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原子力規制委:もんじゅ運営「不適当」 文科相に勧告決定

毎日新聞 2015年11月13日 13時58分(最終更新 11月13日 14時46分)

日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」=福井県敦賀市で2015年10月7日、本社ヘリから三村政司撮影
日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」=福井県敦賀市で2015年10月7日、本社ヘリから三村政司撮影

 原子力規制委員会は13日午後の定例会合で、安全管理上のミスが相次ぐ高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)について、運営主体の日本原子力研究開発機構は「不適当」とし、新たな運営組織を見つけるよう馳浩文部科学相に求める勧告をまとめた。同日午後に、規制委の田中俊一委員長が勧告の文書を馳文科相に提出する。半年以内に適切な運営主体を示せない場合、もんじゅのあり方を抜本的に見直すことも求める。

 もんじゅは通常の原発より特殊な技術が必要で、原子力機構に代わる新組織を見つけるのは難しく、もんじゅを中核とした国の核燃料サイクル政策は大きな岐路を迎える。馳文科相は13日の閣議後会見で「国のエネルギー政策の根幹であり、関係閣僚と連携して取り組む」と述べた。

 勧告は規制委設置法に基づく。強制力はないものの、原子力施設の安全が確保されない場合は改善を求めることができる。こうした勧告権の行使は2012年9月の規制委発足以来、初めて。勧告の文書で、規制委は原子力機構について「もんじゅの運転を安全に行う主体として必要な資質を有していない」と指摘した。

 もんじゅは12年に、機器全体の2割に当たる約1万件で点検漏れが発覚。規制委は13年に原子炉等規制法に基づく運転禁止命令を出し、原子力機構に管理体制の見直しを求めたが、その後も新たな点検漏れや機器の安全重要度分類のミスなどが次々と発覚するなど改善されなかったため、初の勧告に踏み切った。もんじゅは過去に約1兆円、年間約200億円の国費が投入されたが稼働実績はほとんどない。【鳥井真平】

 【ことば】もんじゅ

 日本原子力研究開発機構が運営する高速増殖炉の原型炉の名称。知恵を象徴する(文殊菩薩(もんじゅぼさつ)にあやかって命名された。使った以上の燃料を生み出すため「夢の原子炉」とも言われた。水を使う一般の商用原発と異なり、核分裂で発生した熱を液体ナトリウムで取り出す。ナトリウムは空気や水に触れると爆発することがあり、高度な技術が求められる。1994年に初臨界に達したが、翌95年にナトリウム漏れ事故(国際事故評価尺度レベル1)を起こし、稼働実績はほとんどない。

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