今日からは自由対位法の勉強に入ります。
と言っても自由対位法は厳格対位法の考え方に
和声の考え方をプラスしただけの技法であり、
自由対位法独自の理論があるわけではありません。
と言うことで対位法の記事内ではひとまず
厳格対位法と自由対位法の違いだけを
紹介して自由対位法の勉強とすることにします。
むしろ自由対位法はこの後の和声学の勉強で
改めて勉強していくことになるんじゃないかな。
厳格対位法
・主にルネサンス音楽の様式
・和声的要素が薄い
・拍子感が弱い
・旋律は教会旋法
・主に声楽曲
自由対位法
・主にバロック音楽の様式
・和声的要素が強い
・拍子感が強い
・旋律は長音階短音階
・主に器楽曲
以前の記事で書いた厳格対位法と自由対位法の違いを、
今回の記事ではさらに詳しく見ていきたいと思います。
・時代
厳格対位法はルネサンス期の音楽で、
自由対位法はバロック期の音楽になります。
まあこれは単なる時代区分の話ですねw
ただまあ西洋音楽の歴史の流れとして
グレゴリオ聖歌→厳格対位法→自由対位法→和声
と進化(?)していったことは覚えておきましょう。
自由対位法はこう言うとなんですけど本当に複雑怪奇で、
確かに和声学のように体系的にまとめて簡略化したくなる。
・和声的要素
自由対位法は和声学的な要素が強い。
と言うか上の歴史の流れでも触れたように、
自由対位法を簡略化してまとめたのが和声学です。
と言うことで自由対位法は基本的に和声の概念で
和音を積み重ねたり進行を作っていくことになります。
・3個以上の音が鳴る場合は全て三和音にする
・三和音同士の進行は和声学と同様に扱う
・長2度&短7度の○協和音化(7thコードの登場)
自由対位法の和音面でのポイントはこんな感じ。
厳格対位法と違って三和音にはきちんとコード名を付け、
そのコードに従ったコード進行を作り出す必要があります。
7thコード等三和音以外の和音の使用も許されるので、
長2度短7度の和音も○協和音扱いされるのが特徴的。
・拍子感
厳格対位法は拍子感の薄い作曲技法でした。
繋留やら何やらで片方の音が鳴っていない時の手法を
散々勉強したことからもそれはよく分かるかと思います。
厳格対位法は複数の音が互い違いに鳴るのが魅力であって、
表拍で全ての旋律が一斉に鳴るのは△扱いされることが多い。
しかし自由対位法は全くの真逆です。
表拍では全旋律が一斉に音を鳴らして和音を作るのが○。
表拍で鳴る音が少なく結果として和音が生まれないと、
自由対位法では逆に△扱いされてしまうことが多いです。
・旋律
厳格対位法では7種類の教会旋法を使いましたけど、
自由対位法では長音階or旋律的短音階を使います。
ここで重要なのが、教会旋法の内の2種類である
イオニア旋法(ドレミファソラシド)
エオリア旋法(ラシドレミファソラ)
が長音階&短音階になったわけではないと言うこと。
イオニア旋法はあくまでドで始まりドで終わる旋法です。
しかし長音階は別にドから始める必要はないし、
さらに言えば最初とは別の音で終わったって良い。
要するに転調したって良いと言うことです。
教会旋法の中心音(イオニア旋法なら"ド")は絶対でしたけど、
長短音階はあくまで今の長短音階と同じ扱いをして問題ありません。
また対位法で旋律的短音階を扱うにあたって、
いくつか新しい問題が出てくることになります。
旋律的短音階
上行 ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ♯・ソ♯・ラ
下行 ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ
上行の時は導音を作るためにソを半音上げて、
ソとファの間隔を変えないためにファも半音上げる。
下行の時は導音がいらないから自然的短音階のまま。
この音階には厳格対位法とは違って黒鍵盤が出てきます。
要するに増4度や短2度の×協和音が生まれやすくなる。
増4度はシ+ファに加えてド+ファ♯とレ+ソ♯が追加。
短2度は♯近辺のあちこちで簡単に発生してしまいます。
自由対位法は基本的に和声の考え方に従うとは言え、
コードとコードの間はやはり厳格対位法と同じく
2音が何協和音かで○×を判断することになるので。
×協和音の扱い方には注意しましょう。
・楽器
厳格対位法は声楽、要するに人の声で演奏する。
自由対位法は器楽、要するに楽器で演奏します。
この演奏形態の違いで、多少規則面も変化します。
厳格対位法では6度以上の跳躍は×扱いでしたけど、
自由対位法では6度の跳躍は何の問題もありません。
7度8度も直後に反行すれば使っても問題なし。
また厳格対位法では連続跳躍も禁止されてましたけど、
自由対位法では特に問題なく連続跳躍も扱えます。
歌ってみると変だけど楽器で演奏するなら問題ない旋律は
全て厳格対位法なら×だし自由対位法なら○になると言うこと。