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知っておきたい今どきの葬式費用

11月5日 14時38分

木村祥子記者

人生最後のセレモニーである「お葬式」。その「お葬式」に異変が起きています。
39万8000円からできる「家族葬」という葬式プランを販売する会社や、早く申し込めば葬儀費用が安くなる「早割」サービスなどが登場しているのです。
そんなに安くて大丈夫?と思う方もいらっしゃると思います。どうしたら納得のいく葬儀があげられるのか。知っておきたい葬儀代のからくりについて、報道局遊軍プロジェクト・生活情報チームの木村祥子記者が解説します。

葬式費用のからくりは

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「葬式費用はいくら?」と言われても、一生のうちで喪主をする機会は多くないので、ぱっと答えられる人は少ないのではないかと思います。

葬式はどのような手順で行われるのか?。
宗派によってさまざまなスタイルがありますが、仏式で最後に火葬をする場合の例では、まず人が亡くなると遺体が搬送され、通夜や告別式が執り行われ、そして火葬されます。

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日本消費者協会によりますと、この費用が平均でおよそ122万円。これに、僧侶へのお布施や参列者への接待費などを加えると、費用の総額は平均でおよそ200万円になるということです。

遺体の搬送から火葬までの費用122万円が全体の中で大きなウエイトを占めているわけですが、最近はこの部分の価格を見直して全体の費用を安くする葬儀が登場しています。

葬式費用を抑えたい

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兵庫県西宮市で89歳の母親と夫の3人で暮らしている仲村成美さんは(65)、ことしの春、母親の病気をきっかけに葬儀を考えるようになり、葬儀費用に不安を感じていたといいます。
というのも、仲村さん夫婦は年金暮らしで、家のローンがあと10年残っているためです。そこで悩んだ末に決めたのは大阪市の葬儀会社が販売する簡素な葬儀プランでした。告別式のみで33万8000円です。

格安葬儀社が登場

この葬儀会社は、もともとIT関連の会社ですが、6年前、事業に参入しました。平均の半額以下という価格設定がうけて売り上げを伸ばしています。

なぜ、低価格を実現できるのか、理由は4つありました。

秘密その1:『従来の価格を見直し』。

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葬儀にかかる一式費用の中で、特に大きなウエイトを占めるのが祭壇やひつぎなどです。これらの原価を徹底的に調査し、斎場ごとにばらばらだった価格を、全国一律、平均よりも安く設定しました。

秘密その2:『葬儀に使う品々をシンプルに』。

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斎場で使われる祭壇の中には高さ2メートルを超えるものや、多くの装飾を施しているものもあります。この会社では、小さな祭壇を用意するなど、葬儀用品のシンプル化を進め、全体の価格を抑えました。

秘密その3:『斎場の使用料を個別交渉』。

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通常、昼に告別式が、夜に通夜が行われる斎場。調べてみると、稼働率は2割程度、年間を通じてほとんどの日に空きがあることが分かったということです。そこで、この会社では全国3000か所の斎場と個別に交渉。空いている斎場を格安で利用できるよう契約を結びました。

一方、こうした契約は斎場側にとってもメリットがありました。

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高齢化に伴い次々と建てられた斎場が、急激な人口の減少で供給過多になりつつあるというのです。
ある斎場の責任者は「2025年をピークに葬儀業界も需要がだんだん減ってくると言われている。何もしないで一日終わるより、少しでもお手伝いをすることによって稼働率を上げていきたい。会社を挙げてどんな形の葬儀であれ依頼を頂けたい」と話していました。

秘密その4:『オプション化』。 さらにお布施や参列者への食事などはオプションに。希望に応じて選べるようにしました。

葬式セミナーが人気

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親や自分のために、どんな葬儀をいくらであげたいか。関心の高まりに応えて、この会社では月に2回、セミナーを開いています。

セミナーでは、賢い費用の節約術や見積もりの見分け方などを紹介。
葬儀について詳しく学びたいという人たちが集まっていました。参加者の1人は、「料金体系が不透明な分野なので、いざというときに困らないよう一般的な基準だけでも分かればいろいろ参考になると思い参加しました」と話していました。

会社によりますと、自分の葬式の相談や子どもに迷惑かけたくない、自分が元気なうちに考えておきたいという人が増え、セミナーの人気は年々高まっているということです。

葬儀に対する意識変化

納得のいく葬儀をあげるにはどのような点に注意すればよいのか。

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葬儀事情に詳しい、第一生命経済研究所の小谷みどりさんによりますと、葬式の内容をどうするかよりも大事なのは、▽絶対に必要となる「遺影写真」を選んでおくことと、▽家族が亡くなったときに誰に連絡するかという「連絡リスト」を作っておくことだそうです。
リストがあれば、どのくらいの人数が葬儀に参列するのかが分かり、葬儀の規模や形式もおのずと決まるためです。

そのうえで、小谷さんは、葬儀会社2、3社ぐらいから事前に見積もりを取り、比較しながら業者を選ぶべきだとしています。
見積書に総額だけではなく、祭壇やひつぎといった個々の単価が書かれていれば、お金をかけたい部分や、逆に必要のない項目を検討することができるというのです。
最近はインターネットの通販サイトでもひつぎや骨つぼなどが売られているのであらかじめ価格を調べておくのも重要だということです。

また、各地の自治体の窓口に相談する方法もあります。自治体では、近くにある葬儀会社とか火葬場の紹介や、死亡届や給付金の申し込みといった行政手続きのしかたなど、家族が亡くなった場合に備えて知っておいたほうがよいことをアドバイスしてくれます。

生前から話し合いが鍵

一方、葬儀ついて、親になかなか切り出しにくいという声もあります。

これについて、小谷さんは、基本的にこうしてほしいという希望が本人にないのであれば無理に聞く必要はないとしたうえで、「こういう花を使ってほしい、こういう人を呼んでほしい、こういう音楽を流してほしい」という本人の希望がある場合は、事前に聞いておくことによって、故人にとっても遺族にとっても後悔はないだろうと話していました。

取材後記

今回の取材を通して、私自身、学びの連続でした。葬儀は自分にとっても遠い存在でしたし、両親に葬儀の話をすること自体、タブーだと考えていました。
しかし、人の死はいつ訪れるのか分かりません。いざというときに慌てないないために知識をもっておくことの必要性を痛感しました。
後悔せず、納得のいく葬儀にするためにも、皆さんも、ぜひ、家族で話してみてはいかがでしょうか。


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