≫やっちゃだめですこういうのは。
(三枝)《すまないな遅くまで付き合わせて》
(院生)《いえ研究発表まで時間がありませんから》
(警備員)《遅くまでお疲れさまです》
(三枝)《どうも》
(三枝)《お前浅井さんを》
(院生)《警備員さん!》《警察!警察を呼んでください!》
(三枝)《あいつです!》
(警備員)《待て!》
(父親)りょう君。
りょう君帰るよ。
何やってんの?
(りょう)お父さんこれ何?
(父親)おっ?
(桜木)痛え痛てててて。
寝違えた。
あっ!今日って14日ですよね。
(白石)そうだな。
は〜忘れてた。
昨日わたしの誕生日だった。
(高峰)26になったんだっけ。
はい。
たまってた始末書片付けててすっかり忘れてました。
(白石)係長も忘れたのか。
えっ?
(白石)係長ああ見えてまめなところがあってな。
みんなの誕生日にはこっそりとプレゼント贈ってくるんだ。
俺はこの老眼鏡もらった。
(塚本)俺はイタリアのサングラス。
(高峰)わたしは子供が行きたがってた遊園地のチケットをもらったわ。
(深沢)俺は最新のFBIの犯罪研究書。
あっわたし何ももらってません。
あ〜んかわいそうにね。
(一同の笑い声)あっ係長。
あのわたし昨日…。
(倉田)昨日1年前に起きた東京理工大学講師殺人事件で新たな展開があった。
再捜査だ。
(高峰)容疑者が殺害現場から逃げようとして階段から足を踏み外して死亡した事件ですよね。
(倉田)ああ。
容疑者は被害者が何度か通っていたバーの店員広田拓真だ。
被害者の浅井政文は東京理工大学の講師で遺伝子工学の世界的権威園田教授の研究室に所属していた。
遺伝子工学の世界的権威。
(深沢)確か広田は事件の数日前働いていたバーに客で来た浅井ともめて怨恨の動機があった。
現場に凶器が見つからなかったが状況証拠から見ても犯人は広田。
これが当時の捜査でしたよね。
(白石)でも結局広田は死亡。
物証が挙がらず未解決となった。
(倉田)それが昨日多摩川河川敷で凶器が発見されたんです。
DNA鑑定の結果付着した血痕は被害者のものでした。
広田は犯人じゃない可能性があるってことすか。
何で?殺害現場から逃げようとして死んだやつが現場から30分はかかる多摩川にどうやって凶器を捨てるんだよ。
あっ。
共犯者もしくは真犯人が別にいる可能性もあるわね。
(倉田)当時も浅井の元になぜ広田がやって来たのかは不明だったがその点も含めて今回再捜査に当たる。
塚本と高峰は広田の関係者の聞き込み。
深沢と桜木は被害者の大学関係者の聞き込みを徹底的に行ってくれ。
(一同)はい。
係長。
あの実はわたし昨日…。
思い出した。
昨日のうちにたまっていた始末書を全部片付けておけって言ったよな。
それはできてるんですけど。
よししっかり聞き込み頼むぞ。
はい。
何か大学って楽しそうですよね。
(深沢)まずは浅井が所属していた園田教授の研究室行って話聞くぞ。
はい。
(広田)《あっ申し訳ありません》
(浅井)《お前何やってんだよ》
(広田)《すいません》
(浅井)《あっ!謝って済む問題じゃない!》《これどうしてくれんだよ》
(広田)《ホントに申し訳ありません》
(浅井)《お前大学生か?》
(広田)《いや大学は出てないです》《どうりでな》《お前みたいな無学なやつにこの論文がいかに大事か分かるわけないか》《大学出てんのがそんなに偉いっすか》
(浅井)《何だその口の利き方は》
(矢野)《お客さま申し訳ございません。
お代は結構ですので》《だからそんなことじゃ済まないって言ってんだよ》《この店はバカの集まりか?》
(広田)《てめえこら》
(矢野)《やめろ広田》《すぐ暴力かくずが》《てめえもう一回言ってみろ。
殺すぞ!》
(浅井)《うっ》《これは立派な傷害罪だぞ》《つぶしてやる。
こんな店すぐに営業停止にしてやるからな》
(矢野)《申し訳ございません。
お客さまホントにお代の方は結構ですので》
(塚本)広田は悪さばかりした揚げ句少年院に入った。
そんな彼の身元引受人になったのがあなただったんですよね。
(矢野)あいつはようやくバーテンの仕事にやりがいを覚えて気持ちを入れ替えやり直そうとしていたところでした。
広田は浅井のことが許せなくて研究室に行ったんすかね。
バカにされて悔しかったと思います。
ただあいつが人を殺すなんて何かの間違いであってほしい。
