ホットスポット・セレクション▽天空の秘境 幻の珍獣たち〜中国 南西山岳地帯〜[SS] 2015.11.10


世界の屋根ヒマラヤ山脈。
8,000メートル級の山々が連なります。
その東中国の奥地に深山幽谷ともいうべき場所があります。
そこに暮らす動物たちは風変わりなものばかり。
姿だけではありません。
食べ物も実に変わっています。
その代表がパンダ。
主食は竹や笹の葉です。
一体なぜ独特な習性を持つ生き物たちが多いのでしょうか。
中国天空の秘境に隠された不思議に迫ります。
地表に深く刻まれたしわのような場所があります。
中国南西部ヒマラヤ山脈に接して6,000メートル級の峰々が走る険しい山岳地帯です。
標高のやや低い所には世界有数の規模を誇る竹林が広がっています。
姿を現したのは色鮮やかな鳥。
キジの仲間キンケイです。
竹の葉などを食べて生きています。
地面をはっているのは…その名のとおり竹を食べるネズミです。
地下に掘った巣穴で暮らし葉っぱだけでなく硬い茎も食べます。
こちらはレッサーパンダ。
アライグマに近い仲間でやはり竹が好物です。
前足を上手に使って食べています。
標高が高くなるにつれ竹林は消え針葉樹が増えていきます。
(鳴き声)
(鳴き声)世界で最も高い場所に住むサル。
4,000メートルを超える高山にも生息しています。
上を向いた小さな鼻が特徴。
冬この辺りは氷点下20度を下回る事もあります。
小さな鼻は凍傷を避けるためと考える研究者もいます。
寒さから身を守るため体は長い毛で覆われています。
ほかの木へと飛び移ると何やら枝に絡まっているものを集めだしました。
突然食べ始めました。
この不思議な食べ物の正体地衣類という菌類の仲間でサルオガセなどとも呼ばれています。
シシバナザルは食べ物のほとんどをサルオガセに頼っています。
サルが暮らす標高4,000メートルの森は針葉樹ばかり。
軟らかそうな葉や木の実などは見当たりません。
そんな中サルオガセは枝から垂れ下がり空気中から水分とミネラルを吸収し成長します。
更に冬でも枯れる事がないためサルにとっては貴重な存在です。
シシバナザルは地衣類に頼る事でほかのサルが暮らせない高山で生き延びてきたのです。
この辺りにはもう一つ特殊な進化を遂げたユニークな動物が暮らしています。
中国南西部の限られた地域に生息しその数僅か1,600頭ほど。
絶滅が心配されています。
最近の研究からパンダはクマに近い仲間である事が分かっています。
しかし肉も食べる雑食性のクマとは違い主食は竹。
体重150キロにもなる巨体をほぼ竹だけで賄っています。
とはいえ栄養分に乏しい竹。
一日に食べる量は実に20キロにも上ります。
うまく前足でつかんで食べています。
実はパンダの前足には秘密があります。
指の付け根には横に飛び出た骨があります。
この骨が人の親指のような役割を果たし上手に物をつかむ事ができるのです。
骨は厚い肉球で覆われ盛り上がっていて細い竹でも挟みやすくなっています。
パンダは軟らかい竹の子だけでなく硬い節も食べます。
そのため強くかめるよう顎を動かす強力な筋肉が発達しました。
顔が丸いのはそうした筋肉のためです。
縫いぐるみのように愛くるしい表情。
それはパンダが竹を食べるために進化してきた結果なのです。
ヒマラヤ山脈の北に広がる…ユーラシア大陸の中央部に位置する世界最大級の高原です。
寒さと乾燥で木は育ちません。
芝生のような草の上。
動くものがいます。
(鳴き声)ウサギの仲間で地下にトンネルを掘って暮らしています。
(鳴き声)食べ物は高原に無限に生えている草。
寒さに耐えるため常に食べて体を温めるエネルギーにします。
高地では天気が目まぐるしく変わります。
そんな時は地下の巣穴に避難。
雹がやむとすぐに出てきて食事を再開します。
ナキウサギの寿命は僅か1年ほど。
しかし夏の間に繁殖を繰り返したくましく命をつないできました。
こんな所にも大型の動物が暮らしています。
ヒグマの親子です。
子どもはまだ生後数か月ほどでしょうか。
掘っているのはナキウサギの巣穴です。
(鳴き声)子グマがうまく捕まえました。
数が豊富なナキウサギ。
ここで暮らすクマにとって貴重な獲物なのです。
チベット高原にはヒグマのほかにも興味深い大型の動物が生息しています。
現れたのは牛の仲間ヤク。
体重は1トン近くにもなります。
標高6,000メートルでも存在が確認されています。
特徴はその長い毛。
毛布のような毛が全身を覆っていて寒さからヤクを守っています。
ヤクは氷河期の生き残りといわれています。
今からおよそ2万年前地球は氷期のただ中にありマンモスやヤクの祖先が繁栄していました。
その後地球が暖かくなるとその多くが滅びました。
しかしヤクの祖先は高地へと逃れる事で暑さを避け生き残ってきたのです。
そんなヤクには克服しなければならない問題がありました。
標高6,000メートル付近は酸素が平地の半分以下しかありません。
実はヤクの体には酸素を効率よく得る独特の仕組みがあります。
心臓は同じくらいの体格の牛の1.5倍。
肺は2倍の大きさ。
大きな内臓を収めるため牛より1対多い14対のろっ骨があります。
高地で生きていくためヤクは独自の進化を遂げてきたのです。
寒冷なチベット高原。
しかしここにも意外な生き物たちの住みかがあります。
標高4,000メートルに湧き出す温泉です。
姿を現したのはヘビ。
