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【主張】
日韓首脳会談 原則崩さず懸案にあたれ
安倍晋三首相と韓国の朴槿恵大統領との初の首脳会談が、ようやく実現した。
胸襟を開き、さまざまな課題を率直に語り合った割には、詳細な内容は公表されていない。
両首脳が2年半以上前に就任してから、一度も正式な会談が行われない異常な状態は脱した。関係改善の大きな一歩と位置付けようと、立場の違いを強調するのを避けたということだろう。
留意すべきは、まだ互いの主張を伏せざるを得ないような、もろい状態にあるということだ。
多くの課題で一気に前進を図るのは無理がある。とりわけ、歴史問題の決着を急ぐような、安易な取り組みは禁物である。
安倍首相は会談後、「さまざまな諸懸案」について、日本の主張を述べ、韓国側に対応を促したと説明した。具体的にどの課題でどのような方向性が示されたかは分かっていない。
そうした中でも明確にされたのは、慰安婦問題について、早期の決着に向けて交渉を加速するという一致点である。
首相は会談後、この問題で「将来世代に障害を残すことがあってはならない」と述べた。朴氏は会談の中で「韓国国民が納得できる形での解決」を求めている。
言うまでもなく、慰安婦問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだ。日本側はその後も、アジア女性基金を通じた元慰安婦への償い金の支払いなどの対応をとってきた。
だが、韓国側は再三にわたって問題を蒸し返し、日本牽制(けんせい)のカードに使ってきた経緯がある。
日韓国交正常化50年という節目に、何らかの前進をみたいという姿勢は双方からうかがえる。日本の原則的立場を変えられないのは当然だが、曖昧な決着でまた火種を残すような解決は必要ない。
来年、日本で日中韓首脳会談が開催され、朴氏が来日する。歴史問題への固執は関係改善につながらないと説得を続けるべきだ。
両国が早急に話し合う必要があるのは、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威や、中国の軍事的台頭で悪化する地域の安全保障環境への対応である。
双方の国益につながる問題であり、米国を交えた日米韓の枠組みを強化することで対処する必要性が増している。南シナ海情勢を含め、早急に協議すべきである。