自称「90年代最大の異端児」元少年A 達成したいビジョンあり
事の始まりは2012年冬。僕は段ボール2箱分の缶詰を買い込み、カーテンを閉め切った穴蔵のような狭いアパートの一室に籠城し、版木に向かう棟方志功さながら、書き物机に鼻先をこすり付ける勢いで、体重をかけ一文字一文字刻み込むように見城氏への手紙を書いていました。実際に見城氏に送った手紙と一字一句同じ下書きが残っていますので、ここに転載します》(以下《》内はAの手紙から)
手記出版以降、沈黙を守り続けたAの初めての肉声だ。手紙は、見城氏との私信のやりとりの公開から始まった。
まず、見城氏へ送った手紙が再現された。Aはそこで、あるテレビ番組で見城氏を知り、彼の著作を読みふけり、彼に心酔していることを告白。見城氏との対面を熱望する自分の心をこう続けた。
《「近いうちに自分は、この見城徹という底しれない怪物と接触することになる」
そうはっきり確信しました。怪物は怪物を知る。心の奥深くに封印していた私の中の怪物が、あなたと交わりたくて鋼鉄の扉をドンドンと叩きつづけているのです》
Aはまた、見城氏へ宛てた手紙の中で、“表現すること”への渇望感を明かしている。
《私には四十歳までに何としても実現したい具体的なヴィジョンがあります。そのために、この暑苦しい「普通の羊」の着ぐるみを脱ぎ捨て、9年ものあいだ封じ込めていた“異端の本性”を呼び覚まし、精神をトップギアに入れ、命を加速させ、脇目もふらず死に物狂いで「一番肝心な」三十代を疾走してやろうと決めたのです》