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アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と- 作者:一星

第一章 脱出

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九話 伝説金属

 今日の午前中は採掘作業をこなし、午後からは溜まった鉄の塊からインゴット作製をする。
 あれから約二ヶ月が経ち、部屋の中に作られた坑道は百メートルは有りそうな程長く掘られている。
 採掘のレベルが2になった後も途中途中で掘れない場所があって、中々理想通り真っ直ぐには掘れなかったが、この距離を掘っても外には辿り着け無かった。
 深くなるに連れて当然暗くなったのだが、ロウソクの火でなんとか頑張っていた。
 最初は酸素が無くなるのが怖かった。ヤバくなったら直ぐ戻ろうと思いながら注意して作業していたのだが、生活をして居る部屋は適度に換気されているみたいで、その影響がこの坑道にも達していて、気にする事では無かった様だ。
 部屋の中に炉とか置いてある位だし、換気位は神様も考えてくれているのだろう。

 ここまで掘ると落盤が怖くなり、最初に作っていた木の梁を使用した。
 だが、俺は素人。この手の知識など全くないので、どこに設置したらいいのか分からなかったので等間隔に設置しておいた。
 木自体はまだ余ってはいるのだが、このまま使い続けると消費量が凄まじい事になるので、余っているし、まだまだ出続ける青銅を使って梁を作り設置していった。
 部屋に有る炉では大きな物は作れないと思っていたのだが、溶けた金属を炉の外でくっ付ける事は出来るので、それで騙し騙し作っていった。強度とかは怪しいけど、試しに地面に叩きつけてもビクともしなかったので大丈夫だろう。

 そうそう、横に掘っても出られないなら上だと思い、階段状に掘り進めながら上へと掘っては見たが、どうしても途中で岩盤の様に掘れない場所で蓋をされているようで、十日程掘り広めて粘ってはみたが諦めた。

 上が駄目なら下はどうなっているのかと気になったので、これも階段状にして掘って行き、所々で横に掘り進めてみると深いほど鉱物の埋蔵量が上がるのか、鉄が面白いように掘りまくれた。
 現実の鉱石埋蔵量が深さに比例するかは知らないが、少なくともこの場所は良くあるゲームの様に深くなれば良い物が出るという奴なのかも知れない。
 鉄が掘れると採掘の熟練度も上がりやすく、つい先日レベルが三に上がったのだ。
 例の如く、今まで掘れなかった場所にツルハシを入れると浅い場所からはルーンメタルと言う新しい鉱石が、深い場所では何と伝説金属のミスリルが出てきたのだ!

 流石にこれは俺も興奮が隠せず、その日の予定は全て後回しにして速攻でナイフを作った。
 薄い碧色をした美しい刃は、光を反射して輝いている。とても美しい色合いで、思わずうっとりしてしまった。
 刃物を眺めてこんな顔するとか俺ヤベェな。
 持って見た感じではかなり軽く金属というより乾いた木を持っている感覚だ。

 ウキウキしながら木の廃材を使い、試し斬りをしてみるが、どうにも斬れ味が悪い。
 同じく試し切りした鉄のナイフの方が斬れ味が良い見たいで、どちらの強度が強いのか気になり、よく漫画などである剣と剣を叩き合わせるアレをしてみるとミスリルの方が凹んでしまった。
 どうやらミスリルは単純な武器や防具しては性能が低いのかも知れない。
 だが、ミスリルと言えばゲームや漫画などに興味が無い人でも知ってそうな位に有名な金属だ。もしかしたら独自の加工方法が有ったり、現在のスキル値では足りない所以の知識不足や魔法や魔力などのまだ理解していない力を必要とする金属の可能性が考えられる。
 とはいえ、見た目も美しく加工もしやすいのでアクセサリーとしての価値も有るのではないかと思う。

 そう言えば、ミスリルがあるって事はオリハルコンやアダマンタイトなどもある可能性がかなり高くなってきたな。

 続いて新しく掘れた、もう一方の鉱石であるルーンメタルは、黒い色をした鉄より重い金属で、製作時にハンマーで叩いた時は相当な硬さを感じさせていた。
 斬れ味はとても良く、試し斬りで使っている木の棒を鉄製のナイフでは半分程まで刺されば良い所をこのルーンメタル製のナイフでは簡単に一本丸ごと切り落とせた。
 驚いた俺は斬れ味の検証を続け、棒の本数を増やして行った結果、二本と半分まで切れる事が分かった。

