咳エチケットができない人の心理
単に喉の通りが悪く咳をしている可能性もあるが、近くにいる人にとっては「風邪をうつされたら」「息やつばが飛んできたら……」と気になる光景だろう。特に公共の乗り物の中ならなおさらである。彼らはどうして咳エチケットができないのだろうか……? 今回は咳エチケットができない人の心理について迫ってみたい。
■口を押える人と押さえない人の違いは?
咳が出そうになった時、手で口を押さえる人と押さえない人の違いは何なのだろうか。心理学者の内藤誼人先生に、その心理を聞いてみた。
「共感性の差ですね。共感性とは、『他の人の立場で考える』能力のことで、『自分が相手で、もし唾がかかったら嫌だろうな』という判断ができないために、手で押さえないんですよ」(内藤先生)
人によっては人がいる方向を避けて咳をする人もいる。こうした行動が取れるかどうかも、内藤先生が指摘する共感性の差のひとつなのだろう。いわば相手のことを考えた行動が取れるのか、という配慮の問題なのかもしれない。
ではひどい咳が出る場合に、マスクをつける人とつけない人の心理についてはどうだろか。なかにはマスクをつけることがダサいと気にして、つけない人もいるようだが……?
「同じです。共感性がない人は、他の人がどう思うのかより、自分の感情のほうを優先します。自分がマスクをつけたくないのなら(苦しいとか、カッコ悪いとか)、他の人に迷惑をかけようが、そんなことはどうでもいいのですよ。共感能力が欠如している人は、へっちゃらなのです」(内藤先生)
それこそ学生だった頃に、ひどい咳をしていながらマスクをせず登校してきて、頑張って授業を受けている生徒がいたのを思い出す。今となっては笑い話であるが、周りにとってみればやはり迷惑行為の何ものでもないかもしれない。
■あくびを押さえる心理はまた違う?
ちなみに咳以外でも、あくびをする時に手で押さえる人、押さえない人もいる。これも咳と同じように共感性の差なのだろうか……? よく笑う時に口を押える女性がいるが、「恥ずかしい」という気持ちで手を当てることも考えられる気がするのだが。
「身振りとして会話中に『口を手で押さえる』のは、秘密主義タイプなのですけれども、あくびについてはそうではないでしょう。あくびは特に人に迷惑をかけるわけでもなく、ただ見苦しいというだけですから、他人に見られる自分を意識する人だけが手で隠すんじゃないかな、と思います」(内藤先生)
これから本格的に風邪が流行するシーズンがやって来る。他人に迷惑をかけないよう、咳が出る際はくれぐれもマスクを着用したいものだ。
専門家の意見は上記だったが、皆さんはいかがだろうか? 「教えて!goo」では「公共の乗り物などで、見知らぬ人が自分の面前で咳をして不快に感じたことはありますか?」と皆さんの意見を募集中だ。
●専門家プロフィール:内藤 誼人(ないとう よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。「3割しか話さないのになぜかうまくいくビジネス英会話のルール」(ジャパンタイムズ)他、著書多数。
柚木深つばさ(Yukimi Tsubasa)
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