正社員以外の労働者が初めて4割を超えました。
そうした中派遣社員の半数近くが正社員に変わりたいと思っています。
派遣労働者の雇用を安定させようと1か月余り前に施行された改正労働者派遣法。
派遣会社に対して派遣社員を人材育成することが新たに義務づけられました。
一方で、同じ職場で働ける期間は、最長3年。
派遣先の企業が、その後直接雇用することは義務ではなくなりました。
今、働く現場で何が起きているのでしょうか。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
正社員を希望する人には正社員への道を開き派遣を選択する人には処遇を改善するものであるとして政府が推し進めた改正労働者派遣法。
法改正による影響はまだ具体的には見えていませんが派遣社員からは一生、正社員の道が閉ざされるのではないか処遇の改善に本当につながるのか不安の声が少なくありません。
成長戦略の一つと位置づけられた労働者派遣法の見直し。
これがもたらす大きな変化がこちらです。
これまで派遣社員は、派遣先の企業で働くことができるのは最長3年。
3年を超えて働く場合は企業は直接雇用しなければなりませんでした。
今回の法改正で、派遣先の企業は3年ごとに派遣社員を入れ替えれば、派遣労働者を受け入れ続けることができるようになったのです。
派遣の大原則は、あくまで一時的臨時的という位置づけでしたがこの大原則が事実上なくなり派遣労働の固定化につながる。
同じ職場で長く働き続けられなくなるおそれが高まったという声が派遣で働く人々から聞かれます。
さらに、今回の法改正でこれまで期間制限のなかった秘書や通訳など26の専門業務でも、同じ部署で働くことができる期間に3年という制限が設けられました。
改正法では雇用の安定を図るため派遣会社に対して、派遣期間が上限の3年に達した労働者を直接雇用するよう派遣先に依頼すること。
新たな派遣先を提供することなどや計画的な教育訓練を行うことが義務づけられました。
さらに、悪質な業者を排除するため、派遣事業を許可制にするとしています。
法改正が政府のことばどおり派遣社員にとって正社員へステップアップする機会を増やし雇用が安定化するのか。
派遣労働者の間に広がる波紋を取材しました。
これ契約書ですか?
はい、そうです。
派遣社員として、工場で働いてきた濱谷和久さんです。
派遣会社とは3か月ごとに雇用契約を更新しています。
派遣法の改正前3年以上働けば正社員になれると濱谷さんは思っていました。
写真の専門学校を卒業した濱谷さんはレンズの製造工場に派遣されていました。
正社員を目指してスキルアップを続けてきた濱谷さん。
当時、作業を効率化させようと工場に提案するためみずから撮った映像です。
こうした努力が認められ3年以上たって直接雇用の契約社員にステップアップしました。
それでも、濱谷さんの給料はほとんど変わらず18万円ほど。
ボーナスもありませんでした。
しかし、契約社員から正社員になることはできず半年後、減産を理由に解雇されました。
濱谷さんは、今度こそ安定した仕事に就きたいと正社員の仕事を探しています。
しかし…。
結局、すぐにできるのは派遣の仕事だけ。
そのやさき法律が改正されたのです。
派遣法改正によって企業側は3年ごとに人を替えれば人材を確保できることになりました。
3年を超えたあと直接雇用することは義務ではなくなったのです。
濱谷さんは実家で母親と暮らしています。
母親の絹子さんは今回の法改正で息子の自立が難しくなるのではないかと心配しています。
濱谷さんは早く安定した仕事を見つけて年金暮らしの母親を安心させたいと思っています。
さらに、今回の法改正で大きな影響を受けるのが専門業務に当たる26業務の人たちです。
法改正前、通訳、秘書研究開発などの専門職では3年の上限なく、同じ派遣先で働けることになっていました。
しかし今回こうした例外措置は撤廃され上限が3年となったのです。
26業務の派遣の仕事をしてきた佐藤理恵さんです。
同じ職場でずっと働き続けたいと思ってきました。
29歳で娘を出産した佐藤さんはシングルマザーとして女手一つで子どもを育てています。
大学で栄養士の資格を取得した佐藤さん。
それを強みに選んだのが食品開発の仕事です。
26業務だったためこれまで派遣期間に制限はありませんでした。
ようやく見つけた安定した職場。
しかし、今回の法改正で派遣期間は原則3年。
同じ職場で働き続けられるか分からなくなりました。
現在の給料は半月ごとに振り込まれ1か月で20万円ほどです。
別の派遣先に移った場合は専門性を生かした仕事に就けるとは限らず同じ給料がもらえる保証もありません。
小学4年生の娘を自分と同じように大学に進学させたいと思っている佐藤さん。
今のうちに貯金をしておこうと週末も別の派遣の仕事を掛け持ちして休みなく働いています。
今夜のゲストは、国の労働政策審議会の委員を務めていらっしゃいます、中央大学教授、阿部正浩さんです。
真面目に働いて、努力もしてきた、なかなかしかし安定した仕事に就けない、国は正社員になりたい人は正社員の道が、そしてその派遣のままでいい人は、より処遇がよくなるといっているんですけれども、現場の実感は、それがなかなか伝わらずに、不安が広がっているという状況なんですけれども、例えば今のリポートにありました、26の専門業務の一つをやってた佐藤さんのケースなんですけど、3年後、どうなるんですか?
