです。
(生徒)じゃあね!
(生徒)明日ね!今日子さん!ハァ…。
何があったんですか?聞かないでください。
えっ…。
鍵職員室で借りられました。
大丈夫ですか?ええ寝てしまえば明日には忘れるんで。
ハァ…。
先ほどの少女がいろいろな本を借りていたという話ですが。
どういうことなんでしょう?男性がエッチなビデオを借りる時と同じです。
エッチな?カムフラージュのために違うビデオを一緒に借りたりするでしょ?厄介さんは違うんですか?はい僕は…。
話を戻しましょう。
戻しましょう。
少女はあらゆるジャンルの本を借りることで自分の好みを悟られないようにしていた。
えっ?自分の本棚を見せたくないという人案外いるものですよ?本棚によっぽど見られたくない本があるってことですか?特定の本の問題ではありません。
自分の趣味や嗜好何に影響を受けたのかを見られること自体を恥ずかしがる人もいるということです。
(今日子の声)少女もそうだったんでしょう。
ここです用具室。
厄介さんはその日どうしてここへ来たんですか?あっ…水が廊下にこぼれてて拭いてたんです。
そしたら中からガスが抜ける音がして。
なぜ水が?さぁ?でもそういうのしょっちゅうですよ。
何かこぼしてもこぼしっ放し。
掃除の人が掃除してくれると思ってるんです。
強いて言えば僕の運の悪さがここへ導いたんでしょう。
何か?あの時誰か生徒がいたような…。
第二の少女。
気のせいかもしれませんが。
私…霊感がありまして。
えっ?悪霊の気配が…。
えっ!?まいっか。
いいの?あっ厄介さんが見た第二の少女幽霊かも。
やめてください。
第二の少女が幽霊ではなく現実に存在した場合殺人の線も考えられます。
殺人?
(今日子の声)第二の少女は第一の少女を呼び出し何らかの方法で遺書を書かせ自殺に見せかけて殺そうとした。
第一の少女は酸欠で気を失いそこへ運悪く厄介さんが現れ第二の少女は逃げ出した。
第二の少女による殺人。
可能性の1つです。
生徒達の間では自殺未遂という認識で落ち着いているようでした。
(今日子の声)「あの子ならやるかもしれないちょっと浮いてたし」…だそうです。
(隠館の声)浮いていじめられてたってことは?
(今日子の声)いじめの対象にはなっていなかったようです。
それどころか空気のような存在だったと。
でも無視っていういじめもありますよね。
それな!私もそう思ったんですが無視ということもなく何より本人が人との接触を避けていたようで。
(今日子の声)かといって感じが悪いわけでもなく話し掛ければ対応はする。
ところが自分自身のことに話が及ぶと黙ってしまう。
(今日子の声)本の借り方と似てますよね。
自分の趣味や嗜好内面を知られたくない。
クラスメートにすら自分のことを知ってほしくない。
それが少女の人物像です。
生徒達のほうもそうした気配を敏感に感じ取って距離を置いていた。
じゃあ自殺の原因は?ホントに誰も心当たりはないようでした。
ただ皆さん死にたくなる気持ちは分かるって。
分かる?ええ。
(今日子の声)「死んじゃいたくもなるよねだってムカつくしくだらないし忙しいしつまんないし」。
ホントもうそれなって感じです。
希死年慮死にたい気持ちとでもいいますか…。
大人にだって誰にだってある。
特に中学生ぐらいの年代が一番強い。
でもそれじゃあ中学生がみんな大した理由もなしに自殺することになっちゃいます。
はい実際はそうはなりません。
人間には本来生存欲も備わっています。
何かのたがが外れない限り。
少女の場合たがが外れてしまった。
かもしれません。
う〜ん…ただ気になるのはこの場所です。
自分を知られたくない少女なら誰にも見つからない目立たない場所で死のうとするんじゃないでしょうか。
少女の人物像と合致しません。
少女はなぜここを選んだんでしょう?ここを選んでくれてよかった。
助けられたから。
早く目を覚ましてくれるといいですね。
(今日子の声)自殺だとしたら動機は何なのか?あるいは第二の少女による殺人か。
いずれにせよ情報が足りません。
次はどこへ?塗君に住所を調べてもらってます。
そろそろ連絡が来る頃だと…。
はっ!私この格好で歩くんですか?えっ…元の服は?燃やされました。
すごいですね。
マジぱねぇ。
言葉うつり過ぎです。
いくら何でもこの格好は…。
よかったらこれ。
服買って来てください。
えっ?厄介さんのお好みで。
好み?ミニスカはダメです。
いや思ってません!そんなこと想像してません!どんな服を選んでくださるのか楽しみです。
金額はお任せします厄介さんの懐次第で。
僕の懐?うん。
じゃいってらっしゃい!えっ…ハァ…。
悪霊退散!幽霊見〜っけ。
さっきからずっと私達の話を聞いてましたよね?あなたが第二の少女。
温かい。
幽霊じゃなくてほっとしました。
(戸が開く音)今日子さん気に入ってくれるかな。
ちょっといいですか?さっき誤解は解けたでしょ!その袋は何です?いやちょっとあっ…ちょっとあ〜!あっ…痛ててて!女性ものタグがない!洗濯物を盗んだ可能性が!うっ!新品ですタグは取ってもら…。
動かないから外してください!
