地球でもっとも観測しづらいツノシマクジラ、世界初の撮影に成功
海洋生物学者の国際チームは、世界でもっとも未知なるクジラの一種「ツノシマクジラ」の撮影に初めて成功しました。ツノシマクジラは、マダガスカルから沖に抜ける途中に目撃されています。
ツノシマクジラは、日本で発見されたヒゲクジラの一種。鯨類研究の第一人者、故・大村秀雄さんにちなみ、英名では「Omura's whale」とよばれています。とても希少なため、この地球に何頭いるのか科学者たちもはっきりとわかっていないそうです。
「長年、ほんのわずかなツノシマクジラの目撃例はあったものの、何も確認できなかった」と、ウッズホール海洋研究所の報道発表でSalvatore Cerchioさんは言っています。「ツノシマクジラは辺境に姿を現わすと見られ、体長が10〜12メートルと小さく、大きな潮も吹かないため見つけにくいのだ」。
ニューイングランド水族館(NEAQ)を拠点として働くCerchioさんは、日本で座礁した数体とあわせ、ソロモン諸島、キーリング諸島における日本の調査捕鯨によって得られたツノシマクジラの標本8体からすべての知識を得ていたといいます。
2011年にマダカスカル付近での観測可能性が浮上した後、調査チームは調査地域の変更を決定。2年間にわたる調査を行なった彼らの判断は賢明だったことが証明されました。このあたりの詳細は、Royal Society Open Scienceで読むことができます。
「この発見は初めての決定的な証拠であり、自然で生息するツノシマクジラの詳細な記述であり、この仕事をきわめてエキサイティングにする要素の一部だ」と彼は語っています。
研究者たちは44グループを観察し、18体の成体から皮膚生検を採取することに成功しました。これらのサンプルはDNA解析のためノーザン・ミシガン大学に送られ、その結果、この種が独立した種であるかどうかが確定されます。つい最近まで、ツノシマクジラがじつはニタリクジラなのではないかと考える科学者たちもいました。
Cerchioさんのチームは、このクジラに関する身体的、行動的特徴を多岐にわたって記録しています。
彼らは体の大部分が濃いグレーですが、下顎にははっきりとした白い模様が見られます。餌を食べるときには突進するのですが、これは動物プランクトンを食べて生存していることを意味しています。子鯨と行動をともにする母鯨が非常に多かったことから、今回の調査地域はこの鯨が出産を行ない繁殖している場所か、もしくはその場所にとても近いことが示唆されています。
なお、調査チームはツノシマクジラの歌を録音することにも成功していますが、これは雄に限定された特徴とみられています(マッコウクジラを含め、鯨の中では珍しいことではありません)。
研究結果の全文はRoyal Society Open Science「Omura’s whales (Balaenoptera omurai) off northwest Madagascar: ecology, behaviour and conservation needs」でどうぞ。
source: Woods Hole Oceanographic Institution
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(Rumi)