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『プリパラ』縦横無尽なカメラワークとコミカルな表情が描き出す新たな未来について

『鉄血のオルフェンズ』。この作品のシリーズ構成において意識されているのは、おそらく「一話の中で一つの物語の決着をつける」なのだと思う。物語の導入部分に当たる一話二話は例外に含めるとして、それ以降の話においてはほぼ「一話完結」と言わんばかりに提起した物語に対して決着を付けており、一話ごとの満足度が非常に高い作品となっている。ロボットアクションがメインならロボットアクションに、人間ドラマなら人間ドラマにと針を振りきった配分をしている点も面白く、引きの作り方も見事である。
少しでも面白くなくなってしまうとすぐに視聴を打ち切られてしまう昨今において、「毎回の面白さ」というものを確保するのは難しいと思うのだが、『鉄血のオルフェンズ』はそうした「毎回の面白さ」を提示することに成功している。それも人間ドラマとロボットアクションの双方に見どころがある形で! 正直凄いと思う。長井龍雪がここまでやれるなんて!
テイワズとの接触も成功したし、おそらくこのあとは地球を区分する各勢力を巡りながら進行していく事になるのだろう。その後はたしてどうなるのかは分からないが、非常に良く考えぬかれた作品なのでこの先も期待したいなぁ。



マネージャーであるユニコンと共にプリパリへと旅だったファルルがついにパラ宿への帰還を果たした。夏休み中も「一時帰宅」という形で登場し、普通の少女が当たり前のように持つ笑みも痛みもある「喜び」を歌った曲へと変化した「0-week-old」を用いてのライブパフォーマンスでファンを魅了したファルルだが、今回はドリームパレード出場のための帰還ということで、ドリームパレードを巡るアイドル達の戦いにも本格参戦が決定。紫京院ひびき=怪盗ジーニアスも「選ばれた天才達だけで結成されるドリームチーム」にファルルを引き入れるべく接触を開始し、そんな怪盗ジーニアスを捕まえるためにプリパラポリスが結成されるなど、プリパラを取り巻く情勢は大きくかつ静かに変わりつつある。残るアイドルドリームグランプリはあと二つ。『2nd Season』の終幕へと動き出しつつある『プリパラ』から目が離せない。
ところで『プリパラ』という作品の魅力の一つになっているのが3DCGによって制作されているライブパートだ
アニメ本編の製作も担当するタツノコプロのデジタル制作部が手掛けるこのライブパートは、アイドル達の細やかな表情とそんなアイドル達がパフォーマンスを繰り広げる空間の広がりの描写が特徴的で、『2nd Season』からはそんな空間の広がりをよりパワーアップさせたものとしてドリームシアターライブが登場。サイリウムエアリーによりステージを飛び出して観客席上空を飛び回りながらパフォーマンスを行うアイドル達を描く事が出来るドリームシアターライブは、これまでライブ会場の空間の広がりを大切にしてきた『プリパラ』ならではのスペシャルなライブとなっている。
それほどまでに魅力的な『プリパラ』のライブパートだが、69話「あぶないプリパラポリス 最前線にほえろ」のらぁら、ドロシー、みかんのプリパラポリス見習いチームによる「ぱぴぷぺ☆POLICE!」が素晴らしいものであった。「ドリームシアターライブを除くと、『2nd Season』でも屈指の出来ではないか」と思うほどお気に入りである。
この「ぱぴぷぺ☆POLICE!」が素晴らしい点は何と言っても「リズムを感じさせながらも、チームの個性を活かすカメラワーク」と「コミカルな表情芝居」だろう。三人の怪盗ジーニアス逮捕にかける決意が、キュートなプリパラポリスの姿と合わせて魅力的に表現されている。

