安倍晋三首相インタビューが『文藝春秋』(12月号)に掲載されている。
「アベノミクスの成否を問う『一億総活躍』わが真意」と題した記事中で、安倍首相は「出生率1.8」を目指すとして、以下のように語っている。
〈 第二の矢は「夢をつむぐ子育て支援」で、その矢の的は、2020年代半ばまでの「希望出生率1.8の実現」です。しかしながら現在の出生率は約1.4です。産みたいのに何らかの事情で産めない方の事情を取り除いていくことで、実際の出生率が、希望出生率と同じ1.8になるようにしたいというのが基本的考え方です。 〉
ここで、出生率を上げる具体的な方法について提言したい。
「シルバー民主主義」という言葉がある。主要民主主義国家の中で日本のように凄まじいスピードで少子高齢化が進む国は他にない。そして世代間格差という点で高齢者が幅を利かすのは、貯蓄率が高く政治・経済的影響力を持つからに他ならない。
国民総生産(GDP)の2倍に及ぶ1,000兆円超に膨れ上がった国家債務。加えて年金・医療費の世代間格差など深刻な財政・社会保障問題の解が見当たらない中で、このシルバー民主主義が、老齢・引退世代の依然として強い社会的影響力によって若年・将来世代に過剰な負担を押し付けている現実がある。
ここで想起すべきは、フランスの「国が子供を育てる」という画期的な少子化対策であろう。「女性活躍」社会を制度化して出生率1.8を達成した。
荒っぽい試算ではあるが、日本でも仮に第1子に対する子育て支援として1,000万円を供与すれば、5兆円の予算で新生児が約50万人増えることになる。
少子化対策は究極の経済対策であり、乗数効果で言えば公共事業などに数兆円規模の補正予算を毎年度計上するよりはるかに大きな政策効果が期待できる。向こう3年間、5兆円の少子化対策予算を付けて、毎年新生児50万人、3年間で150万人の人口増加を促せば「第3次ベビーブーム」の到来は確実である。
そんなことすれば、地方都市の超若年ヤンキー・カップルだけが「カネ欲しさ」で“産めよ、増やせよ”に励むことになる、と皮肉る向きがいるはずだ。
だが、団塊の世代(1947〜49年生まれの約800万人)が65歳になり年金の支払い側から受け取り側になった「2015年問題」と、同世代が高期高齢者医療の対象75歳になる「2025年問題」を克服しなければならない。
しかし、同世代の現役引退による技術者不足と高賃金の製造業従事者の減少、一方で介護・福祉や小売り・飲食など低賃金のサービス産業若年就業者が増える労働構造の変化が景気回復を阻害しつつある。
つまり、経済を活性化し成長力を底上げしてカネ回りを良くして景気回復に繋げるアベノミクスのための「トリクルダウン効果」を相殺しているということである。
ヤンキー・カップルでもいいのではないか。高賃金の製造業従事者が減り、低賃金の若年中心の就業者が増え続けているのだから。
毎年5兆円の予算で「第3次ベビーブーム」は確実
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