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LGBT 異性愛と同列でしょ? 当事者&理解者 北陸の学生の取り組み
各地の大学で起きつつあるLGBT当事者への支援や理解を深める動き。北陸の学生たちも、多様な性の人たちが暮らしやすい社会を目指して活動している。当事者が気兼ねなく話せる場所づくりや、知識を広めるワークショップなど活動の幅も広がっている。 交流「ありのまま出せる」金沢・当事者限定サークルレズビアンやゲイ、自分の性はカテゴライズできないという人も。9月、金沢市の居酒屋で若い当事者たちが世間話に花を咲かせた。地元の女子大学院生で、レズビアンのゆうこさん(25)らが3年前に設立した18〜29歳の当事者限定のサークル「Colorful(カラフル)」の交流会だ。 交流会はツイッターなどで呼び掛け、8回目。参加者は6人。これまでも10人未満の少人数で語りあってきた。大学の話に趣味の話。「セクシュアリティーの話はほとんどしません」と参加者たち。たわいもない話を、言葉を選ばずに話せることがうれしいという。 例えば恋バナ。容姿で言えば、ゆうこさんは「髪が長く、すらっとした女性的な人」が好みだが、カラフル以外の友人には尋ねられても口にはしない。レズビアンだと伝えていない友人も多いから、さりげなく内面の好みに話題を変えて本心を隠す。でも、できることなら普段から、ありのままの自分を出したい。「友達にごまかしごまかし話すのはストレスなんです」 同性愛などを普通ではないとする考え方は根強く、家族や友人にカミングアウトできない当事者も多い。大学進学で地元、親元を離れるときは転機の一つ。LGBTについて自分で調べ、サークルなどに参加しやすくなる。 交流会で出会った参加者同士が仲良くなり、交流会以外の場所で遊び始めることも。会のリピーターが増えない要因だが、「カラフルはきっかけの場所であればいいんだと思っています」とゆうこさん。むしろ毎回、新しい人との出会いに刺激を受けている。 ゆうこさんは高校生で自分がレズビアンだと気づいたとき、それを受け入れられずにいた。同性愛者が書いた本や出演したテレビ番組で、似た体験をした人がいると知り、安心したが、「最初のもやもやが10だとすると、7か6になったくらい」だった。 カラフルでの出会いは、そのもやもやを消していった。「交流会では自分のありのままを出し、一緒に盛り上がれる。誰かに自分を認めてもらえる実感があって、気持ちもすっきりしてきたんだと思います」 支援「多様な性、当たり前」金沢医科大生・金大生
LGBTの人は、13人に1人はいるとされるけれど、身近な人にさえカミングアウトできない人も多い。周囲に当事者がいないと思う人は多く、理解は広がりづらい。 その悪循環を改善しようという学生らの動きが北陸でも起きてきている。 大学非公認の金沢医科大学セクマイサークル(石川県内灘町)は当事者以外のLGBTに興味がある人と一緒に、多様な性を考えることを目指している。けれど、設立から2年たった今も正式なメンバーはバイセクシュアルの女子学生(22)1人だ。 1学年100人余りの狭い世界。当事者もいるが、周囲にばれることを恐れるなどサークル参加には勇気が要る。メンバーの女子学生の友人には活動を応援すると言ってくれる人もいるが、イベントに誘うと「私は当事者じゃないし」と遠慮されるという。 それでも「間接的に誰かの助けにならないかな」と当事者の電話相談をする別団体のチラシを学内に置くなど地道に活動してきた。 4月、大阪でLGBT支援活動に携わってきた菊地建至講師(47)が医科大に着任し、サークルのサポート役になった。菊地さんは「お茶会を開き、LGBTの話をしたらどうかな」と提案。女子学生も「やってみたい」と前向き。新たな展開が始まろうとしている。 ◇ ◇ 金沢大の学生5人は9月末、金沢市内でLGBTを学ぶ勉強会を開いた。全員、当事者ではない。非政府組織(NGO)「アムネスティ・インターナショナル日本」が南アフリカのLGBT活動家を招いたことに合わせて企画した。 当事者がカミングアウトしたときの周囲の反応を寸劇で疑似体験するワークショップ。参加者の一人が「カミングアウトすれば『いじめてください』と手を挙げるのと同じになっている」と課題を指摘するなど、さまざまな意見が出た。 企画した2年生カニンガム瑳紗(さーしゃ)さん(19)は「マイノリティー(少数者)と教えるのではなくて、性的アイデンティティーと考えたらどうか。LGBTに異性愛も加えて、同列に伝えられたらいい」と考えを深めた様子。4年生宮下智之さん(22)は「LGBTの枠にはまらない人もいるし、多様な性が当たり前の世界になったらいい」と語った。 「大学でやっと仲間できた」早大や明大 進む試み
首都圏の大学の動きも活発だ。LGBTの学生だけで交流していたサークル「法政大学ダブルレインボウ」は4月から理解者チームも発足。当事者だけの気兼ねない空間を維持しつつ、周囲に理解を広げるイベントの開催も両立している。 明治大の学生らは12月7〜11日に理解者を増やすキャンペーン「MEIJI ALLY WEEK」を計画。早稲田大の学生有志は、学内の啓発や悩み相談を行う交流拠点「LGBT学生センター」の設立を目指し、大学側と協議している。 当事者への支援は広がりつつあるが、6年前に早稲田大の学生サークルとして発足したNPO法人「ReBit」(東京都新宿区)の代表薬師実芳さん(26)は「サークルに入った当事者たちは、大学でやっと仲間とつながれたという人が多い。企業にも理解不足な対応は残り、就職活動に悩む学生も多い」と述べ、社会全体に理解が広まる必要性を強調する。 大学入学前の小中高校の現状を、埼玉大基盤教育研究センターの渡辺大輔准教授(41)=教育学=は「男女の区別が強く、異性愛が当然という雰囲気の中で、LGBTの子どもが自己肯定感を持てず、自殺や不登校が多い傾向がある」と解説する。 文部科学省が4月、教育現場での性的少数者への適切な対応を求める通知を出したことを受け、研修を開く自治体も出てきているといい、渡辺准教授は「個別の先生だけでなく、教育現場全体で理解を深めることが重要だ」と語った。 担当・福岡範行 PR情報
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