07年4月13日付「聖教新聞」


中国・温家宝総理と
池田大作・創価学会名誉会長が会談
― 日中国交正常化35周年を祝賀 ―



春の列島に“熱烈歓迎”の歓声が高鳴る!――池田名誉会長は12日午後5時25分から30分間にわたり、中国の首相として6年半ぶりに来日した温家宝総理と都内の宿舎で会談した。胡錦濤国家主席とともに中国の「新世代のリーダー」である温家宝総理。会談では温家宝総理の来日の成功を喜び合うとともに、日中国交正常化35周年に当たり、万代の友好を願って周恩来総理の信念の言葉が確認された。また温総理は、「創価」の思想とは「慈悲」と「創造」と理解していると共感を表明。青年交流、文化交流を一段と進めていくことなどが語り合われた。明年、いよいよ北京オリンピックが開幕。それを慶祝して、民音では「日中文化・スポーツ交流年」の本年秋、「中国雑技団」を招聘。さらに明年5月、東京富士美術館が「大三国志展」を開催する。


「平民の総理」
「人民の総理」
中国人民から、尊敬と敬愛を込めて、こう呼ばれる温家宝総理。友誼薫る握手の瞬間、総理の温和な顔が、一段とほころんだ。

池田名誉会長 光栄です。うれしいです。政治家ではなくて、庶民の王者と会ってください。庶民が大事です。

温総理 きょうは、池田先生にお目にかかれて、感謝しています。池田先生とは、1992年に一度、お会いしました。当時と同じようにお元気そうで、うれしいです。

名誉会長 温総理も、お変わりありませんね。本当に若々しいです。早朝からのジョギングも、ご苦労様です!(爆笑)

――この日の早朝、温総理は、市民との触れ合いを求めて、都内の代々木公園でジョギングを行った。警備上の配慮から「宿泊先の庭園内で」との要請もあったが、あえて、民衆の中に飛び込んで交流を広げた。

名誉会長 民衆の中へ! 民衆とともに! ――温総理の姿勢に日本の政治家も学ぶべきです。良い手本を示してくださいました。

気さくな人柄。軽妙な応答。そして「温和ななかにも、信念と見識が光る指導者」と評価される温家宝総理。今月11日、中国首相として6年半ぶりに来日。小雨のなか、スーツがぬれるのもかまわずに、空港で出迎えた人々と握手を交わす姿が印象的だった。温総理は、昨年秋の安倍総理の訪中が日中の「氷を砕く旅」であったとし、今回の訪日を日中の「氷を溶かす旅」にしたいと位置づけている。

名誉会長は語った。「今回の『氷を溶かす旅』は大成功でした。唐の大詩人の白楽天は、春の喜びを謳いました。“氷が、ことごとく溶けて、春の風と春の水が、いっぺんに到来した。この絶妙なリズムは、いったい、誰のはからいであろうか”と。総理の信念の訪日が、新しい友誼の春を告げてくださったのです。日本の民衆を代表して感謝申し上げます。氷が溶ければ、友好の大河は、自ずから水かさを増していくものです」

――温総理は、到着の夕方から、さっそく日中首脳会談に臨み、翌12日の午前10時から、約40分間にわたり国会演説を。日本国内はもちろん、中国にも生中継された。午後も各界の代表と会見を重ねるなど、まさに秒刻みのスケジュール。そのなかで、名誉会長との会談が実現したのである。

名誉会長 本日の総理の国会演説は、歴史的な平和友好の大宣言であられました。文豪・魯迅先生が言われるごとく、総理の「真実の声」「至誠の声」「温暖な声」に多くの人が感動しました。感服しました。涙を流している人もいました。私は、これまで多くの世界の指導者と会ってきました。だれが真実の民衆のための指導者か。そして、だれが偽りの仮面をかぶった権力者か。民衆の眼は、それを、きちんと見分けます。総理は真実の民衆の指導者であられる。

