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朴大統領が慰安婦問題にそこまでこだわる理由

武藤正敏 前・在韓国特命全権大使

武藤正敏 [前・在韓国特命全権大使]
2015年11月12日
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日韓首脳会談が長らく開催できなかった理由には、慰安婦問題がある。朴大統領はなぜこの問題にこだわるのか。なぜそれが豹変し首脳会談開催に至ったのか。日韓関係は今後どこへ向かうのか。韓国の内情をよく知る前駐韓大使が斬る。

朴槿恵大統領は「反日」か?
父は最も日本の重要性を理解していたが……

11月2日、日韓首脳会談時の両国首脳
Photo:内閣広報室

 11月2日、日韓首脳会談が3年半ぶりに開催されました。これまで韓国政府は、なぜ慰安婦問題にこだわり、首脳会談をしなかったのでしょうか。

 日本人の多くは朴槿恵(パク・クネ)大統領の反日のせいだと考えているのでしょうが、私は朴大統領が決して反日だとは思っていません。

 朴槿恵大統領は、「加害者と被害者という歴史的な立場は千年の歴史が流れても変わらない」(2013年3.1独立運動記念日演説)と述べたのを皮切りに、様々な演説の場で日本批判を繰り返してきました。また、米、仏、英を訪問した際の首脳会談や演説で「日本は正しい歴史認識を持つべき」として、慰安婦に対し「心からの謝罪」と「責任を取る措置」を求めました。日本ではこれを「告げ口外交」として快く思っていません。   

 夕刊のタブロイド紙に、朴大統領の父親である故・朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が朴大統領に反日教育を行ったという記事がありました。しかし、朴正熙元大統領は日本の重要性を最も理解した人です。朴元大統領は、日本との関係を大事にしろ、と言ったと思います。

 残念ながら、私が大使をしていたころ、朴槿恵大統領候補(当時)が東アジアの情勢について考えていたのは、常に中国のことだったようです。日本は近年中国と比べ、政治的にも経済的にも力は落ちています。しかし、朴大統領が父である元大統領の日本観を理解されていたら、もっと日本との関係を真剣に考えたのではないかと思います。

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武藤正敏 [前・在韓国特命全権大使]

むとう・まさとし 1948年生まれ、1972年横浜国立大学経済学部卒業。同年、外務省入省。在ホノルル総領事(2002年)、在クウェート特命全権大使(07年)を経て10年より在大韓民国特命全権大使。12年に退任。著書に「日韓対立の真相」(悟空出版)。


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