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ロシアのドーピング疑惑 五輪などの出場停止を勧告
11月9日 23時57分

ロシアのドーピング疑惑 五輪などの出場停止を勧告
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WADA=世界アンチドーピング機構の第三者委員会は、ロシアの陸上界で組織的なドーピングが行われていることを認定したうえで、来年のオリンピックも含めた陸上競技にロシアを出場させないよう勧告しました。
この第三者委員会は去年12月、ドイツの公共放送がロシアの陸上界の組織的なドーピング疑惑を報じたことを受けてWADA=世界アンチドーピング機構が設けました。
10か月にわたる調査を終え、責任者を務めたWADAのリチャード・パウンド元会長が9日、スイスのジュネーブで記者会見し、調査結果を公表しました。
この中で、報じられたとおり、ロシアの複数の陸上選手やコーチなどが、日常的な禁止薬物の使用や偽名を使った検査逃れを行うなど、ロシアの陸上界で検査機関などを巻き込んだ組織的なドーピング違反が行われていたと認定しました。
そのうえで、WADAはIOC=国際オリンピック委員会に対し、ロシア陸上競技連盟が法令を順守できると認められるまでは、ロシアをオリンピックなどに出場させないよう勧告しました。
さらに、ロシア陸連医事委員長の永久追放とモスクワにあるWADA公認の検査機関「モスクワ研究所」の公認取り消しと、所長の永久追放を求めました。
また、ロシア陸連が国際大会に選手を出場させる条件として、一連のドーピングに関わったすべての選手とコーチのリストをIAAF=国際陸上競技連盟とWADAに提出することを求めています。
今回の報告書について責任者のパウンド氏は、「ゆゆしき事態だ。事前の想定よりも実際はひどい状況だった。改善がなされなければリオデジャネイロの陸上競技にロシアの選手の姿はないかもしれない」と述べ、勝利至上主義の下、勝つためには競技団体や検査機関も巻き込んで不正を行っていたロシアの現状を厳しく糾弾する内容となりました。

5人の選手 永久資格停止処分が適当

WADAの第三者委員会は、調査報告書の中で、ロシアの陸上の5人の選手と4人のコーチ、そして1人の医師について「永久資格停止処分が適当だ」と指摘しました。
5人の選手は、いずれも女子の主に中距離の選手です。
このうち、マリヤ・サビノワ選手は30歳。
2012年のロンドンオリンピック女子800メートルの金メダリストで、世界選手権では2011年に優勝、2013年は2位でした。
また、エカテリーナ・ポイストゴワ選手は24歳。
サビノワ選手が金メダルを獲得したロンドンオリンピック女子800メートルで銅メダル、2013年の世界選手権では5位でした。

WADAとは

WADA=世界アンチドーピング機構は、世界各国のドーピングの根絶と反ドーピング活動の促進を目的として、1999年に設立されました。
国際的なドーピング検査の基準や違反に対する制裁手続きの統一などを行うための国際機関で、IOC=国際オリンピック委員会から独立しています。
本部はカナダのモントリオールで、日本ではJADA=日本アンチドーピング機構がこの活動を行います。

IOC「衝撃的で極めて残念な内容」

WADAの第三者委員会が調査報告書を公表したことを受けて、IOC=国際オリンピック委員会は声明を発表しました。この中でIOCは、「世界のスポーツにとって衝撃的で極めて残念な内容になった。IOCは、新しい国際陸上競技連盟の指導部が必要な結論を導き出し、必要な措置を講じることを信じている。国際陸連が『クリーンな選手を守り、陸上競技に対する信頼を取り戻すために最善を尽くす』という強い決意を示したことを歓迎する」としています。
また、ロシアの選手のドーピング違反の隠蔽に関わった疑いをもたれ、フランスの司法当局から捜査を受けているとされる、国際陸連のラミン・ディアク前会長について、IOCの倫理委員会がIOCの名誉委員の資格を暫定的に停止する勧告をしたことも明らかにしました。

ロシア スポーツ相「出場を停止させる権限ない」

勧告を受けて、ロシアのムトコ・スポーツ相は、地元メディアに対し「委員会には誰かの出場を停止させる権限などない」と述べました。さらに、「報告書には新たな事実は見られないが、落ち着いて検討する必要がある」として、後ほど、正式な声明を発表するとしています。

ドーピング疑惑の経緯

この問題は、去年12月にロシアの陸上選手などが国を挙げた組織的なドーピングを行っているとドイツのテレビ局が報じたことに端を発します。
ドイツの公共放送「ARD」は、去年12月3日のドキュメンタリー番組の中で、2009年からシカゴマラソンを3連覇したリリア・ショブホワ選手が、「薬物の陽性反応が出たのに、ロンドンオリンピックに出場するためロシア陸上競技連盟の幹部に多額の金銭を支払って事実をもみ消した」と告白する証言を放送しました。
そのうえで、ロシアの複数の陸上選手やコーチなどの証言をもとに、ロシアのスポーツ選手たちが日常的な禁止薬物の使用や偽名を使った検査逃れなど国を挙げた組織的なドーピング疑惑を行っていると報じました。
これを受けて、番組放送後に、IAAF=国際陸上競技連盟の倫理委員会とIOC=国際オリンピック委員会が調査に乗り出しました。
さらに、WADAが第三者委員会を設置し、ことし1月から本格的な調査を始めました。
第三者委員会の責任者は、WADAの元会長、リチャード・パウンド氏が務め、スポーツの法律の専門家もメンバーに入って情報収集に当たり、個人や組織がドーピングに関わった証拠があるかどうかなど分析していて、前例のない組織的な薬物違反に発展するのか、報告に注目が集まっていました。

過去の組織的ドーピング

組織的なドーピングを巡っては、中国で、陸上の馬俊仁コーチが率いて、1990年代前半に当時の世界記録を数々打ち立て、「馬軍団」として知られた女子中距離の強豪チームで、2000年のシドニーオリンピック直前に、7人のうち6人の選手がドーピングの疑いから登録を外されたことがあります。
また、ドイツでは、旧東ドイツ時代に、オリンピックでのメダル獲得のために筋肉増強剤が組織的に使用されて社会問題となったほか、2年前には、ドイツの連邦スポーツ科学研究所が、旧西ドイツでも、サッカーや自転車、ホッケーなどの競技で、組織的にドーピングをしていたとする報告書を発表し、波紋が広がりました。
また、自転車競技では、ロード・レースの最高峰、ツール・ド・フランスで、1999年から7連覇を果たしたスーパースター、アメリカのランス・アームストロング氏が、かつての医師やトレーナーとともに、禁止薬物を使用していたことをはじめ、多くのトップ選手がドーピング違反を認定され、チームぐるみでの薬物の使用が大きな問題となりました。

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