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朴大統領が慰安婦問題にそこまでこだわる理由

武藤正敏 前・在韓国特命全権大使

武藤正敏 [前・在韓国特命全権大使]
2015年11月12日
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 いずれにせよ、今回の首脳会談によって先例ができ、これから国際会議の場で日韓首脳会談を行いやすくなったと考えます。これを日韓関係修復への一つのきっかけとしていくべきです。

 日韓関係は国民感情が支配していると申しました。国民感情がひとたび悪くなるとつるべ落としのように関係が悪化してきますが、その逆のケースもこれまで何度も見てきました。1980年代の初めに教科書問題で関係が険悪となったとき、経済協力で合意ができると急速に雰囲気が変わってきました。この首脳会談は一つのきっかけとなり得ると思います。

韓国内ではいまだに大きな反発がある
首脳会談での対応はその表れ

 首脳会談は1時間40分以上行われ、そのうち少人数会合は、30分の予定が1時間にわたったと言われています。そのうちの、相当部分が慰安婦問題だったでしょう。機微な問題を少人数で率直に話し合うことは、その問題の妥結のためには不可欠です。

 安倍総理との間では、昼食会はなく、共同記者会見も開かれませんでした。李克強中国首相への歓待と比べて韓国政府の対応は失礼ではないかという声も聞きます。しかし、韓国内には慰安婦問題解決の見通しがない中で首脳会談を行うことに対し、大きな反発があります。今後、交渉する過程では韓国側も相当譲歩していかなければなりません(今はその気はないかも知れませんが)。そういう意味で韓国側の対応が慎重になっているのだと思います。

 新しい日韓関係がやっと始まろうとしていることに期待したいと思います。

世論調査

質問1 日韓関係は、今後改善に向かうと思う?




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武藤正敏 [前・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」(悟空出版)。


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