今、民主党の細野政調会長や前原元代表が民主党の解党、新党結成を要求していて、ネットでは新党の名前について「てき党」とか「ブーメラン党」とかいう、それこそ適当な意見が出ているそうです(笑)。
できれば、独立民主党とか、立憲民主党と言うような名前にふさわしい政党ができるといいのですが、解党を要求している人たちのメンツを見ると、どうしても「右翼的野党再編」という言葉が浮かんで、とてもそんな名前の政党ができそうにありません。
ところで、昨日アップした
臨時国会招集を要求しないおおさか維新、次世代、元気、新党改革は自民・公明と共に議員歳費を返上すべき
という記事を書くために、ネット検索をしていたら、産経新聞の2015年10月24日付けの
民主、臨時国会要求でまた“ブーメラン” 自民改憲草案「20日以内召集」 でも自らは改正放置 頼みの法制局長官も過去に「違反でない」
という記事を見つけました。
この記事を検討すると、まさに、産経新聞こそ「ブーメラン新聞」にふさわしいと思ったのでご報告します。
民主党にしつこく「ブーメランだ」「ブーメランだ」と書く産経新聞なんですが。 2014.10.30 産経新聞朝刊から
産経新聞はこの記事の中で、臨時国会召集を要求されながらそれをしようとしない安倍政権が立憲主義に反すると、民主党らが批判していることに対して、
『小泉純一郎政権下で臨時国会の召集が見送られた15年12月の参院外交防衛委員会(閉会中審査)で、当時の秋山收内閣法制局長官は
「あえて臨時国会を召集しなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」
と答弁。憲法の規定に基づく要求があっても臨時国会を召集しないことについて、「立憲主義」の観点から合憲とのお墨付きを与えた。』
として、
『「違憲」と批判してきた安全保障関連法の審議で頼った歴代内閣法制局長官の国会答弁でも、「臨時国会見送り」の違憲性は否定されており、批判が己に返る「ブーメラン政党」の本領を発揮した。』
と揶揄しています。
しかし、いくら、内閣法制局が政府の機関だからと言っても、憲法が、臨時国会の「召集を決定しなければならない」と書いているものを、「あえて招集しなくても憲法に違反するとは考えない」と答弁していると初めて知って、私は仰天しました。
安倍首相、憲法には「臨時国会を召集しなければならない」と書いてあるのに、何を与党と相談するのですか?
で、びっくりして良く良く調べてみると、この記事は実は、2003年12月16日の参議院外交防衛委員会における、秋山収法制局長官の答弁を切抜きしたものだったのです。
産経新聞が切り抜いた答弁の前には、実はこんなふうな文章がありました。
「憲法53条後段は、「内閣は、」その要求があった場合に「その召集を決定しなければならない。」と規定しておりますが、召集時期につきましては何ら触れておりませんで、その決定は内閣にゆだねられております。
このことから、いつ、いつ召集してもいいということではもちろんございません。臨時会の召集要求があった場合に、仮にその要求において召集時期に触れるところがあったとしましても、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないというふうに考えられているところでございます。
もっとも、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと異なるところはございませんので、あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません。」
頼むよ(笑)。
つまり、秋山長官が言いたかったのは
(1)各議院の4分の1以上の議員以上の国会議員が要求したら、内閣は必ず臨時国会を召集しなければならない。
(2)しかし、召集時期までは憲法に規定がないので、内閣は召集のために必要な合理的な期間内に召集を決定しなければならないと考えるべき。
(3)ただもし、合理的な期間内に常会(通常国会)が開かれる予定があったら、あえて臨時国会を召集しなくても憲法には違反しない。
ということです。
「合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと、異なるところはございませんので、」
というところを飛ばして、
「あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません。」
という部分だけ報道した産経新聞の根性の入り方はスゲエよ(笑)。
日本報道検証機構は産経新聞に対して、この記事は「誤報」だとしていますが、こんな切り貼りをしたら内閣法制局長官の答弁の意味が180度変わってしまいますから、もはや誤報じゃなくて、むしろ「捏造」でしょ?
