「アジアの歴史認識については日本の態度だけが問題にされるが、政治目的のために歴史を歪曲し、修正し、抹殺までしてしまう点で最悪の犯罪者は中国である。中国共産党は大躍進、文化大革命、天安門事件など自国民の悲劇の歴史を隠したままなのだ」

 中国のこの種の大規模な歴史の隠蔽や歪曲は、米国ではかなり以前から指摘されてきた。2004年12月にはニューヨーク・タイムズが「中国の教科書は歴史をゆがめ、消し去る」という見出しの記事で詳しい実態を報道した。

 同記事は「ゆがんだ歴史観」の実例として「中国は他国を攻撃や侵略したことはないと教え、1950年のチベット侵略も、1979年のベトナム侵攻も教えない」ことや、「朝鮮戦争で北朝鮮が韓国に大侵攻をかけたことを記さずに、逆に韓国側が米国の支援で戦争を始めたと教える」ことを報じていた。

 2002年2月には、当時のブッシュ大統領が訪中した際、北京の清華大学での演説で、「中国の教科書には『連邦捜査局(FBI)の特別捜査官は労働者の弾圧のために創設された』とか『米国人は伝統的に弱者をいじめ、貧者を弾圧する』などといった間違った記述が多い」と述べ、中国の歴史教育の偏向を自ら批判している。

 そんな中国から一方的に日本が「歴史を直視せよ」と指示されることは、どうみても不公正だと言わざるをえない。

韓国政府が無視する自国の慰安婦問題

 一方、韓国では2014年6月、米軍慰安婦として働かされたとして、韓国人女性ら122人が韓国政府を相手に国家賠償を求める訴訟を起こした。

 この女性たちは、日本軍慰安婦については日本や韓国政府からすでに一定の賠償を支払われたが、同様の境遇の米軍慰安婦については事実関係が明確であるにもかかわらず韓国政府が隠ぺいしていると非難した。

 1950年からの朝鮮戦争時に韓国政府が、米軍(国連軍)を相手にした売春を認める「特定地域」を設け、女性たちの売春を管理していたことは歴史的な事実であり、多数の証拠や記録がある。特定地域での管理売春は強制的に行われ、慰安婦の中には親に売られたり、欺されて連れてこられた10代の少女もいたという。