体温の調節ができない爬虫類は普通気温の低い高地では生きていけません。
ところが温泉の周辺は一年を通して暖かいため暮らしていけるのです。
周りには獲物になる生き物もいます。
ヘビたちはこの地が隆起する前から周辺に生息していたと考えられています。
そして標高が上がり寒くなってからは温泉に寄り添うようにして生きてきたのです。
想像を超えた環境に生きる動物はほかにもいます。
チベット高原の北に広がる砂漠。
冬は氷点下40度。
夏は逆にセ氏50度にもなります。
(鳴き声)カモシカの仲間ですが随分奇妙な顔をしています。
大きく膨れているのは鼻。
実はこの鼻に秘密が隠されています。
(鳴き声)内部は毛細血管の通った粘膜で覆われています。
寒い冬冷気は大きな鼻で一度暖められ肺に送られます。
一方暑い夏は鼻に張り巡らされた血管から熱を発散し体温を下げます。
(鳴き声)独特な鼻は寒暖の差が大きい砂漠を生き抜く武器なのです。
日本の面積のおよそ6倍といわれるチベット高原。
この広大な大地を移動しながら暮らしている生き物がいます。
大きな群れです。
数千はいるでしょうか。
チベット高原の固有の種でチベットカモシカとも呼ばれています。
毎年夏ある湖を目指して周辺の谷筋から一斉に集まってきます。
移動距離はおよそ300キロ。
集まったのは全てメスです。
どうやらおなかが大きいようです。
出産が始まりました。
チルーは出産のために何百キロも移動してきたのです。
大きな群れでいれば外敵に襲われるリスクは減ります。
更に母親は子どもに乳を与えるためたくさん草を食べなくてはなりません。
湖の周りには豊富な水と草があります。
チルーがあえて湖に集まる理由はどうやらその辺りにあるようです。
(鳴き声)群れの周りには子どもを狙うものがいます。
(鳴き声)子どもが母親を呼んでいます。
一羽のハゲワシが子どもに近づいてきました。
母親が気付きました。
子どもは無事に母親のもとへと戻る事ができました。
しかし子どもに襲いかかる危険はそれだけではありません。
夏にもかかわらず高原はまるで真冬のようです。
寒さで命を落とす子どもも少なくありません。
短い夏はあっという間に過ぎ去ります。
親子が湖の周辺にいるのは20日ほど。
平原が雪で覆われる前に標高が低い谷筋へと移動します。
広大な高原で何千年にもわたって繰り広げられてきた壮大な営みです。
11月。
シシバナザルが暮らす山々は早くも冬の装いとなります。
群れのリーダーです。
シシバナザルは縄張りを持ちリーダーを中心に数匹の家族で暮らしています。
別の群れのオスです。
食べ物が乏しくなるこの季節縄張りを巡ってしばしば争い事が起きます。
オスの鋭く大きな犬歯は戦いのために発達したと考えられています。
リーダーが上から攻撃します。
(鳴き声)勝負あり。
顔の傷は度重なる戦いの痕でしょうか。
シシバナザルにはこんな激しい一面もあったのです。
この辺りの高山地帯にはもう一種類興味深いサルが生息しています。
(鳴き声)黄金色の毛をしたサル。
(鳴き声)ウンナンシシバナザルと実によく似ています。
あの特徴的な鼻はそっくりです。
キンシコウはふだんは木の葉や実を食べます。
しかし寒い冬は木の皮を食べて飢えをしのぎます。
高山で暮らすそっくりなサル。
実はもともと共通の祖先を持つ同じ種類のサルでした。
ところが深い谷や激流が群れの交流を分断。
やがてそれぞれ別の種へと進化していきました。
独特の険しい地形が新たな種を生み出していたのです。
山の麓にもやがて冬が訪れます。
竹やぶを歩くパンダ。
パンダは冬眠をしません。
冬でも青々とした葉をつける竹。
寒い季節でも十分に食料が手に入るため冬眠する必要がないのです。
パンダは長い年月をかけて竹と共に生きるすべを身につけてきたのです。
遠くの細い木の中ほど。
子どものパンダがいます。
体の大きさからすると1歳半ほど。
独り立ち間近のようです。
絶滅が心配されるパンダ。
しかしこの森には野生でたくましく生きる子どもの姿がありました。
ヒマラヤがつくり出した中国山岳地帯とチベット高原。
そこは過酷な環境で独自の進化を遂げた生き物たちの最後の聖域なのです。
2015/11/10(火) 03:10〜03:40
NHK総合1・神戸
ホットスポット・セレクション▽天空の秘境 幻の珍獣たち〜中国 南西山岳地帯〜[SS][字]

ヒマラヤが造り出した秘境、中国南西部の山岳地帯とチベット高原はパンダやヤクなど、幻と呼ばれる珍獣たちの宝庫。氷河期を生き延びた動物たちの進化の不思議に迫る。

詳細情報
番組内容
ホットスポットを訪ねる地球の旅。今回は、中国南西部の山岳地帯とその奥に広がるチベット高原が舞台。パンダや黄金のサル・キンシコウ、世界一標高の高いところに住み奇妙な物質を食べて生きる謎のサルなど、世界一級の珍獣たちの宝庫だ。その背景にはヒマラヤ山脈を造り出した地殻活動や氷河期など大規模な地球の環境変動が深く関わっている。氷河期を生き延びた珍獣たちやパンダの進化の驚きの事実に迫る。
出演者
【語り】渡邉佐和子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
バラエティ – 旅バラエティ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz

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