九州大学の憲法学の教授南野森先生はこの記事に関して、
『産経記者団には、引用は正確に、文脈を押さえて紹介すべきという、およそジャーナリズムの基本中の基本であるはずの作法に則った報道をお願いしたい。
「民主党の批判は、皮肉にも同党が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにした」
と批判する産経新聞の記事は、皮肉にも同紙が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにしたと思う。』
とされています。
そこで、私は「ああ、産経新聞こそ、まさにブーメラン新聞だな」と感じた次第。
日本報道検証機構は産経新聞に質問状を出したそうなんですが、いまだに回答はなく、この記事はネット上に掲載され続けています。
そのマスメディアとしての誇りなき姿は、もはや「惨景新聞」の名にもふさわしいかと思います。
世界が驚いた。
世界が別の意味で驚いた。
しかも江沢民氏が出てくるまで3か月も誤報を認めず訂正しなかった。そこだけ実証主義だw
ちなみに日本の新聞史上、号外まで打っての誤報は、大正15年12月25日に大正天皇が死去した際、東京日日新聞(現在の毎日新聞)が号外で「元号は光文」と誤報を行った「光文事件」以来85年ぶりのことだったそうですが、そのあとすぐに・・・・
それにしても豪快な号外だw
ハルキスト、がっくり。
規模は小さいがこれもなかなか凄い話だ。これらが全部ここ数年の話だから恐れ入る。
ちなみに、うちなら盗用しても文句言いませんよw
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むしろ、全国紙の東スポ?
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憲法主義:条文には書かれていない本質 | |
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もしも国民的アイドルが、日本国憲法を本気で学んだら……。
日本武道館のステージで憲法を暗唱して聴衆を沸かせた高校生(当時)アイドルが、気鋭の憲法学者による講義をマンツーマンで受けた結果、日本一わかりやすい憲法の入門書ができました!
元朝日新聞記者の植村隆氏は「従軍慰安婦」が日本軍に強制連行されたとは書いておらず、逆に産経新聞はそう書いていたことがはからずも明らかになった、産経新聞の記事から抜粋。
2015.8.30 06:00
【元朝日新聞・植村隆氏インタビュー詳報(2)】
「『強制連行』僕は使っていない」
(前略)
植村「一つお聞きしたい。そうしたら、阿比留さん、この記事はどう読む?(平成3年12月7日付の産経新聞大阪本社版記事を示す)」
阿比留「ああ、(記事は)間違っていますね」
植村「間違っている?」
阿比留「はい」
植村「間違っている?」
阿比留「間違っていると思いますね」
植村「どこが間違っているんですか?」
阿比留「『日本軍に強制的に連行され』」という(部分)」
植村「これは産経新聞の記事ですね?」
阿比留「だから、うちが間違っているんですね」
植村「訂正かなんかやられたんですか」
阿比留「これは今日、初めて見ましたから訂正したかどうかはちょっと分かりません」
植村「これ、間違っているんですか」
阿比留「間違っていると思いますね」
植村「2回も書かれていますね?」
原川「別の記事ですか」
阿比留「これですね。この部分のことを言っているんですか」
植村「いやいや、その日本軍に…」
阿比留「あっ、こっちか」
植村「日本軍に強制的に連行、とありますよね」
阿比留「うん。間違っていると思います」
植村「間違っている! これは『金さんが17歳の時、日本軍に強制的に連行され、中国の前線で、軍人の相手をする慰安婦として働かされた』というのを書いた12月7日の産経新聞大阪版。これは金学順さんの記者会見の時の取材で書いていますね。これ間違っている?」
阿比留「うん」