まず一つ目の「リズムを感じさせながらも、チームの個性を活かすカメラワーク」について見ていこう。
この「ぱぴぷぺ☆POLICE!」は全体を通してカメラが縦横無尽に動きまわって、唐突に別の要素が挿入されるなど、これまで『プリパラ』ではやってこなかったカメラワークやカット割りが非常に多い。
冒頭から見ていくと「悪い奴は誰だどこだ」とドロシー、らぁら、みかんの三人のカットインから始まって、みかん→らぁら→ドロシーの順番に右から左にかけてカメラがスライド。アクセントとしてらぁらがアップ気味になるようにする事で三人の立ち位置の違いを印象づける。「ピーポーピーポー」ではカメラを引いてチーム全体を画面の中に収める事で、同じ動きでも「思い切りが良く、動きのキレのいいみかん」と「それについていこうとするドロシー」という違いが生まれ、二人の個性が対比されることで魅力的だ。
Aメロの最後では『プリティーリズム』のプリズムショーパートで見られたような唐突に挿入される足のカットがアクセントとして挿入。フォーメーションの変形という新鮮な要素へ入る前の気分をリセットし、Bメロでは食いしん坊のみかんとらぁらに焦点を絞ったように見せて、「コーデキメて」では「可愛い僕」を見せようとするドロシーにカメラを振る事でチーム内での三人の役割を見せてくる。サビ直前での口元のアップを挟んで、ステージを左から上へ移動しながらアップと「プリパラポリス見習いチーム」と言うチームのパフォーマンスとして仕立てあげ、メイキングドラマとサイリウムチェンジを終えてセンターステージに移動した後は「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ」の繰り返しでみかんからドロシー、ドロシーかららぁらへとPANと組み合わせて順番に描写。「悪い奴は誰だどこだ」では「だ・だ・だ」に合わせてリズミカルにカメラを引くのだが、最後の「だ」に合わせて紙吹雪が吹き出す事で気持ちよい印象を残す。
元々『プリパラ』のライブパートの音楽と映像のリンクはとても完成度が高いのだが、今回の「ぱぴぷぺ☆POLICE!」はアップテンポな楽曲という事もあってか、とてもリズミカルな映像に仕上げられていて音楽との一体感が非常に高い。またアクセントとなるカットの挿入も絶妙なタイミングで行われており、「三人」と言う要素を強く感じさせるものとなっている。
こうした縦横無尽なカメラワークで見せる映像になったのは『プリティーリズム』のプリズムショーパートを担当していた京極尚彦の参加が大きいのだろう。『プリパラ』のライブ演出を担当する菱田正和とはまた違いながらも、彼らしい方向から攻めるライブパートは「プリパラポリス」というチームのデビューライブとして満点と言ってもいいほど素晴らしい出来だ。

そして二つ目の「コミカルで細やかな表情芝居」だが、「ぱぴぷぺ☆POLICE!」のメイキングドラマを見るととても分かりやすい。
サイレンを鳴らしながらドロシーのジト目な表情に一生懸命に走るみかん、怪盗を取り逃して三人で落ち込む表情に「次こそ逮捕だ!」と叫ぶらぁらの表情など、このメイキングドラマでは漫画的な表現が使用されており、いずれもそのキャラクターらしさと共存した可愛い表情芝居が行われている。
あろまのメイキングドラマである『神秘のアメイジングミュージアム!』でも漫画的表現を導入する試みは行われており、こちらもあろまらしさがあるものだったのだが、今回のようなガッツリとした描写がされた事はなかった。『プリパラ』にとってもタツノコプロにとっても大きな挑戦だといえるが、この挑戦は概ね大成功と言っても良いだろう。
『プリパラ』がここまで細やかな表情付けが出来るようになったのは、最初から3Dモデルに対応できるだけのフェイシャルリグが仕込まれていたからなのか、それともアップデートを繰り返してきてようやくここまでの事が出来るようになったのか。それは部外者である自分には分からないが、いずれにしてもタツノコプロが『プリパラ』で行った挑戦は今後の『プリパラ』のライブパートの発展に期待が持てる結果であった。
この表情芝居だけでも一度見ていただきたいところである。

『プリパラ』は二年目に突入してからというもの、攻めに攻める姿勢で猛攻を続けている。
それは『プリパラ』というコンテンツの展開だけではない。内容面でも攻めに攻めていると言えるだろう。
アニメでは「みんな友達!みんなアイドル!」という作品が掲げるテーマそのものを否定する紫京院ひびきの登場し、ゲームではアニメのEDアニメを表示したライブやヤギが登場するライブなど、タカラトミーアーツとシンソフィア、そしてタツノコプロは常に挑戦し続けている。
そんな挑戦の一つとして、アニメのライブパートにも注目して欲しい。
そこには「新たな表現」を模索し続ける制作者達の熱い魂が宿っているのだから。