(婦警)ダメだ。
何でダメなんですか!ホント…いや…。
(也川)すいません!兄が何か?塗君…。
ダメでしょ迷惑掛けちゃ!いや僕はただ女性ものの服を持ってたってだけで…。
兄は…スカートが好きなんです。
男がスカートをはくのはそれほどまでに許されないことでしょうか?どんな趣味でも心の中は自由です。
あなた方はそれを恥ずべきことだと否定するんですか?ハァ…。
(也川)はい。
ありがと。
婦警さん達に僕の服だと思われたのは不本意だけど。
いや不本意って言ってしまうとはいてる方々を否定することにもなりそうで何とも言いづらいこの複雑な心境をどこに持って…。
くどい!乗ってサンドグラスに客。
えっでも今日子さん…。
今日子さんは例の少女の自宅。
少女の両親に会いに?いや…。
調べたら1人暮らしだった。
1人?
(也川の声)両親は健在だけど事情があって一緒には暮らしてないみたい。
入院中の病院にも1度来たきりだって。
ごめんください。
あっ…いらっしゃい。
つかぬことをお伺いしますがこの子ここへ来たことあります?私いとこなんです。
家出しちゃって行方を捜してて。
えっ…行方不明なの?はい心配で。
あぁ…だから最近来なかったんだ。
最後に来たのは?え〜と…。
厄介君が確か…2週間くらい前かな?来たって言ってた。
はい?2週間前。
厄介君?
(店主)あっうんバイトのコ。
もう辞めたんだけど。
厄介ってあんまりない名前ですよね〜。
ないねぇ災厄の「厄」だから。
ハハハ…。
フフフ…。
フフフ…。
(遠浅)よぉ!災厄の厄介。
まさか…!参考人から殺人の容疑者に格上げ!
(遠浅)喜べ。
無罪放免だ。
女の子目覚めてたんだって。
目覚めてた?看護師さんが点滴をするたび管が外れてて。
(絆井の声)最初は無意識のうちかと思ったんだけどどう考えても少女自身が自分で外してるとしか考えられない。
(絆井の声)目覚めない少女は目覚めたくない少女だった。
目覚めたくない…。
うん。
食事も取らず点滴も拒否。
すなわち少女には自殺の意志がありその意志は現在も継続中とみれらる。
少なくとも上はそう判断した。
自殺の理由は?家庭の事情か友達とケンカでもしたか。
いずれにせよ警察の仕事はここまでだ。
学校も少女の両親もこれ以上騒ぎを大きくするなと言ってる。
少女が話さない限り真実は永遠の謎ってことだな。
厄介君今日子さんから電話だよ。
よしよし。
今日子さん!今どこですか?さっき遠浅さんが…。
あっ…刑事さんが来たんです。
そうですか疑いが晴れたならよかったです。
少々困っていたもので。
えっ今日子さんにも困ることがあるんですか?私は万能ではありません。
あっ…。
少女がなぜああするに至ったかは分かったんですが私としても何ぶん…。
ちょっと待ってください!少女の自殺の理由分かったんですか?はい。
僭越ながら。
今日子さん!ねぇ起きて!ねっ今日子さん!起きて!ねっ!ねっ…今日子さん!今日子さん!!ばぁ〜!起きてますご心配なく。
はぁ…。
あっ!私の服!ありがとうございます!わ〜い!カーテン閉めましょう。
失礼しました。
フゥ…。
ベッドで横になって目覚めたくない少女の気持ちを考えていました。
少女の家行ったんですよね?はい鍵が掛かっていましたがピンを2本使って…。
それダメなやつです。
殺風景なお部屋でした。
音楽に関するものは一切なし。
あの遺書を疑った警察の見立ては間違ってなかったと思います。
遺書は偽物だったってことですか?いえ少女自身が書いた本物です。
ただし内容は本の借り方と同じでフェイクだった。
わざと興味のない当たり障りのないものを理由にしたんです。
なら最初から何も書かなきゃよかったんじゃ…。
