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2014年6月28日の毎日新聞社説より
【公明党の転換 「平和の党」どこへ行った】
実態は陥落であろう。集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈の変更に慎重姿勢を示していた公明党が容認に転じた。
海外での武力行使へ歯止めをかけられない内容の閣議決定案の受け入れはこれまで培った「平和の党」の党是にもとる。9条の根幹維持よりも自民党との連立を優先した判断と言わざるを得ない。
「二重、三重の歯止めがきき、拡大解釈のおそれはない」。山口那津男代表はこう語り、解釈変更の閣議決定の核となる「新3要件」受け入れを明言した。だが、「解釈改憲ではなく憲法解釈変更だ」(北側一雄副代表)と強調すればするほど説明の苦しさが逆に浮き彫りになる。
もともと山口氏は「(解釈変更は)国民に何も聞かず一方的にやることになり、憲法の精神にもとる」と主張していた。公明党はこれまでも安全保障政策の見直しを重ねてきたが、海外での武力行使を可能とする議論はまったく次元が異なる。政府が挙げた事例ごとに、従来の個別的自衛権の範囲で対応できるかどうかを時間をかけて検証すべきだとした当初の主張は筋が通っていた。
ところが、早期決着を譲らぬ安倍晋三首相の強硬姿勢に押される形で1972年の政府見解を根拠とする行使容認に踏み切った。今やタガは外れ、執行部は収拾を急いでいるようにすら見える。
政府の想定問答が物語るように、同党が強調する「歯止め」はまやかしに過ぎない。同党が難色を示す戦時の機雷掃海も認められている。新3要件次第では集団安全保障による武力行使も可能だ。とても山口氏が胸を張るような成果を勝ち取ったとは言えまい。
こうした対応に党所属国会議員や地方組織、支持団体の創価学会などから批判が出ても当然だ。山口氏はかつて「公明党はどこまでも自民党についていく下駄の雪」との批判に「(切れると歩けなくなる)下駄の鼻緒だ」と反論してみせた。だが、今回の経緯を見る限り結局は99年以来続く自民党との連立を壊せない判断ありきだったのではないか。連立離脱のカードを持たない限り、足元をみられるだけである。
公明党はさきの特定秘密保護法制定においても与党内で歯止め役を果たせなかった。与党でいる限り自民党から際限なき譲歩を迫られ、変質を続けるのではないか。今回の転換は憲法9条を尊重し歩み続けた党のあり方に大きく影響する。その重さをわきまえるべきだ。
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