 この結果を単純に2.5倍の斬れ味が有ると言って良いのかは分からないが、どう考えても鉄とは比べ物にならないレベルの金属だと理解した。

「この金属ならあのスライムを殺せるか……?」

 新しく出て来た可能性に物騒な言葉が出てしまった。思わずニヤけてしまった頬を撫でながらあいつを殺す算段をする。

 一番最初にスライムに武器を投げ付けてた後も、青銅で槍や斧などを作って度々テストをしていた。
 投げ槍はナイフよりかは刺さるは刺さったが、核には届かなく、斧に至ってはドボンッといい音をさせるのだが、粘度の高い対象には効果が薄く槍の様に深く刺さる事は無かった。
 投擲術のレベルが上がるか、優れた武器でもないと倒すことは無理だと分かっていたので、ルーンメタルと言うこの新たな金属は、久しぶりに状況が進展する可能性を秘めた嬉しい出来事なのだ。

 投擲術のレベルアップとルーンメタルで作った武器を組み合わせれば、スライムを打ち破る事が出来るかも知れない。
 その為に今後もスキルの訓練と採掘は必要になるだろう。

 今回新しく出て来たルーンメタルとミスリルは、鉄や青銅に比べると、その塊は非常に小さく、まだ残っている掘れない場所の数を考えると、全て掘ってインゴット一本になるかと言う所だ。やっぱりこの手の金属はレアなんだろう。
 出来れば量が欲しいのだが、更なる時間が必要なのは、これまでの採掘作業で分かっている。もっと深く掘ってみるべきなのかも知れない。

その日は残りの掘れなかった場所を、掘り返して全てインゴットにしていたら日が暮れていた。
ここ最近では本当に一番の成果だと思う。



 最近は正に炭鉱の正社員かの様に採掘と鍛冶をしていたが、今日からは少しペースを落として他のスキルを重点的に上げて行こうかと思う。
 採掘を辞める訳では無いのだが、レベルも上がったし新しい鉱石も出たので一段楽付けようと思ったのだ。
 それに希望が持てるルーンメタルの鉱石が出たことも有り、いい加減攻略をしたいと思っている。

 攻略に関して言えば何だかんだ有ったが、結局はスライムの打倒が一番の候補なのは変わらずで、どうにかして奴を処理しなければならない。
 その為にも投擲術のレベル上げを優先しつつ、もう直ぐ上がりそうなスキルを重点的にやっていこうと考えている。

 まず、投擲術はと言うと日頃から訓練をしているので、熟練度は上昇しているのだが、レベル2からの必要熟練度が倍になっていて、スライムを的に使ってもまだまだ時間がかかる見込みだ。
 レベルが上がると上昇する確率も低くなるのか、どうも最初の様な感覚では上がらなくなっている。

 もう直ぐ上がるスキルに鍛冶と鑑定が有る。鍛冶はこの長い期間の間にレベル1に上がっていて、青銅による大量生産のお蔭でもうすぐレベル2が見えてきている。鑑定はまだ最初に持っていた頃のレベル1ままだったが、掘れた鉱石と作った武器の鑑定を習慣付けていたら良い調子で上がり続けて、こちらももうすぐレベル2になりそうだ。
 双方所謂生産スキルっぽいので、スキルのレベルアップによる力の上昇が無いかも知れないが、辛うじて鍛冶は可能性が有るんではないかと思っている。
 実際に上がってみない事には何とも言えないんだけどね。

 同じくスキルで言えばこの二ヶ月間、餌付けの時に上がり続けた調教が、つい八日前にレベル1になり大鳩を飼いならせる事が出来る様になったのだ。大鳩とは何時も餌付け出来ていたデカイ鳩ね。 それが現在は一羽が俺のペットとして働いてくれている。
 普段は放し飼いで勝手にしろと命令しているが、昼頃になると果物や木の実を収獲して持って来てくれるのだ。
 大鳩は調教しないって言ってたじゃ無いかって?
 それは大鳩だけがいた頃の話だよ。今では三種類の鳥が毎日パンを食べに来ている。
 ずんぐりむっくりな感じでくちばしが長く、白い毛を持つ鳥と、ムクドリっぽい茶色の毛と頭部に黒いモヒカンの様な毛を持つ鳥で、両方共に大きさでは大鳩より一回り小さいが、十分食べ応えがある。特に白い鳥は脂が上手いのだ。

 狩りの方法も少しだけ変わった。
 調教済みの大鳩を使って誘導出来る様になったので、部屋の中まで誘き寄せるのが比較的に楽になったのだ。
 最初に誘導させた白い鳥の首を投げナイフでハネた時は、同じく部屋に入って来ていた大鳩にお前マジかよ見たいな顔をされたが、調教スキルのお陰か分からないが次回からは特に何もリアクションをしなくなった。
 いや、あれはスキルじゃなくて俺は何も見てないって奴か……。

