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エンジニアからの視点で様々な事柄を論理的客観的に読み解いてみようと試行中。パソコン遠隔操作事件、新国立競技場問題

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アーチタイ問題を追ってきて、改めて実施設計図面を確認すると、アーチタイはごく簡単にしか書かれていないが、それでも疑問点が出てきた。実施設計の断面図を示し、それに対する疑問点を記す。
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(1)〜(6)のような点についても、建築設計業界で検証頂ければと思う。特に(1)接合部は上図の通りでは困難ではないか。キールアーチがアーチタイに半分埋まっているような図になっているが、接合部はもっと補強が必要だろう(ただし断面図のため実際の接合部は見えていない)。双方が巨大で、かつ異種材料であるキールアーチ鉄骨と鉄筋コンクリート製アーチタイをつなぐ接合部の図面や工法設定はどこまで出来ていたのだろうか。

なお、同業界の方々については、昨日まで安藤氏・槇氏、そして内藤氏(昨日記事追記)という大家の方々について特殊事情認識の不足や言動の違和感について僭越ながら書かせていただいた。また、槇グループや建築関係団体の方々も2014年に「JSCとの意見交換会」など絶好の場があって、アーチタイ問題などを的確に追求していれば早期見直しの可能性があったにも関わらず取り逃がしておられたことを記した。

更に本日は以前10月22日記事でも取り上げた、将来を担うであろう「中堅クラス」と思しき方々についても書いてみる。
藤村龍至氏は<反対派のブログでザハのアーチが槍玉に挙げられると、アーチの基礎が地下鉄にぶつかる、アーチのせいで見積もりが高騰したなどという不確かな情報が一人歩き>、<見積価格の高騰はキールアーチが問題なのではなく、キールアーチの提案は求められたスペックに対するむしろ合理的な判断によるもの>などをHuffpost記事で述べられている。それであれば合理的なザハ案の最終的な「アーチ基礎」はアーチタイになる。アーチタイに関して「(工期含め)実現可能」、「価格高騰の要因ではない」という確かな見通しなどをお持ちなのだろうか。

また藤村氏を高く評価しておられる片山惠仁氏10月22日記事参照)は、ZHAビデオについて以下の記事を書いておられる
<惜しむらくは、このビデオをもっと早く公開すればよかったのではと思います。予想外に質が高く、例えば歩廊のイメージなど、コストで揉める前に丁寧に説明していれば状況は確実に変わっていたのではないでしょうか。>

「質が高い」と云うご感想を持たれたようであるが、ZHA側の重要な主張である並行工事メリット図の虚偽(下図)に、分析でお気づきにならなかったのだろうか。

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ZHA側が間違えることはあり得ない部分だから、その意図をどう捉えるか。片山氏の仰る通り<もっと早く公開>してもらっていれば、この虚偽問題はZHAに対する信頼感を大きく揺るがす状況になっただろう。バレても大した影響はなくなったと踏んで、白紙化後に出してきた可能性すら感じさせるZHA側には相当の策士がいるという気もする。そして日本側はそのまま信じこんでしまう。

ZHA関連では、以下のような記述もある。
ロンドンから見た新国立競技場の騒動” 木村正人  | 在英国際ジャーナリスト  2015年7月16日 
「日本の建築家は偽善者だ」ザハ氏
ザハ・ハディド氏は昨年12月、日本の建築家たちから自分のデザインに批判が相次いだことについて、オンラインの建築マガジン、dezeenのインタビューにこう語っている。 
「新国立競技場を私が設計することに決まったのは日本の建築家たちを困惑させているのだと思います。私が言えるのはそれがすべてです。私は東京が彼らの町であることを理解しています。しかし、彼らは偽善者です」
「彼らは外国人が東京に新国立競技場を建設することを望んでいません。その一方で、彼らは海外で仕事をしています」>

ザハ氏はこのような「誤解」をしておられるわけであるが、筆者の木村氏自身も次のようにコメントしておられる。
<新国立競技場のコンセプトは「『いちばん』をつくろう。」だ。ただし、世界の「いちばん」をつくるにはカネがかかる。日本にはその自覚も認識もなかった。>

