生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
10時5分です。
「くらしきらり解説」です。
きょうのテーマはこちらです。
高齢者や体の不自由な人に欠かせないのが電動の車いすや介護ベッドなどの福祉用具です。
ここ数年、死亡事故が多く発生していることが分かりました。
高齢者などをサポートするはずのこうした器具でなぜ事故が起きるのかまたどう防いだらいいのか担当は水野倫之解説委員です。
まず、福祉用具の事故はどのくらい起きているんですか?水野⇒警察や製品評価技術機構のまとめによると過去5年で100人近くの方が亡くなっているんです。
福祉用具の中には、電動車いすや介護ベッド、手すりなどさまざまありますが死亡事故が最も多いのが電動車いすで64人の方が亡くなっています。
次いで多いのが介護ベッドで、22人などとなっています。
背景には急速に進んでいる高齢化があります。
福祉用具の利用が増えているということです。
総務省は9月に発表した65歳以上の高齢者の人口は推計で3384万人としています。
総人口に占める割合は27%。
いずれも過去最高なんです。
それとともに福祉用具が増えていまして例えば先ほどの電動車いすですが出荷台数は、累計で60万台を超えています。
街なかでもお年寄りが利用しているのを見かけます。
便利そうだなと思っていました。
ハンドル型やジョイスティック型がありますが操作が簡単なので普及が進んでいます。
例えば今、主流のハンドル型レバーを引くと進んで離すと止まります。
スピードはダイヤルで設定しますけれども上限は人の早歩きに相当する時速6キロで大体4キロくらいに設定して使うことが多いということです。
介護保険の対象になっていてレンタルできますし車の免許を返上した人に電動車いすへの補助金を出す自治体もあって普及が進むとともに事故も多くなっています。
どういう事故が多いんですか?さまざま形態がありますが製品の特徴をよく理解していないことによる事故が多くなっているんです。
最も多いのは交通事故で年間200件以上起きていますがそのうちの8割は道路を横断中に車にはねられるというケースです。
どうして横断中に事故が多いんですか?車側の不注意もありますが警察は、時速6キロを超えるスピードが出ないという電動車いすの特性を理解していないということに関係しているというのが多いといいます。
例えば横断歩道を渡ろうとしていて歩行者用信号が点滅し始めると一般の人であれば駆け足で渡り切ろうとできますけれども電動車いすの場合は急に加速できないことから、渡り切ることができずにはねられるケースが多いんです。
もっとスピードが出るようにできませんか。
それができないんです。
というのは、電動車いすは法律上は車やバイク、自転車などの車両ではなくて歩行者の扱いです。
ですので原則、歩道を走行して速度に上限が設けられています。
運転免許は不要ですが安全講習などの義務もないのでスピードを出せないという特性を理解していない人が多いというんです。
また電動車いすの構造にも事故につながりやすい原因があるんです。
実際に起きた事故をもとにした再現映像です。
道路の端は傾斜していることが多いです。
バランスを崩して、横に倒れてしまうことがあります。
同じように通路の端の段差に車輪を取られて、倒れてけがをするという事故も起きています。
また坂をバックで下っているときに急ブレーキをかけると大変危険です。
バランスを崩しやすいんですね。
原因は、斜めになったときの重心の位置にあります。
人が乗っていないときは重心は低い位置にありますが人が乗ると重心が高くなって倒れやすくなり不安定な状態になります。
もっと安定するようにできませんか?車幅を広くすればもちろん安定しますがこれも今の規則ではできないんです。
電動車いすは、JIS規格でサイズが決められていまして幅は70cmまでと決まっています。
法律上歩行者ですから原則歩道を走行します。
あまり幅が広すぎるとほかの歩行者の邪魔になる可能性があるからです。
これ以上、広げることはできないんです。
重心が高くて幅が狭いので傾斜しているところでは重心が大きく崩れて転倒しやすくなるというわけです。
これだけ死亡事故があるのでなんとかなりませんか?メーカーによっては傾くと警報音が鳴るようにしたり道路の段差や溝を感知するセンサーを取り付けて自動的にブレーキをかけるというシステムを搭載したものも開発されています。
また自治体によっては登録制度を設けて安全講習会への参加を呼びかけているところもあります。
講習が事故防止につながるのであれば免許制度にして講習を義務づけたらどうですか。
よく言われることですが専門家によると免許制度にするということは車両になりますので原則車道を走ることになって逆に危険性が高まることにもなりかねないということです。
ですので、まずは利用者やその家族が電動車いすの特性をよく理解して無理な横断はしない。
特に車のドライバーは電動車いすを見かけたらスピードを抑えるといった配慮が求められると思います。
みんなで事故を防ぐように注意しなければいけませんね。
次に死亡事故が多い福祉用具は介護ベッドです。
5年で22人の方が亡くなっていますし、21人が重傷を負っています。
どんな事故が起きますか。
実際に起きた事故をもとにした再現映像です。
利用している人の腕が柵から出ているのに気づかないまま電動式のベッドを起こしていくと骨折してしまうことがあります。
介護する人が、腕や足が柵から出ていないことに注意する必要がありますけれどももう1点認知症の方は注意が必要です。
リモコンを携帯電話と間違えて操作してしまううちにベッドが上がってきてけがをする、事故になるというケースもあるんです。
認知症の方なので、どうしても操作をしてしまうという場合は必要なとき以外は電源コンセントを抜いておくという対策も有効かと思います。
このほかにも介護ベッドの隙間に首が挟まって窒息死する事故ベッドの手すりの出っ張りに服が挟まって窒息するような事故も起きています。
こういうところが危なかったですするわけですけれども対策は取られていないんですか?事故がたくさん起きているので業界もJIS規格を改正して例えば柵の隙間は首が入らないような幅にしたり手すりの不要な出っ張りは作らないというふうにJIS規格を改正しています。
ただJIS規格が改訂される前の手すりもまだありますし柵の隙間がどうしても不安だという場合は黄色い、隙間を埋める補助器具がありますのでこれを必ず取り付けてください。
これは業者に言えば取り寄せることができます。
福祉器具は、ある日突然体調が悪くなって使うということが多くて、使い勝手がなかなか分からないことが多いと思います。
実際にはレンタルして使うことが多いと思いますがレンタルの事業所には必ず福祉用具相談専門員という方がいらっしゃいます。
用具に詳しい方です。
説明が義務づけられているので最初に借りる方、本人もしくは家族の方がこの方から説明を聞いてほしいと思います。
電動車いすもそうですが福祉用具を安全に利用するためにはまずは製品の特性をよく理解する。
そのうえで利用することが重要だと思います。
水野倫之解説委員でした。
次回は竹田忠解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2015/11/13(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「福祉用具の事故に注意」[字]
NHK解説委員…水野倫之,【司会】岩渕梢
詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…水野倫之,【司会】岩渕梢
ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:1565(0x061D)