植村「間違っている? これはね93(平成5)年8月(31日付の産経新聞大阪本社版)の記事。(記事を読み上げる)太平洋戦争が始まった1941(昭和16)年ごろ、金さんは日本軍の目を逃れるため、養父と義姉の3人で暮らしていた中国・北京で強制連行された。17歳の時だ。食堂で食事をしようとした3人に、長い刀を背負った日本人将校が近づいた。『お前たちは朝鮮人か。スパイだろう』。そう言って、まず養父を連行。金さんらを無理やり軍用トラックに押し込んで一晩中、車を走らせた」って出てるんですけど、これも強制連行ですね。両方主体が日本軍ですけど、それはどうですか」
阿比留「間違いですね」
植村「間違いですか? ふ〜ん。これがもし間違いだったら、『朝日新聞との歴史戦は、今後も続くのだと感じた』って阿比留さんは書かれているんだけど、産経新聞の先輩記者と歴史戦をまずやるべきじゃないですか。原川さんどうですか」
原川「私、初めて見ましたので、どういう経緯でこうなったか、どこまで調べられるか。これはちょっと日付をメモさせてもらって」
植村「いや、あげます。調べて、間違いだったらそれがどうなのか、どうするのかも含めて知らせください。歴史戦というのは、もし歴史戦を皆さんがやっておられるんであれば、たぶん真実のためにやっておられると思うんです。皆さんがね。であれば、先ほど間違ったとおっしゃったことに対しても、謙虚に向かうべきだと思います」
阿比留「そうですね」
(後略)
2015.10.24 18:59 産経新聞
民主、臨時国会要求でまた“ブーメラン” 自民改憲草案「20日以内召集」 でも自らは改正放置 頼みの法制局長官も過去に「違反でない」
憲法の規定に基づき衆参両院議長に臨時国会の召集決定を求める文書を他の野党と共同提出した民主党が、召集までの期日を明記した自民党憲法改正草案を盾に、開会に慎重な政府・与党を批判している。ただ、民主党は召集期日を明記していない現行憲法の「欠陥」を放置してきただけに、説得力は今ひとつ。「違憲」と批判してきた安全保障関連法の審議で頼った歴代内閣法制局長官の国会答弁でも、「臨時国会見送り」の違憲性は否定されており、批判が己に返る「ブーメラン政党」の本領を発揮した。
自民党が野党時代の平成24年に発表した憲法改正草案では、現行の憲法53条について、衆参両院のいずれかの4分の1以上から要求があれば「20日以内に臨時国会が召集されなければならない」と明記している。民主党の岡田克也代表は22日の記者会見で、この点を挙げて「自ら主張している通り、召集するのは当然だ」と批判した。
ただ、民主党がこれまで、期日が定められていない憲法53条の改正を主体的に訴えてきたとはいえない。そもそも党内に護憲派と改憲派が同居する事情も手伝い、憲法論議に後ろ向きな一方、激しい党内議論を経て批判覚悟で現行憲法の問題点を世に問うた他党を糾弾する無責任さを改めて露呈した形だ。
こうした民主党の姿勢に対し、自民党幹部は「そう言うからには、あの草案を通してくれるのかな」と苦笑するありさまだ。
岡田氏は記者会見で「政府が堂々と憲法違反を犯している」とも強調した。
民主党は先の通常国会で成立した安保関連法の審議で、歴代内閣法制局長官が集団的自衛権の行使を容認してこなかったことなどを論拠に、「立憲主義に反する」などと違憲論を展開した。岡田氏は記者会見で、安保関連法の「違憲部分」を廃止する法案を来年の通常国会に提出する意向も示した。
しかし、小泉純一郎政権下で臨時国会の召集が見送られた15年12月の参院外交防衛委員会(閉会中審査)で、当時の秋山收内閣法制局長官は「あえて臨時国会を召集しなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」と答弁。憲法の規定に基づく要求があっても臨時国会を召集しないことについて、「立憲主義」の観点から合憲とのお墨付きを与えた。
民主党の批判は、皮肉にも同党が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにした。
内閣法制局長官が臨時国会召集要求に応じなくても違憲ではないと答弁したというのは本当か?