 そんな事も有り、他の鳥を誘導させたりして毎日十数羽来ているのだ。毎日狩るような事はしていないので、当分は食べるのに困らないだろう。
 しかし、思い返してみると超絶ブラックな事させてるな。明日はパンを二個やろう。報酬がパンとか舐めてるのかと思われそうだが、彼等としては相当美味いらしく、丸々一つ上げれば四日は持つヤバイ食物らしい。
 考えが及ばなかったし、体も問題無かったから気付かなかったけど、このパン絶対普通じゃ無いよな。こんな長期パンと鳥肉だけで体調維持出来てるって明らかに可笑しいわ。

 こんな感じで調教のスキルは簡単な意思疎通も出来て、今居る場所の情報なども増えた。鳥の頭なので片言の様なイメージしか返って来ないのだが、どうやらここは山に程近い地面の割れ目との事だ。
 もっと詳しい情報が欲しいのだが、如何せん大鳩の頭ではこれ以上の話が理解出来ない様なので早々に諦めた。
 意思疎通して分からない事が出て来た時の「なに?なに?うふふ」見たいな能天気な返事に問い詰める気が起きなくなるんだ。まあ、聞いた所で答えは出ないだろうと思っている。
 そもそも、そこまで行動範囲が広いわけでは無いらしく、広範囲の情報などは最初から無く、周辺の森から出ることも無いのでこの世界がどうなっているかなど勿論知らないのだ。
 博識な鳩とかファンタジーな世界でも居ないって事だな。
 と言う訳で食生活の方は大分と言うか、かなり充実して来ている。

 充実したのは食生活だけでは無い。最近はなんと湯を使っているのだ。貴重な木材を消費すること無く、湯を沸かせる事に気づいた時、俺は天才だと思ったが、冷静になってみると誰にでも思い付く事だと気づき、誰も居ないのに恥ずかしくなった。
 その方法とは、鉄を炉で熱して桶の中にぶち込むのだ。
 鉄と青銅は採掘量に消費が間に合っていないので、最近では部屋の隅に積むほど余っている。インゴットが積まれているのを見ると中々気分が良い。
 そんな大量の鉄を眺めているときに思いついたのだ。
 鍛冶で使う水桶は使いすぎて、水を入れると得体の知れないゴミが浮くので、入る気は起きないので、俺お手製の桶にお湯を作りタオルで体を拭いてる。水だけの時よりかは生活が断然マシで、洗濯何かも捗っている。
 まあ、洗濯と言っても洗う物は掛布団と今だに着続けている袋の服だけなのだ……。いい加減パンツを履く生活をしたいのだが、如何せん素材が無い。
 パンツが無ければ当然靴何かも無いので、当然素足なのだが、人間慣れる物で足の裏の皮が物凄く厚くなっている。もう走ったぐらいで切れる事も無くなって助かっているのだが。
 食・住が揃って来ているので、衣の方をそろそろ神様お願いします。

 最近の近状はこんな所だろう。方針は兎に角スキルのレベルを上げる事を優先する。スキルが上がって肉体の強化が出来れば採掘の効率も上がるからね。

 今日のスキル上げを終え寝床に付く。
 寝る前に改めてステータスのチェックをしていこう。

【名前】ゼン 【年齢】10 【種族】人族
【レベル】 1 【状態】――
【H P】 242/242 【M P】 22/22

【スキル】
・投擲術Lv2(170・7/200)・格闘術Lv1(0・0/100)
・鑑定 Lv1(90・3/100)・料理Lv1(65・2/100)
・魔法技能Lv0(10・4/50)・鍛冶Lv1(72・3/100)
・錬金  Lv0(0・7/50)・大工 Lv1(0・7/100)
・裁縫  Lv0(0・2/50)・伐採  Lv0(2・0/50)
・採掘 Lv3(2・1/300)・探知Lv1(58・5/100)
・調教 Lv1(4・8/100)

【加護】・技能神の加護 ・*******

 スキルの量が増えてレベルが上がっていくのを見るのはとても楽しい。このシステムはやっぱり前向きになれるね。
 あぁ、そうだ。これは長く気づかなかったのだが、HPの上限が上がっていた。どのタイミングで上がったのか分からないのだが、予想ではスキルのレベルが2になった時だろう。長い間怪我なんてする事が無かったので全く気付かなかった。
 今はもう慣れてしまって当然の様に扱っているが、当時は肉体が強化された感覚が有ったので、たぶん合っていると思う。
 間も無く上がると思われる鑑定で変化が見られるか分からないが、近々判明するだろう。
 まあ、何にせよやっていく事は変わらない。スキルを上げて掘るだけだ。この生活にも慣れた物だな。

 んじゃおやすみ。
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