(三枝)《浅井さんどういうことですか?》《あなたが発表した論文わたしが書いていたものと同じですよね》《研究テーマがたまたま近いからな》《かぶったんだろ》《そんなバカな》《わたしのパソコンから勝手に見て盗んだんでしょ》《証拠はあるのか?》《場合によっちゃ名誉棄損で訴えるぞ》
(三枝)死んだ人間を悪く言いたくはないんですが浅井さんは研究者としては最低でした。
それにどうやったかは知りませんが人の秘密を調べ上げてはにやつくような悪趣味なところもあった。
(深沢)秘密とは。
あっいや別にそれは大したことでは。
三枝さん。
あなた事件のすぐ後助教から講師を飛び越えて准教授に昇格されましたよね。
(三枝)ええ。
あの助教とか准教授とかよく分からないんですけど。
研究で結果が出せれば順に偉くなるんだ。
教授准教授講師助教?とにかくあなたは浅井さんが死んで同じ研究テーマのライバルがいなくなった。
まさかわたしを疑ってらっしゃるんですか。
お話を伺ってるだけですよ。
(三枝)あっ園田教授。
警察の方が浅井先生の事件の再捜査で話が聞きたいそうです。
(樋口)教授わたしが話しておきますから。
(園田)ああ。
(三枝)わたしもこれで失礼します。
桜木話を聞いといてくれ。
俺はやつをもう少しつついてみる。
えっ?あっあの。
樋口です。
(樋口)1年前わたしは一研究員で講師の浅井さんは先輩でした。
個人的な付き合いは特にはありませんでした。
現在樋口さんは?
(樋口)助教になってこの研究室で働かせていただいてます。
そうですか。
あとは…。
(樋口)わたしが知ってることなら何でもお話ししますよ。
あっじゃあ事件に関係ないこと1つ聞いてもいいですか?関係ないこと?ずっと気になってたんです。
何なんですか?遺伝子工学って。
桜木さんって何というか刑事さんらしくないですね。
あっすいません何の研究してるのかなと思って。
わたしあんまり頭が良くないんでさっぱり分からなくて。
自分のことそんなふうに言っちゃ駄目ですよ。
可能性は無限大にあるんです。
あっはい。
遺伝子とは生命の設計図のようなものです。
その設計図を人工的に組み換えたりするのが遺伝子工学。
それで新しい何かをつくったりするんです。
新しい何か?
(樋口)うん例えば園田教授とわたしはがんを抑える免疫細胞の遺伝子メカニズムを研究しています。
もう少しで成果が出るかもしれないんです。
成果が出たら?がんに対するより有効な治療法につながるかもしれない。
へえ。
大変そうだけど人のために役立つお仕事なんですね。
刑事さんの仕事と同じですよ。
えっ?大変そうだけどちゃんと人のために役立ってる。
そっか。
(長嶋)どうだ捜査状況は。
(白石)凶器を包んでたタオルに付着した微細物から近くの上流で凶器が遺棄された可能性が高いことが分かりました。
1年前ですが現場周辺で目撃情報がないか調べてみます。
(倉田)所轄にも協力要請しておきますよ。
(白石)お願いします。
(長嶋)高峰今回の犯人像どう見る。
(高峰)広田に共犯者がいたとしても別に真犯人がいたとしても不自然な点が多々あります。
そもそもなぜ凶器だけ隠ぺいされたのか。
(塚本)広田が浅井の元を訪れた理由が分かれば何か見えてくるんだろうけどな。
深沢大学の関係者の方はどうだ。
(深沢)浅井はどうやってかは分かりませんが日常的に人の秘密を調べ上げていたみたいですよ。
(倉田)秘密。
(深沢)三枝に突っ込んで話を聞いたら助教の樋口を食事に誘って断られたことまでなぜか知っていたそうですよ。
その女が自分で言いふらしたんじゃねえのか?樋口さんはそんなことするような人じゃありません。
何でお前がむきになんだよ。
浅井のやつどうやって調べたんだ。
研究室に何か仕掛けていたのかもしれないな。
盗聴機か監視カメラか。
(白石)遺留品にそういったものは出てきていません。
ただ大量に購入したメモリーチップのレシートが残っていました。
その記録用だったのかもしれません。
(深沢)研究室にまだ残ってるかもしれませんね。
調べてみる価値はあるな。
(一同)はい。
(高峰)失礼します。
失礼します。
(三枝)園田教授学部長だけじゃなくほかの先生方も怒ってらっしゃいましたよ。
謝られた方が。
(園田)ほっとけばいい。
警視庁捜査一課の者です。
13時から研究室を調べさせていただくお約束だったんですが。
13時。
ああどうぞ。
(高峰)ありがとうございます。
お願いします。
(三枝のため息)何かあったんですか?