『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』徹底した配慮と高い制御能力が引き出す面白さについて

『アイカツ!』がソーシャルゲームになる! そう聞いたら事前登録せずにいられなかったので事前登録を済ませたのだが、一日で事前登録者数12万を突破して、当初設定されていたSRユリカ様の配布が確定になるとは思わなかった。素晴らしい。自分が思っていた以上に『アイカツ!』のファン層は多くて何よりだ。早く追加の事前登録報酬を公開してくれと言わざるをえない。
PVを見る限りだと『アイカツ!』もリズムゲームで、各種カードは「写真」という扱いになるようだ。レアリティとしてはSR以上のカードが有ることが仄めかされているけど、その最上級のレアカードには何か別の価値がほしいなぁ。例えば「新録ボイスがある」とか。そういうのがあると課金する気が起きるのだが……。まあ新曲があるだけマシといえばマシかぁ……。
リリース時期は「今冬」ということになっているけど、ゲームサイトによっては「2015年今冬」になっていたりするのがなんとも。二ヶ月で出るわけ無いだろうとは思うんだけども。いつリリースされるんだろうか。楽しみだなぁ。



諸事情により、本放送中は簡単にしかチェックできていなかった『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』をようやくきちんとした形で視聴することが出来た。
異世界へと繋がるゲートが首都に出現した現代日本とゲートの向こう側に広がる異世界を舞台に、異世界での調査を命じられた自衛隊員達の活躍を描いた同名の小説を原作としたアニメ化作品である本作は、現代とファンタジー世界を舞台にした「異文化交流」をテーマとしており、文化的接触によって生じる化学反応の一つ一つが驚きに満ちている。全体的に見ても上質なエンターテイメント作品として仕上げられており、またキャラクター一人一人も魅力的でとても素晴らしい作品であったように思う。
その中でも面白かったのは「国会での査問を受けるために日本へとやってきた異世界出身の一行を巡る国内外での政治的な攻防」や、自衛隊と接触した事で今までの価値観そのものが揺さぶられ、変化していく帝国第三皇女ピニャ・コ・ラーダだ。とりわけピニャ・コ・ラーダについては「異世界の人間と自衛隊員が背中を預け合い、戦う」という熱いアクションシーンを見せたイタリカ防衛戦で自衛隊の圧倒的な強さに恐怖する姿と、東京にやってきて触れる数々のものに驚いたり、伊丹の元嫁である葵梨紗のBL同人誌に触れた事で腐女子に目覚めたりするギャップが面白かったのだが、本作のこうした面白さを支えるのははシーン単位どころかカット単位まで意識された情報制御能力の高さだ。
物語において無駄な描写や情報というものは基本的には存在しない。一見すると無駄に見える描写や情報にも必ず意味が込められており、そうした描写の積み重ねが制作者が作品を通して伝えたい思いをより鮮明なものへと変えていく。逆に言えば無駄な描写や情報は情報伝達を阻害するノイズのようなものであると言え、こうした描写があまりにもあると作品全体の焦点がぼやけた印象になってしまうのだが、『GATE』はこうした無駄な描写を省いている事はもちろんのこtこ、「何よりも優先するべき重要なな事」と「そこまで重要ではない事」をきちんと区別した上で、「何よりも優先すべき情報や出来事」を誰が見ても伝わるように一つ一つの描写を巧みに構成しており、非常に分かりやすく仕上げられている。
例えばイタリカ防衛戦において伊丹の救援要請に基づきやってきた自衛隊の大活躍っぷりなどは、「いともたやすく山賊を殲滅する圧倒的な武力を目撃し、それを所有する日本という国に畏怖する」というピニャの思いを大事にしながらも、伊丹や自衛隊員サイドに目を向けると「心強い援軍がやってきた」という方向で描写されており、「同じ出来事でも視点が変わればその印象は大きく異なる」という事を印象づける。こうした描写を大切にし、積み重ねているからこそ「現代日本と中世ファンタジー世界が偶然接触した事によって発生する異文化交流」という本作のテーマを感じさせてくれるのだろう。
また『GATE』は不快感などのストレスを感じる描写のコントロールも絶妙だ。
ゲート付近の土地を取り戻すべく襲いかかるファンタジー世界側の連合軍が自衛隊の防衛のための攻撃を受けるシーンでは、「人智を超えた圧倒的な力によって自軍が崩壊していく」という事の恐ろしさを描きながらも、グロテスクさや怪我などの痛々しさなどのストレスがかかりそうな描写が避けられている。
ではそうしたストレスがかかる描写が一切ないかというとそうではなく、戦いによって負傷した兵士達の描写については描写しているし、生きたまま炎龍の業火によって焼かれていくエルフの里の住人達の姿には悲惨さがあるなど、見ていて「悲惨」と感じるようなストレスが掛かる描写はしっかりと描かれている。
本作が上手いのはそうした「不必要なストレスはかけない」という事だ。
本作の監督を務める京極尚彦は、彼の代表作である『ラブライブ!』のインタビューでも「女性が見て不愉快になることはやらないようにしている(リスアニ!vol.10.1)」とコメントしているが、これは『GATE』においても意識されていることなのだろう。
ストレスがかかりそうな描写でも直接的な描写を避けるなど工夫して不愉快に感じさせない。
こうした京極尚彦の隅々にまで行き届いたストレスに対する配慮が、原作が本来的に持つ面白さを引き出し、楽しませる映像にしているように思うのだ。

