経済財政諮問会議:GDP600兆円達成へ具体策
毎日新聞 2015年11月04日 21時38分(最終更新 11月04日 23時23分)
政府は4日、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を開き、民間議員が「名目国内総生産(GDP)600兆円」達成に向けた積み上げ策を提示した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を活用したインフラ輸出の増加や賃金の引き上げ、女性の雇用促進などでGDP(2014年度で491兆円)を約110兆円上積みし、20年度ごろに600兆円を達成すると説明。安倍首相は「緊急に実施すべき対応策を11月中にとりまとめてほしい」と指示した。
伊藤元重東大教授ら民間議員の提案によると、約110兆円のうち60兆円強は経済の実力を示す「潜在成長率」を現状の1%弱から2%程度に引き上げることで達成。残り50兆円弱は、物価や賃金の上昇などでGDPを底上げするとした。特に賃上げについては、消費拡大に向けて政府の名目成長率目標並みの3%の伸びが必要と強調した。
潜在成長率の引き上げで、期待しているのがTPPだ。投資ルールの共通化などで新興国の「参入障壁」が緩和され、発電所などのインフラ輸出が10年の10兆円から30兆円規模に膨らむとはじいた。また、法人実効税率の引き下げや規制緩和で設備投資を10兆円上積みさせると説明。宿泊施設などの拡充により、訪日外国人の消費を14年の2兆円から7兆〜10兆円に伸ばすとした。人口減対策で、女性や高齢者の雇用を500万人分増やすことなども盛り込んだ。
ただ、600兆円の実現には名目で平均3%以上の成長継続が必要だが、91年度(4.9%)以降達成していない。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「600兆円は浮世離れした数字。今回出た個々の目標数字も実現への道筋が不明だ」と指摘した。【横田恵美】