――温家宝総理は、この日の国会演説で、中日両国の友好と協力の重要性を強く訴えた。演説では、仏教の伝来や遣唐使の派遣など、2000年に及ぶ両国の交流の歴史に言及。「その時間の長さ、規模の大きさと影響の深さは、世界文明発展の歴史に類を見ない」と強く語った。また、近代における日本の中国侵略の事実にも触れ、「歴史を鑑とする」と訴えるのは、恨みを抱え続けるのではなく、よりよい未来を切り開くためだと強調。「風は吹けども、山は動かず」との日本のことわざを通し、紆余曲折はあろうとも、両国人民の友好の土台は動揺することはないと述べた。

名誉会長 温総理の名演説をうかがいながら、私は33年前の周恩来総理との語らいを思い起こしました。温総理の論調には、まさに周総理と一致する奥深い歴史観があり、寛大な人間愛があり、率直な言明があり、明晰な展望がありました。

――名誉会長が周恩来総理と一期一会の出会いを刻んだのは、1974年の12月5日。周総理は76歳。名誉会長は46歳。周総理は、「創価学会は民衆の中から立ち上がった団体である」という点に着目していた。日中友好も、政治家や経済の次元だけでは、永遠性はつくれない。民衆を根本とし、民衆と民衆が心から理解し、信頼し合ってこそ、崩れぬ日中友好の土台が築かれる。これが周総理の透徹した信念であった。

名誉会長 ともあれ、貴国の古典「文心雕龍(ぶんしんちょうりょう)」に、「志があるゆえに、文才が光る。信義があるゆえに、表現が冴える」と讃えられる通りの不滅の名演説でありました。21世紀の貴国と日本が進むべき「友情と協力」の大道が晴れ晴れと開かれ、明確に示されました。

――温家宝総理は、1942年9月生まれ。64歳。北京地質学院、同大学院を卒業。10数年間、内陸の甘粛省に赴き、地質局に勤め、現場に徹した。その後、中央の要職に抜擢。総書記の“秘書室長”にあたる中央弁公庁主任として、3代の総書記のもとで働いた。経済・科学技術・農業・防災・貧困対策・緑化などで見事な手腕を発揮。98年に副首相、2003年に首相に就任した。着実な経済発展の推進、「調和社会」の建設、世界との友好の促進など、胡錦濤国家主席とともに、大中国を力強くリードしている。

名誉会長 温総理が、どれほど、人民のために尽くし抜いてこられたか。まさに周総理の心を受け継いでおられます。温総理は語られています。「私は人民の子である。我々が成し遂げた一切は人民のおかげである」 この言葉には、日本をはじめ、世界の政治家が学ぶべき、人間指導者の魂が光っています。

総理 私のことを、そのように讃えてくださり、ありがとうございます。

名誉会長 温総理と周総理は同じく、天津の南開学園の出身であられます。温総理が母校を愛され「南開精神は永遠に輝く」と後輩を励まされている。これは大変、有名な話です。

総理 その通りです。池田先生は、よくご存知ですね!

名誉会長 私たちは、南開大学とも深く交流を結んでおります。1974年12月、周総理は、病の身を押して、若い私に、万代の友好を託してくださいました。「中国と日本が友好を結べば、アジアは安寧になり、世界を平和へリードできる」とは、周総理の信念でした。私は、周総理の信頼に、ただただ行動でお応えしようと、歩んでまいりました。35年前、両国の国交正常化に際し、周総理は日本側に揮毫を記されました。「言必ず信あり。行い必ず果たす」 言ったことは、必ず信義をもって守る。行動は、必ず成し遂げる。この信義を、日本は絶対に忘れてはならない。これが私どもの信念です。戦いです。

総理 本日、池田先生から情熱あふれるお言葉をいただいたことに感謝いたします。先生の私に対する激励の言葉と受け止めます。今回、来日の前に、池田先生の書籍を2冊読ませていただきました。(イギリスの歴史学者)トインビー博士との対談集と、(中国の国学大師)季羨林博士との対談集です。これらを読んで、書をしたためてお持ちしました。