書かなければ違う理由が類推されてしまう。
両親に見捨てられたから友達がいないから孤独だから自殺した。
「かわいそうな子だね」なんて思われる。
確かに…思われるかも。
そんな自分超ダサい。
ダサい?だったら人気バンドに影響されたというほうがまだまし。
そう思ったんじゃないでしょうか。
よいしょ。
それくらい自意識が強かったともいえます。
この服にはどんな意味が?初めて会った時真っ白だったんで。
なるほど気に入りました。
少女の自意識の強さは分かりました。
それでホントの自殺の原因は何なんですか?第二の少女が話してくれました。
第二の少女いたんですか?人間でした。
(今日子の声)彼女は誰にも見られたくないものを偶然少女に見られてしまったそうです。
(隠館の声)見られたくないもの?
(今日子の声)具体的な内容は秘密です約束したので。
彼女はそれからいつか誰かにバラされるんじゃないかと気が気じゃなかった。
少女が消えてしまえばいいと思った。
(今日子の声)そして事件当日の放課後いつまでも帰ろうとしない少女が気になって後をつけた。
何をしているかはさっぱり分からなかったそうですが…。
やがて厄介さんが来たのを見て…。
(今日子の声)覗き見していた自分が恥ずかしくなり逃げ出した。
(今日子の声)事件が発覚し罪のない厄介さんが疑われていることを知ったものの誰にも言えず苦しんでいたようです。
ここで1つ疑問が生じます。
彼女が目撃した少女の行動は何だったのか?水をまく行為は自殺の工作に何ら結び付きません。
そういえばそうですね。
答えは1つこれは…殺人である。
殺人?殺されそうになったのは…。
あなた厄介さん。
僕!?殺そうとしたのは目覚めたくない少女。
(今日子の声)少女はあなたを殺そうとした。
あなたは1度少女に会ってるんです。
えっ?トンボちゃん。
思い出しましたか?あの時の…。
あぁこの本トンボちゃんが好きそうだな〜トンボちゃん?あぁ常連の女の子お財布にトンボのアップリケが付いてんのへぇ〜180円のお返しですはいこの本こういう本好きなんだよね?
(今日子の声)薦めた本はきっと少女の好みそのものだったんでしょう。
いくらフェイクを織り交ぜていてもプロである店主さんには好みがお見通しだった。
少女からすれば隠していた心の内を暴かれた気分になった。
僕が不用意に本を薦めたから。
責任を感じることはありません。
少女にとっては衝撃の出来事だったかもしれませんが世の中の一人一人千差万別の感情全てをくみ取って行動するなんてことは不可能です。
本を薦めただけで終わっていたなら今回の事件は起こりませんでした。
僕が学校に現れたから?その点はお互いにとって実に不運でした。
(今日子の声)古本屋には二度と行かなければいい。
そう自分を納得させたのに毎日通う学校へその男がやって来た。
厄介さんからすれば制服に埋もれた見分けがつかない女生徒の1人ですが少女からすれば違います。
それから少女は自分のことを言いふらされるんじゃないかと気が気じゃなくなった。
あの人が消えてしまえばいいと思った。
くしくも第二の少女と似たような心境です。
違いがあるとすれば少女は家でも学校でも1人だった。
子供じみた小さな殺意は誰にも邪魔されず止める人もいないまま育って行った。
普通に殺したら動機が探られてあれほど恐れていた自分の心の内が公にさらされてしまうことになるかもしれない。
だから自分もろとも消そうとした。
(今日子の声)少女は細工をした上で何日もチャンスを待ったんだと思います。
厄介さんが1人で用具室の近くへ来る瞬間を。
(今日子の声)そして見事罠にはめた。
君!君!君!しっかり!