(三枝)今日教授会があったんですが園田教授すっぽかしてしまって。
(院生)ホントいいかげんですね。
園田教授は自分の研究以外は興味ないから。
(三枝)やめなさい。
(院生)だってわたしたちの話もたいがい無視じゃないですか。
講義だってほかの人に押し付けてばっかりだし。
(院生)助教の樋口さんもかわいそうですよ。
毎日家の送り迎えのようなお世話係までやらされてるんですよ。
園田教授ってそんなにひどい方なんですか?わたしたちの世界では世界的な権威の方です。
まあ確かに気難しいところもありますが一流の研究者とは皆そのような方ばかりです。
そういえば今日樋口さんお休みですか?彼女のお母さんが亡くなられたんです。
えっ?
(大森)見〜つけた。
(三枝)何ですかそれは。
(高峰)おそらく浅井さんが仕掛けた盗聴機だと思われます。
(三枝)えっ?
(大森)これが出てきたってことはどこかに受信機と盗聴記録も残されているはず。
徹底的に調べるわよ。
(大森)はい発見。
(竹林)おお。
(秋山)やっぱりありましたね受信機。
(竹林)ずいぶんたくさんあるな。
(高峰)盗聴機に付着した指紋から仕掛けたのはやはり浅井でした。
現在科捜研で内容を整理してもらっているところです。
(倉田)そうか。
(白石)定期的にメモリーチップを回収してきっちり記録してたんだろ?研究者の考えることはよく分からんな。
・
(道尾)あの東京理工大学の先生がお話があると。
警察が研究室に色々と調べに来たと連絡があって正式に抗議に来ました。
(高峰)研究室に浅井さんが盗聴機を仕掛けていたんです。
会話を録音したメモリーチップも隠されていました。
研究室には貴重なデータや実験サンプルがあるんです。
勝手に入られては困るんです。
樋口さん研究室を調べたのは昨日園田教授から許可をもらったからなんです。
あっそうだったんですか。
わたし聞いてなかったもので。
(樋口)申し訳ありませんでした。
(竹林)三枝って確か事件関係者の1人?はい。
(竹林)ヤベえ当たり出たかも。
いきますよ。
はい。
(浅井)「三枝もやるじゃないか」「出入り業者に便宜を図ってキックバックをもらっていたとはな」
(三枝)「どっどうしてそれを」
(浅井)「お前はこの先ずっと俺の論文の下書きをしろ」
(三枝)「やっぱりこの前わたしの論文を盗んでいたんですね」
(浅井)「言われたとおりやればこのことは黙っておいてやるよ」キックバックなんてとんでもない。
最先端の研究なんで何かと入り用で研究費が足りなくなったときに補てんしていただけです。
立派な不正だ。
だから浅井に論文の下書きをさせられていたんだろ。
(三枝)言っときますがわたしは殺していませんよ。
どうだかなあんたには動機がある。
わたしを疑うなら…。
疑うなら?知ってることがあるなら話すんだ。
(浅井)《おかしいなと思ってたんだよ》《それで後をつけてたら新宿中央公園で見たんだよ》《誰にも話さないでください》《わたしにできることなら何でもしますから》《取りあえず300万用意しとけ》まさか樋口さんがゆすられていた。
その後彼女に相談に乗ると声を掛けた。
でも絶対に誰にも言わないでくれって。
彼女がゆすられていた理由は。
(三枝)何も話してくれませんでした。
どうせわたしなんか頼りにならないと思ったんでしょ。
広田が浅井のところに行った理由分かりましたよ。
事件前日広田と浅井が電話で話してた内容が盗聴記録に残ってました。
(浅井)「訴えられたら店に迷惑が掛かる?」「どうした昨日の威勢のよさは」「あした?」「お前に謝りに来られてもこっちが迷惑なんだよ」
(塚本)広田は世話になった店長に迷惑が掛かると思ってあらためて謝りに行ったんですよ。
事件当日現場に居合わせた警備員も彼の死に際について供述していました。
《違う俺じゃないんだ》
(高峰)謝りに行って偶然殺害現場に居合わせて犯人だと誤解された。
やつが血だらけだったのは目の前で死んでいた浅井を助けようとしたからかもしれませんね。
(倉田)そうだとしたらやりきれないな。
そうか。
Nシステムでヒットしました。
事件当時凶器が遺棄されたとみられる近辺を事件関係者の車が通過していました。
誰ですか?樋口だ。
(三枝)樋口は辞めました。
(深沢)樋口が辞めた?
