(沢嶋)
幕末。
日本は激動の時代を迎えていた。
1868年徳川幕府の打倒を目指す新政府軍は江戸城を開かせたあと電撃的なスピードで北へ進軍する。
8月21日母成峠を突破すると一気に鶴ヶ城に迫る。
城下は女性や子供を含め大混乱。
ある者は城に避難しある者は自ら命を絶ちそしてある者は戦った。
これは戦火の中名もなき女性たちを追った記録映像である
え〜アブソリュートポジションN717W342E134S836。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB350273159時19分33秒。
西暦変換しますと1868年8月28日7時21分40秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー616345これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
城の中は凄惨な状況であった。
新政府軍との戦いで傷ついた会津藩士たちが次々と運び込まれる。
看護にあたっていたのが城内にいた武家の女性たち。
今回の取材対象は幕末の熾烈な戦いに直面した女性たちに密着する
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼女たちにとって私は宇宙人のような存在です。
彼女たちに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼女たちに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
新政府軍の進軍で城下の病院が危険となり急遽城の中に救護室が設けられる。
女性たちは城を守るため懸命に働く。
食事を作り負傷兵たちの看護にあたった
(美芳)はい!
(爆発音)攻撃が始まりました。
新政府軍の攻撃です。
城の外から次々と砲弾が飛んできます。
城の中にいるんですがまるで戦場のようです。
(紗重)はい!
女性たちは撃ち込まれた砲弾に水でぬらした布団をかぶせていく
早く!はい!
砲弾はすぐには爆発しない。
導火線が火薬につく前に消火し爆発を防ぐのだ
誰か裏行って…手伝って!はい!
男の兵士が次々と倒れる厳しい戦い。
女性たちは命懸けの消火活動をひるまず行っていく
(爆発音)現在政府軍の攻撃が一旦やんだところです。
小康状態といったところでしょうか。
先ほどの砲撃でまた死傷者が出たようです。
ひどい状況です。
城内へ撃ち込まれる砲弾は日増しに多くなる。
新政府軍の武器アームストロング砲の攻撃はすさまじかった。
極めて危険な状況だったが逃げ場がなく女性や子供を含め城には5,000人以上が籠城していた
はい。
そんな中で…すぐそこまで…
会津藩の多くの男たちは城の外前線で戦っていた。
そのため藩士の妻や家族は城へと避難していたのである
看護のかいなく亡くなった藩士たちが外へと運び出されていく
砲撃とともに城の中の人々を悩ませたのが食料不足である。
長引く籠城戦で食料の備蓄が底をつくのは時間の問題であった
日増しに苦しくなる状況を少しでも打開するため彼女たちが立ち上がる
食料調達ならなんとか…。
(美芳)おねげえいたしやす。
このままでは…城下を女子がウロウロしてみっせ。
(爆発音)水!
(女性たち)はい!かけて!
(爆発音)
爆発する砲弾に人間の体はあまりにも弱かった。
その瞬間を目の当たりにした紗重と美芳。
2人は決心する
誰にも頼る事はできない。
銃を携えずに2人だけで食料調達のため城の外へ出る事にした。
だが女性の姿では危険が伴う。
目立たないように男物の着物に着替えていく。
とその時だった
「お借りした」って…。
鉄砲を持って現れた女性たち。
それは看護活動を共にしていた仲間たちだった
そして即席の女性鉄砲部隊が編制される。
出発を前に銃を撃つ訓練が行われる。
みんな銃の扱いには慣れている頼もしい女性たちだった。
会津藩には城の外に出陣し勇敢に戦った女性たちが数多くいた。
会津戦争では銃を扱える女性数名が敵陣を襲撃し城に戻った例もあったという。
外出は目立たぬように夜を待って決行する事になった。
私は彼女たちに同行する事にした
しかし…
はいこちら沢嶋。
こちら本部古橋です。
沢嶋さん今回の取材そろそろ切り上げて下さい。
切り上げるって…今ですか?そうです。
あと5分です。
そういう約束です。
なんとか延ばせませんか。
これから取材対象者たちが城の外に出るんです。
同行取材の許可を頂きたいんですけど。
駄目です。
鶴ヶ城は本来第一調査部の管轄ですから。
それをなんとか交渉して特別に取材許可を頂いたので。
お願いします。
城の外なら規則違反にならないでしょう。
城下は新政府軍が侵攻してきてかなり危険な状態です。
城下に食料調達に行くだけです。
危険を感じたらすぐに撤退します。
それにこれは大きな歴史の下に生きた名もなき人々の記録です。
私たちの管轄じゃないですか。
お願いします。
分かりました。
でも沢嶋さんくれぐれも気をつけて下さいね。
分かりました。
ありがとうございます。
本部の許可をもらい私は彼女たちと一緒に城の外に出る。
まだ新政府軍が来ていない南側から町へ向かう事にした
(爆発音)今砲撃がありました。
新政府軍の攻撃でしょうか?
