インフルエンザの予防接種を受けた。いくつになっても注射は苦手だけれど、家族や同僚も守る保険と思えばやむを得ない。もしかかっても軽症ですむのなら、我慢できる。
16世紀のイタリアでは、インフルエンザが感染症と分からなかったという。周期的に流行することから、星や寒気の影響(インフルエンス)と考え、語源にもなった。災いは空から降ってくると考えられていたようだ。
現代でも疫病神は空からやってきた。奄美大島に侵入した果樹の大敵・ミカンコミバエだ。幼虫が寄生し繁殖すると全滅の恐れすらある。国内では約30年前に根絶したが、風に乗って東南アジアや中国から舞い戻ってきたらしい。
拡散を防ぐため、島内の果実は移動制限がかかる見込みだ。収穫を目前に迎えたポンカンやタンカンは出荷できず、原則廃棄される。丹精込めて育ててきた農家の痛みは計り知れない。
早い根絶が求められる一方で風評被害も心配だ。以前、重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した時、世界保健機構は病気そのものだけでなく風評とも闘った。「知識は恐怖を追い出す」と宣伝し、地域や人種への偏見や差別を取り除くのに懸命だったらしい。
正しい知識を得て正しく恐れる。防疫に重要なことだろう。害虫との闘いは、これからが本番である。一日も早い安全宣言で、人気の高い奄美産果樹の出荷再開を祈る。
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