(三枝)ええ昨日突然辞表出したみたいで。
樋口さん。
失礼。
深沢です。
・
(倉田)樋口のマンションに向かった塚本から連絡があった。
マンションを解約して部屋には荷物も一切ない。
携帯はつながらない。
彼女の車もない。
樋口が逃亡した。
(竹林)Nシステムだと彼女の車東名川崎インター降りて生田方面に向かったみたいっすね。
緊急配備を取りますか?
(白石)いやちょっと待て。
生田方面か。
もしかして彼女。
樋口さん。
浅井政文殺害の件でご同行願えますか。
(倉田)これは凶器が捨てられたと思われる周辺で事件当日あなたの車が通り過ぎた記録です。
(倉田)浅井の死亡推定時刻の約30分後にあなたはここで何をしていたんですか?あなたが浅井を殺害したんですか?事件当日のことを詳しく話してください。
(樋口)死体を運び出すのは難しいと思ってとにかく凶器を何とかしなければと思いました。
(樋口)凶器を川に捨て研究室にある死体をどうすべきか考えながら大学に戻りました。
(樋口)何が起こったのか理解できませんでした。
でも彼が犯人ではないことは分かっていました。
(倉田)広田の墓に行ったのは?この事件に広田さんを巻き込んでしまった。
どうしてもおわびがしたかったんです。
やっぱり広田は無実だった。
ちゃんと更生してたんすよ。
それなのに。
あなたが浅井を殺害した動機は彼に多額の金をゆすられていたからですよね。
浅井があなたに「おかしいと思って後をつけたら新宿中央公園で見た」と言っていた証言があります。
調べれば分かることです。
わたしは園田教授と不倫関係にありました。
えっ?1年前奥さまが病気で入院していたときです。
新宿中央公園の隣にあるホテルがいつもの待ち合わせ場所でした。
(倉田)園田教授の奥さんは現在は亡くなっていますね。
関係は今でも続いてるんですか?いえそのときだけです。
でもなぜ浅井は園田教授ではなくあなたをゆすってきたんですか?園田教授の怒りを買ったら浅井は研究室にいられなくなります。
だからわたしだけゆすってきたんです。
わたしは公になれば大学にいられなくなりますから。
それで結局あなたはゆすられた揚げ句に殺害したと。
はい。
(長嶋)助教の樋口が全面自供したそうだな。
はい。
何だ何か引っ掛かってる顔だな。
樋口さん大きな目標に向かって研究を続けていたんです。
それなのに今まで積み上げてきたもの全て捨ててまでどうして殺人を犯したのか理解できなくて。
そっか。
駄目ですよね加害者に感情移入するなんて。
カメ捜査にはいろんなやり方があるよな。
えっ?高峰や深沢はプロファイリングやデータを駆使する。
反対に現場主義の白石さんと塚本。
カメはどうだ。
わたしですか?回り道かもしれない。
無駄かもしれない。
それでも気になることは亀のごとくこつこつと全部調べ上げてきたんじゃなかったのか?お前が間違った方向に行ってたら俺や倉田がちゃんと止める。
被害者と加害者の線引きなんかしないでカメなりの捜査をやってみたらどうだ。
わたしの捜査。
《樋口さんは高校には行っていない》《それで23歳のときなぜ急に大学に行こうと思ったんだろ》
(高峰)ご足労いただきまして申し訳ございません。
(塚本)あの失礼なんすけどこちらの方は。
(野崎)野崎です。
樋口さんの後任として遺伝子工学研究室の助教に就任しました。
樋口さんは園田教授と不倫関係にあったと言っているんですが。
あああの樋口か。
1年前だな。
彼女がすり寄ってきて困った。
仕方がないからそういう関係になった。
彼女はその件で浅井さんにゆすられ殺害したと自供しているんです。
彼女ならやりかねない。
人を人と思わない冷徹さそして計算高いところがあった。
あのちょっと待ってください。
彼女はあなたを長年そばで支えてきたんですよね。
お荷物の彼女を仕方なく引き取っていただけだ。
《樋口さんは中学生のときにお父さんをがんで亡くして高校には行かずアルバイトを幾つも掛け持ちしながらお母さんを支えていた》《そして二十歳のころこの喫茶店でウエートレスとして働いていた》
