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「源氏物語絵巻」絵の下に複数の下描き
11月13日 15時48分

平安時代後期に描かれたとされる国宝「源氏物語絵巻」について、名古屋市の美術館が赤外線を使って調査したところ、絵の下に複数の下描きが鮮明に残されていることが分かり、謎の多い絵巻の制作過程を解明する手がかりになるとして注目されています。
国宝「源氏物語絵巻」は、平安時代後期に描かれたとされ、紫式部の「源氏物語」の世界を色鮮やかに表現しています。
現存する4巻のうち3巻を所蔵する名古屋市の徳川美術館では、絵巻の修復に伴い、赤外線を使って詳細な調査を行った結果、絵の下に残された墨で描かれた複数の下描きを鮮明に撮影することに成功しました。
このうち主人公の光源氏が妻の女三宮が生んだ赤ん坊の薫を抱いている場面では、完成した絵では薫は両手を産着の中に入れたままにしているように見えますが、下描きでは光源氏に向かって愛らしく両手を伸ばしているように描かれていたことが分かりました。この場面は、薫が自分の子どもではないことを知っていた光源氏が、薫の笑顔を見ながら、自分が過去に犯した過ちを思い起こす姿を描いたとされていて、美術館では、苦悩をより深く感じられる表現に描き直したのではないかと推定しています。
徳川美術館の四辻秀樹学芸部長は「絵巻は絵師たちの集団が分担して制作したとみられているが詳しくは分かっていない。下描きと完成した絵を比較することで、単なる挿絵ではなく、内容に踏み込んだ表現にするために苦心した過程がうかがえるのではないか」と話しています。

「柏木三」の下描き

見つかった下描きのうち、「柏木三」と呼ばれる場面は光源氏が妻の女三宮の産んだ赤ん坊の薫を抱いている姿を描いた場面です。元となった「源氏物語」では、このとき光源氏は薫が自分の子どもではなく、自分の親戚の男性、柏木と妻が密通した結果、産まれたことを知っています。
今回の調査で見つかった下描きの絵には、赤ん坊の薫が光源氏に両手を伸ばしているように描かれています。「源氏物語」の本文では薫について「抱き上げると、とても無邪気にほほえんだ」と書かれていることから、絵巻の作者は一度は、両手を伸ばす愛らしい姿を描いたものとみられます。
しかし、その後、光源氏が、薫を抱きながら若き日にみずからが犯した過ちを思い起こし、因果応報に苦悩する姿として、より深く感じ取れるように表現すべきだと考え、描き直したとみられるということです。

「竹河二」の下描き

「竹河二」と呼ばれる場面では、向かい合った2人の女房と呼ばれる貴族の家に仕える女性のうち、左側の1人の顔が完成した絵に比べてやや後ろ寄りで上向き加減に描かれていて、作者が絵巻の完成度を高めるために試行錯誤していた様子がうかがえます。

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