全国各地で「ツタヤ図書館」の建設計画が進んでいる。駅前中心街の活性化が課題の自治体ばかりで、その起爆剤にと新しい形の図書館に期待する。一方で反対の声も根強く、住民運動も起きた。様々な思いが複雑に絡み合う「ツタヤ図書館」はどこに向かうのか。関係自治体を取材した。

■岡山・高梁、人口減に危機感

 10月下旬の平日、岡山県高梁市のJR備中高梁駅を訪れると、周囲にはコンビニが1軒あるだけで、歩く人もまばらだった。4階建て複合施設の建設工事が9月に始まった駅北側では、ショベルカーが土を掘り起こしていた。建設計画の中核施設は、カフェや書店を併設した図書館だ。2階の一部と3、4階に入る。

 レンタル大手「ツタヤ」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に指定管理者として運営を任せ、来年12月に開館する見通し。年中無休で午前9時から午後9時まで利用でき、年間入館者数は20万人を見込む。市の担当者は「たかが図書館建設という話ではない。市の将来がかかった一大事業」。背景には、深刻な人口減少への強い危機感がある。

 市の人口は1947年の7万5570人をピークに、現在は約3万2千人まで減少。民間研究機関「日本創成会議」が昨年発表した試算では、2040年に2万人を割り込み、「消滅可能性都市」とされた。

 駅前のにぎわいを取り戻し、雇用を生み出して人口減に歯止めをかけたい――。市はツタヤ図書館を活性化への起爆剤と捉える。近藤隆則市長は昨年2月にCCCから話を持ちかけられたとし、「街づくりの視点で提案を頂き、有名カフェも東京から一緒に来ることも魅力だった」と話す。

 ツタヤ図書館をめぐっては、愛知県小牧市が10月、反対多数となった住民投票を受けて計画をいったん白紙に戻した。山口県周南市では、反対する市民らが住民投票を目指して署名活動を始める。それでも近藤市長は「小牧と高梁は人口の規模なども違う。計画に影響はない」としている。