【青信号で今週も】
筋肉は、伸びたり縮んだりして運動を支えています。私たちが脳で手足を動かそうとすると、その司令は神経を伝って筋肉まで届けられます。神経筋接合部という場所で、神経の司令はカルシウムイオンを使って筋肉の活動を引き起こす信号に変換されます。信号をキャッチした筋肉内では、アクチンという規則正しく並んだ極細の線維(せんい)間をミオシンという線維がエネルギーを使って滑りこんでいき、筋肉の収縮が起きます。アクチン線維内に潜り込んだミオシンが引きぬかれていくと、また伸びていきます。こうして筋肉は縮んだり伸びたりしています。
筋肉は伸び縮みするだけのシンプルな器官だと考えられてきました。ところが、筋肉は最近になりイリシンというホルモンを分泌する器官であることが判明しました。イリシンは虹の女神イーリス、英語のアイリス(Iris)から名付けられました。イーリスは背中に翼を持っていて、神々からの司令を伝令しています。イリシンを発見したハーバード大学のスピーゲルマン教授が、筋肉の運動の良い効果を人の体に伝えるイリシンに「伝令の女神イーリス」の名前をつけたのでした。
運動によって筋肉に増加したカルシウムイオンの変化を受けてPCG1-αという物質が増え、PCG1-αはFNDC5という物質を増やします。FNDC5の一部分が切りだされ、イリシンになり血液中に放出されます。