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もんじゅ勧告:核燃政策、曲がり角…新組織探し、難航確実

毎日新聞 2015年11月13日 21時42分(最終更新 11月14日 00時08分)

原子力規制委員会の田中俊一委員長(左)から高速増殖原型炉「もんじゅ」に関する勧告書を受け取る馳浩文部科学相=文部科学省で2015年11月13日午後3時15分、宮間俊樹撮影
原子力規制委員会の田中俊一委員長(左)から高速増殖原型炉「もんじゅ」に関する勧告書を受け取る馳浩文部科学相=文部科学省で2015年11月13日午後3時15分、宮間俊樹撮影
もんじゅの運営主体の変遷
もんじゅの運営主体の変遷

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県)を運営する日本原子力研究開発機構に対し、レッドカードを突きつけた13日の原子力規制委員会の勧告は、国策の核燃料サイクル政策に大きな影響を与える可能性がある。監督する文部科学省は、海外の原子力企業や電力会社などとの提携も含めて「新組織」の検討を始めるが、技術面や能力面で選択肢は極めて限られる。勧告への報告期限となる来年5月ごろまでに示せなければ、もんじゅは廃炉を含めた抜本的見直しを迫られる。【鳥井真平】

 「(新組織を検討する)今後の取り組みに、助言・指導いただきたい」。13日に規制委の田中俊一委員長から勧告の文書を受け取った馳浩文科相はこう呼び掛けたが、田中委員長はその後の記者会見で「勧告を出して、自分で答えは出せない」と述べ、新組織の検討の議論に参加する考えはないことを強調した。

 原子力機構は不祥事などに際し過去2回、看板の掛け替えで生き残ってきた経緯があるが、田中委員長は会見で「勧告には原子力機構に代わる(組織)と明確に書いている」と話し、「3回目」の掛け替えを改めてけん制した。

 文科省の新組織の検討過程で、ポイントになるのは液体ナトリウムを取り扱う技術の有無だ。もんじゅでは冷却材として、空気や水に触れると爆発する恐れがある液体ナトリウムを使う。扱った経験を持つのは国内には今の原子力機構しかなく、文科省は海外の原子力企業との連携も含めて検討を始める方針だ。

 ただ、海外を見渡しても米英独などの主要国は高速増殖炉の開発から撤退しており、新たなパートナーを見つけるのは困難を極める。高速増殖炉の研究は1950〜60年代に欧米で進んだが、やはり液体ナトリウムの管理技術が壁となり、90年代ごろまでには相次いで中止や撤退に追い込まれた。ナトリウム漏れ事故を起こし、98年に廃炉になったフランスの実証炉「スーパーフェニックス」がその代表例だ。

 現在、高速増殖炉の開発を積極的に進めるのはロシアや中国、インドの3カ国にとどまるが、安全保障や核セキュリティー上の理由で、提携の余地はないとみられる。田中委員長も会見で「(新組織が)ないと言い切るわけにはいかない。(高速増殖炉については)世界中でもあまり研究されておらず個人的評価は控える」と突き放した。

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