(男子学生)《答えがこうなる》
(女子学生)《難しいね》・
(ドアの開く音)《いらっしゃいませ》
(樋口)《お待たせしました》
(樋口)《あっすいません》《いつも難しそうなお勉強されてるなと思って》
(園田)《遺伝子工学だよ》
(樋口)《遺伝子工学?》
(園田)《遺伝子とは例えば生命の設計図》《その設計図を組み換えることで新しい機能をつくり出すんだ》《何かすごいお仕事ですね。
わたしとは大違い》《そんなことはない》《この喫茶店は実に居心地がいい。
なぜだか分かるか》
(樋口)《いえ》《ここで働く人間が人を優しく包み込むような空気を持ってるからだ》《君は君にしかできない特別なものをちゃんとこの空間でつくり上げてるんだよ》
(杉浦)《先生わたしも彼女がここで働いてくれて助かってるんですよ》《でもホントは彼女勉強がやりたいんじゃないかと思って》《そんなことありません》
(杉浦)《ここで勉強してる大学生をいつもうらやましそうに見てるじゃないか》《いやでも無理ですよわたしになんて》《無理。
誰がそんなこと決めたんだ》《可能性は無限大にあるんだよ》
(杉浦)それ以来園田教授がこの店に来るたびに彼女は勉強を教わるようになったんです。
それで大検を受けて大学に入った。
そして教授の背中を追い掛けるように研究者の道に進んだんです。
樋口さんにとって園田教授との出会いは特別なものだったんですね。
ほかに彼女のことで覚えてることありませんか?
(杉浦)ああそういえば…。
(樋口の泣き声)えっ?園田教授樋口さんのことそんな冷たい言い方してたんですか。
(塚本)高峰によると本心だってよ。
わたしが聞いた話の印象と全然違う。
(高峰)彼女の取り調べどうでした?
(倉田)一生かけて罪を償うと言ってる。
だが何か妙な違和感があるな。
(塚本)違和感。
(倉田)このままいけば無期懲役になるかもしれない。
なのに泣き言や恨み言の1つも出てこない。
あまりに潔過ぎる。
(白石)わたしも違和感を感じましたよ。
(塚本)俺は園田教授の態度がどうしても気になるんすよね。
あと急に助教になった野崎ってやつも。
タイミング良過ぎやしませんかね。
(深沢)悪いなここ置いてくれ。
(白石)道尾すまんな。
(塚本)何だよそれ。
(深沢)盗聴機に記録されていた会話を文章に起こしてもらったものです。
どうも気になることがあるんですよ。
(倉田)深沢もか。
(深沢)浅井のやつはなぜ園田教授をゆすっていないのか。
樋口は園田教授の怒りを買えば研究室にいられなくなるって言ってたな。
でも目的は金なのに教授の方スルーしますかね。
(高峰)確かに変ね。
(倉田)桜木お前はどうだ。
事件が起きる3カ月前樋口さんが新宿中央公園で泣いていたという目撃証言がありました。
何が彼女を悲しませたのか調べてみたいんです。
よし盗聴機のデータは深沢と高峰でいま一度洗ってくれ。
それと新しく助教になった野崎は塚本。
白石さんは桜木のサポートしてやってください。
(白石)はい。
はい。
(白石)これがこのかいわいの建物リストだ。
樋口の目撃情報しらみつぶしに当たるぞ。
はい。
(塚本)野崎さんは樋口さんと大学の同級生だったんすよね。
それが何か。
(塚本)あなたは彼女の推薦で園田教授の研究室の助教となった。
しかも彼女が発表する予定だった論文まであなたが引き継いだって聞いたんすけどそれって事実ですか?浅井が園田教授をゆすった記録はないわね。
こっちもないですね。
園田教授が講演会をすっぽかしてみんなが慌てたことぐらいしか。
ちょっと待って。
この前も同じようなことがあったわ。
つまり樋口がいなかった日だけ園田教授が大事な予定をすっぽかしていたってことか。
(高峰)ええ1年前は母親が病気になったとき。
そしてつい最近その母親の葬儀の日にも。
(塚本)野崎のことで気になること分かりましたよ。
もともと野崎は園田教授の研究室にいたんですがその後海外の研究機関で働いてつい最近戻ってきたらしいんすよね。
三枝が言うには一番意外な場所に戻ってきたって。
意外な場所?
