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 人気漫画「Dr.コトー」のモデルとなった鹿児島県薩摩川内市・下甑(しもこしき)島の手打(てうち)診療所長、瀬戸上健二郎医師(74)に、市が来年3月限りで退任を求める意向を固め、11日に開いた住民説明会で明らかにした。

 島には三つの診療所があり、それぞれ医師が駐在している。市はこれらを来年度、一つに再編統合する計画だ。手打地区コミュニティセンターで開いた住民説明会で、市は計画の概要を伝え、手打診療所で37年、診療にあたってきた瀬戸上医師に退任してもらう方針を示した。

 瀬戸上医師は1978年に手打診療所に赴任し、当初は医療機器もスタッフも不十分な診療所で診察にあたった。67歳の定年を迎えた2008年以降は1年ごとに市と契約を更新してきた。昼夜を問わず奮闘する姿は漫画「Dr.コトー診療所」に描かれ、ドラマ化もされた。離島の医療に献身する医師を慕って毎年、首都圏や関西からも研修医が学びに来る。

 島では瀬戸上医師に親子3代にわたって診てもらった住民も珍しくない。手打地区コミュニティ協議会の日笠山直宏会長によると、約50人が集まった説明会では出席者から「先生をいきなり辞めさせるのは納得できない」と異論や不満が噴出したという。

 瀬戸上医師は「市から正式な通告はまだない。私に残ってほしいという住民の気持ちはありがたい」と述べた。(田中啓介)