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【社説】

辺野古座り込み 沖縄の人権はどこへ

 米軍新基地建設が強行される名護市辺野古で建設に反対する人々の座り込みが続く。派遣された警視庁機動隊らが強制排除を行う中でけが人や逮捕者が出ている。沖縄の人権はどこにあるのか。

 米軍キャンプ・シュワブの工事用ゲート前には早朝から市民が集まってくる。お年寄りが多い。非暴力の行動であることを確認しあうとアスファルトの地面に寝て、隣の人と腕を組む。

 午前七時前、シュワブの中に待機していた機動隊が一斉に正門から出てきて市民を取り囲んだ。ある人は数人の機動隊に抱えられ、ある人は両腕をつかまれて引きずられる。滑り止め付きの軍手をはめた隊員につかまれた腕には摩擦のために青あざが残る。五百人の市民が集まった十一日には排除された際に転び、頭を打つなどした二人が救急搬送された。

 強制排除には沖縄県警の要請を受けた警視庁機動隊百五十人が加わる。要人警護やサミット開催でもなく、沖縄に出動することに県民の中には反感も募る。ゲート沿いでは装甲車と鉄柵で囲った中にごぼう抜きにされた人が閉じこめられる。檻(おり)のような場所に丸腰の人を一時的でも拘束するのは行き過ぎではないか。

 前知事による辺野古埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事と、政府との溝は決定的だ。政府は知事に決定を取り消せと是正指示をし、これを拒否した翁長氏に対し知事の権限を奪う代執行を進めるため福岡高裁に提訴する。

 県側も国地方係争処理委員会に審査を申し立て、決裂すれば国を提訴する。政府はこのような法廷闘争に足を踏み入れるのを止め、新基地計画を白紙に戻すべきだ。

 国土の1%に満たない沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中する。普天間飛行場の返還は負担軽減策の象徴とされる。閉鎖や日本側への返還が急務なのは当然だが、基地を同じ県内に移しても負担軽減にならない。

 沖縄県民は四度の選挙を通して新基地建設に「ノー」を示した。にもかかわらず、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返し、建設を強行する。

 人々が体を張って座り込むのは沖縄に対する差別的な扱いに怒り、工事を少しでも遅らせるには声を上げるほかないからである。

 沖縄の基地問題は日本全体の問題である。政府だけでなく、本土に住む私たちこそが考えるべき問題ではないか。非暴力の抗議は、あらためてそう訴えている。

 

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