かつて私は、集団的自衛権についての政府解釈に関して、産経新聞が事実に反する報道を繰り返していることを批判したことがある(拙稿「岸内閣が集団的自衛権を容認する答弁をしたというのは本当か?」を参照)。そこでは、1960年の「安保国会」における岸信介首相と林修三法制局長官の答弁について、その一部分だけを恣意的に切り取ったり、あるいは文脈を全く無視した意味づけを与えたりすることで、本来の答弁趣旨とは完全に異なった、社論に都合のよい理解を読者に与えようとしていることを批判したのであった。産経記者団に対しては、報道に携わるはずの人間として、まずは反省していただいたうえで、今後は引用は正確に、そして文脈を踏まえて適切な読解をしてほしいと私が望んでいたことは言うまでもない。
ところが私のそのような期待は見事に裏切られてしまった。昨日のことであるが、私は本サイトにおいて、現在問題になっている憲法53条に基づく野党議員の臨時国会召集要求について、それを無視しようとする安倍内閣の姿勢を憲法論の観点から批判する論説を発表した(拙稿「安倍政権が臨時国会を開かないのは憲法違反である」)。発表後、またしても産経新聞が、過去に内閣法制局長官がこのような場合に臨時国会を召集しなくても憲法違反ではないとの答弁をしたと報道していることを知った。結論から言うと、この報道もまた、岸答弁や林答弁についての同紙の報道と同じく、事実をねじ曲げるものであり、安倍政権の姿勢を支持し、民主党をはじめとする野党を批判せんがために都合良く「切り取り引用」がなされたものであるので、この点について説明を補っておくこととする。
くだんの産経新聞の記事はこちらである(《民主、臨時国会要求でまた“ブーメラン” 自民改憲草案「20日以内召集」 でも自らは改正放置 頼みの法制局長官も過去に「違反でない」》)。「ブーメラン」なる俗語表現を見出しに用いることが全国紙として品性を欠かないかということを筆頭に、同記事にはいろいろと批判せざるを得ない点が含まれているのではあるが、ここでは、内閣法制局長官の答弁についての一点に限定して述べることにしよう。
同記事は、つぎのように述べる。短い記事であるが、内閣法制局長官の答弁に触れるくだりは2箇所ある。
〔1箇所目〕安全保障関連法の審議で頼った歴代内閣法制局長官の国会答弁でも、「臨時国会見送り」の違憲性は否定されており、(民主党は)批判が己に返る「ブーメラン政党」の本領を発揮した。
〔2箇所目〕小泉純一郎政権下で臨時国会の召集が見送られた15年12月の参院外交防衛委員会(閉会中審査)で、当時の秋山收内閣法制局長官は「あえて臨時国会を召集しなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」と答弁。憲法の規定に基づく要求があっても臨時国会を召集しないことについて、「立憲主義」の観点から合憲とのお墨付きを与えた。
民主党の批判は、皮肉にも同党が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにした。
さて、1箇所目については、「歴代」ーーと言うからには少なくとも2人以上のはずであるーー内閣法制局長官が国会答弁で臨時国会見送りの違憲性を否定している事実は確認できない。そもそも、違憲性の否定はおろか、「歴代」内閣法制局長官が国会で憲法53条の臨時国会召集決定要求について答弁している事実が、少なくとも私の調査した限りでは発見できなかった。唯一の例外として、上記記事の2箇所目が述べる秋山長官の答弁が確認できるのみである。たった一人の長官のことを「歴代」というのは、日本語として端的に誤っている。産経新聞には、是非、私の調査が間違っており、実際には「歴代」長官が違憲性を否定しているのだという証拠を出していただきたいと思う。とはいえ、この点は百歩譲って言葉尻に噛みついたような批判と言えば言えなくもなかろう。一人しかいない答弁を意図的に「歴代」とすることにより不当な印象操作を行っているとまでは思いたくない。
そして、2箇所目。こちらこそが(わざわざこの論説を書こうという気に私をならせた)重要なポイントである。この記事が述べる「15年12月の参院外交防衛委員会」というのは、平成15(2003)年12月16日の参議院外交防衛委員会のことである。マニフェスト解散後の特別国会(第158回国会)は11月27日に会期が終了しており、その日に衆参両院議員が憲法53条にもとづき臨時国会の召集を要求しているが、召集がなされないまま、参議院では、12月3日(憲法審査会)、5日(財政金融委員会)の2日間に続き、16日に外交防衛委員会の閉会中審査が行われていたときのものである。
民主党・新緑風会の齋藤勁参議院議員から、53条要求を出しているのに内閣が明確な対応を取らないことについて内閣としての見解を問う質問がなされたのに対し、事前通告なしの質問であったこともあり、福田康夫内閣官房長官が、
私、正確に条文見ていませんけれども、たしか要求のあったときは、これは、例えば次の国会が近いというときにはその国会でよいというような判断もできるように理解しておるところでございます。ちょっと正確に記憶いたしておりません。