そんな『GATE』だが、2016年1月からは第二クールとして「炎龍編」の放送が予定されている。伊丹達の尽力により撃退することに成功した炎龍との決着が描かれるこの炎龍編だが、そんな炎龍編に先駆ける形で第一クール目の最終話ではダークエルフであるヤオ・ハー・デュッシが登場している。余りにも運の悪い彼女だが、一体炎龍はどうなるのだろうか。そして日本と異世界の人達の接触は一体どういう形で決着を迎えるのだろうか。
炎龍編、非常に楽しみである。
なお極めてプライベートな余談ではあるが、種田梨沙のロゥリィ・マーキュリーの演技が自分は非常に好みである。
キャラクターごとに様々な演技を見せてくれる種田梨沙だが、まさかここまで自分の好みの演技をしてくれるとは思ってもいなかった……。







『アイカツ!』北海道から離れた事で生まれるアイドルとしての自覚と覚悟について

2011年3月末に告知されたものの、それ以降まともな情報はでなくなったので企画凍結していたと思っていた『傷物語』。来年1月8日から全三部作で上映予定だったことを今更ながらに知る。驚きだ。まさか劇場版アニメでやる気がまだあったのか、あのシャフトに。シャフトが制作に関わった劇場版アニメといえば『劇場版ネギま!』が最初に思い浮かぶのだが、あれは大変酷いアニメであった。
「シナリオがダメ」「作画がヘタれてる」「演出がつまらない」などの理由で「酷い」と言われる作品は上げ始めればキリがないほどあるが、「誰が見ても未完成であることが明白であり、「作品」と呼ぶ水準にすら満たしていない」というアニメはそう多くはない。『劇場版ネギま!』の酷さというのは、そういう「作品と呼ぶことすら痴がましいほど、未完成であることが明白である」と言う酷さである。
酷い。余りにも酷い。酷いを通り越して「惨い」とすら言える。なにせ物語に必要なカットが明らかに脱落しているのだから。「惨い」としか言いようが無く、その見るも無残な映像っぷりを楽しむ悪趣味な楽しみ方をした方がまだ見応えがあるぐらいだ。その酷さっぷりは怒りを通り越して呆れ果てるしかない。
後に原作単行本に付属したDVDに完全版が収録されたのだが、劇場公開版はソフト化されないのだろうか。あそこまで酷いものは逆に記録しておくだけの価値があると思うのだがなぁ。まあシャフト最大の汚点だから無理か。黒歴史にしないために定期的に話題にして語り継いでいきたい出来事である。



11月26日から始まる2016シリーズ第二弾より『初音ミク』とのコラボが予定されている『アイカツ!』。『アイカツ! ライブイリュージョン』として企画されたこのイベントでは期間限定ステージに、初音ミクとのコラボドレスやマイキャラパーツの配信が予定されているなど盛り沢山の内容となっている。同弾では大阪のなにわ天下一学園からやってきたお笑いアイドル「堂島ニーナ」がパステルカラーが基調のハチャメチャデザインのブランド「メチャパニック」と共に登場する事や今まで『アイカツ!』に登場した全てのアイドルがプレイアブルキャラクター化するなど『アイカツ!』にとっても重要なものとなっている。『アイカツ!』ファンはもちろん、ボーカロイドファンにも一度はプレイしていただきたいところだ。
さてゲームの『アイカツ!』が大きな動き出しを見せているが、アニメの『アイカツ!』もとても面白い事になっている。
四年目となる今年のテーマは「出会い」という事で、主人公である大空あかり達ルミナスがスターライト学園を飛び出して全国ツアーへと出発。ライブのために訪れた先で出会う様々な人によって生まれる変化を描く物語が展開されている。様々な「出会い」によって成長を遂げてきた大空あかり達の物語の一つの集大成となっている全国ツアー編だが、「出会いによる変化」は何も大空あかり達だけの話ではない点が面白い。
四年目から登場した北海道出身の大地ののと白樺リサの二人は、北海道を訪れた大空あかり達と出会った事で「本物のアイドル」を目指す覚悟を固めてスターライト学園の扉を叩いたというアイドルであり、「出会い」で広がるアイカツ!の可能性を象徴する存在だ。
そんな四年目を象徴する存在である、大地ののと白樺リサの物語を見ていく上で、155話「トキメキカラット☆」と156話「小悪魔ハプニング」はスターライト学園の扉を叩いた154話と並ぶぐらい重要な話だといえるだろう。なぜならこの二話は「アイドルデビューを果たした二人が、憧れていたアイドルの世界に馴染んでアイドルとしての一歩を踏み出す」と言う事を二段階に分けて展開している話だからだ。