――席上、温総理から名誉会長に自筆の「書」が贈られた。中国において、自筆の書を贈ることは、かけがえのない深い友情の証である。そこには、こうしたためられていた。

「贈池田先生
 慈航創新路
 和諧結良縁
  温家寶
 二〇〇七年四月」

名誉会長 素晴らしいです。日本に宝ができました。謹んでお受けします。

総理 私は、先生のことを、大変、尊敬しています。池田先生は、文化、文学の面において、大変、造詣が深いだけでなく、中日両国の友好のために、自ら多くの努力を捧げてこられました。創価学会の「創価」という言葉について、先生は、2点の意義をご指摘されました。1点目は「慈悲」であり、2点目は「創造」です。「慈悲」というと、人々は、それは宗教の言葉だと考えますが、宗教に限ることではありません。同情の心は、人間の道徳の基礎です。そして道徳は、思想の中でも最も価値を持つものです。私は、先生の思想を、自分なりに、こう受け止めています。書の右の行は「慈航が新たなる路を創る」という意味です。これは、中国との間だけではなく、全世界のことを言っております。左の「和諧は良縁を結ぶ」という行は、「調和のとれた世界を構築して、世界各国が友好的につきあう」という意味です。私は、先生の著作を読ませていただくときに、これは哲学であり、修養だという気持ちを抱いています。

名誉会長 恐縮です。うれしいです。

総理 今回、日本を訪問し、私は責任の重さを痛感しています。使命感を覚えています。今回の日本訪問は、数年来の外国訪問の中で、最も困難であり、最も必要な訪問でした。私は事実に教えられたのですが、中日友好は、大勢の赴くところであり、人心の向かうところです。本日の朝、私は代々木公園でジョギングをしました。

名誉会長 存じております。私もテレビで見ました(笑い)。

総理 そこで私は、年配の方々や、若い人たちと会いました。皆さんに、「中日関係の改善を喜んでいますか?」とうかがいますと、一人の方は「非常に喜んでいる」と言っておりました。また、もう一人の方は、「夢にも思わなかったことです」と言われていました。中日友好は、人心にかなうことであり、両国の利益になることですから、私は最大限の努力をしたいと思っています。<名誉会長はじめ、同席者から大きな拍手が>

名誉会長 道理です。まったく正しいことです。

総理 きのう、東京に到着した時は、春の雨が降っていました。私は「春の雨は素晴らしい季節に降る」と述べました。本日は、よい天気になりました。気温も、大分、上がりました。冬は去って、春がやってきたのです。

名誉会長 その通りです! 「詩心の総理」です! <全員が大拍手> 来年のオリンピックの大成功をお祈りします。「一つの世界、一つの夢」――なんと素晴らしいテーマか。貴国の英知の言に「古きを温ねて新しきを知る」とあります。有名な言葉です。これからの青年たちに、厳然と、正しき真実の歴史を伝え教えながら、新しい友好の大道を開いていきたい。開かねばならない。こう私は決心しております。一切の焦点は、青年です。総理は、一昨日、韓国でも、青年たちと、意義深い出会いを結ばれました。そして、「青年の交流にこそ、未来がある」と語られております。正しいです。まったく同感です。私も、そのように実行していきたいと思っています。

総理 韓国での私の言葉を引いてくださり、恐縮です。その場で、原稿なしで発言したのです。「青春」というテーマで。

名誉会長 「青春」。素晴らしいですね!

――会談を終えるにあたり、名誉会長は、温総理の通訳を務めた張梅(ちょうばい)さんに「名通訳でしたね」と。張梅さんは、中華全国青年連合会からの派遣で創価大学に留学した女性である。名誉会長は創価大学創立者として、留学生の中国での活躍を心から喜んだ。

名誉会長 尊敬する胡錦濤国家主席に、どうか、くれぐれもよろしくお伝えください。

総理 必ず伝えます。主席が20年以上前に来日し、池田先生とお会いしたことは、よく知っています。

――胡主席は1985年の春、全青連の主席として、代表団を率いて来日。名誉会長は、42歳だった若き主席を真心で歓迎し、日中友好の未来を展望して語り合った。

名誉会長 本日は、ご多忙のところ、本当にありがとうございました。どうか、お体を大事に。世界が総理の活躍を見つめています。総理の一言一句、行動に注目しています。

総理 池田先生も、お体を大切になさってください。またの機会に、時間をかけてゆっくりと語り合いましょう!

――笑顔が輝き、声が弾み、拍手がわく。この日の語らいは、まさしく“友好の春”が輝いていた。



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