と曖昧な答えをした。そこで、齋藤議員のさらなる追及に対して、上記の産経記事(2箇所目)に登場する、秋山收内閣法制局長官が政府参考人として答弁に立ったのであった。秋山答弁の全文を引用する。
憲法第53条の問題でございますので、一般的な考え方を御説明いたしたいと思います。
憲法53条後段は、「内閣は、」その要求があった場合に「その召集を決定しなければならない。」と規定しておりますが、召集時期につきましては何ら触れておりませんで、その決定は内閣にゆだねられております。
このことから、いつ、いつ召集してもいいということではもちろんございません。臨時会の召集要求があった場合に、仮にその要求において召集時期に触れるところがあったとしましても、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないというふうに考えられているところでございます。
もっとも、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと異なると、異なるところはございませんので、あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません。
通常の日本語能力のある読者にはもはや詳細な説明は不要であろうが、ここで秋山長官は、召集時期については憲法に規定はないからその決定は内閣に委ねられているものの、いつ召集してもいいというわけでは当然なく、「召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない」と述べたうえで、この「合理的な期間内に」「常会(=通常国会)の召集が見込まれるというような事情がありましたら」「臨時会(=臨時国会)を召集するということをしなくても」憲法に違反しない、としているにすぎないのである。
「合理的期間内に通常国会の召集が見込まれるのであれば」という条件の部分が重要であることは言うまでもない。なお、2003年のこの事例では、11月27日に53条要求が提出されたが、そもそも11月27日まで特別国会が開かれていたのであるし、その閉会後、年末年始を超えて、1月中には通常国会が召集されるのが常例であるから、12月下旬までの3週間、年末年始を省いて1月中旬までの1週間程度を合わせて1ヶ月程度の期間を、「国会召集のために必要な合理的期間」とみなすことは不可能ではあるまい。そうすると、翌年1月19日に通常国会が召集されることで、憲法53条後段違反の非難をかわすことも可能となろう。
秋山答弁は、上記のようなスケジュール(11月下旬まで特別国会が開かれており、11月下旬に53条要求が出され、1月下旬までには通常国会召集が見込まれる)をおそらく念頭に、しかしあくまでも一般論として、「合理的期間内に通常国会の召集が見込まれるのであれば」「臨時国会の召集を見送っても」違憲ではない、と述べたものだったのである。もう一度上記産経記事の2箇所目を見ていただければその違いは一目瞭然だとは思うが、決して、産経記事の言うように、
当時の秋山收内閣法制局長官は「あえて臨時国会を召集しなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」と答弁。憲法の規定に基づく要求があっても臨時国会を召集しないことについて、「立憲主義」の観点から合憲とのお墨付きを与えた。
…わけでは毛頭ない。産経のこの言い方では、まるで秋山長官は53条要求には一般的に応じる必要がない、と答えたかのように読めてしまうだろう。私が、この記事はあまりにも酷いと思う所以である。ここで再び、産経記者団には、引用は正確に、文脈を押さえて紹介すべきという、およそジャーナリズムの基本中の基本であるはずの作法に則った報道をお願いしたい。「民主党の批判は、皮肉にも同党が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにした」と批判する産経新聞の記事は、皮肉にも同紙が内閣法制局長官の答弁を都合良く解釈している実態をも浮き彫りにしたと思う。
京都市生まれ。洛星中・高等学校、東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院、パリ第十大学大学院で憲法学を専攻。2002年より九州大学法学部准教授、2014年より教授。主な著作に、『憲法学の現代的論点』(共著、有斐閣、初版2006年・第2版2009年)、『ブリッジブック法学入門』(編著、信山社、初版2009年・第2版2013年)、『法学の世界』(編著、日本評論社、2013年)、『憲法学の世界』(編著、日本評論社、2013年)、『リアリズムの法解釈理論――ミシェル・トロペール論文撰』(編訳、勁草書房、2013年)、『憲法主義』(内山奈月氏との共著、PHP研究所、初版2014年・文庫版2015年)など。
臨時国会召集見送り 法制局長官「合憲」答弁は誤報