今回の改正法では、雇用安定措置として、佐藤さん、3年後に、派遣期間が満了になったところで、派遣会社が今、勤めている、派遣されている会社に、直接雇用を依頼するということがあります。
直接雇用を依頼して、派遣先の企業が佐藤さんを直接雇用しますということであれば、佐藤さん、職場で働くということが可能になります。
このときの直接雇用というのは、どういう中身ですか?
正社員の場合もありますけれども、契約社員とか、あるいはその他、非正規雇用の場合もあるかもしれません。
パートやアルバイト?
パート、アルバイトの場合もあるかもしれません。
正社員になれば、正社員の給与体系に入ると?企業にとってみると、コストは高くなる?
なる可能性が高いと思いますね。
なので、直接雇用を依頼したところで、企業がすべて、直接雇用をしましょうということにはならない可能性はあると思います。
そうしますと、直接雇用を依頼してもだめだった場合には、派遣会社がほかの会社、あるいは元の会社でも、可能性としてはあるんですが、新たな派遣先を探すということをすると思います。
この新たな派遣会社を探すと同時に、佐藤さんが優秀だということで、派遣会社がどうしても無期雇用をしたいということになれば、派遣会社で無期雇用をして、またもとの職場に派遣するとか、あるいは別の企業で、派遣先を探して、派遣してもらうということになると思います。
無期雇用になれば、雇用が安定するということになるだろうとは思います。
新たな派遣先を探す場合、佐藤さん、心配しているのは同じ専門職なのか、給料が下がるんではないか、そういうリスクはあるわけですよね。
そうですね。
派遣会社の無期雇用、これは直接雇用になるわけですけれども、全員ではない、派遣先が見つからなかった方、全員が無期雇用してくれるんでしょうか。
必ずしも、全員が無期雇用になるわけではなくて、いい人、スキルが高い人、いろいろな選別をするんだろうと思いますが、派遣会社はある一定の方を無期雇用になるんだろうと思いますね。
なぜ、国は、正社員になりたい人は前よりも可能性が高まった、より処遇がよくなるというふうにいえるんですか?
雇用安定措置とは別に、今回の改正法では、派遣会社に教育訓練を実施するというのを義務化していますし、キャリアコンサル、あるいはキャリアカウンセリングを、必要に応じてするということを義務づけておりますので、その教育訓練が正社員、スキルアップにつながって、正社員につながっていく可能性は十分あるだろうというふうに、われわれは考えているところですね。
派遣会社が能力開発をしてくれるとか、キャリア形成の手伝いをするということですが、さっきのリポートの中でも、ずっと派遣で働いてきて、なかなか正社員の道が開けない、なんかこう、行き詰まっているような、そういう苦しみを感じている方もいらしたんですけれども、自分で能力開発、どういう手だてがあるんですか?
派遣会社が今回、教育訓練義務づけになったと思いますが、新たな派遣先を探して、なかなか見つからなくて、失業してしまうというケースの場合には、失業保険に入っていれば、雇用保険に入っていれば、失業訓練というのを受けられます。
雇用保険の期間がもう過ぎてしまった場合には、求職者訓練というのがありますので、そちらを受けるということになるかと思うんですね。
いずれにしても、ハローワークでご相談されると、いいかなというふうに思います。
お伝えしているように、改正労働者派遣法で、派遣会社にはさまざまな義務が課せられることになったわけですけれども、ねらいどおり、雇用の安定化につながるのか、さらに見ていきたいと思います。
先月から、労働局が各地で繰り返し行っている説明会です。
派遣会社を対象に新たな制度について教えています。
今回、派遣会社に義務づけられた一つが派遣社員のキャリアアップを目的に行う教育訓練です。
新たな制度ではすべての派遣社員に対して教育訓練の実施計画を作成。
毎年8時間以上実施し、費用はすべて派遣会社の負担となります。
派遣会社の受け止め方はさまざまです。
およそ5万人を派遣している大手派遣会社です。
法改正前から、パソコンやマナーを教える講座を続けてきたこの会社。
人材育成に重点を置いた新たな制度を歓迎しています。
今度は流れをやりますから貨物になりますね。
参加者は専門的な資格を取得したりパソコンのスキルアップを図ったりすることで収入などの条件がいい仕事に就きたいと思っています。
この派遣会社では講座を充実させることでよりレベルの高い人材を確保したいと考えています。
規模の小さな派遣会社の中には教育訓練の義務を派遣会社が負うことに不安を訴える声も少なくありません。
製造業の工場が多い浜松市には500を超える派遣会社があります。
おはようございます。
起きましたか?
