週刊ポストの名物と言えば、NPBの大御所たちのお叱言だ。かねやんがプレミア12について批判していた。
先日テレビを見ていて絶句したよ。もう11月だというのに選手たちは日本代表・侍ジャパンで「プレミア12」とかいう国際大会に出るという。こんなものはワシにいわせれば害悪でしかありません。(中略)野球の国際試合は、五輪で復活させるだけで十分なんです。それもメジャーの主力が出てきて初めて成立する。それ以外は不要だ。メジャーが参加しない国際大会に日本が一線級のプロを出す必要はない。
 そもそもそんな野球の何が面白いんだ。単に主催者がカネ儲けしたいだけという狙いが透けて見えるから気に入らない。そんな代表チームなど常設する必要はありません。今すぐ解散してしまいなさい。


この記事の担当者は私もよく知っている人だ。お年寄りの本音を引き出す名人だ。金田正一だけでなく、広岡達朗や野村克也らも気持ちよく放言している。

A


金田の話は正論である、レギュラーシーズンが終わり、日本シリーズが終われば、野球選手は体を休めるのが一番だ。
リラックスして家族孝行したり、ゴルフや趣味に興じて、英気を養うべきなのだ。
11月の半ばになってまで、真剣勝負の野球をするなんてもってのほか。
(もっとも、金田の時代は11月に日本シリーズをやっていたのだが)。

プロ野球が金田の時代のように「娯楽の王様」で、日本中の人が注目しているのならそれでいいのだと思う。
しかし、今は娯楽の選択肢は無数にある。野球はその一つに過ぎない。しかも、愛好者は中高年が中心。
10代の子供ではサッカーの愛好者は40%、野球は25%に過ぎない。しかもバスケットボールが24%で追いかけてきている。
地上波テレビではもはや放映が成り立たないほど視聴率は落ちている。
もっとも、野球場にはこれまでにないほど人は押しかけてはいる。野球は「テレビで見るスポーツ」から「スタジアムで見るスポーツ」に変貌したと言えるかもしれない。


しかし野球を見る絶対数(直接、メディア経由含む)は間違いなく減っている。
サッカーは野球の背中を追いかけて成長してきた。
そのキーワードは「若年層の取り込み」と「国際化」だった。子供たちへのサッカーの普及に努めるとともに、ワールドカップに日本が出場し、活躍することで全国的、全世代的な注目を集めた。
最近でいえば、ラグビーの活躍が記憶に新しい。

遅ればせながらNPBも、手を打とうとしているのだ。「国際化」によって、野球のステイタスを高め、若年層などの注目を集めようとしているのだ。またアジア圏でのライセンスビジネスなども視野に入れている。
WBCでの日本の活躍が大きな反響を呼んだことでもわかるように、これは有望な将来展望なのだ。

残念ながらうまくいっているわけではない。野球国際化を主唱しているMLBが、選手を派遣していない。
セリグ前コミッショナーは野球の国際化を推進した。しかし各球団のオーナーは「総論賛成各論反対」であり、レギュラーシーズン、ポストシーズン以外に選手に野球をさせることを望んでいない。
その結果としてWBCでもアメリカは勝てなかった。
プレミア12ではMLB選手を派遣しないことで、アメリカのみならず、ドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコなどの選手の質を著しく劣化させた。
日本は韓国、台湾とともに国内トップリーグの精鋭を集め、万全の態勢で試合に臨んでいる。「独り相撲」的な印象は否めない。馬鹿正直とも思える。

しかし長期的な視野に立てば「侍ジャパン」のこうした取り組みがうまくいかなければ、野球の未来はないと言ってもよい。
サッカーやバスケットなどの後塵を拝し、相撲のような「老人が見るスポーツ」に転落する危機を回避するためにも、試行錯誤が必要なのだ。

これもポストだったと思うが、江本孟紀がNPBの人気凋落について
「民放がテレビ中継をしないのが悪い。もっと試合中継をすればいいのだ」
と言っていた。こういう無邪気な意見は今や通らないのだ。

お年寄りたちは、まだ「昭和の野球」の夢を追っているようだが、時代は恐ろしい勢いで変わっている。
「老人の放言」はほほえましいが、今や、「意見」の類ではないと思う。


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