産経新聞は10月24日付朝刊で「民主、臨時国会要求で”ブーメラン”」と見出しをつけた記事を掲載し、内閣法制局長官が国会答弁で臨時国会召集の見送りの違憲性を否定していると報じた。しかし、その根拠とされた国会答弁は、原則として召集のために必要な合理的な期間内の召集が必要で、この期間内に通常国会の召集が見込まれる場合にはあえて臨時国会を召集しなくても違憲にならないと述べたものだった。産経が報じたように、前提条件をつけずに臨時国会召集の見送りを合憲との見解を示したものではなかった。日本報道検証機構は産経新聞に質問したが、回答はなかった。10月30日現在、記事は訂正されていない。
産経の記事が言及したのは、2003(平成15)年12月16日の参議院外交防衛委員会(閉会中審査)における秋山収内閣法制局長官の答弁。秋山長官は「合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと異なると、異なるところはございませんので、あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」と発言していた。しかし、産経の記事ではこの前半部分を省略し、「あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません」という部分だけ切り取っていた。この発言を踏まえ「憲法の規定に基づく要求があっても臨時国会を召集しないことについて、『立憲主義』の観点から合憲とのお墨付きを与えた」と指摘していた(この記述は紙面の記事では省略されている)。
憲法53条後段は「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定しており、召集要求があった場合にいつまでに召集すべきかは明記していない。しかし、秋山長官は「いつ召集してもいいということではもちろんございません」と内閣の裁量に一定の限界があることを指摘。「臨時会の召集要求があった場合に、仮にその要求において召集時期に触れるところがあったとしましても、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない」と述べ、召集要求があった場合は「召集のため必要な合理的な期間」内の召集が必要との考えを示していた。
民主、維新、共産、生活、社民の野党5党は10月21日、政府に対して臨時国会の開会を求める要求書を提出。10月7日に内閣改造が行われたため、国会として新閣僚らに所信を質していく必要があるとしている。これに対して菅義偉官房長官は、与党と協議して最終的に決定すると述べ、明言を避けている。
産経新聞ニュースサイト2015年10月24日掲載(10月30日18:00閲覧確認) ※10月24日付朝刊5面にも掲載あり
政府参考人(秋山收君) 憲法第五十三条の問題でございますので、一般的な考え方を御説明いたしたいと思います。憲法五十三条後段は、「内閣は、」その要求があった場合に「その召集を決定しなければならない。」と規定しておりますが、召集時期につきましては何ら触れておりませんで、その決定は内閣にゆだねられております。このことから、いつ、いつ召集してもいいということではもちろんございません。臨時会の召集要求があった場合に、仮にその要求において召集時期に触れるところがあったとしましても、基本的には、臨時会で審議すべき事項なども勘案して、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならないというふうに考えられているところでございます。もっとも、この合理的な期間内に常会の召集が見込まれるというような事情がありましたら、国会の権能は臨時会であろうと常会であろうと異なると、異なるところはございませんので、あえて臨時会を召集するということをしなくても、憲法に違反するというふうには考えておりません。参議院外交防衛委員会平成15年12月16日
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
- 野党、臨時国会の開会を求める要求書を衆参両院に提出 (民主党 2015/10/21)
- 内閣法制局長官が臨時国会召集要求に応じなくても違憲ではないと答弁したというのは本当か? (Yahoo!ニュース個人、南野森 2015/10/25)
- (初稿:2015年10月30日 18:37)
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一般人にも納得がいく。
翻って、本国会の閉会ー次期通常国会までは、4 ヶ月ですか。長いですね。
自民党の横紙破りは酷すぎる。
これを認めたら、憲法や前例を無視して、合理的な期間=4 ヶ月〜、と、いくらでも引き伸ばせる先例を作ることになる。
試しにあの小僧なのか爺さんなのか年齢不詳の横車、じゃない、横畠腸管に答弁を求めて見よ、きっとサンケイと同じことを言うと予想。
こんな偏向したサンケイ新聞が全国紙なんて、苦笑を通り越して恐ろしい。
サンケイを購読している人は、解約して、日刊ゲンダイに乗り換えよう。
投稿記事内にありましたが、九州大学教授の南野さん御指摘の内容をヤフー個人コラムで読んで、「やっぱりそうだよな」と、有名全国紙としては酷い報道姿勢だと再認識ました。
新聞社によって右翼的、左翼的、中庸と各社のカラーがあって当然だと思います。でも、産経新聞の場合は、恣意的解釈が酷すぎて、フジテレビと共に迷走状態だと思います。