(今日子の声)唯一の誤算は厄介さんが妙にサバイバル術にたけていたということです。
おかげで一命を取り留めあまつさえ殺そうとした相手に助けられ少女にとっては恥の上塗りです。
だからこのまま黙って死のうとしている。
少女の殺意を散らしてくれる環境があれば止められたのかもしれません。
でも事件は起きてしまった。
残念ながら証拠は間接的なものだけです。
少女の心の中にしか答えはない。
話を聞き出すことは私にはできませんでした。
いうなれば少女は恥の記憶にさいなまれている。
それを私が…何があっても1日で忘れられる私が何を言えばいいんでしょう。
少女にしてみれば「あんたに何が分かんの?」。
ホントそれなって感じです。
以上で報告は終わりです。
終わり…。
はいあっ。
よかったらこれ服のお礼に。
最後の1個でしたラッキーですね。
この事件は自殺未遂として扱われる
動機は不明としてあるいは少女の不可解な心の闇として
少女の行動を心の闇として片付けるのは簡単だ
でも闇に光を当てるのは大人の仕事だと思う
少女は何も言わず誰にも言わず静かに死んで行こうとしている
死んだからって許されることじゃない
あっけなく死んで行くなんて許さない
入らせてもらうけどいいかな?
(戸が開く音)
こんなにツイてない僕でも生きる目的もなくやりたいこともない僕でも生きている
僕の命は僕のものだ
一方的に奪われそうになった僕は怒っていい
でも今は少女に逆瀬坂さんに伝えたい
はじめまして。
僕はここの患者で何で入院したか記憶が飛んでて覚えてないんだけどそれ以外は元気で今日退院したら今の仕事を辞めて遠くへ行こうと思ってる。
もう二度とここへは来ない。
だから最後に少しだけ話を聞いてくれるかな。
聞こえてるか分からないけど勝手に話すね。
まずは…僕が小学生の時の話。
カッコ悪過ぎて今まで誰にも話したことない話なんだけど。
生きるって恥ずかしいことなんだ
もしかしたら世の中にはカッコ良く生きられる人もいるかもしれないけど僕は知らない
そうじゃない
右往左往してジタバタしてカッコ良くなんかなくてみっともなくて
自分を嫌いになりそうな毎日だ
でもここにいる
生きている
だから君も生き恥をかいて生き続けよう
みっともなくて恥ずかしくて逃げ出したくなる記憶と共に生き続けよう
(ドアが開く音)おかえり。
戻りました。
1人?ええ。
今日は少しだけ救われた気分になりました。
ごゆっくり。
あの人…。
ステキな人だったな。
はじめまして掟上今日子と申します。
このドラマの原作本とコミックをセットで20名様にプレゼントいたします。
詳しくは番組ホームページをご覧ください。
ご応募お待ちしております。
2015/11/14(土) 21:00〜21:54
読売テレビ1
掟上今日子の備忘録 #6[字][デ]
女子校の管理作業員として働く厄介。自殺をはかる少女を助けたはずが、またもや殺人犯として疑われる。厄介と今日子は女子校に潜入し、事件の真実と少女たちの心に迫る!
詳細情報
番組内容
女子校の管理作業員として働き始めた厄介(岡田将生)は、ガス自殺をはかろうとしている生徒を助け出すが、またもや殺人犯として疑いをかけられる。証言してもらいたくても少女は目覚めないまま。厄介は今日子(新垣結衣)に真相の究明を依頼し、2人は女子校に潜入。そんな中、厄介は事件当時に別の少女を現場で見かけた事を思い出す。果たして少女は自殺?それとも他の少女による殺人未遂?今日子は少女たちの心に迫っていく。
出演者
新垣結衣
岡田将生
及川光博
有岡大貴(Hey!Say!JUMP)
内田理央ほか
【スペシャルゲスト】
吉田沙保里
原作・脚本
【原作】
「忘却探偵シリーズ」西尾維新
『掟上今日子の備忘録』『掟上今日子の推薦文』『掟上今日子の挑戦状』『掟上今日子の遺言書』
【脚本】
野木亜紀子
監督・演出
【演出】
小室直子
音楽
笹野芽実
末廣健一郎
【主題歌】
「No.1」西野カナ(ソニー・ミュージックレーベルズ/SMEレコーズ)
【オープニングテーマ】
「溢れるもの」Goodbye holiday(avex trax)
制作
【プロデューサー】
松本京子
森雅弘
【制作協力】
日テレアックスオン
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
ステレオ
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