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もんじゅの新たな運営主体特定を 異例の勧告決定11月13日 14時36分
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福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」を巡り、原子力規制委員会は文部科学大臣に対し、今の日本原子力研究開発機構に代わる運営主体を特定するよう異例の勧告をすることを正式に決めました。新たな運営主体が見つからなければ、もんじゅは廃炉を含めて抜本的な見直しを迫られることになります。
高速増殖炉「もんじゅ」は、大量の点検漏れが見つかり、おととし、原子力規制委員会が事実上、試験運転を禁止する命令を出しましたが、その後も機器の安全上の重要度を決める分類の誤りが多数見つかるなど、安全管理上の問題が相次いでいます。
このため、規制委員会は13日の会合で、原子力機構の安全管理は改善しておらず、もんじゅの運転を安全に行う資質を持っていないなどとして、おおむね半年をめどに今の原子力機構に代わる新たな運営主体を特定することなどを求める勧告を文部科学大臣に行うことを正式に決めました。
勧告は法律の規定で原子力利用の安全を確保するため、規制委員会が関係行政機関の長に対して行うことができるとされ、法的拘束力はありませんが、規制委員会が行うのは発足以来初めてで、異例のことです。
田中俊一委員長は、「規制委員会の初めての勧告で重いものだ。強制力はないが、文部科学大臣は勧告の趣旨を十分にくみ取ってきちんと対応してもらいたい」と述べました。
新たな運営主体が見つからなければ、もんじゅは廃炉を含めて抜本的な見直しを迫られることになり、高速増殖炉を柱の一つとする核燃料サイクル政策にも影響が出る可能性があります。
このため、規制委員会は13日の会合で、原子力機構の安全管理は改善しておらず、もんじゅの運転を安全に行う資質を持っていないなどとして、おおむね半年をめどに今の原子力機構に代わる新たな運営主体を特定することなどを求める勧告を文部科学大臣に行うことを正式に決めました。
勧告は法律の規定で原子力利用の安全を確保するため、規制委員会が関係行政機関の長に対して行うことができるとされ、法的拘束力はありませんが、規制委員会が行うのは発足以来初めてで、異例のことです。
田中俊一委員長は、「規制委員会の初めての勧告で重いものだ。強制力はないが、文部科学大臣は勧告の趣旨を十分にくみ取ってきちんと対応してもらいたい」と述べました。
新たな運営主体が見つからなければ、もんじゅは廃炉を含めて抜本的な見直しを迫られることになり、高速増殖炉を柱の一つとする核燃料サイクル政策にも影響が出る可能性があります。
「このような事態に至り残念」
高速増殖炉「もんじゅ」を巡り原子力規制委員会が文部科学大臣に対し、今の日本原子力研究開発機構に代わる運営主体を特定するよう求める勧告を出したことについて、原子力機構の児玉敏雄理事長は「来年春には保守管理不備の問題を解決する決意を規制委員会に表明しましたが、理解を得られず、このような事態に至ったことは誠に残念です。保守管理のプロセスの総合チェックや保全計画の抜本的な見直しなど徹底的な改善に全力を注ぎ、その成果を示すことで原子力機構の責務を果たしていく所存です」とするコメントを出しました。
「運営は機構をベースに」
高速増殖炉「もんじゅ」を巡る勧告について、福井県の西川知事は、もんじゅを立て直すためには政府全体で取り組む必要があるとの考えを改めて示しました。
そのうえで、もんじゅを運営する主体について、「いろんな課題はあるが、もんじゅを長年運営し、今も責任をもっているのは原子力機構なのだから、それをベースにするべきだ」と述べ、原子力機構を中心にもんじゅの運営の改善を図っていくべきとの考えを示しました。
そのうえで、もんじゅを運営する主体について、「いろんな課題はあるが、もんじゅを長年運営し、今も責任をもっているのは原子力機構なのだから、それをベースにするべきだ」と述べ、原子力機構を中心にもんじゅの運営の改善を図っていくべきとの考えを示しました。
繰り返し問われる組織の体質
高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体は、これまでも繰り返し、組織の体質が問われてきました。
もんじゅは旧動燃=動力炉・核燃料開発事業団が21年前の平成6年から試験運転を始めました。その1年8か月後、冷却材のナトリウム漏れ事故が起き、このときは直後に現場を撮影したビデオ映像を隠したことが分かり、組織の隠蔽体質が問われました。
その後、もんじゅは長期にわたって運転ができなくなり、2度の組織改編を経て、平成17年から運営主体は今の日本原子力研究開発機構になりました。しかし、その後もトラブルの通報遅れなど、組織体質が問われるような事態が相次ぎ、国や地元の自治体からも厳しい批判を浴びました。
平成22年5月、14年ぶりに再開した試験運転から僅か3か月後に、重さ3トン余りもある装置が、原子炉内に落下して抜けなくなる重大なトラブルが発生し、それ以来、もんじゅの運転は止まったままです。
こうしたなか、3年前の平成24年9月からの国の保安検査で、およそ1万件の点検漏れが見つかったのをきっかけに、問題が次々に発覚しました。おととし5月には、トップが交代し、原子力規制委員会は「安全確保を十分行える体制が整っていない」として、試験運転の再開を事実上、禁止する命令を出しました。
原子力機構は、もんじゅを理事長直轄の組織とするなどの見直しを行いましたが、ことし8月には機器の安全上の重要度を決める分類の誤りが多数見つかるなど、国の検査のたびに問題が発覚するということが繰り返されました。