(塚本)やつが研究室を離れた理由は園田教授と研究方針が合わず対立したからだそうです。
でもなぜか園田教授はそのことをまったく気に留めてないんすよね。
どういうことだ。
(白石)新宿中央公園の隣のホテルからは彼女の目撃証言は出ませんでした。
ただ別の場所で証言が取れましたよ。
樋口さんが全てをなげうってでも隠そうとしたものこれでした。
・
(ノック)
(園田)はい。
(深沢)警視庁捜査一課の者ですが園田教授浅井先生が殺害された件でその手帳の中身を見せていただけますか?手帳?弁護士を呼んでください。
捜査を不当に引き延ばしています。
いいえこれは正当な捜査です。
(ノック)園田教授が書いていた日記と自分に関係のある人を記した人物メモです。
樋口さん園田教授と不倫関係にあったというのは嘘ですね。
あなたがゆすられていた本当の理由は…。
こういうことだったんですね。
《どうしてわたしなんだ》《人生を懸けて取り組んできた研究があと少しで成果が出るというのになぜ今なんだ》《大丈夫ですよ》《わたしがそばにいて先生のことお守りします》《研究のことも忘れていくのか》《このまま続けましょう。
わたしが全力で支えますから》《樋口ありがとう》《少し1人で考えさせてくれ》
(泣き声)《昨日わたしは大学に来て何をしてたんだ?》《山崎教授とディスカッションされてましたよ》《山崎誰だ》《隣の研究室の山崎教授です》《古い友人か》
(浅井)《いつノーベル賞を取ってもおかしくないあなたが国の予算を使い放題のあなたがまさか全ての記憶を失っていくとはね》《来年には研究の成果が出るはずだ》《それまでは何としても続ける》《いやあなたには今すぐ研究から身を引いてもらう》《そしてその成果は全てわたしがもらう》《わたしが殺したんだろうか》
(樋口)《大丈夫ですよ》《先生は何も心配なさらなくていいんです》《わたしが何とかします》
(園田の泣き声)
(樋口)《先生帰りましょ》《思い出せない》《先生じゃありません》《先生は殺していない》この付せんが付いているのが浅井先生が殺害された日の日記です。
それとこれが樋口さんのことが記された人物メモです。
鑑定の結果これらは全て樋口さんの筆跡でした。
園田教授の記憶をすり替え自分が犯人に見えるようにしむけた。
そして全部の罪を背負い込んだんですね。
(園田)《「15年前大学駅前の喫茶店で知り合った」「勉強したいと云う意欲が強く聡明で教えたことは直ぐ理解する」》
(園田)《「昔から人を優しく包み込む様な空気を持っており彼女の周りには自然と人が集まる」》
(園田)《「私の自慢の教え子であり信頼出来る助教である」》どうしてそこまでして。
先生に出会わなかったら今のわたしはありませんでした。
この15年間で先生がわたしに与えてくれたものは計り知れないんです。
でも病気のことはすぐに分かるはずです。
それは樋口さんも分かっていたんじゃ…。
教授には研究しかないんです。
あの人からそれを取り上げるというのは死を意味します。
わたしは1分でも1秒でも長く続けさせてあげたかった。
せめて今の研究の成果が出るまでは何としてでも。
盗聴の受信機の中に入れたままになってたメモリーチップがありました。
壊れていたんですけどデータが復元できたんです。
犯行当時の内容が録音されていました。
えっ?
