今年の九州場所は、いつもと風景が違う。冬の到来を告げる力士の外套(がいとう)姿が見られない。それもそのはず。平年よりも気温が2、3度高い。時に汗も出る。13日はあいにくの雨だったが、それでも寒くはならなかった。
昨年の福岡市。場所の15日間で20度超えは4日間だけ。おととしは初日以外、すべて20度を切り、13度まで下がった日もあった。だが、今年は初日にまさかの最高28度を観測。勢は就寝時、冷房をつけた。同部屋の十両錦木は「さすがに寒くて起きましたが、リモコンが関取の枕元にあったのでどうにもならず。九州で夜に冷房が入ったのは初めてです」と苦笑いした。
暖かい気候は、力士の体調を変化させる。膝などに古傷を抱える力士にとっては恵みの暖かさ。例年、加湿器の設定を最大にしてものどを痛めていた豪風も、無事に乗り切っている。
街中でも異変がある。高級魚のアラは身が詰まった10、20キロ以上が少なく、フグも値段が高騰。寒くなって取れるゴマサバは、やっと並び始めた。ただ、各力士は口をそろえる。「部屋にはアラ、何回か届きましたよ」。九州場所が始まるとアラの値段が高騰する-。その風景だけは変わっていなかった。【今村健人】