155話では「アイドル学校・スターライト学園」という場所の特異性や、ののとリサが一緒にアイドル活動をする仲間達と出会って活動するうちに、自身がもうアイドルである自覚が芽生えていく過程が描かれる。
あかり達の案内によって出会うアイドル達一人一人に感動したり、食堂で料理を作る四葉さんが元アイドルであることに驚いたり、ジョニー別府のダンスレッスンとその独特のネーミングセンスに驚いたりとののとリサの反応は、所属する生徒全員がアイドルであるスターライト学園にいる(=アイドルとしての素養を認められている)存在とは思えないほど初々しい。
その初々しさが新鮮で面白くもあるのだが、あかり達と一緒に行動して「スターライト学園」へと順応していく事でののとリサの中に『アイカツ!』のアイドル達が持つセルフプロデュースの精神に目覚めていく。そんな目覚めたばかりのセルフプロデュースの精神が導き出したものが「学園長に「『トキメキカラット』のCMオーディションを受けたい」と直談判しにいく」なのだろう。
自身は受ける予定がなかったのに、仲間のアイドル活動に付き合っているうちに触発されて受けたくなる。その衝動をきちんと行動に移せるののとリサはセルフプロデュースの精神を持つ立派なアイドルであり、だからこそ本来は三人しか合格者を出さないオーディションにも関わらず、ルミナスとともに合格を勝ち取る事ができたのだろう。
「アイドルとしての最初のお仕事」を「自身のセルフプロデュースによって勝ち取る」。これが『アイカツ!』らしいアイドルの姿なのだが、しかしこの155話はあくまでスターライト学園の中で閉じ切った「アイドルとしての一歩」だった。オーディションを受けるために一応外には出ているものの、物語としてはほぼスターライト学園の中だけで完結しており、学園の外には全く出ていないのだ。
「ファッションイベント『アーバンガールズコレクション』のステージライブに出演することになったののとリサが、愛用するブランドであるドーリーデビルのデザイナーへプレミアムドレスを作ってもらうために会いに行く」という157話が面白いのは、スターライト学園の外に踏み出す事で、自身が今いる場所は「北海道」ではなく「アイドルの世界」であることを強く認識させ、その世界で生きていく覚悟を描いているからだ。
「ののとはぐれてしまったリサが、勇気を出してののが告げた場所について現地の人に行き方を尋ねる」。
これだけの事なのだが、「知っている人ばかりの地元ではない」「アイドルになるという事はそういう場所で生きていくということ」という物語を込めることで、些細な事ではあるもののリサにとっては非常に重要な出来事として描いている。
こうした変化を描けたのは「スターライト学園」という「テレビ越しとはいえ知っている人がいる場所での覚悟」を既に描いていたからこそだろう。巧みさすら感じさせるシナリオ運びっぷりとそんな覚悟によって手に入れたプレミアムドレスはののとリサに相応しい、とても印象的なアイテムとなった。

『アイカツ!』は非常にキャラクター性を大事にした展開を行う作品だ。各曲は木村監督がキャラクター背景や背負わせるドラマを考えた上で出したアイデアを元に制作されているし、プレミアムドレスもきちんと意味付けがされた上で与えられている。ののとリサの物語も同じである。出身地に対する結びつきの強さがあるからこそ「出身地から離れる事」というテーマが生まれる。
このテーマを活かしきり、二人がアイドルの世界に馴染む事を描いた155話と157話はののとリサが成長すれば成長するほど、重要になってくるはずだ。彼女達がこのアイドルの世界でどこまでたどり着くのだろうか。楽しみにしていこう。

 


Appendix

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■DREAM WING(C87新刊)


■プリズムアライブ(C86新刊)
44829979_m.jpg
とらのあなで委託中

■スイッチオン!(C85新刊)
アイカツ3
とらのあなで委託してました

■RUNWAY
表紙
とらのあなで委託してました

プロフィール

  • Author:水音
  • tumblrの方が積極的に更新してるマン。
    面倒くさがりなので、Twitterのほうが捕まります。

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