(浅井)《いやあなたには今すぐ研究から身を引いてもらう》《そしてその成果は全てわたしがもらう》《断る!》《聞き分けの悪い人だな》《樋口みたいに素直に従えばいいんだよ》《樋口。
お前樋口に何をした》《高が知れてますが全財産を差し出してきた》《わたしの前で何度も「公表はしないでくれ」って土下座もしたな》《今度は体を提供しろと言ったらあいつはちゅうちょなく…》
(殴る音)園田教授は長年続けてきた研究よりも自分の病気が公表されることよりも一番に樋口さんを守りたかったんだと思います。
先生。
(泣き声)今のは?えっ?今そこにいた女性は?樋口瑤子さんという方です。
人を優しく包み込むような空気を持った人だ。
(倉田)最近つくづく分かってきましたよ。
室長がなぜ桜木をこのチームに入れたのか。
(長嶋)聞かせてもらおうか。
(倉田)未解決事件は未解決の時間の分だけ解決の糸口がそう簡単には見つかりません。
(長嶋)そうだな。
(倉田)桜木はいつだって刑事らしくない普通の目で捜査に当たります。
そのピュアな感覚は時に解決への新しい何かを見つけ出すこともあります。
それはうちでは誰も持っていないものです。
その分相手の気持ちに近づき過ぎて傷つくことも多い。
でも少しずつホントに少しずつですが強くなってきてると思います。
どうだチームはだいぶまとまってきたか。
(倉田)いえいえまだまだこれからです。
(三井)桜木さん寮に届いてたお荷物です。
管理人さんがいつ帰ってくるか分からないからって。
すいません。
係長からだ。
何だろ。
寝袋だ。
係長ちゃんと覚えててくれたんだ。
2015/11/11(水) 14:55〜15:50
関西テレビ1
絶対零度〜未解決事件特命捜査〜 #10[再][字]
「献身」
上戸彩 宮迫博之 山口紗弥加 丸山智己 杉本哲太 北大路欣也
詳細情報
番組内容
桜木泉(上戸彩)は、26歳の誕生日も仕事に追われ、4係のデスクで朝を迎えていた。そこに倉田工(杉本哲太)が現れ、1年前に起きた「東京理工大学講師殺人事件」の再捜査が決まったことを伝えた。
2009年、東京理工大学の講師・浅井政文(斎藤歩)が殺害された。助教であった三枝英之(二階堂智)と大学院生が、浅井の遺体の傍にいる血だらけの広田拓真(若葉竜也)を発見。慌てて逃げる広田は階段から足を踏み外して
番組内容2
転落し、死亡してしまう。事件前夜に広田は働いていたバーで客の浅井と揉めており、動機は怨恨だとされていた。また現場から凶器が発見されなかった他は、状況証拠から見ても犯人は広田だとされ、被疑者死亡で書類送検された事件であった。
しかし2010年6月、多摩川の河川敷で浅井の血痕がついた凶器が発見された。共犯者もしくは広田ではない別の真犯人がいる可能性が出てきたため再捜査が決定したのである。
番組内容3
倉田の指示のもと、泉と深沢ユウキ(丸山智己)は浅井が所属していた研究室を尋ねる。そこで、泉と深沢は事件の第一発見者である三枝から、浅井が人の秘密を調べ上げてはニヤつくような悪趣味があったことを聞く。三枝の聞き込みをしていると、教授の園田道雄(浅野和之)と助教の樋口瑶子(ともさかりえ)が研究室に入ってきた。深沢は三枝に聞き込みを続け、一方泉は樋口に浅井について聞くことになり・・・。
出演者
上戸彩
宮迫博之
山口紗弥加
丸山智己
北川弘美
木村了
中原丈雄
杉本哲太
・
北大路欣也
ほか
原作・脚本
【脚本】
酒井雅秋
監督・演出
【企画】
成河広明
【プロデュース】
森安彩
【アソシエイトプロデューサー】
瀧山麻土香
【演出】
村上正典
岩田和行
音楽
【メインテーマ】
「Dry Town〜Theme of Zero〜」LOVE PSYCHEDELICO
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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