TPP:輸入品の95%関税撤廃 輸出工業品は87%即時
毎日新聞 2015年10月20日 12時12分(最終更新 10月20日 13時04分)
政府は20日、日米など12カ国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の関税分野の合意内容の全容を公表した。日本が輸入する農林水産物と工業製品を合わせた全9018品目で最終的に関税を撤廃する比率は95.1%(品目ベース)で、日本がこれまで結んだ自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)で最も高くなる。
日本が輸出する工業製品に関しては、日本以外の11カ国が86.9%の品目の関税を即時撤廃する。最終的には99.9%が撤廃される。
日本が輸入する農林水産物や工業製品の関税が幅広く撤廃されると、輸入品の価格が下がり、家計にプラスに働きそうだ。また、輸出する工業製品に課される関税がなくなると、日本の輸出産業にとって追い風となる。一方、海外の安い農林水産物の輸入が拡大すると、国内の生産農家の経営に打撃となる恐れがある。
日本が輸入する農林水産物(2328品目)では、最終的に81%(品目ベース)の関税を撤廃する。日本が関税を撤廃したことがない834品目の約半数の395品目で関税をなくす。高関税で保護してきたコメ▽牛・豚肉▽乳製品▽麦▽甘味資源作物(砂糖)の重要5項目の586品目では、輸入品が大半を占める牛タンなど174品目で関税が撤廃される。
ただ、日本以外の11カ国は、農林水産物の98.5%の関税を撤廃するとしており、日本は「農産品に限っては自由化率は一番低い」(甘利明TPP担当相)という結果になった。
日本が輸出する農産物も多くの品目で関税が撤廃される。米国は日本産牛肉の無税輸入枠を設ける。
政府はTPPを活用して日本の農産物の輸出拡大を推進する方針。一方、安い農産物の輸入拡大が見込まれる分野では、農家に対する支援策も検討している。政府はこうした対策を盛り込んだ「TPP関連政策大綱(仮称)」を11月にも取りまとめる。
日本から輸出する工業製品に関しては、米国の輸入関税が自動車部品(現行2.5%)の約8割やビデオカメラ(2.1%)などで即時撤廃される。大型二輪車(2.4%)も協定発効後5年目に撤廃される。
ただ、日本の主力製品の乗用車(2.5%)は関税撤廃が発効後25年目、トラック(25%)が30年目での撤廃となり、効果が出るには長期間かかる。
一方、米国以外の乗用車の輸入関税は、カナダ(6.1%)は発効後5年目、オーストラリア(新車、5%)は即時、ベトナム(排気量3000CC超、最大70%弱)は発効後10年目に撤廃される。日本の自動車メーカーにとっては、TPP参加国への輸出拡大を通じて、国内の生産体制や雇用の維持につなげることも可能になりそうだ。
日本が輸入する工業品にかける関税は大半が撤廃済みだ。関税が残っていた化学製品や繊維は大半で関税を撤廃する。カバンや靴などの皮革製品は発効後16年目までに撤廃する。【松倉佑輔、横山三加子】