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MRJ「初飛行は成功」海外への売り込みに力
11月11日 18時36分

MRJ「初飛行は成功」海外への売り込みに力
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国産の小型ジェット旅客機、MRJを開発している三菱航空機は、11日の初飛行のあと、名古屋市内で記者会見を開き、森本浩通社長は「初飛行は成功だ」と述べたうえで、世界各国の航空会社への売り込みにより力を入れていく考えを示しました。
この中で森本社長は「機体が青空へ飛び立つ姿を見送ることができて、かけがえのない喜びだ。いつ飛ぶのかと心配をおかけしたが、期待に応えることができてほっとしている。初飛行は成功だ。しかも大成功に近い」と述べました。
そのうえで、森本社長は「現実に空を飛んだということは大きなインパクトがあり、説得力のあるセールスを行うことができる。今回の初飛行を励みに、さらなる受注活動に力を入れていきたい」と述べ、世界各国の航空会社への売り込みにより力を入れていく考えを示しました。
また、11日の初飛行でMRJを操縦した安村佳之機長は「滑走路を走行中、離陸速度に達すると、飛行機が飛びたいと言っているようにふわっと浮かんだ」と振り返りました。そして、飛行中の様子について、「操縦に集中していたため、あまり外の景色は見ていないが、富士山が見えたときは感動を覚えた。空港に戻ったときはふるさとに帰るような感覚で、みんなの前ですばらしい着陸を見せたいという思いだった」と話しました。

「受注拡大に弾み」

11日にMRJの初飛行が行われたことについて、会社側では、受注拡大の弾みになると期待しています。
MRJは、これまで407機の受注を得ています。しかし、ことし6月にフランス・パリで開かれた世界最大級の航空ショーで、会社側は、さらなる受注の上積みを目指していましたが、その直前に予定していたMRJの初飛行が延期になったなかで新たな受注は獲得できませんでした。このため会社側では、実際に空を飛ぶ姿を内外に示したことが、世界の航空会社に売り込むうえで大きな武器となると期待しているのです。
一方、開発の面では、今回の初飛行が実用化に1歩近づいたことを意味します。本格的な飛行試験という次の段階に進むことになったためです。
この飛行試験は合わせて1500回、2500時間行われることになっています。愛知県の県営名古屋空港や福岡県の北九州空港で実施したあと、来年の夏ごろからはアメリカ・ワシントン州に拠点を移して行われる計画です。この試験で、実際に乗客を乗せるうえで求められる、高い高度や悪天候といったさまざまな条件の下でも安定して飛行する性能を確認することになります。
しかし、この飛行試験を終えればすぐに旅客機として運航できるわけではありません。「最大の難関」とされるのが、安全性などの基準を満たしていることを証明する「型式証明」の取得です。取得には、国土交通省の厳密な審査を受ける必要があり、強度や構造などおよそ400項目にも及ぶ審査をすべてクリアしなくてはなりません。
三菱航空機は、再来年の初号機の納入を目指していますが、これまで設計の変更などで初号機の納入時期が3度も延期されてきただけに、安全性に万全を期しながら今後の開発をスケジュールどおり順調に進めていけるかが問われることになります。

量産の準備始まる

三菱航空機が目指しているMRJの初号機の再来年の納入を見据えて、すでに機体を量産する準備が始まっています。
このうち、県営名古屋空港に隣接する愛知県豊山町の県有地では、機体の最終的な組み立てや塗装を行う新しい工場の建設が来年春の完成を目指して進んでいます。また、尾翼は三重県松阪市にある三菱重工業の工場で組み立てられることが決まったほか、主翼は神戸市にある三菱重工の造船所で部品が製造され、愛知県飛島村の三菱重工の工場に新たに設けられる専用ラインで胴体とともに組み立てられることになっています。さらに、MRJの部品を納入することになっている東海地方のメーカーの間では、量産に備えて新たな機械を導入したり工場を増築したりする動きが出始めています。
こうした動きは航空機産業を日本の新たな成長産業に育てる重要な足がかりになると期待されています。日本のメーカーはこれまでボーイングなど海外メーカーに部品を納める形で航空機産業に関わってきましたが、MRJが量産されれば、設計や部品メーカーの選定を日本で行うことになり、航空機産業のすそ野の拡大につながるとみられています。
MRJの部品はおよそ100万点に上るだけに、優れた技術を持つ中小を含めた日本の企業の活躍の場が増えるかどうか注目されます。

1機57億円余

MRJには、座席数が76席と88席の2つのタイプがあって、このうち主力となる88席の機体の価格は4730万ドル(日本円にして57億円余り)となっています。
世界の市場で高いシェアを持つブラジルのエンブラエルやカナダのボンバルディアの従来の小型ジェット旅客機と比べてほぼ同じ水準だということですが、燃費はMRJのほうが2割ほどよいことを売りにしています。

小型ジェット機市場は

三菱航空機がMRJで参入を目指す小型の旅客機「リージョナルジェット」は、大都市と地方を結ぶ路線での利用が想定されています。新興国の経済成長に伴って人の移動が増えていることなどから、市場は今後拡大していくとみられています。
業界団体の日本航空機開発協会によりますと、世界で運航されている座席数が60席から99席の小型の旅客機は、去年は1988機でしたが、2034年には3761機になると予想されていて、この間に買い替えの分も含めると3000機を超える需要が生まれると見込まれています。
一方、三菱航空機は、今後20年で小型の旅客機市場では5000機の需要が生まれると見込んでいて、燃費のよさなどを武器に、その半分を受注したいと考えています。
しかし、この市場にはブラジルの「エンブラエル」とカナダの「ボンバルディア」という強力なライバルがいます。
日本航空機開発協会によりますと、航空会社にすでに納入されたリージョナルジェットの数はこの2社で9割以上を占めており、この2社は新たな機種の開発も進めているということです。MRJはこれまでに407機の受注を得ていますが、日本とアメリカの航空会社を除くとミャンマーからの10機のみにとどまっていて、アジアなどの新興国やヨーロッパなどの航空会社からの受注をどこまで伸ばせるかが、大きな課題となります。

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