これも「誤解」になる。日本側は「外国人デザイナー排斥」など考えていないだろうし、「いちばん」を作ろうと関係者は努力してきた。しかし、ZHAを含む設計チームが「建てられる設計」を出来ないまま着工寸前まで進んでしまったという、「特殊な状況」が生じていた可能性があるにも関わらず、検証委員会さえも異例の短期で終わらせて真相を発信していないのは日本側の問題になる。逆に検証を行って前述の並行工事メリット主張の虚偽などを明確化すれば、「偽善はどちらなのか」という話も出来る。

よってビデオ等も含んだ全体経過を再検証すべきだが、まずは白紙化に影響した可能性がある、「ZHA+日建設計」案の実施設計が建てられたかどうか、を優先的に検証していけば実態が分かってくるだろう。これまで書いてきたように政府がやらないなら建築設計業界で実施して頂きたい。更に業界だけの問題と捉えないよう、お願いしたい。前述のザハ発言などが海外ではそのまま報じられてしまう。日本や日本人全体までもが誤解を受け、今後不利益を被っていく可能性がある。次世代を担う藤村氏や片山氏のような専門家の方々も、ザハ案を支持して見解発表されるのは自由意志だが、その内容に影響を受ける一般の方々も出てくるので、公表するからにはプロとしてZHA側主張や設計内容を出来る限り綿密に検証して頂きたいと思う。

なお、今回の顛末において”「ザハ+日建設計」案は建築設計業界に投げ込まれた「ソーカル論文」だったのではないか”と思えて来ている。つまり建築設計業界で”ソーカル事件”が起きていた。しかも巨額設計費が無駄になったという実害も有って、本当の「事件」でもある。業界はこれを本質的なものと捉えるべきと思う。

特殊な状況ではあったが、それは本質問題から湧き上がってきたものであり、業界の根幹をなすと思われる「設計と施工の分離」に影響をおよぼすことは業界全体も感じておられるだろう。しかし、このような事件が起きてからも地道な技術的問題を余り論議せずに観念論先行で、しかも発注者の対応がどうあれ、その評価を地に落としめてダンマリを決め込む大手設計事務所に対し業界として明確な批判も説明要請もしない。これでは本質にまで疑問が出るのはやむを得ず、「分離」の基盤である設計業界に対する信頼が揺らがないわけがない。信頼を取り戻していくためにはまず真相を検証し明らかにすることだと思う。
------------
これで「登場者検証」シリーズを終え、明日は神宮外苑について一番書きたかったテーマを書いて、それ以降は不定期掲載に入る予定です。なお本日追記はJSCに関する意外な事実。

以上
[追記]
JSCの山崎本部長は、横浜の国立大学の大学院で「電子情報工学科」のご出身。母校でお話をされた際の紹介文抜粋。
<「科学の探求や技術開発は自分には向いていない」と当時の文部省に就職した山崎さん(1985年)。
現在(2010年)大学などの施設整備を担当されている。政治家との折衝や、国会対応、現場視察など、なかなか聞けないお話。「現場には様々な声が有る。それを一つ一つ拾って調整していくのが大切」>

JSCの実務責任者(新国立競技場設置本部長)は文科省から出向の技官である山崎氏だったが、施設部門技官でも何と「建築工学科」でも、一応図面は読める「機械工学科」でさえなく、回路やソフトが主と想定される「電子情報工学科」出身だった。しかも「科学の探求や技術開発は自分には向いていない」とのこと。
これは大きな盲点だった。もちろん実際にどのように動かれたかは分からないが、上記からは「会議で設計書等の説明はするが、中身に踏み込むつもりはなく、調整が自分の仕事」というようなタイプが推察されてくる。
今回の事態に影響を与えた可能性は充分ある。ただし、当然ながらどのような影響がどれぐらいあったかは見通せない。

追記以上

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