この動画を撮影したのは、08年のデモ以来、最大規模となるデモがソウル中心部で行われると知り、後輩の義務警察官たちが受ける苦しみを記録に残し、人々に見せたかったためだ。Aさんは「ネットに投稿されるデモの動画には、警察が放水砲を噴射する様子は映っていても、放水砲を噴射するまでにデモ隊が行った暴力行為はきちんと映っていない」と指摘。韓国社会のこうした姿に「鬱憤(うっぷん)が溜まっていた」といい「一般の人々に暴力的なデモ隊の実態をきちんと知ってほしい」と訴えた。今回のデモでは暴力行為により警察官113人が負傷した。この5年間、大小さまざまなデモで負傷した警察官は計608人に上る。
Aさんの動画が急速に広まると、その身元を暴こうとするネットユーザーも現れた。あるウェブサイトには「(Aさんの)近くで撮影者(Aさん)を映した動画を求む」「テレビのニュースなどをよく見れば誰か特定できる」などと、Aさんを見つけ出そうとする書き込みが掲載されている。これに対し、Aさんは「頭巾(ずきん)で顔を隠して暴力を振るう犯罪者たちを探すべきなのに、彼らが登場する動画の撮影者を見つけ出そうとするなんておかしい」と反論した。「集会の場所と時間を守って平和的にデモを行うなら誰も何も言わないだろうが、今回のように違法・暴力的なデモに変質するなら話は別だ」と、重ねて批判した。
今回の暴力デモを呼び掛けた全国民主労働組合総連盟(民主労総)や韓国進歩連帯などは12月5日にソウル中心部で2度目のデモを行うと予告しているが、Aさんはこの日も現場に出て撮影する考えだ。Aさんは「韓国のデモ隊の暴力を義務警察官はよく分かっているが、一般国民はあまり知らない。一部デモ隊の暴力の実態を全てさらけ出すまで、動画を撮影し続けたい」と語った。