両軍が交戦する場所に足を踏み入れてしまった
安全地帯を目指し必死に走る。
1kmは走っただろうか。
やっと危険地帯をくぐり抜けた
おめえ様は大丈夫か?はい大丈夫です。
夜明け。
敵の目を避けるため町までは遠回りして茂みの中を進む事にした
目的地の町に到着。
誰もいなくなった家々に入り食料を探し回る
会津藩の女性たちが城の外へと食料調達に出かけた記録ははっきりと残っている。
ある藩士の妻は敵の目を避けながら城下の自宅に戻り野菜などを調達した。
戦争のどさくさで物が略奪されたのかどの家も荒らされていた
諦めかけていた。
ところが…
芋とごぼうそして僅かではあったが米まであった。
それは彼女たちの希望となる
(女性たち)はい。
だがその時だった
倒れていたのは味方の藩士たち。
その中に一人だけ息のある男性がいた
なんと美芳の幼なじみであった。
すぐに救護活動に入る
はい。
冷てえけど。
幸い軽い脳震とうを起こしていただけだった
水…水ねえか?
下級藩士である彼もまた新政府軍との戦いに出陣した兵士の一人であった。
正之助から意外な話を聞く
それは消息が分からないままの姉に関する貴重な情報であった。
もしかしたら嫁ぎ先の家にまだ身を潜めているかもしれない
(女性たち)えっ?聞いてくれる?
(紗重)はい。
(多喜)みんなで行って…
美芳の姉を捜索するため家を出る。
が次の瞬間!
(銃声)いた。
遠くの茂みの中に敵兵の姿が
必死に応戦する
ただいま突然発砲がありまして激しい銃撃戦となっております。
突然の砲撃!
(正之助)大丈夫か?おめえら。
(爆発音)
(爆発音)
山の上の敵陣を狙っているのか味方の砲弾が落ちてくる
幸いその砲弾に救われる事になった
(女性たち)はい。
(正之助)待ておめえら危ねえぞ。
待て!
彼女たちに迷っている時間はない。
茂みに分け入り隣町の姉の家を目指した
家に到着した女性たち
敵はいねえか?
必死に姉の名前を呼ぶ
志乃様!志乃様!
(美芳)姉様!
(泣き声)大丈夫だ。
大丈夫。
大丈夫だよ。
とその時だった
(物音)
姉は生きていた
城に入れなかった姉志乃は一人取り残され床下へ身を隠していたのである。
城に入れなかった女性たちは農村部に避難するか敵の辱めを恐れ自刃する者も数多くいた。
志乃もまたまさに自ら命を絶つ寸前のところだった
よかった。
本当によかったな。
(恵津子)あっ!
(紗重)どうした?
敵兵が置き忘れていったものか。
土間の片隅に握り飯を発見した
うめえ!姉様も。
空腹である事を思い出し彼女たちは夢中で頬張る
床下には志乃が隠していた食料があった
(せきこみ)大丈夫か?
久しぶりの笑顔。
誰もが食料を待ち望む城の人々の顔を思い浮かべていた。
だが…
・
(悲鳴)
その時美芳が一瞬の隙をついて飛びかかる!しかし…
(銃声)
正之助だった
ほら早く。
(女性たち)はい!
荷物をまとめ急いで家を出る事にした
大丈夫か?行くべ。
(銃声)誰か手貸して!正之助さん大丈夫だか?
もはや戦うしかなかった
駄目だ駄目だ…。
大丈夫だ。
しっかり!起きて!もうそろそろ…。
私はねえ。
そっちは?
やがて弾は尽きる
その時紗重が何かを発見した
それは不発弾だった
その砲弾の仕組みについて彼女たちは武器に詳しい「八重」という名前の女性から教わっていた
不発弾は最新式の時限信管を用いた砲弾である。
信管に銃弾を撃ち込み炸薬に引火爆発を誘導させようというのだ
(爆発音)
戦いが終わり緊張の糸が切れる。
待っていたのはつらい現実だ
押し寄せる悲しみを振り払い再び立ち上がる。
彼女たちは帰らなければならない
城には帰りを待つ仲間たちがいる
はいこちら沢嶋。
こちら本部古橋です。
沢嶋さん。
分かってます。
もう城へは同行できないんですよね。
はい。
城はこれから新政府軍の総攻撃を受ける事になっています。
城の中は第一の管轄に移ります。
了解しました。
取材対象者とはここで別れます。
沢嶋さんも無事でよかったです。
はい。
いろいろとありがとうございました。
彼女たちに別れを告げようとした時だった
それは城の中から揚がる凧。
城では絶望的な状況の中あえて子供たちに凧を揚げさせたという。
新政府軍を驚かせると同時に会津藩士たちに生きる希望を抱かせた
(女性たち)んだなし。
では私はこの辺で失礼します。
(紗重)そうがし。
皆さんどうかお元気で。
おめえ様も気をつけてくなんしょ。
気をつけてくんつぇい。
お気をつけて。
国の運命を左右する事件の陰には無数の名もなき人々が生きている。
私が見たのは生きる事に全力を尽くした女性たちの壮絶な姿だった。
彼女たちが歴史の教科書に載る事はない。
だが会津では決して忘れ去られる事はない歴史の事実である
以上コードナンバー616345アウトします。
2015/11/11(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「会津 女たちの決死行!」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は幕末、新政府軍と戦った会津藩の名も無き女性たちを密着取材する。
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は1868年、幕末の会津鶴ケ城で新政府軍と戦った会津の名も無き女性たち。砲撃の音が響き渡る城の中で、女性たちの役割は兵糧を炊くこと、弾丸を作ること、そして負傷者の看護をすること。困難なろう城戦で、水や食料、医薬品の物資不足は深刻な状況となる。特に飢えがひどかった。そこで、美芳と紗重は女性だけ5人の食料調達隊を編成、銃を携帯し城の外へ出る。決死の行動を沢嶋雄一がドキュメントする。
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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