保安規定違反はこの3年間で9回におよび、規制委員会の田中俊一委員長は「もんじゅを運転するための基本的な能力を持っているとは認め難い」と厳しく指摘していました。
もんじゅは旧動燃=動力炉・核燃料開発事業団が21年前の平成6年から試験運転を始めました。その1年8か月後、冷却材のナトリウム漏れ事故が起き、このときは直後に現場を撮影したビデオ映像を隠したことが分かり、組織の隠蔽体質が問われました。
その後、もんじゅは長期にわたって運転ができなくなり、2度の組織改編を経て、平成17年から運営主体は今の日本原子力研究開発機構になりました。しかし、その後もトラブルの通報遅れなど、組織体質が問われるような事態が相次ぎ、国や地元の自治体からも厳しい批判を浴びました。
平成22年5月、14年ぶりに再開した試験運転から僅か3か月後に、重さ3トン余りもある装置が、原子炉内に落下して抜けなくなる重大なトラブルが発生し、それ以来、もんじゅの運転は止まったままです。
こうしたなか、3年前の平成24年9月からの国の保安検査で、およそ1万件の点検漏れが見つかったのをきっかけに、問題が次々に発覚しました。おととし5月には、トップが交代し、原子力規制委員会は「安全確保を十分行える体制が整っていない」として、試験運転の再開を事実上、禁止する命令を出しました。
原子力機構は、もんじゅを理事長直轄の組織とするなどの見直しを行いましたが、ことし8月には機器の安全上の重要度を決める分類の誤りが多数見つかるなど、国の検査のたびに問題が発覚するということが繰り返されました。
保安規定違反はこの3年間で9回におよび、規制委員会の田中俊一委員長は「もんじゅを運転するための基本的な能力を持っているとは認め難い」と厳しく指摘していました。
核燃料サイクル政策に大きな影響も
日本が推進する「核燃料サイクル」の中核施設として作られた高速増殖炉「もんじゅ」ですが、日本原子力研究開発機構に代わる運営主体が見つからないなどで運転ができなければ、核燃料サイクルに大きな影響を及ぼす可能性があります。
国は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜた「MOX燃料」を一般の原発で再び利用する「プルサーマル」と、高速増殖炉で使う2つの方法による核燃料サイクルの実現を目指してきました。
高速増殖炉のもんじゅは、その中核施設として、1兆円以上の事業費が使われてきました。しかし、たび重なる事故やトラブルで、運転実績がほとんどなく、福島第一原発の事故後、エネルギー政策の見直しの議論の中でも、存在意義が問われました。
事故前の平成22年の国のエネルギー基本計画で高速増殖炉は、もんじゅの次の段階の実証炉を経て、2050年より前に商業炉を導入するとされていました。しかし、去年のエネルギー基本計画に高速増殖炉のスケジュールの記述はなく、もんじゅについては、放射性廃棄物の減量化なども加えた研究の拠点とされています。
こうしたなかで規制委員会から出された新たな運営主体を明示するよう求める異例の勧告は、もんじゅの存在意義を改めて問うきっかけになるとみられます。勧告の要求どおり、原子力機構に代わる運営主体が見つからないなどで、試験運転の再開ができなければ、核燃料サイクルのいわば両輪の1つの断念につながる可能性があります。
また、使う当てのないプルトニウムが増えることになれば、核兵器の原料にもなるため、国際社会から批判を招きかねないという問題もあります。日本が保有しているプルトニウムは、核爆弾およそ5900発分に匹敵する、およそ47トンに上ります。
電力各社で作る電気事業連合会は今年度までに全国の16から18の原発でプルトニウムを使うプルサーマルを行う計画を示していますが、事故の前にプルサーマルを実施した原発は4基だけで、多くの原発の再稼働が見通せないなか、プルトニウムを減らしていけるかは不透明です。
このように、もんじゅの存廃を巡っては、核燃料サイクルのさまざまな面で、大きな影響を及ぼす可能性があります。
国は使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜた「MOX燃料」を一般の原発で再び利用する「プルサーマル」と、高速増殖炉で使う2つの方法による核燃料サイクルの実現を目指してきました。
高速増殖炉のもんじゅは、その中核施設として、1兆円以上の事業費が使われてきました。しかし、たび重なる事故やトラブルで、運転実績がほとんどなく、福島第一原発の事故後、エネルギー政策の見直しの議論の中でも、存在意義が問われました。
事故前の平成22年の国のエネルギー基本計画で高速増殖炉は、もんじゅの次の段階の実証炉を経て、2050年より前に商業炉を導入するとされていました。しかし、去年のエネルギー基本計画に高速増殖炉のスケジュールの記述はなく、もんじゅについては、放射性廃棄物の減量化なども加えた研究の拠点とされています。
こうしたなかで規制委員会から出された新たな運営主体を明示するよう求める異例の勧告は、もんじゅの存在意義を改めて問うきっかけになるとみられます。勧告の要求どおり、原子力機構に代わる運営主体が見つからないなどで、試験運転の再開ができなければ、核燃料サイクルのいわば両輪の1つの断念につながる可能性があります。
また、使う当てのないプルトニウムが増えることになれば、核兵器の原料にもなるため、国際社会から批判を招きかねないという問題もあります。日本が保有しているプルトニウムは、核爆弾およそ5900発分に匹敵する、およそ47トンに上ります。
電力各社で作る電気事業連合会は今年度までに全国の16から18の原発でプルトニウムを使うプルサーマルを行う計画を示していますが、事故の前にプルサーマルを実施した原発は4基だけで、多くの原発の再稼働が見通せないなか、プルトニウムを減らしていけるかは不透明です。
このように、もんじゅの存廃を巡っては、核燃料サイクルのさまざまな面で、大きな影響を及ぼす可能性があります。