製造業の下請け会社に社員を派遣している深澤良樹さんです。
おはようございます。
派遣社員は70人。
派遣先の工場を回り、働きぶりを見守るのを日課にしています。
今回の法改正は中小の派遣会社にとって厳しいと受け止めています。
頑張って。
製造業の現場で問題になっているのは派遣社員のキャリアアップをどう図っていくかです。
深澤さんの会社ではこのバイク部品の工場に6人の派遣社員を送っています。
複雑な工作機械を使うなど熟練の技術が求められます。
深澤さんは、こうした技術は現場で身につけるしかなく派遣会社が教えるのは難しいと考えています。
深澤さんの会社からバイク部品の工場に派遣されている武永佳祐さんです。
少しでも収入アップを目指して新たな技術を身につけたいと思っています。
今の工場で働くようになって、1年半。
正社員と同じように働いても職場も生活も安定しないことにやるせなさを感じています。
今回の法改正で、派遣会社は3年たった派遣社員の次の仕事を見つけられない場合みずからの会社で雇用する義務も負うことになりました。
深澤さんも若者の雇用を安定させるためには必要な制度だと思っています。
しかしそれによって会社の経営が不安定になるのではないかと不安を感じています。
製造業の場合、派遣会社だけでは、教育訓練ができないという声、これ、どうしたらいいんですか?
今回の改正法では、派遣先も派遣元に協力して、訓練を行うことを求めておりますので、派遣先とよく相談しながら、やっていったらいいと思うんですね。
VTRの中で社員の方も、やれることをどんどん増やしていきたいと言ってました。
そのためには、計画的なOJTといいまして、簡単なことから難しいことへ、徐々に計画的にOJTをするということは大事だと思います。
仕事をしながら覚えていくという?
そのために、派遣先と協力関係を派遣元は取って、OJTをやっていくといいと思うんですけどね。
正社員はそうやって訓練されていくわけですよね。
その仕組みを、派遣…。
派遣社員にもということですね。
なるほど。
でもこうなってきますと、派遣会社を選ぶ時代に入ったのかなという気もしてきますよね。
今回の派遣法と同時に、昨年度から、優良派遣事業主認定制度という制度も出来ております。
そういったところでは、マークがありますので、そういうのを見ながら、派遣をしようという方は、派遣会社を選んだらいいかなというふうに思います。
今、8万社ほどあるということで、これから許可制にも。
なっていきますね。
なっていく。
さらにその中でも優良なものを認定していこうということですか?
そうですね。
ですので、そういう意味では、派遣会社の間で、淘汰が進むんじゃないかと。
そしていい派遣会社が残ってもらうというのが、希望しているところですけれどもね。
働く側としては、自分が本当に、技能に見合った賃金をもらいたい、それには同一労働同一賃金も必要ではないかという声もありますよね。
それは理想だと思います。
ただその前に、派遣社員の皆さんのスキルアップというのも、大事なことだと思うんですね。
今、非正規が労働者の4割に達しているというふうにいわれてます。
それが、結果として、能力の開発が不足しているとか、スキルがあまり高くないということで、もしかしたら日本経済全体の生産性を落としている可能性もあると思うんですね。
そういったことからいえば、今回の派遣法をきっかけに、派遣元、派遣先、そして派遣社員の皆さんは前向きに、スキルアップに取り組んでいただいて、生産性上げて、賃金、処遇を上げていくということが大事かなというふうには思います。
企業は利益を上げていても、働く人が低賃金で、そして不安定だと、少子化、消費にもつながらない。
このスパイラルを変えなければならないですよね。
そういう意味で、今回の派遣法をきっかけに変わっていくことを望みたいと思います。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/11/11(水) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「どう変わる?ハケンの働き方」[字][再]
非正規雇用が労働者の4割を超える中で、派遣労働者の雇用を安定化させようと改正労働者派遣法が施行された。派遣労働の働き方はどう変わるのか、残された課題を考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】中央大学教授…阿部正浩,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】中央大学教授…阿部正浩,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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